「公務員制度改革」闘争ニュースNO.110【2011年4月4日 】


推進本部が5日に「全体像」を決定

= 推進本部事務局長と交渉し、かさねて問題点を指摘 =


 全労連公務員制度改革闘争本部は4日、公務員制度改革の「全体像(案)」をめぐって、国家公務員制度改革推進本部事務局と交渉しました。

 交渉では、藤巻事務局長から、翌5日に推進本部が開かれ、「全体像」を決定することが明らかにされるもと、自律的労使関係制度にかかわって、この間の交渉でも明らかになった問題点を追及し、あらためて見解をただしました。

大震災をふまえて、「効率化」強調の公務員制度改革でいいのか

 推進本部事務局との交渉には、闘争本部からは、小田川本部長を先頭に、黒田事務局長、猿橋(自治労連書記長)、今谷(全教書記長)、瀬谷(国公労連中執)の各闘争委員が参加しました。推進事務局側は、藤巻事務局長、村山参事官ほかが対応しました。

 はじめに、小田川本部長は、要旨、以下の点を主張しました。

 ○ 未曾有の災害となった東日本大震災は、緊急事態に対応ができない体制の不十分さや、安全対策や危機管理をおざなりにしてきた公務の現状を反映している。その点では、公務員制度改革の理念として「効率化」が強調され、一方で、憲法15条にもとづく公務員制度の実現という立場が軽視されていることを懸念する。

 ○ 震災発生後、今でも被災地での混乱がつづいており、復旧のために政府をあげての取り組みが求められているこの時点に、あえて「全体像」を本部決定することには違和感を持つ。加えて、この間、多くの意見をのべてきたにもかかわらず、その点が依然として反映されないことは不満だ。したがって、引き続く協議を求めたい。

 ○ 協約締結権回復による自律的労使関係が提示されたことは、10年以上におよぶ議論の到達点であり、努力の結果として受けとめたいが、今日の段階でも、再検討すべき点を4点にわたり指摘をしておきたい。

 1つは、協約締結できる労働組合を、中労委の認証を受けたものに限定することは、団結権、団体交渉権を侵害する恐れがあり、反対だ。2つは、内閣による事前承認は、交渉を尽くす前から結論ありきにならないか懸念する。事前承認とかかわって、不当労働行為が生じることも考えられる。3つは、不当労働行為の救済について、使用者たる各府省が救済命令に従わない場合は裁判に訴えるしか手段がないが、その場合に長期化が予想される。長年にわたり組合差別が是正されない現状もふまえた制度設計となっていないことは不満だ。4つには、仲裁システムにかかわって、内閣総理大臣の申請による仲裁の開始は事実上の強制仲裁となるが、交渉による問題解決を基本とする労使関係構築には不要な制度だ。

 ○ 今後、法案策定作業が本格化するもとで、労働条件の決定を法律・政令・省令などに振り分ける作業は重要だ。広範にわたることからも、「実務家会議」を全労連との間に設けて議論していくことを提案したい。また、地方公務員の自律的労使関係制度は、総務省で検討されるものと理解しているが、全労連との協議をつくすよう主務官庁に強く働きかけるよう求める。裁判所職員・国会職員などの特別職の労働基本権はどう取り扱うのか。

 ○ 実質的に制度を具体化する段階にはいるもと、法案策定段階の協議は、合意をめざす構えでの対応をあらためて強く求める。

労働組合と意見交換して国会に法案を提出する

 藤巻局長は、「全体像(案)」提示後に修正・追加した部分を説明しつつ、「この間の交渉を通して、みなさんからは重要な意見をうかがってきた。基本法に規定された法制上の措置期限がせまるなか、政府としては、明日5日の国家公務員制度改革推進本部で全体像を決定し、法案の策定作業に入りたい」とのべたうえ、以下の点について触れました。

 ● 今般の公務員制度改革の一義的な目的は、時代の変化に対応して、国民のニーズに合致した効率的で質の高い行政サービスを実現し、公務員が存分に能力を発揮できる環境をつくることであると考えている。

 ● この間指摘いただいてきた人事の公正性の確保については、透明性の高い労使交渉を通じて勤務条件を決定する枠組づくりが重要であり、同時に、独自の規則制定権を有する人事公正委員会が、苦情処理など職員に係る人事行政の公正の確保に関する事務を総合的に担う体制を整備することとなっている。人事公正委員会は、法令の制定改廃に関する意見の申し出や、人事行政の改善に関する勧告ができることを国家公務員法に明記する。

 ● 内閣の承認は、大枠の地ならしでもあり、協約締結の前に必要と考えている。労使交渉をスムーズにすすめるとともに、交渉の結果に政府全体として異論が出ないようにすべきである。今後、法案化にあたってさらに意見をいただきたい。特別職の扱いは、まず一般職について基盤を固めたうえで、関係方面と相談しながらすすめることとなる。

 ● その他、争議権の取り扱いや地方公務員の労働基本権の取り扱い、幹部人事一元管理のあり方、雇用と年金の接続に関する検討のあり方等については、累次ご説明したように、全体像(案)にあるとおりに考えている。

 ● この全体像が国家公務員制度改革推進本部において決定されれば、その内容に沿ってできる限り速やかに法案の策定をすすめ、その過程で、残された論点についてみなさんと意見交換を重ねつつ、今通常国会に所要の法案を提出する考えである。よろしくご理解をお願いしたい。

法案づくりにあたっては合意をめざす作業が必要

 これに対して、猿橋闘争委員は「国家公務員と異なり、地方公務員は自治体ごとに幅広い労使関係を持つ実態がある。協約締結権が回復されたもとでも、さまざまな制約がかかれば、現状の労使関係の枠を狭めかねないと危惧する。たとえば、今回の震災に対しても、職員派遣の問題などは、労使間で話し合いながらやっているが、決して当局命令だけではうまくいかない。こうした労使関係を制約することのないよう、今後の制度の具体化のなかで検討を深めるべきだ」とのべ、今谷闘争委員は、「管理運営事項は交渉できないとしているが、労働条件にかかわるものは交渉できることをきちんと明記すべきだ。また、内閣の事前承認は、どの段階で承認するかが重要となる。その点での考えはあるのか」とただしました。

 瀬谷闘争委員は、「人事の公正性の確保は重要だ。仕組みとしては理解できるが、実質的に公正さが保たれるように追求せよ。その他、全体像にかかわって、幹部人事の弾力化をはじめとして引き続き協議を求める。内閣による事前承認は、自律的な労使関係を阻害しかねない。労使間で協議を尽くし、合意を見出すやり方を考えるべきだ」などと指摘しました。

 これに対して、藤巻事務局長は、「管理運営事項の扱いは、ご指摘の通りで判断が難しいところがある。使用者として、できることとできないことがあることも事実だ。内閣の事前承認のタイミングは、今後の検討課題となる。いずれにしても、最後は、国民の目にどう映るのかということとなる。他の問題もふくめて、法案策定にむけてなお時間をかけてご意見をいただきたい」とのべました。

 最後に小田川本部長は、「今後、実質的に自律的労使関係制度をどのようにつくり出していくかが問題だ。そのためにも、多岐にわたっている法案・政令・省令などの振り分けについて考え方の整理が必要だ。その点がポイントであることも一致しているのではないか。交渉だけでなく、検討の仕組みづくりについても提案させてもらった。法案化していく段階で合意をめざす作業に努力するようあらためて求めておく」とのべました。

 これに対して、藤巻局長が「うけたまわった」と回答したことをうけ、交渉を閉じました。

以 上