「公務員制度改革」闘争ニュースNO.130【2013年6月27日】


内閣人事局設置など「公務員制度改革」の方針示す

= 労働基本権はいっさい言及なく、一方的な方針案提示に強く抗議 =


 すでに報道されているように、安倍内閣は、「公務員制度改革」の今後の方向について、6月中の公務員制度改革推進本部決定をねらっています。

 こうしたもと、全労連公務員制度改革闘争本部は27日、推進本部事務局との交渉をおこない、政府の検討状況について質しました。推進本部事務局は、「今 後の公務員制度改革について(案)」とする方針案を提示し、28日の推進本部決定をめざしていることを明らかにしました。

 その内容は、第1次安倍内閣が07年4月に閣議決定した「公務員制度改革について」にもとづき、「内閣人事局」の設置や幹部人事の一 元管理、国家戦略スタッフの配置などをねらうものとなっています。一方で、07年の閣議決定では検討課題にあげられていた労働基本権の回復は、まったく言 及されていません。

 交渉では、労働基本権を引き続き制約しながら、人事管理を強化することは断じて認められないとの態度を表明するとともに、労働条件にかかわる問題にもかかわらず、労働組合との話し合いもなく、一方的に推進本部決定をねらっていることに強く抗議しました。

8度のILO勧告など国際世論にどう応えるのか

 推進本部事務局との交渉には、全労連闘争本部から小田川本部長、黒田事務局長、岡部委員(国公労連書記長)、今谷委員(全教書記長)、自治労連から柴田副委員長が出席、推進事務局は、川淵幹児審議官、阿部充参事官ほかが対応しました。

 はじめに小田川本部長は、現時点での政府方針の内容、検討状況について質しました。これに対して川淵審議官は、「基本法で示された5年 間の推進本部の設置期限をむかえようとしているなか、現時点での改革の方向を指し示すべきだとして、5月には稲田公務員制度改革担当大臣から、今後1か月 をめどにして『全体像』を示すことが表明された。その後、政府・与党の調整の結果、『今後の公務員制度改革について(案)』(別掲)が取りまとめられた。 この方針案は、明日28日に推進本部を開催して、決定される見通しだ」とのべました。

 小田川本部長は、「方針案では、労働基本権問題にまったく言及がないことは断じて認められない。労働基本権は、基本法12条に検討が さだめられ、この間の公務員制度改革をめぐる最大の争点だった。また、ILOからは度重なる勧告が出されている国際世論にどう応えるのか。さらに、07年 の閣議決定では、労働基本権について検討するとしてきたが、その到達点さえも下回るものだ。政府にとって都合のいいものだけをつまみ食いしており、ご都合 主義の乱暴なやり方だ」と厳しく批判しました。そのうえで、「明日、本部決定するというならば、それなりの手続きがあるべきだ。本日までいっさい交渉もな く、単なる一方的な説明で終わらせようとしていることは断じて納得できない」と強く抗議しました。

国家公務員制度にかかわる当事者たる国公労連との協議を尽くせ

 岡部委員は、「公務員としての『誇り』や『使命感』を奪ったのは誰な のか。賃下げや宿舎廃止などを強行してきた政府ではないか」と厳しく抗議したうえで、労働基本権制約の「代償措置」として人事院が設定・改定している級別 定数が内閣人事局に託されることや、同様に人事院の所管である給与制度の見直しにまで言及していることなどの問題点を指摘し、「その他にも多くの重大な問 題点を持っており、とうてい納得できない。もし、今後、具体的な制度設計をおこなうならば、当事者たる国公労連との話し合いを尽くせ」とのべ、十分な交 渉・協議を求めました。

 柴田副委員長は、「政府による理不尽な地方自治体への賃下げの押しつけに対して、自治体では労使間での真剣な交渉が積み重ねられてい る。そうした状況もふまえて、労働基本権回復が検討されるべきだ。これまでの議論で積み上げられてきたものが、07年の閣議決定に逆戻りすることは認めら れない」とのべ、今谷委員は、「政権交代があっても、政府と闘争本部で議論をしてきた経過をどうふまえるのか。これまでの努力はどうなるのか。一握りの幹 部職員だけでなく、第一線で働く公務員・教職員が現場を支えていることを忘れるな」などと、交渉参加者からは厳しい追及がつづきました。

 これに対して川淵審議官は、「みなさんの意見は重く受けとめる。推進本部の設置期限は切れるが、基本法にもとづく公務員制度の実現 は、政府に課せられた責務だ。労働基本権問題など指摘の点をふくめて政府として検討していく責務がある。また、早急にやるべき課題だが、同時に丁寧にすす める必要がある。どこまで満足いただけるかわからないが、みなさんとの話し合いをいろんな形で積み上げていきたい」とのべました。

 小田川本部長は、明日の本部決定について再考を求めたうえで、「今後とも政府としての説明責任を果たしていただきたい」とのべ、交渉を閉じました。

以 上


【別添資料】

今後の公務員制度改革について (案)



国家公務員制度改革推進本部

1.改革の基本的方針

(1)改革の経緯

 国家公務員制度改革については、「公務員制度改革について」(平成19年4月24日閣議決定)に基づき、平成19年の改正国家公務員法 により新たな人事評価制度の導入等による能力・実績主義の人事管理の徹底と退職管理の適正化が先行的に措置されるとともに、平成20年の国家公務員制度改 革基本法(以下「基本法」という。)により、採用から退職までのパッケージとしての改革の内容と工程が定められたところである。

