「公務員制度改革」闘争ニュースNO.99【2010年11月15日  】


オーストラリアに公務員制度調査団を派遣

= 政府・州の行政機関などを訪問、労働団体などと交流深める =


 全労連公務員制度改革闘争本部は、11月初旬から中旬にかけてオーストラリアへ公務員制度にかかわる調査団を派遣しました。  調査活動では、連邦や州政府の労使関係機関などへの聞き取り調査とともに、オーストラリアのナショナルセンター・ACTUをはじめ、公務サービス労働組合・教職員組合などを訪問し、国際交流を深めました。

 労働党・保守党という二大政党政治のもとで、大きく揺れ動く公務員制度や労使関係制度の実態を明らかにしつつ、日本での今後の運動にいかしていくこととしています。

民間労働者と同様にスト権をふくむ労働基本権を保障

 調査団は、小田川闘争本部長を団長、全教の北村書記長(闘争委員)を副団長に、黒田闘争本部事務局長、鈴木闘争委員(自治労連)、瀬谷闘争委員(国公労連)、闘争委員でもある布施全労連国際局長が参加しました。一行は、11月8日から5日間、シドニー・キャンベラ・メルボルンの三都市をめぐり、行政機関や労働組合などからの聞き取り調査を精力的に取り組みました。

 オーストラリアでは、2007年の総選挙で野党の労働党が勝利し、保守党にかわる新政権が誕生しました。しかし、今年8月の総選挙では労働党・保守党ともに過半数に届かず、そうしたなか、現在、ジュリア・ギラード首相による労働党政権が続いています。

 公務員の権利をめぐっては、連邦(国)・州・自治体の三層構造からなるオーストラリアでは、それぞれの公務員に労働基本権がストライキ権をふくめて保障されています。そのなかで、公務・民間に共通する労働条件や労使関係を管理する法制度がありますが、労働党政権に変わってから、「フェア・ワークス法」が新たにできたことで、労働者の権利もより拡充されてきました。

 今回の調査では、オーストラリアの労使関係制度をはじめ、権利や雇用、賃金・労働条件の実態、労使紛争の解決処理の手段、さらには、公務員の中立・公正性を保つための制度など、さまざまな面からの調査がおこなわれました。

 連邦組織である「フェア・ワークス・オーストラリア(FWA)」への訪問では、最高責任者のジョフレー・ギウダイス会長をはじめ、マイケル・ローラー副会長、ジェニファー・アクトン上席会長補と面会して、2時間近くにわたって意見交換をすることができました。

 「フェア・ワークス法」の執行機関として、使用者と労働者の間に入って労使紛争のあっせん・仲裁などを受け持つFWAは、日本の中央労働委員会にも似た独立機関です。連邦最高裁の判事も務めるギウダイス会長からは、組織の概要や実務内容にとどまらず、労使関係のあり方にかかわる示唆にとんだ話を聞くこともできました。

 また、公務員制度にかかわっては、連邦の「公務サービス委員会(PSC)」を訪問し、基本的にはフェア・ワークス法のもとにおかれながらも、公務員独自の採用や評価制度、政治任用をふくめた幹部職員制度などがさだめられている実態を調査しました。

 公務サービス委員会から、アンドリュー・テイラー職場関係グループマネージャー、マルコ・スパッカベント職場関職場関係グループ部長ら幹部職員の対応を受け、専門的な話をふくめて聞き取り調査しました。

オーストラリアのナショナルセンター・ACTUと交流を深める

 今回の行動では、国内唯一のナショナルセンターである「オーストラリア労働組合評議会(ACTU)」の全面的な協力もあり、各機関のトップクラスとの面談が実現しました。

 一行は、メルボルンに本部を置くACTUの事務所を訪問し、グラント・ベルチャンバー国際局長をはじめとする役職員のみなさんと懇談しました。全労連としては初めてとなるACTUへの正式な訪問・懇談が実現するもとで、今回の調査活動への協力に対する感謝をのべるとともに、ナショナルセンター間の相互交流を深めることも確認しました。

 なごやかにすすんだ懇談では、オーストラリアの経済や政治情勢、正規・非正規の労働者の状態、フェア・ワークス法に対する労働組合としての考え方、最低賃金の決定方法など多岐にわたって意見交換ができ、国を越えた労働者としての熱い情熱を感じました。

 その他、シドニーを拠点として連邦・州の公務員を組織する「地域公共サービス労組(CPSU)」、全国の教員でつくる「オーストラリア教育組合(AEU)」、建設や炭鉱労働者などが多く加入する「建設鉱山林野エネルギー労組(CFMEU)」などを訪れ、労働組合のたたかいなどにかかわっても意見交換しました。

 これらの調査行動の合間をぬって、シドニーでは、ニュー・サウス・ウエールズ州のポール・リンチ労使関係担当大臣を表敬訪問し、1時間近くにわたって面談することができました。全労連側から日本の公務員制度改革の現状を伝えると、リンチ大臣からは、オーストラリアの労使関係のあり方について、政治家としての考え方も語られました。

 行政機関・労働組合ともに訪問先ではどこにいっても暖かい歓待を受け、オーストラリアの人たちの誠実さと親切さ、心のやさしさを感じた調査行動となりました。熱心に話してくれた内容を記録に残し、今後の運動にいかすため、闘争本部では、報告書を年内にまとめることとしています。

以 上