「公務員制度改革」闘争ニュースNO.131【2013年11月1日】


週明けにも法案提出強行のかまえ

= 国公労連が「公務員制度改革」関連法案をめぐって交渉 =


 内閣人事局の設置、幹部人事の一元管理などを内容とする「公務員制度改革」関連法案の国会提出がねらわれるもと、国公労連は11月1日、国家公務員制度改革事務局と交渉しました。

 交渉では、国公労連側は、あらためて法案の問題点を明らかにしながら、憲法とILO勧告にそった労働基本権の回復をはじめ、誇りと働きがいが持てる公正・公平な民主的公務員制度の確立を強く求めました。

 これに対して、公務員事務局側は、「来週の閣議決定をめざし、作業をすすめている」として、週明けにも国会提出する考えを明らかにしました。

「級別定数は労働条件ではなく、管理運営事項だ」と強弁

 国家公務員制度改革事務局との交渉には、宮垣忠委員長を先頭に国公労連四役が参加し、公務員改革事務局は、大谷泰夫事務局長、川淵幹児審議官ほかが対応しました。

 はじめに、宮垣委員長は、「11月5日にも法案を閣議決定するとのマスコミ報道もあるが、われわれの意見や要求はどのように反映させるのか」とただし、法案の検討状況をふくめて回答を求めました。

 「公務員制度改革」関連法案をめぐって、国公労連は10月以降交渉を重ね、その中で、@級別定数管理など労働条件にかかわる権限の内閣人事局への移管な ど使用者権限を強化しない、A公務員の中立・公平性を確保するため、任用の基準設定及び採用試験・研修の企画立案などの機能を内閣人事局に移管しない、B 幹部職員の恣意的な任用を防止し、中立・公正性を担保する、C公務員の身分保障を脅かす人事の弾力的な運用をおこなわないことなどを求めてきました。

 これに対して、大谷事務局長からは、以下のような回答が示されました。

 ○ 法案は労働基本権を付与しなくとも措置できる内容だ。級別定数は勤務条件に関連するが、級別定数そのものは組織管理と密接に関連した人事管理に関する事項だ。

 ○ 人事院が職員の公正な任用の確保に関する事務を所掌するなど、人事行政の公正の確保にむけて、09年法案とくらべて機能移管の範囲について見直した。

 ○ 人事院の意見をふまえて政令を定めるとともに、内閣総理大臣が適格性審査を公正におこなうべきことを法律上明らかにする。

 ○ 特例として降任させる措置の対象は、局長級以上の幹部職員に限られており、かつ、人事院規則の定めるところにより行われるため、人事行政の公正は確保されている。

 そのうえで、大谷事務局長は、「法案については、作業は大詰めを迎え、与党には今週中に審査を終えてもらうようお願いしてきた。来週、 できれば5日の閣議決定にむけて、鋭意作業をすすめている。ご理解をお願いしたい」とのべ、連休明けにも国会提出する考えを明らかにしました。

 これに対して、宮垣委員長は、「回答内容は、われわれの要求や意見を全く反映していない」と厳しく指摘したうえ、「すべての公務員労 働者が、『全体の奉仕者』として誇りと働きがいを持って働くために、労働条件の改善を担保する仕組みとしての労働基本権を回復すべきだ」とのべ、拙速な 「公務員制度改革」関連法案の閣議決定、国会提出には断固反対であるとの態度をあらためて明らかにし、交渉を閉じました。

法案に反対して国会議員要請行動を配置、ILO本部にも要請

 以上から明らかなように、政府・公務員制度改革事務局は、国公労連の反対意見を押し切って、11月5日にも関連法案の提出を強行する姿勢を変えていません。

 法案の中身は、労働基本権回復にむけた検討はいっさいおこなわず、内閣人事局の設置による使用者権限の強化をめざす点で、一部の幹部職 員だけの問題にとどまりません。自公政権下で成立した公務員制度改革基本法では、協約締結権回復による「自律的労使関係制度」を措置することを定めている にもかかわらず、それを無視し続けることは認められません。

 そもそも、労働基本権回復は、「公務員制度改革」が開始されてから現在まで、8度にわたってILO(国際労働機関)から是正勧告が日本政府に示されています。ILO勧告にも背をむけて法案提出を強行することは、国際的にも認められません。

 こうしたもと、11月5・6日には公務各単産の代表がスイス・ジュネーブのILO本部を訪問し、ILO勧告に耳を貸さない日本政府に厳しい措置を求めることになっています。同時に、法案提出が強行された場合は、緊急の国会議員要請行動を配置してたたかいます。

 引き続き、憲法とILO勧告にそった労働基本権回復など民主的公務員制度の確立にむけて、各地からスタートした全労連「憲法キャラバン」への参加をはじめ、職場や地域からの奮闘が求められています。

以 上


【資料:「公務員制度改革」関連法案の骨子】

国家公務員制度改革に係る制度改正の骨子(案)