 政府としては、基本法に定められた工程に基づき、措置内容が異なる国家公務員制度改革関連法案を三度国会に提出したが、様々な議論が あって廃案となっている。このため、基本法に基づく改革としては、採用試験制度の見直しや国家公務員の雇用と年金の接続を図るための措置等が講じられてい るものの、これまで法律で措置しようとしてきた改革事項については実現していない。

(2)改革の必要性

 現在我が国に求められているのは、経済、外交、教育などの直面する様々な危機を突破し、強い日本を取り戻すことである。そのためには、課題の先送りや責任の回避は許されず、これらの危機に果敢に挑戦し続けていくことが必要である。

 このため、誤った政治主導を是正し、「政」と「官」の役割を明確にすることにより、相互の信頼の上に立った本当の意味での政治主導を確 立する必要がある。この真の政治主導の下、公務員が使命感と行政のプロとしての誇りを胸に、国家・国民のために積極的に行動できる、新しい公務員制度を創 ることが、今、求められている。

 公務員制度改革については、これまで政権が短期間で交替する中で繰り返し関連法案が廃案になる経緯をたどってきた。また、誤解に基づ く公務員批判や「政」と「官」の在り方を巡る混乱等により、自分が国家・国民のために貢献できているのかを実感できないという無力感が、特に若手職員の間 に広がり、優秀な公務員の確保が困難になっているとの指摘もある。

 こうした認識に立ったうえで、以下の点に重点を置きながら、今回の公務員制度改革を進めていく必要がある。

・ 安定した政権の下で、直面する様々な危機を突破し、強い日本を取り戻すため、長期的視点から腰を据えて諸課題に対処できる「政」と「官」の関係を築ける公務員制度とすること

・ 多様で優秀な人材が、国家公務員としての使命感や行政のプロとしての誇りを持って国家・国民のために行動できる体制を構築すること

・ 若者や女性にとって、国家公務員を志したいと思えるような魅力的な公務員制度を目指すこと

(3)改革の目的

 公務員に求められる基本的な資質や能力としては、まず、国民と国家の繁栄のために、高い気概、使命感、倫理観を持った、国民から信頼さ れる人物である必要がある。さらに、公務員には、幅広い知識・経験に裏打ちされた一層の企画立案能力、管理能力が求められる。また、精緻・複雑化する行政 課題に対応した深い専門的知識・経験を有するスペシャリストとしての能力も必要となる。

 今回の公務員制度改革は、(2)の視点に沿った改革を行うことにより、上記の資質や能力を持った多くの優秀な人材が公務の世界に入 り、様々な経験を通じて企画立案能力や管理能力を高め、スペシャリストとしての使命感や誇りを持って職務に専念することにより、国家・国民のためであれば どんなに厳しい壁に直面しても信念を貫いて行動する「闘う公務員」を創ることを目指すものである。

(4)改革の進め方

 2.の考え方に沿って早急かつ丁寧に検討を進め、秋に国会が開かれる場合には、国家公務員制度改革関連法案を提出するとともに、平成26年春に内閣人事局を設置することを目指す。

 その際、「公務員制度改革について」及び基本法に基づき、その後の政権交代を含めた公務員を取り巻く状況・環境の変化も踏まえながら、時代に応じた、実際に機能する新しい公務員制度を構築するものとする。

 また、国家公務員制度改革推進本部は本年7月に設置期限を迎えることとなるが、その後は、行政改革推進本部において、本決定の方針に則って法案の立案業務及び内閣人事局設置準備業務を推進することとする。

2.今後の国家公務員制度改革の考え方

 今後の国家公務員制度改革は、第一次安倍内閣において始めた国家公務員制度改革の延長線上に位置付けられるべきものである。

 平成19年第一次安倍内閣時の国家公務員法の改正により、退職管理の適正化と能力・実績主義の徹底が措置された。平成20年福田内閣時 に基本法が成立し、改革の内容と工程が決められた。そして、平成21年麻生内閣では、「国家公務員法等の一部を改正する法律案」(以下「法律案」とい う。)が閣議決定された。今後の国家公務員制度改革に当たっては、この「法律案」を基本とし、基本法の条文に即し、以下の各項目に関して機動的な運用が可 能な制度設計を行う。

(1)幹部人事の一元管理

(2)幹部候補育成課程

(3)内閣人事局の設置等

(4)国家戦略スタッフ、政務スタッフ

(5)その他の法制上の措置の取扱い

3.その他

(1)能力・実績主義の徹底

 真に頑張る者が報われるよう、人事評価制度の運用実態の把握・検証を行った上で、制度及び運用の改善及び向上を図るとともに、人事評価結果を給与・任用等の処遇に反映させることを徹底する。また、女性の積極的な登用を進める。

(2)組織の活性化

 雇用と年金の接続を図る中で、公務員が意欲とやりがいを持って職務に取り組むことができるよう組織の活性化を進める。

具体的には、新たに設けられた早期退職募集制度の活用等による新陳代謝の促進、行政の複雑・高度化に対応した多様な人材の確保、公務経験の内外での活用等によるキャリアパスの多様化、能力・実績の給与への一層の反映及び給与カーブの見直しに取り組む。

以 上