「公務員制度改革」闘争ニュースNO.104【2011年2月17日】


「団体交渉の手続き」「調整システム」などで協議

= 「自律的労使関係に関する改革素案」で推進事務局に見解をただす =


 協約締結権回復にむけた「自律的労使関係制度に関する改革素案」をめぐる公務員制度改革推進本部事務局との協議について、今回は、「団体交渉の手続き」「在籍専従制度」「勤務条件の決定原則」「不当労働行為制度」「調整システム」にかかわるやりとりを報告します。

交渉概要と協約内容はインターネット等で公開

(団体交渉の手続きについて)

 ○ 勤務時間中の交渉参加について、法的に保障されることとなるのか。

 ● 所轄庁の長は、労働組合が指名する職員から、勤務時間中に適法な団体交渉をすることについて申請があった場合、公務に支障がないと認めるときは、これを許可することを法律で明記することを考えている。

 ○ 使用者が「公務に支障がある」と判断すれば、交渉を拒否することもあるのか。

 ● 法律上は、そうした場合もありうることとなる。ただ、「交渉を拒否できる」ということではなく、あくまでも「勤務中であっても許可を受ければ適法に交渉できる」ということを法律上でも明らかにし、国民への説明責任を果たすことが目的だ。

 ○ 権利として保障する立場から、使用者側が「公務に支障がある」との口実で交渉を拒否する場合も考えられ、そうした場合に対応できる仕組みが必要だ。「予備交渉」は、団体交渉の範疇に入れるのか、勤務時間中の「予備交渉」は可能なのか。

 ● 事前におこなわれる「窓口交渉」なども引き続き法律上の予備交渉として扱われるものであり、公務に支障がない限り、勤務時間中でも認められることとなる。

 ○ 労使間の交渉ルールを定めた国公法第108条の5の5項、6項については、そのまま法定化する必要はない。自律的労使関係というならば、交渉のルールについては、労使交渉による協約で決めていけばいいのではないか。

 ● 交渉ルールの基本となることから、法律で定める必要があると考えている。

 ○ 「団体交渉の手続に関して必要な事項は、団体交渉で定める」とする特労法11条なみにすべきだ。

 ● 特定独立行政法人は、収入の自由度が高く、さらに、労働組合法も適用されている点で、非現業公務員とは異なっている。非現業における最低限のルールは、国会の議決を要する法律によって民主的にコントロールをしていく必要がある。法定化する部分は法定化したうえ、実際の労使関係で決める部分をひろげる努力が労使双方に求められているのではないかと考える。

 ○ 「労使関係の透明性」が必要なことを法律でさだめるのか。

 ● 団体交渉の議事の概要および団体協約を、使用者がインターネット等により速やかに公表することを法律上に明記したい。この点については、認証の有無にかかわらず、すべての労働組合を対象とした規定としたい。

 ○ 一定の公開の措置は必要としても、公開する内容を「交渉議題」と「協約内容」にとどめるなど、団体交渉や組合活動を大きく制約しない方向での検討が必要だ。議事の概要の書き方によっては、労使交渉を阻害する要因ともなりかねない。また、公表する中身として「団体交渉の議事の概要」は、労使双方の合意がなければ公開できないことを明確にすべきだ。

 ● 法律上で手続きの詳細を規定することは考えていないが、労働組合との確認もなく、使用者が一方的に議事概要などを公開するとは考えがたい。

専従期間は最長7年に制限、使用者が賃金実態調査を実施

(在籍専従制度など)

 ○ 在籍専従期間の制約などについて、ILOは「条約に照らして疑義がある」と繰り返し指摘してきたことからも、結社の自由を保障する観点で制約を設けるべきではない。

 ● 意見はうかがうが、現行通りにしたい。認証された労働組合の職員は、所轄庁の長の許可を受けて、労働組合の役員として専従ができることを法律で明記する。また、在籍専従の期間は、職員としての在職期間を通じて5年を上限とすることを法定化し、当分の間、法律の附則で「7年以下の範囲内で政令で定める期間」としたうえで、政令において「7年以下」とさだめることとしたい。

