「公務員制度改革」闘争ニュースNO.103【2011年2月14日】
「改革素案」をめぐって推進事務局と協議
全労連公務員制度改革闘争本部は、昨年末に示された「自律的労使関係制度に関する改革素案」をめぐって、公務員制度改革推進本部事務局と協議をつづけてきています。
そのなかでの主なやりとりを以下の通りとりまとめました。今回は、「職員の範囲」「労働組合の要件」「団体交渉事項」にかかわる部分を中心にしました。
なお、「改革素案」にかかわる事項については、順次報告していくこととします。
次官、局長などは「労働組合」をつくっても認証されない
(協約締結権を保障する職員の範囲について)
○ 改革素案では、協約締結権を保障する職員として、「事務次官、外局の長官および局長等」を除くとしているが、どの職員を除外するのかを、誰がどのような基準でどうやって決めるのか。
● 労使関係制度検討委員会では、「使用者側に立つ職員」の具体的な確定方法として、第三者機関の関与が指摘されてきたところであり、中央労働委員会が認定して告示する形を考えている。また、これらの職員は、国公法上は団結権制限の規定は設けないものの、組織をつくっても「労働組合」としては認証せず、たとえば、当局が団体交渉を拒否しても保護されず、勤務時間内の交渉もできないという制度を準備する必要があるのではないかと考えている。
○ 現在保障されている団結権を制限することにもなりかねない。協約締結権だけでなく、団結権まで制約するのは、踏み込みすぎだ。
● これらの職員は、組織法制上、もっぱら使用者側に立って政務三役と一体的となって仕事をしている。その点から、政府の立法政策として、必要な範囲での制約は可能だと考えたものだ。
○ 新たな権利の制約を設けることは問題がある。憲法との関係での検討が必要だ。
● 意見はうかがっておく。任意に団結して当局に申し入れすることまで否定するものではない。
○ 特別職国家公務員の取り扱いはどう考えているのか。現行で労働組合が組織されているところは、協約締結権も保障するべきだ。
● 一義的には関係する当局が検討することだ。改革推進本部事務局が主体となって検討する範囲外のことであり、こちらから考えを述べることはできない。
○ 自衛官を除く防衛省職員等についても、一般職国家公務員と同様にすべきと全労連は主張してきた。外国の例では、「制服組」と事務職は別になっている。その点については、検討されたのか。
● 自衛隊法の改正をともなうことでもあり、公務員制度改革という範囲のなかで議論できる話ではない。
労働組合の資格要件を中労委が事前に審査
(労働組合としての要件について)
○ 全労連は、職員団体制度の廃止を求めてきた、今回の制度改正で、法律上でも明確に廃止するのか。
● 国公法を改正して、現行の職員団体制度は廃止されることとなる。そのうえで、職員は労働組合を結成できることを明確に示すこととなる。新しい法律上で「労働組合」という言葉を使うこととするが、労働組合法上の労働組合とは異なるという定義規定を置くように考えている。
管理職員等とそれ以外の職員は、同一の労働組合を組織することができないこととし、「管理職員等」の範囲は、特定独法や現業公務員と同様に中央労働委員会が認定して告示することなどが検討されるべき点となる。
また、労働組合を結成する際は、中央労働委員会に規則で定める事項を記載した申請書を提出して認証をうけることを素案でも提示してきたところだが、認証の要件としては、労働組合の規約に、名称、目的、業務、事務所の所在地、構成員の範囲、資産、役員、業務執行、会議、投票、経費および会計、規約の変更に関する事項が記載されていることなど民間の労働組合法と同様のものを考えている。また、素案でも示してきたところだが、団結権を有する職員がすべての構成員の過半数を占めることも要件となる。
○ 「資産」の提示は除外すべきだ。法人格を持っていない労働組合ならば、もともとその必要はない。また、職員団体制度を廃止すると言うが、これでは現行の「職員団体登録制度」が「労働組合事前承認制度」に変わっただけではないのか。審査する内容が労組法と同様とは言っても、民間にはもともと「事前承認制」などは存在しない。労使関係制度検討委員会でも、「新たに第三者機関による事前資格審査制度を設けることは、結社の自由の観点から問題がある」「労使関係を成熟させていくためには、資格審査等の関与は最小限にすべき」「新たに第三者機関による資格審査制度を設ける必要はない」などの意見が見られた。これらの議論経過からも、中央労働委員会による「事前承認制」をとるべきではない。
● 意見はうかがっておく。
○ そもそも中央労働委員会に、申請があったすべての労働組合の「事前審査」をおこなう体制をつくることができるのか。労使関係制度検討委員会でも、「資格審査を第三者機関でおこなう場合には、それ相応の体制整備が必要である」との指摘があった。
