「公務員制度改革」闘争ニュースNO.【2011年2月18日】
「団体協約の効力発揮」などで推進本部事務局と協議
= 内閣による協約の事前承認などは引き続く追及課題に =
協約締結権回復にむけた「自律的労使関係制度に関する改革素案」をめぐって、全労連闘争本部と公務員制度改革推進本部事務局との協議がつづけられています。
今回は、労使間で締結された協約をどのように法律や政令で実現していくのかを中心にして、推進事務局の見解をただしました。
「内閣の事前承認」は団体交渉の手足をしばる
(内閣の協約実施義務)
● 団体協約は書面で作成し、労働組合・使用者の両当事者が署名し、または記名押印することによってその効力を生ずることとする。
団体協約の有効期間は3年以内とする。また、有効期間の定めのない団体協約は、相手方に予告して解約することができる。その予告は、少なくとも90日前にしなければならないこととする。以上の内容については、基本的に労働組合法と同じ枠組みである。
協約締結によって法律の制定改廃を要する事項については、団体協約の締結の前に内閣の承認をえて、当該事項に係る事務を所掌する主任の大臣が、速やかに必要な法案を国会に提出しなければならない。政令の制定改廃を要する事項も、同様に、団体協約の前に内閣の承認を必要とする制度を考えている。
○ 改革素案の「たたき台」が示されたときから、「内閣の事前承認」が自由な団体交渉を制約しかねないという問題点を強く指摘してきたところだ。中央交渉における使用者代表は公務員庁長官となるのか、公務員庁長官は大臣を想定しているのか、使用者代表が内閣の一員であれば、分担管理原則によって、事前承認などなくとも、団体協約に係る法案を国会提出できるはずだ。
● まず、公務員庁の設置の形態について、公務員庁は内閣府の外局としたいと考えている。実質的に公務員庁の事務を担当する大臣は、現在の金融庁等のような特命担当大臣方式と、かつての防衛庁のような大臣庁方式があり、方針は未決定ではあるが、事務的には前者にあたると考えており、公務員庁長官は一般職にする方向である。公務員庁所管の法律案や政令案を閣議に提案するのは内閣総理大臣である。したがって、協約を締結できる者は、あくまで使用者たる内閣総理大臣をはじめ当該事項を所掌する主任の大臣であり、たとえば給与法の改定であれば内閣総理大臣となる。
○ 労働組合との団体交渉の段階では、公務員庁長官が交渉相手となるのではないのか。その点で、たとえば公務員庁長官と労働組合との間で合意された事項が、法律や政令になる段階で、内閣の事前承認を受けなければならないとなれば、公務員庁長官は、責任ある交渉当事者とは言えないのではないか。
● 協約にもとづき法律・政令を定める場合において、交渉過程で公務員庁の事務方から長官、担当大臣と積み上げ型の交渉がおこなわれることになると思うが、法律上の当事者能力を持つのは主任の大臣たる内閣総理大臣だ。集合体である内閣が、主任の大臣が締結した協約の実施に義務を負うこと自体が新しい枠組みであり、それを円滑かつ確実にすすめるために内閣の事前承認を設けることとした。日本の法体系上、こうした仕組みが必要だと判断したものだ。
○ 労使間で協約締結寸前までにいたった事項が、内閣の事前承認をえられないという事態に陥った場合は、使用者としてどう対応するのか。閣議で相談してみたら、承認が得られなかったと言って、初めから交渉をやり直すとでも言うのか。
○ 「内閣の事前承認」を前提とした団体交渉となれば、そのことが交渉への圧力となる。それで、自律的労使関係などと言えるのか。たとえば、公務員の労働条件改善という面よりも、財務大臣の顔色を気にしながら賃金交渉するということになれば、当局の使用者責任が本当に果たせるのか。団体交渉の手足をしばる点で、「内閣の事前承認」はきわめて問題が多い。
● 繰り返しになるが、集合体である内閣が、主任の大臣を一方の当事者とする団体協約実施に責任を持つために、どうしても事前の承認は欠かせない仕組みだと考えている。労使間で約束したことを法律案や政令の閣議決定の段階で反故にすることもできない。
○ なぜ内閣による事前の承認にこだわるのか。法定化が必要な事項は、国会の決議が必要となる。国会で否決または廃案になれば、締結された団体協約はその時点で失効することとなる。最終的に国会が判断する以上、労使間の団体交渉によって協定を締結し、その内容を内閣に報告したのち、閣議で承諾を受ければいいだけではないのか。それが、本来の労使関係のあるべき姿だ。
● そうした指摘をいただいたことについて、持ち帰って検討はしてみるが、制度の確実な運営を担保するうえで、事前の承認は不可欠であると考える。この方針を変えることは難しい。
○ 「内閣の事前承認」は、使用者以外の承認が必要となり、労使関係をはなれたところで決定されていくこととなる。これでは、「自律的労使関係」とは言えなくなる。そうしたことを理由にして、協約締結を使用者が拒む理由となる恐れがあることからも認められない。その点は重ねて申し上げておく。
権利が保障されない職員への「代償措置」を検討すべき
(協約締結権が保障されない職員の勤務条件決定方法)
● 警察職員、海上保安庁職員、刑事施設に勤務する職員の勤務条件は、職務の特殊性と協約締結権を付与する職員の勤務条件との均衡を考慮して定めることを国家公務員法で規定したい。「職務の特殊性」への配慮としては、たとえば、特殊勤務手当、特別公務災害に係る災害補償法上の加算、船舶に乗り込む職員の勤務時間などがこれにあたる。「均衡」としては、現行でも、たとえば公安職俸給表は、行(一)との均衡を考慮して改定されている。