 ○ 制度化するとしても、現行のように休職専従期間を7年に制限すべきではない。

 ● 専従役員だった職員が元の職場に復帰した際に、一定の職務遂行能力を発揮するために専従期間が制限されてきたという経過があり、これを維持したい。

 ○ ILOの指摘もふまえて、自由な労働組合活動を保障する点から、在籍専従期間は制限しないよう重ねて求める。

 ● 意見はうかがっておく。

 ○ 短期専従に関する詳細な制度設計については、団体交渉によって協約締結する事項とすべきだ。

 ● 現行の人事院規則の内容を法律でさだめる形で扱いたい。認証された労働組合の役員は、所轄庁の長の許可を受けて、勤務時間中に労働組合の業務に従事することができることとする。ただし、年間30日までとし、その間の給与は減額する。

 ○ 現行と同じように給与を減額する必要はあるのか。

 ● 国公法108条の6項に給与を受けながら職員団体の活動をしてはならないという規定があり、これにしたがうものだ。ただし、指摘されたように、国公法108条の関連部分が廃止されるので、この点については、そうした考え方が変わる可能性もある。検討させてもらいたい。

(勤務条件の決定原則)

 ○ 現行のような詳細法定主義はあらため、法定化する事項は、大綱的なものにとどめるべきであると意見をのべてきた。素案にある「政府全体で統一的にさだめるべき勤務条件」にはどのようなものがあるのか。

 ● 現行の給与法、勤務時間法など全体的に統一する必要のあるものだ。これらは、法律または政令でさだめることとしているが、どこまでを法定し、どこからは政令に委任するかはこれからの検討となる。

 現在、人事院規則でさだめられている職員の保健および安全保持ならびに福祉に関する事項は、労働安全衛生法等との均衡を考慮して、政令でさだめる旨を法定し、具体的には政令で詳細をさだめたい。また、国家公務員宿舎法または旅費に関する法律の執行について、内閣総理大臣は、関係庁の長に意見をのべることができるものとする。

   その他、各省各庁の長またはその委任を受けた部内の職員は、法令の規定に反しない限りにおいて、所属の職員の勤務条件をさだめることができるような規定を新たに設けたい。

 ○ 「統一的にさだめる勤務条件」は、各省における勤務条件の最低基準としての位置づけとなるのか。

 ● 最低基準でなく、あくまでも統一した基準と考えている。たとえば、週の所定勤務時間が、ある省では38時間で、別の省では35時間となることなどは考えがたい。すべての省庁が守らなければならない統一基準としたい。

 ○ 民間給与実態の調査について、そもそもなぜ使用者が調査する必要があるのか。

 ● 情勢適応の原則があり、決定された給与が社会一般の情勢からかけはなれていないことを国民に説明するのは、使用者としての責任だ。

 ○ 調査・把握の方法・規模などが不明なままで使用者機関の主体で行われることは、使用者側に都合のよいデータが示されることとなる。使用者・労働組合の双方で調査するとしているが、資金力・情報力などで圧倒的に勝っている使用者機関のデータが、より説得力を持つことになりかねない。常識的な考えを持つ労使が交渉すれば、「社会一般の情勢」からかけ離れた交渉がおこなわれるとは考えがたい。国民への説明責任と言うが、交渉結果である協約の内容を示せば、説明責任を果たしたことになるのではないのか。

 ● もっともな主張であると思うし、同時に使用者として説明責任も重要だ。意見はうかがっておく。

当局による不当労働行為の禁止・救済の制度を設ける

(不当労働行為制度、調整システム)

 ● 不当労働行為として、当局による以下の行為を禁止する。

  ・労働組合員であることや組合に加入すること、結成することなどを理由に職員に対して不利益取り扱いをすること

  ・職員が労働組合に加入しないこと等を任用の条件とすること

  ・労働組合との団体交渉を正当な理由なく拒否すること

  ・労働組合の運営等に対して支配介入・経費援助をすること(勤務時間中の交渉に参加する職員への給与支給、事務所の供与をのぞく)

