「公務員制度改革」闘争ニュースNO.124【2012年10月15日】
有識者会議が全国市長会からヒアリング
= 地方公務員の協約締結権、消防職員の団結権回復に後ろ向き =
協約締結権等の回復にむけた「地方公務員の自律的労使関係制度に関する会議」(以下、有識者会議)が、引き続き総務省で開催されています。
10月12日の第5回会議では、全国市長会からのヒアリングがおこなわれましたが、全国知事会・全国町村会と同様に、協約締結権回復に否定的な立場からの意見がのべられ、拙速な検討に反対しました。
有識者会議は、労働組合・地方三団体等からのヒアリングを終え、今後、論点を整理したうえ、議論をすすめることとなっています。
「ものさし」としての勧告制度の存続を強く主張する市長会
有識者会議には、渡辺章氏(座長・労委協会理事長)、下井康史(筑波大学大学院教授)、平勝典(元郵政省東北郵政局長)、西村美香(成蹊大学教授)、長谷川真一(日本ILO協議会理事)の各委員が出席し、ヒアリングでは、南佳策天理市長(全国市長会行政委員会委員長・地方公務員制度改革検討委員会委員長)から意見聴取しました。
南市長は、「なぜ今、新たな労使関係制度に移行する必要があるのか」とのべ、「地方公務員の実情や特性、住民サービスへの影響等を十分ふまえて検討することが必要」「協約締結権の付与は国民・住民の意識と大きなかい離がある」などと主張しました。そのうえで、労働基本権を付与した場合の交渉の長期化、コストの増大などに懸念を表明し、拙速な検討に反対しました。
有識者委員からは、複数の労働組合があるところの交渉や妥結の状況、組織率の違いが労使交渉に影響を与えるのかどうか、市町村合併の際の勤務条件の調整など、現場の実態についての質問が相次ぎました。
これらに対し、南市長は、「天理市には4つの組合があり、個々に交渉を行っているが、組合同士の意思疎通がはかられているので、大きな問題は抱えていない」と答えました。
引き続いて、委員からは、「労使関係制度が安定しているならば、協約締結権を付与しても今とさほど変わらないのではないのか」「人件費の削減を推し進めてきたというが、職場の雰囲気は悪くないのか、職員との信頼関係はあるのか」「全国消防職員協議会の場が活用されているなら、団結権や協約締結権を付与しても、そんなに変わらないのではないか。考えているような懸念の中身がよくわからない」などの発言がありました。
これに対して、南市長は逆に、「今なぜ勧告制度をなくそうとするのか、そのことこそ疑問だ。正直、今のままでいいのではないかという思いがある」と反論し、「公務員の給与が適正かどうかについては、市町村にはものさしがなく、勧告が唯一のよりどころだ。消防職員は他の職種とは違う。入職したら、ずっと同じ職場で、消防団など地域でのつながりも大きい」と答えました。
渡辺座長は、「勧告制度の定着にかかわる評価はわかるが、それは天井を決めていることでもある。他方、引き下げる場合、職員の生活への影響も考えねばならず、労働組合との交渉・協議が必要だ。その際、引き下げの理由、資料の提示などが必要となるが、それをコスト面だけの負のイメージと決めつけていないか。適正な手続き、プロセスをつくっていく努力が必要ではないだろうか」として、あらためて見解を求めました。
しかし、南市長は、「その前に、なぜ、人勧制度を改めるのか知りたい」と答えるだけで、堂々めぐりでした。
「論点のポイント」にもとづき今後も議論を継続することを確認
ヒアリング終了後は、前回の会議で示された「論点のポイント」(別掲)もふまえて、公務における労働組合の役割、協約締結権を付与した場合の懸念に対する考え方等にかかわって議論されました。
各委員からは、「全国市長会などの地方の不安はよくわかる」「十分時間をかけて、国と地方が話し合う必要がある」「議会の存在が民間と決定的に違う」「労使間の緊張関係は必要だ」「短期的な見方でコストが今より増えるからダメだ、というのはいかがか」「労使双方、一歩踏み出す努力が必要」などの意見が出されました。
最後に、座長が論点について補足の意見等があれば事務局へ出すことを伝えて、会議は終了しました。
論点のポイント
1、協約締結権を付与する意義
2、協約締結権付与の便益・費用
3、公務における労働組合の役割
4、協約締結権を付与した場合の懸念に対する考え方
5、消防職員への団結権・協約締結権付与の目的
6、消防職員に団結権・協約締結権を付与する場合の懸念に対する考え方
以 上