「公務員制度改革」闘争ニュースNO.127【2012年11月15日】


地方公務員制度改革関連法案を国会提出

= 審議入りの見通しもなく、衆議院解散とともに廃案へ =


 地方公務員制度改革をめぐって、全労連公務員制度改革闘争本部は15日、総務省と交渉し、法案策定の状況をただしました。総務省側は、関連法案を閣議決定し、今の臨時国会に提出することを表明しました。

 これに対して、闘争本部は、ILO勧告をふまえつつ、地方自治を基本原則にした上からの押しつけにならない制度とすることや、闘争本部との協議の不十分さなどをあらためて指摘しました。

 野田内閣は、地方公務員制度改革関連法案を15日夜の持ち回り閣議で決定し、ただちに国会提出しました。16日に衆議院の解散がひかえるもとで、廃案は確定的です。総選挙での民主党への支持拡大をねらい、党利党略にもとづく法案提出であることは明らかです。公務労働者の労働基本権を政治的に利用する民主党政権は重大です。

衆議院の解散間際の拙速な閣議決定には反対する

 総務省との交渉には、全労連公務員制度改革闘争本部から、小田川本部長、黒田事務局長、今谷(全教書記長)・岡部(国公労連書記長)の各闘争委員、自治労連から山口毅副委員長が参加しました。総務省側は、自治行政局公務員部の三輪部長、前(すすめ)理事官ほかが対応しました。

 はじめに三輪公務員部長は、以下の通り現状について報告しました。

 ● 協約締結権回復をふくむ地方公務員制度改革にかかわる法案化については、昨年から議論してきたところだ。みなさんとも節目節目で意見交換してきた。

 ● 先の通常国会で関連法案を提出するため準備をしてきたが、地方団体の反対意見もあり、提出ができなかった。

 ● 公務員制度改革にかかわっては、国家公務員の関連法案の提出から約1年半が経過するもとで、何とか今臨時国会に提出したいと努力してきた。そのために、ぎりぎりの調整をしている最中だ。法案は、すでに示してきた「素案」を基本にしたものを考えている。

 これに対して、小田川本部長は、「法案の閣議決定直前と受けとめる。全労連としての基本的な意見はすでに昨年9月に明らかにし、『素案』の不十分さも今年6月に提出した意見書に示した通りだ」とし、そのことを前提に以下の点をあらためて指摘しました。

 ○ 国家公務員制度の横引き、上からの押しつけの制度であってはならず、特に、団体交渉の範囲と労働条件の決定原則、団体協約の効力、労働組合の認証制度などは、地方自治体における労使関係の現状からしても、過剰な国の介入だ。憲法とのかかわりでも、ILOからの数次の勧告に照らしても、提出しようとしている法案の不十分さ明らかだ。

 ○ 消防職員について、「素案」では団結権・協約締結権の「付与」が明記されていたにもかかわらず、法案では、団結権だけにとどめている。業務の違いはあったとしても、他の自治体労働者と区分して取り扱う特別の労働者性は見出せない。ILO勧告をふまえた制度設計をすべきことを強く指摘する。

 ○ 労働基本権問題は労働者の労働条件決定システムそのものにかかわることから、当事者間に十分な理解を得る協議が必要だ。その点から、この間の全労連闘争本部との協議の不充分さは不満であり、抗議の意思を示すものだ。

 ○ 16日に衆議院が解散される。閣議決定されて提出された法案が国会審議される状況にない。そうした状況で、地方公務員の労働基本権問題まで政治的争点にする動きには懸念する。今の段階で拙速に閣議決定することには反対である。

 また、今谷闘争委員は、「地方三団体などへの配慮は感じるが、労働組合の意見をもっと十分に聞くべきだ。出発点であり、政府としてより良い制度をめざす努力が求められる」とのべ、山口自治労連副委員長は、「労働組合の認証制度は、小さな労働組合は認証を受けるのは難しい。国と地方の違いがあり、労働組合と当局のあり方は引き続き検討を求める」とのべました。

消防職員は団結権のみ認めるとの内容に後退

 三輪公務員部長は、「国家公務員と違う制度であるべきことは十分に認識している。一方で、国との整合性は必要だ。その点は、公務員制度改革基本法でも定められている。そのことをふまえて、具体的な制度設計が求められる。消防職員は、地方団体からは、団結権だけでも反発が強く、まずは第一歩ということで法案では団結権のみとした」とのべ、また、法案提出までにいたる経過については、「十分か不十分かは意見は分かれるが、いろいろな形で意見をうかがってきたつもりだ。拙速な閣議決定には反対との意見をいただいたが、昨年、国家公務員の関連法案が提出されており、いつまでも放置できない。国会での議論がどうなるかは未定だが、政府としての責任は果たしたいと考えている」と回答しました。

 最後に小田川本部長は、「公務員の労働基本権問題は、国民的合意が不可欠だが、それは自然に形成されるものではない。特に、この間でも反対意見が強かったと言われる自治体首長に対する総務省としての説明責任の発揮はあらためて求めておきたい」とのべ、交渉を閉じました。

以 上