   ・中労委に申し立てしたこと等を理由として職員に不利益取り扱いをすること

 ○ 管理運営事項をめぐる交渉拒否は、不当労働行為にあたるのか。

 ● 申し立てを受けた第三者機関で判断することとなる。さまざまな事例が予想され、そうした判断が経験として蓄積されていくのではないか。

 ○ 不当労働行為を認定するのは、調整機関と同じ中央労働委員会となるのか。また、不当労働行為と認められたならば、どのような措置がとられるのか。

 ● 中央労働委員会は、認証された労働組合、職員から申し立てを受けたときは、調査・審問をおこない、事実の認定をして、認定にもとづき申立人の請求にかかる救済命令、または、棄却する命令を発するものとする。制度上は、このように命令を出せることとするが、不当労働行為は、裁判のように判決を出すことのみをめざすものではなく、労使間の話し合いによって和解に導く機能が期待されているものだと考えている。民間でも、命令で決着する比率はあまり高くはない。

 また、具体的には、中央労働委員会の公益委員が判断することとなる。ただし、役割を固定化するうえで、専門性を持った公務担当の委員の選任は必要ではないかと考えている。

 ○ 中央労働委員会における調整は、特労法で示されるようなあっせん、調停、仲裁の規定を適用するのか。

 ● 基本的には特労法の規定に相当する規定を国家公務員労働関係法に置くことを考えている。まだ政府部内で調整中のところはあるが、以下のように考えている。

   ・あっせんの開始要件−関係当事者の双方もしくは一方の申請、中労委の決議

   ・調停の開始要件−関係当事者の双方の申請、関係当事者の一方の申請、関係当事者の一方の申請による中央労働委員会の決議、各省大臣または内閣総理大臣の請求

   ・仲裁の開始要件−関係当事者の双方の申請、関係当事者の一方の申請、あっせん・調停開始後2か月を経過してなお紛争が解決しない場合における関係当事者の一方の申請、あっせん・調停をおこなっている事件についての中央労働委員会の決議、各省大臣または内閣総理大臣の申請

   また、仲裁裁定があったときは、労使間で有効期間のない団体協約が締結されたものと見なすこととする。法律または政令の制定改廃を要する内容の仲裁裁定の場合は、内閣に対して法律案の国会提出または政令の制定改廃の努力義務を課すものとする。それ以外の仲裁裁定については、団体協約と同様の実施義務を課すものとする。

 ○ 賃金交渉において、複数の組合と交渉した場合、一方の組合と妥結して協約締結した内容と、他方の交渉が決裂して中央労働委員会の仲裁での内容とが異なる場合も想定されるが、その場合の扱いはどうなるのか。

 ● 仲裁裁定の内容をふまえて当局が対応をとることとなるものと考える。

 ○ 調整を担当する機関は、争議権の制約からしても、争議権のある民間とは違う機関、たとえばかつての公労委を参考にした「公務労働委員会」なども検討されるべきではないのか。

 ● 中労委のノウハウや地方機関をいかすべきであり、既存の組織を活用するのが現実的な対応だと考えている。

あくまでも「結社の自由」の観点に立った検討が必要

 結社の自由の観点からすれば、民間労組にはない在籍専従期間の制限などは、自律的労使関係を確立するうえで見直されるべき事項です。また、労働条件や労使間の交渉ルールなども、法定化する部分は最小限にとどめ、できる限り交渉で決めていく範囲を大きくしていくことこそ求められます。

 今回のやりとりでも議論があったのが、使用者による賃金実態調査についてです。調査結果が労使交渉を左右することになりかねず、調査を実施させないことをふくめて、今後、さらに追及が必要です。

 不当労働行為や調整システムなどは、労使対等の交渉の仕組みをつくるうえで、弱い立場にある労働組合を保護することから当然のものであり、労働組合の側に立った制度確立を強く求めていく必要があります。

以 上