○ 協約締結権が保障されない職員の労働条件は、だれが、どのような方法、タイミングで決めていくのか。たとえば、労働組合との協約が締結された時点で決めるのか、団体交渉が進行中の時なのか、それとも、そうしたこととは無関係に決めるのか。
● 政府全体が法律や政令によって決める。決定の時期は、これから団体交渉の時期などの枠組みを検討していくなかで決まっていくものではないか。
○ ワーキンググループで議論があったように、協約締結権が保障されない職員の勤務条件決定は、適切な代償措置が必要であり、第三者機関の関与を規定するべきだ。素案でも中立性・公正性を担保する第三者機関は別途必要としていることから、その機関に代償措置としての役割を持たせることができるのではないか。
● これらの職員のためだけに勧告制度のようなものをつくるのは、現実問題として難しい。代償措置という点では、最初に申し上げたような決定原則を法定することに加え、新たな第三者機関に対する行政措置要求がそれにあたるものと考える。
○ かたや、人事院勧告制度がなくなり、協約締結権が保障される職員がいて、もう一方では、勧告制度もなく、協約締結権もない職員が存在することになる。その間の「均衡」をとるだけでいいのか。人事院勧告制度がなくなれば、「代償措置」の効力は薄められるということにはならないか。
● 今でも均衡を考慮しているが、今後は協約締結した内容との均衡をとることになるのではないか。代償措置が薄められるという意見は議論として受けとめるが、協約締結を付与する職員とのバランスはきちんととる。
○ 行政措置要求が「代償措置」になると言うが、それは事後の措置にすぎない。事前に第三者機関からの意見を聴取するなどの仕組みが必要だ。
● 意見はうかがっておく。
○ WGで議論された「職員代表からの意見聴取」は必要ではないのか、最終報告をふまえて推進本部事務局でどのような検討がされてきたのか。
● これらの職員は、上命下服の指揮命令系統のもとで勤務しており、したがって、立法政策として団結権も制限されているというのが従前からの政府見解だ。職員代表からの意見表明は、この考えと両立しがたいものではないか。
○ 団結権を制約してもいいという考え方は承服しがたい。度重なるILO勧告でも刑事施設職員の団結権保障を求めている。まず、権利を保障することから出発し、その視点から代償措置のあり方が検討されるべきだ。「均衡」だけでは代償措置たり得ない。
法律・政令・規則の振り分けは団体交渉で決めるべき
(法律・政令等の対象事項、各省における協約の実現)
● 政府全体で統一的に定めるべき勤務条件は、一般職の職員の給与に関する法律、一般職の勤務時間、休暇等に関する法律等の法令で定めることとする。なお、関係法令において、法律で規定すべき事項と制令以下で規定すべき事項との切り分けについては、引き続き検討していきたい。
○ 法律にするか政令にするか、または、規則にするのかの振り分けは、団体交渉事項であるべきだ。
● 今後の検討課題だが、難しい検討になると思う。
○ 現行の人事院規則のすべてが政令事項となるのか。
● 公務員倫理、政治的中立性、官民交流などは第三者委員会が独自に制定する規則にする必要があるし、また、現在、人事院規則で創設的に規定している内容を法律でさだめる必要があるものも存在する。あとは、政令で定める事項が多いが、府令事項もあると思う。
○ 各省各庁における労使間の交渉ルールは、各省各庁および下部機関で協約締結できる事項なのか。
● 府省内に共通して適用される事項は、内閣総理大臣、各省大臣、各省各庁の長、個別の労使関係に関する事項は、団体交渉の申し入れに応ずべき地位に立つ職員(たとえば事務所長など)が協約を締結できる者となる。
○ 地方出先機関の支所・出張所レベルの管理者には、現行でも権限がほとんどない。「管理職員等」にふくめるべきではなく、一般職員の労働組合に加入することができるようにすべきだ。
● 権限を持つか持たないかと、「管理職員等」にふくめるのかどうかは別の問題だ。「管理職員等」でも、管理職だけの労働組合を結成できる。そのことは民間法制と同じだし、現在の職員団体制度の運用とも異なるものではない。
○ 少なくとも、管理職でもない職員が「管理職員等」となっていることは、自律的労使関係の確立にあたって、あらためられるべき課題だと考える。
● 意見はうかがった。
「自律的労使関係」にふさわしい自由な労使交渉を求める
協約締結の内容を労働条件に反映させていくとき、法律や政令の制定・改廃が必要な場合に、協約締結から法律改正等までの手続きをどうするのかは、労使関係制度検討委員会や同ワーキンググループでも議論されてきたところです。
しかし、同検討委員会の最終報告を見ても、「内閣の事前承認」にかかわる指摘は見あたりません。このやり方は、今回のやりとりのなかでも明らかにされたように、協約締結をすみやかにすすめたいとする政府の意向がはたらいて検討されてきたものと言えます。
全労連闘争本部が指摘してきたように、こうした「事前承認」が、自由な労使交渉を制約しかねないという問題を持っており、今後とも追及が必要です。
その他、協約締結権を保障されない職員に対する「代償措置」をどうしていくのか、第三者機関のあり方ともかかわって、さらに検討を深めていくべき課題となっています。
以 上