国家公務員制度改革事務局


1、幹部職員人事の一元管理等

(1)幹部職員の任用等

 @適格性審査及び幹部候補者名簿

  @ 内閣総理大臣は、以下に掲げる者について、幹部職(長官、事務次官若しくは局長若しくは部長の官職、又はこれらに準ずるもの)に属する官職に係る標準職務遂行能力を有することを確認するための審査(「適格性審査」)を政令で定めるところにより公正に行う。

   ・ 幹部職員

   ・ 幹部職員以外の者であって、幹部職の職責を担うにふさわしい能力を有すると見込まれる者として任命権者が内閣総理大臣に推薦した者

   ・ 上に掲げる者に準ずる者

  A 内閣総理大臣は、適格性審査の結果確認を受けた者について、氏名その他政令で定める事項を記載した名簿(「幹部候補者名簿」)を作成する。

  B 内閣総理大臣は、適格性審査及び幹部候補者名簿に関する権限を内閣官房長官に委任する。

  C 適格性審査及び幹部候補者名簿に関する政令を定めるに当たっては、あらかじめ人事院の意見を聴取するものとする。

 A任免協議等

  @ 幹部職に係る任命については、任命権者は、幹部候補者名簿に記載されている者であって、選考又は人事評価等に基づき、当該任命しようとする幹部職についての適性を有すると認められる者について行う。

  A 幹部職に係る任免を行うに当たっては、あらかじめ内閣総理大臣及び内閣官房長官に協議した上で、当該協議に基づいて行う。

  B 内閣総理大臣又は内閣官房長官は、幹部職員について適切な人事管理を確保するため必要と認めるときは、任命権者に対し、幹部職に係る任免について協議を求めることができる。

 B災害その他緊急の場合における任免協議の特例

  @ 災害その他緊急やむを得ない理由により、あらかじめ内閣総理大臣及び内閣官房長官に協議する時間的余裕がないときは、任命権者は、AAにかかわらず、協議を行うことなく、幹部職に係る任免を行うことができる。

  A 任命権者が@により幹部職に係る任免を行った場合には、任命権者は、内閣総理大臣及び内閣官房長官に通知するとともに、遅滞なく、当該任免について内閣総理大臣及び内閣官房長官に協議し、当該協議に基づいて必要な措置を講じなければならない。

(2)幹部職員の降任の特例

 ○ 任命権者は、幹部職員(幹部職のうち職制上の段階が最下位の段階を占める幹部職員を除く)について、以下の要件のいずれにも該当す るときは、当該幹部職員が、一般の職員の降任の要件のいずれにも該当しない場合においても、その意に反して、直近下位の職制上の段階に属する幹部職への降 任を行うことができる。

  ・ 当該幹部職員が他の官職を占める他の幹部職員に比べて勤務実績が劣っている。

  ・ 他の特定の者が任命された場合に当該幹部職員より優れた業績を上げることが十分見込まれる。

  ・ 転任させるべき適当な官職がないなど当該幹部職員を降任させる必要がある。

(3)管理職員の任用等

 @ 採用昇任等基本方針に定めるべき事項に、管理職(課長若しくは室長、又はこれらに準ずる官職であって政令で定めるもの)への任用に関する基準その他の指針及び任命権者を異にする官職の任用に関する指針を追加する。

 A 任命権者は、管理職への任用の状況を内閣総理大臣に報告するとともに、内閣総理大臣は@の基準に照らして必要があると認める場合には、任命権者に対し、管理職への任用に関する運用の改善その他の必要な措置をとることを求めることができる。

 B 内閣総理大臣は、任命権者を異にする管理職への任用の円滑な実施に資するよう必要な調整を行う。

(4)幹部候補育成課程

 @ 各大臣その他の機関の長(各大臣等)は、幹部職員の候補となり得る管理職員としてその職責を担うにふさわしい能力及び経験を有する職員を育成するための課程(幹部候補育成課程)を設け、内閣総理大臣が定める基準に従い運用する。

 A 各大臣等は、幹部候補育成課程の運用の状況を内閣総理大臣に報告するとともに、内閣総理大臣は@の基準に照らして必要があると認める場合には、各大臣等に対し、幹部候補育成課程の運用の改善その他の必要な措置をとることを求めることができる。

 B 内閣総理大臣は、任命権者を異にする官職への課程対象者の任用の円滑な実施に資するよう必要な調整を行う。

(5)人事に関する情報の管理

 @ 内閣総理大臣は、内閣府、各省その他の機関に対し、当該機関の幹部職員、管理職員、幹部候補育成課程対象者その他これらに準ずる職員として政令で定める者の人事に関する情報の提供を求めることができる。

 A 内閣総理大臣は、@により提供された情報を適正に管理する。

(6)特殊性を有する幹部職等の特例

 ○ 人事院、検察庁、会計検査院、警察庁、外局として置かれる委員会その他の行政機関の幹部職等について、その職務の特殊性に配慮し、人事の一元管理に関する規定の適用除外その他所要の規定の整備を行う。

