「公務員制度改革」闘争ニュースNO.137【2013年12月2日】


修正協議を許さず、「公務員制度改革」法案を廃案に

= 衆議院内閣委員会で政府法案と野党の「対案」を並行して審議(29日) =


 衆議院内閣委員会は11月29日、前日の参考人質疑につづき、午前・午後にわたって「公務員制度改革」関連法案の質疑をおこないました。  この日は、政府法案とともに、民主党およびみんなの党などがそれぞれ提出している「対案」も審議され、各党の質問に答えて野党議員が答弁に立つ場面もありました。

 当初、自民・公明各党は、29日にも法案の採決をねらっていましたが、今週に入っても衆議院での法案採決の見通しはついておらず、一部のマスコミでは、政府・与党が今国会での法成立を見送ったとの報道も見られます。しかし、与党は、「対案」を提出している民主党やみんなの党、維新の会などとの間で修正協議をすすめようとしており、なお予断を許さない状況はつづいています。

 国会会期末が12月6日にせまるなか、与野党間の密室協議を許さず、断固、廃案を求めてたたかっていく必要があります。29日の委員会審議には、国公労連を中心に10名が傍聴し、法案審議を監視しました。以下、委員会での主なやりとりを「国公労連速報」NO.3000を編集して掲載します。

「労働基本権回復は国民の理解を得る段階にない」と稲田大臣が強弁

 29日の衆議院内閣委員会では、若井康彦(民主)、後藤祐一(民主)、杉田水脈(維新)、中丸啓(維新)、山之内毅(維新)、田沼隆志(維新)、佐藤正夫(みんな)、大熊利昭(みんな)、塩川鉄也(共産)、村上史好(生活)の各議員が質問に立ちました。

 若井議員は人事院に対して「平成21年の公務員制度改革法案では、労働基本権の代償機能が確保されないまま閣議決定され、その後廃案とされた。今回の法案はその点が克服されているのか」と質問。原恒雄人事院総裁は「法案策定にあたり、意見交換をしてきた。人事行政の公正の確保、労働基本権の代償機能の確保に支障が生じないもの、人事院の意見が尊重されるものと認識している」と答えました。

 若井議員が「内閣人事局と人事院の考えが異なる場合はどうするのか」と質問すると、稲田朋美公務員制度改革担当大臣は「人事院の意見を十分尊重しつつ、級別定数の設定、代償機能が果たされるようにしていく」と答弁しました。

 若井議員は「自律的労使関係制度の確立について、ILOから8次にわたる勧告が出されているが、今後どのような対応をしていくのか」と質すと、稲田大臣は「公務員制度改革は関係者と十分話し合うこと、情報提供をすることを求めている。今後も、職員団体を含む関係者と引き続き意見交換していきたい」と答えました。

 若井議員は、労働協約締結権について「対案」提出者の民主党に対し、「労働協約締結権を回復することはどのような意義があるか」と質問すると、後藤議員は「憲法28条の労働基本権の保障、ILO勧告にも義務を果たすことになる。労使の責任の明確化や行政の執務に与える効果もあり、時代の変化に対応できる。労働者の側も国民の視線を意識しながら、質の高い行政につながる」と答弁しました。

 質問者に回った後藤議員は、政府法案に対して「級別定数について労働条件性があるのか」と質し、稲田大臣は「級別定数について、ポストを格付けすることに労働条件性はないが、個人を特定のポストに当てるときには勤務条件に関連する」と答弁しました。後藤議員は文書での回答を政府に強く求め、稲田大臣は「相談して必要とあれば出す」と答弁しました。

 また、後藤議員が「自律的労使関係確立にむけて、基本法12条にもとづく国民の理解が得られていないとのことだが、どうか」と質すと、稲田大臣は「国民の理解を得る段階にない。引き続き検討する」と回答しました。さらに、「今後、全体像を示すべきだ」と追及したのに対し、稲田大臣は「関係者の意見を聞きながら、すすめていく」と答弁しました。

「労働基本権回復を前倒しで検討」としたILOへの政府回答と逆行

 共産党の塩川議員は、11月15日の閣議決定で、政府が総人件費抑制の観点から給与体系の抜本改革を行うよう人事院に要請するとしたことについて、国家公務員の賃金引き下げは、地方公務員や民間労働者にも悪影響を与えると指摘しつつ、定員削減の状況を質問しました。

 総務省行政管理局の上村審議官は「メリハリのある人員配置をすすめ、現行の合理化計画の目標数を大幅に上回る合理化を達成するとともに、設置される内閣人事局で新たな定員合理化計画を策定する」と回答しました。これに対し塩川議員は、定員削減はサービス低下や長時間労働を招いており容認できないとして、内閣人事局が策定するとしている総人件費管理の内容と新たな定員合理化計画について質しました。

 稲田大臣は「総人件費のあり方について中長期の方針、毎年度の方針を立てる」「新たな計画について内閣人事局設置後に総理大臣、官房長官がたてることになるが、現段階では答えられない」と明言を避けました。

 また、塩川議員は行政改革推進法42条に人件費改革の趣旨として削減をはかることが定められていることにふれ、総人件費管理もそういう観点で行うのかと追及したところ、稲田大臣は「単に削減ではなくメリハリをつけたい」としつつも「削減した方がいい」との考え方を明らかにしたことから、塩川議員は「削減ありきでは公務員が役割果たせない。大幅なリストラ計画につながる総人件費の基本方針はあってはならない」と厳しくせまりました。

 また、塩川議員は労働基本権の保障に関わって、級別定数管理を人事院から内閣人事局に移管することについて、「法案では級別定数について『人事院の意見を尊重する』とされているが、それが現実的に担保されるのか」と質しました。

 稲田大臣は「機動的な人材配置をするには級別定数の管理は必要。人事院の意見は尊重するが、決定するのは内閣人事局」と答弁したことから、塩川議員が「労働基本権制約の代償機能の後退であり、労働基本権の回復が必要。09年に政府がILOに行った情報提供では『労働基本権の回復について前倒しで検討する』と回答していたにも関わらず、今回の法案に盛り込まれていないことは、この立場から逆行・後退していると言わざるを得ない」と追及し、労働基本権の回復を強く求めました。

以 上