「公務員制度改革」闘争ニュースNO.106【2011年2月21日 】


第三者機関として新たに「人事公正委員会」を設置

= 「改革素案」をめぐって推進事務局と協議(最終) =


 全労連公務員制度改革闘争本部は、この間、「自律的労使関係に関わる制度素案」をめぐって公務員制度改革推進本部事務局と協議を続けてきました。
 その内容は、すでに3回にわたって「闘争ニュース」で報告してきたところですが、最後に「第三者機関」をめぐるやりとりの部分について報告します。

人事院は廃止し、公務員庁が採用試験・研修などを担当

(人事行政の公正確保のための第三者機関)

 ※以下、○が全労連闘争本部側、●が推進本部事務局側

 ○ 「改革素案」に示されている「人事行政の公正確保のための第三者機関」はどのようなものか、内閣府の組織となるのか。

 ● 職員に関する人事行政の公正の確保に関する事務を集約し、独立性の高い第三者機関として「人事公正委員会」(仮称)の設置について、国家公務員法に 規定することとしたい。委員会は、国家公務員法および内閣府設置法の規定にもとづいて、内閣総理大臣の所轄のもとに置かれる機関となる。

   人事公正委員会は、委員長および委員で構成し、これらの者は国会の同意人事となり、委員長を民間人がつとめることもありうる。委員会の役割としては、次のようなものが考えられる。

   1) 行政措置要求、不利益処分に対する不服申立、その他、職員の苦情処理

   2) 職員の政治的行為の制限、営利企業への従事の制限

   3) 官民交流の基準の設定

   4) 再就職監視・適正化委員会の事務

   5) 国家公務員倫理審査会の事務

   6) 人事行政の改善に関する勧告

   7) その他、法律にもとづき人事公正委員会に託された事務

 ○ 人事院は廃止することを考えているようだが、人事公正委員会だけで人事行政の公正の確保が担保できるのか。人事院は、設置当時から 制度上、政府から独立し、政治的な中立性を保ってきた。これに代わって設置される第三者機関が、政府機関であることは政治的中立性にかかわって問題があ る。

 ● 内閣総理大臣の所轄のもとに置かれ、独立性の高い機関だ。48年に人事院が設置される以前にあった人事委員会も、内閣総理大臣のもとに置かれた合議制の機関だ。

 ○ 独立性があっても、政治的中立性は確保できるのか。政府から独立したうえ、政治的に中立な機関であるからこそ、職員の苦情処理等にあたって公正な判断も可能となるのではないか。

 ● 権利が制約されていなかった48年以前には同じ制度があり、職員の利益を保護していた。これからは、人事院に代わって人事公正委員会が職員の利益を保護することとなる。

 ○ 採用試験、研修等の実施、内外の人事制度の調査研究といった人事院がおこなっていた役割はどこが受け持つこととなるのか。

 ● 公務員庁が受け持つこととなる。

 ○ 人事院の地方機関はどうなるのか、たとえば、人事院地方事務局を公務員庁の地方機関に改組して、採用試験や調査などをする機関として存続させるのか。

 ● 公務員庁の地方支分部局として、新たに「管区国家公務員局」(仮称)を設置することとなり、採用試験、研修に関する事務をおこなう。人事公正委員会の地方組織についても検討課題だ。

 ○ 人事公正委員会から各省への改善勧告の制度は考えているのか。たとえば、社会保険庁による職員の大量の分限免職などの強行に際し て、人事行政の公正性の確保、職員の利益擁護の観点からきちんとものが言える組織にすべきだ。強制力のある勧告を各省大臣におこなえる制度をつくるべき だ。

 ● 現行の人事行政改善勧告の規定(国公法22条)などもふまえ、そうした制度は考えている。

 ○ 「政治的行為の制限」の内容はどのようなものを考えているのか。

 ● 現行通りだ。国家公務員法で政治的行為を禁止し、人事公正委員会の規則でその内容をさだめることとなる。

 ○ 人事院規則の改正を求めて人事院と交渉しているように、人事公正委員会がさだめる規則をめぐって、労働組合が交渉できるのか。または、請願権にもとづいて労働組合が改善を申し入れる制度はあり得るのか。

 ● 「団体交渉」の事項とはならない。請願の件は推進本部事務局として結論的な話を申し上げる訳にはいかないが、可能性としてはあり得るのではないか。

中央労働委員会の委員の増員など体制強化をはかるべき

(調整システムを受け持つ第三者機関)

 ○ 中央労働委員会の役割を整理すると、@労働組合の認証、A不当労働行為の救済、Bあっせん・調停・仲裁、C「管理職等」の範囲の決 定などとなる。これらの役割に対応して、今回の制度設計では、国家公務員の調整システムの部署を中労委に新たに設けるのか、少なくとも委員の増員は不可欠 だ。

 ● 委員の数は、公益・使用者・労働者で同数と決められており、それぞれを数名程度増員する必要があると考える。新たな部署の設置は 考えていないが、事務局の補強は必要ではないか。いずれにしても、中央労働委員会の実務をふまえて、厚生労働省とも連携をとりながら検討することとなる。

 ○ 中央労働委員会の地方機関(地方調整委員・地方事務所)で、国家公務員の労働組合の地方組織の認証などは可能なのか。地方事務所の増員をはじめ体制を強化すべき。

 ● 現在、人事院の地方事務局が職員団体の登録関係の業務を受け持っている。認証制度に変われば、その関係の業務が中央労働委員会の地方事務所が担当す ることとなる。その関係での増員が必要であると考える。あっせん・調停・仲裁は、中央でやることとなり、地方事務所は事実関係の調査などを手伝う位置づけ である。

 ○ 協約の内閣による事前承認と中労委の調整システムとの関係について、中労委の裁定まで事前に承認するわけにはいかないが、裁定が出されれば内閣が尊重する義務があるという規定を設けるべきだ。

 ● 中労委の裁定の尊重義務は、特労法(特定独立行政法人等の労働関係に関する法律)と基本的に同じ方向で検討されるものと考える。裁定は尊重されるべきであり、使用者として実現にむけて努力するのは当然であると考える。

(参考)特労法第35条

 特定独立行政法人等とその職員との間に発生した紛争に係る委員会の裁定に対しては、当事者は、双方とも最終的決定としてこれに服従しなければならない。

2 政府は、特定独立行政法人がその職員との間に発生した紛争に係る委員会の裁定を実施した結果、その事務及び事業の実施に著しい支障が生ずることのないように、できる限り努力しなければならない。

政治の支配を受けない独立した第三者機関が必要

 素案では、労使間の紛争解決のための第三者機関と、公務員の人事行政の公正の確保のための第三者機関を設置するとしています。前者を現在の中央労働委員会が受け持ち、後者は、新たな機関として「人事公正委員会」(仮称)の設置が検討されています。

 いずれも、労使双方から中立であることはもちろん、公務員が政治の支配からのがれ、「全体の奉仕者」として仕事するうえで、とりわけ、「人事公正委員会」は、政治的にも中立であることが不可欠です。

 人事院は廃止する方向が示されていますが、人事行政の公正確保のうえで人事院が果たしてきた役割を、新たな労使関係制度のもとでも維 持・強化させていく必要があります。また、ストライキ権を引き続き制約するとなれば、労使の間に立つ第三者機関は、権利制約をふまえて労働組合を保護する 立場に立たせる必要があります。中央労働委員会がその第三者機関になるならば、中央労働委員の増員はもとより、地方事務所をふくめた体制強化も検討課題と なります。

以 上