(7)公募

 ○ 採用昇任等基本方針に定めるべき事項に、職員の公募に関する指針を追加する。

(8)官民人材交流の推進

 ○ 国と民間企業との間の人事交流に関する法律の一部改正により、人事交流の対象となる法人の拡大、手続の簡素化及び透明性の向上のための所要の規定の整備を行う。

2、内閣人事局

(1)内閣人事局の設置

 ○ 内閣官房に内閣人事局を置く。

(2)内閣人事局の事務

 @ 内閣人事局は、国家公務員制度改革基本法第11条第1号に定める機能を担うとともに、これを実効的に発揮する観点から必要な範囲で、関係行政機関から機能を移管することとし、1、の幹部職員人事の一元管理等に関する事務のほか、下記の事務をつかさどるものとする。

  @ 国家公務員制度の企画・立案に関する事務、各行政機関の人事管理に関する方針及び計画の総合調整に関する事務

  A 任用(※1)、採用試験(※2)、及び研修(※3)に関する事務

 ※1 内閣人事局は、職員の任用に関する事務の運営に関し必要な事項を政令で定めることを所掌し、人事院は、公正な任用の確保を図るために必要な基準を所掌

 ※2 内閣人事局は、試験の種類及び試験を通じて確保すべき人材像の設定を所掌し、人事院は、試験の方法、科目、合格者決定方法等の設計、試験の問題作成・実施、人事院以外の試験機関の指定・管理等を所掌

 ※3 内閣人事局は、各府省が行う研修の総合的企画・調整、総合的企画に関連した人事院への協力要請、幹部候補育成課程対象者の研修を所掌し、人事院は、人事院が行う研修の計画・実施及び内閣人事局各府省の行う研修の監視を所掌

  B 人事評価、能率、厚生、服務及び退職管理に関する事務、退職手当制度及び特別職の国家公務員の給与制度に関する事務

  C 免職、給与、分限、懲戒等(人事院が引き続き所掌する事務)について、人事院規則の制定改廃に関し、必要がある場合、人事院にその旨要請すること

  D 指定職俸給表の適用を受ける職員の号俸の決定の方法並びに職務の級の定数の設定及び改定に関する事務

  E 国家公務員の総人件費の基本方針及び人件費予算の配分の方針の企画及び立案並びに調整に関する事務

  F 行政機関の機構及び定員に関する企画及び立案並びに調整、各行政機関の機構の新設、改正及び廃止並びに定員の設置、増減及び廃止に関する審査に関する事務  等

 A @A及びDの機能については、政令を定めるにあたって、あらかじめ人事院の意見を聴くこととするとともに、指定職俸給表の適用を受 ける職員の号俸の決定の方法並びに職務の級の定数の設定及び改定に関しては、人事院の意見を尊重するほか、研修についての報告要求や是正指示等に関する規 定の整備等の措置を講ずる。

 B 官民人材交流センター、再就職等監視委員会、退職手当審査会は、いずれも内閣府に置く。内閣総理大臣(内閣人事局)は、官民人材交流センターの運営に関する指針を定め、これを公表するものとする。

 C 国家公務員制度改革基本法に基づく国家公務員制度改革の推進は、内閣人事局が担う。

(3)内閣人事局の組織

 @ 内閣人事局に、内閣人事局長を置く。

 A 内閣人事局長は、内閣官房長官を助け、内閣人事局の事務を掌理するものとし、内閣総理大臣が内閣官房副長官の中から指名する者をもって充てる。

3、内閣総理大臣補佐官、大臣補佐官

 国家公務員制度改革基本法に定める国家戦略スタッフ及び政務スタッフに関する措置として、以下の措置を講ずる。

(1)内閣総理大臣補佐官

 @ 内閣総理大臣補佐官の所掌事務を、内閣総理大臣の命を受け、内閣の重要政策のうち特定のものに係る内閣総理大臣の行う企画立案に関し、内閣総理大臣を補佐することに改める。

 A 内閣総理大臣補佐官の定数、内閣総理大臣の申出により内閣が任免すること、俸給月額は事務次官級又は大臣政務官級とすること、特別職とすること、非常勤とすることができること、国会議員は内閣総理大臣補佐官を兼ねることができることについては、現行どおりとする。

(2)大臣補佐官

 @ 各府省に、特に必要がある場合には大臣補佐官を置くことができることとし、その定数は、以下のとおりとする。

  ・内閣府     6人以内

  ・復興庁及び各省 1人以内

 A 大臣補佐官の所掌事務は、大臣の命を受け、特定の政策に係る大臣の行う企画及び立案並びに政務に関し、大臣を補佐することとする。

 B 大臣補佐官は、その省の長である大臣(内閣府及び復興庁においては内閣総理大臣)の申出により内閣が任免することとし、俸給月額は 事務次官級又は大臣政務官級とし、特別職とし、非常勤とすることができることとし、国会議員は大臣補佐官を兼ねることができることとする。

4、施行期日等

 この法律は、公布の日から起算して6月を超えない範囲内において、政令で定める日から施行する。ただし、任免協議等に関する規定は、施 行日から起算して3月を超えない範囲内において政令で定める日までの間は、適用しないこととし、幹部候補育成課程に関する規定は、施行日から起算して3月 を経過する日から施行することとする。

以 上