● そうした体制をつくっていく必要があると考えている。
○ 「事前審査」の対象は、労働組合との交渉事項にしたり、協約事項にしたりすることは検討されていないのか。審査内容を法律で詳細に決めずに、団体交渉で決めるような方法は考えていないのか。
● 交渉は可能ではないか。ただし、新法に規定するような根本的ルールについては、協約締結の対象にはなじまないと考えており、法律を変えることは、最終的には政府の政策判断となる。
○ なぜ「過半数が職員」でなければならないのか、結社の自由を制約することにはならないのか。また、そのことをどのように証明するのか。職員名簿でも提出するのか。非常勤職員をふくめて実際の職員数をどうやって数えていくのか。
● 「過半数が職員」としたのは、公務員の労働組合と当局とが協約締結していくうえで、職員が主体となって組織すべきと言う考え方にもとづくものだ。また、職員数の数え方は、検討して考え方を示すこととしたい。
「管理運営事項」でも交渉できるよう求める
(団体交渉事項について)
○ 中央で交渉する事項は何か、各府省、地方機関で交渉する事項は何か。
● 交渉事項は、以下のように考えている。
(勤務条件関係)
・中央交渉−勤務条件をさだめる法律・政令等にかかわる事項(当該事項にかかる事務を所掌する大臣が使用者側の当事者)
・府省交渉−勤務条件をさだめる法律で各省大臣や各省各庁の長に権限が下りている場合の当該事項など(各省庁の長またはその委任を受けた職員が使用者側の当事者)
・ 地方交渉−法律で各省大臣や各省各庁の長に権限が下り、その権限が地方機関の長に委任されている場合の当該事項(当該事項を適法に管理・決定できる者が使用者側当事者)
(団体交渉の手続きその他の労使関係運営事項)
・中央交渉−国家公務員労働関係法(仮称)および、それにもとづく政令の改廃にかかわる事項など(内閣総理大臣が使用者側当事者)
・府省交渉−府省内に共通して適用される事項(内閣総理大臣、各省大臣、各省各庁の長が使用者側当事者)
・地方交渉−上記以外の事項(それに応ずべき地位に立つ者が使用者側当事者)
ただし、基本的なルールをさだめる国家公務員労働関係法(仮称)、国公法、検察庁法、外務公務員法の改廃を要する事項に関しては協約締結対象にはできないと考えている。
○ 労使関係制度検討委員会では、上級機関で先におこなわれた交渉事項については、「下位の交渉では交渉できないこととすることが適当であり、いわゆる上申交渉はおこなわない」とされていた。労働組合としては、上申闘争は重要な取り組みであり、上申交渉を禁止すべきではない。
● 指摘された部分は、法律の条文上で触れるようなことは考えていない。
○ 労使関係制度検討委員会の議論では、「協約締結ができる事項に関する話し合いは『交渉』と、協約が締結できない事項に関する話し合いは『協議』と用語を分けることが適当である」と意見が一致しているが、これにしたがって、「交渉」と「協議」の区分を設けるのか。
● あくまで団体交渉の制度をつくることを目的としており、「協議」などの取り扱いを法律上に示すようなことは考えていない。
○ 管理運営事項は、労働条件に影響すれば交渉できることを制度上も明確にするよう求める。交渉対象事項になることを法律上でも何らかの表現を入れるべきだ。
● 現行の「特労法」と同様であり、「国の事務の管理および運営に関する事項は、団体交渉の対象とすることができない」と法律上は示すことになるが、これらの行使によって影響をうける勤務条件については、交渉対象事項となり得るというこれまでの解釈には変更はない。
○ 超過勤務に関する「36協定」などはどのような制度を検討していくのか。
● 現時点では検討していない。
「事前承認制」「管理運営事項」の取り扱いなどが今後の課題
協約締結権を保障する職員の範囲とかかわって、事務次官から局長等までを「使用者側に立つ職員」として、協約締結権にとどまらず、団結権まで制約する方向を示していることは問題です。「団結権制限規定は措置しない」としていますが、新たな制約は、憲法との検討も必要となります。また、ILO勧告でも繰り返し求めている刑事施設職員の団結権保障も引き続く課題です。
職員団体制度の廃止を明確にする一方で、民間にはない労働組合の「事前承認制」ともいえる制度を持ち込むことは、労使関係制度検討委員会の議論にあったように、「結社の自由」をしばることにもなりかねないという点から問題があります。今後、実態もふまえて追及していく必要があります。
交渉事項にかかわっては、管理運営事項の取り扱いについて、法律上は「団体交渉の対象とすることができない」と明記されることとなれば、いくらこれまでの解釈と変わりがないとしても、実際に、いまも職場では、管理運営事項を口実にした交渉拒否が後を絶たないことからも、当局によって交渉が拒否できないことを明確にする何らかの手立てを求めていく必要があります。
以 上