「公務員制度改革」闘争ニュースNO.93【2010年4月27日】


労働基本権回復で公務員給与の削減をねらう

= 公務員制度改革関連法案をめぐって内閣委員会での質疑つづく =


 衆議院内閣委員会は4月23日に午前・午後にわたって、公務員制度改革関連法案の審議が続けられました。  自民党議員からは、政府法案の「欠陥」や不十分さを追及する質問があいつぐもと、一方では、労働基本権のあり方ともかかわる議論が目立ちましたが、その内容は、いずれも総人件費削減を前提とするものとなっています。  法案審議はヤマ場を迎えており、28日には中央公聴会が開かれ、各分野の公述人が意見をのべることとなっています。

税収など国の財政状況をふまえて公務員の給与を決定すべき

 23日の内閣委員会では、大泉ひろこ(民主)、橘慶一郎・小泉進次郎・中川秀直(自民)、高木美智代(公明)、塩川鉄也(共産)、浅尾慶一郎(みんなの党) の各議員が質問に立ちました。

 民主党の大泉議員は、公務員の労働基本権(協約締結権)が回復されたときの交渉の当事者にかかわって、「労働基本権を付与したときには、新たに別の組織をつくる必要があるのではないか」と政府の考え方を質しました。これに対して仙谷公務員制度改革担当大臣は、「勤務条件など各職場におけるさまざまな問題を協議するとなると、相当に交渉当事者としての機能を強化する必要がある」とし、「民間であれば労務担当副社長といった政治判断ができる責任者、交渉当事者を使用者側につくることが何よりも前提問題だ」とのべ、交渉当事者の考え方を示しました。

 自民党の橘議員は、労働基本権が回復された際、「いまのような民間準拠にもとづいて決めていたのでは、人件費削減はなかなか実現できない」として、公務員給与の大幅な引き下げを求めました。仙谷大臣は、「民間準拠というならば、民間企業は給与決定にあたって営業成績や企業の財務状況も考慮するが、公務員給与もそういう点を『準拠』する必要がある」などとのべ、財政赤字や税収入の状況もふまえて公務員給与を決定すべきと主張しました。

 これに対して、江利川人事院総裁は、「財政事情の問題もあるが、人事院の役割としては、それは考慮事項に入っていない。国公法28条にさだめる『情勢適応の原則』にもとづいて給与勧告をしている」と答弁すると、階(しな)総務大臣政務官は、「労働基本権が制約されているので国公法28条の規定を重んじる必要があるが、裏を返せば、労働基本権が保障されれば、『情勢適応の原則』という国公法の縛りもとれてきて、労働者側との交渉によって給与水準の引き下げも可能となってくる」などとのべ、労働基本権と引き替えに、公務員の「情勢適応の原則」も取り払うべきとする考え方を示しました。

「国を背負って仕事をする公務員が集まるのか」と危惧する声

 自民党の中川議員は、民主党がかかげる国家公務員総人件費2割削減について追及し、「総人件費の管理は、労働基本権の付与とはかかわりなく、待ったなしですすめるべき課題だ。労働基本権の拡大が施行されるまで給与引き下げの検討はやらないのか。労働基本権にかかわる法案の提出はいつになるのか」と質しました。仙谷大臣は、「労働基本権制約の代償措置として人事院勧告があり、政府がそれに従わなければ憲法上の大きな疑義が出てくる。自民党も、10年やってきた改革でつまづいたのは、労働基本権の付与に踏み切れなかったからだ」と強弁しました。そのうえで、「労働基本権が付与されれば、労働組合は、日本政府の財政状況を真剣に勘案して、交渉・協議に臨んでくるだろう。国民注視の前で、危機状況にある日本の現状を労使間で率直に話し合って交渉する」として、労働基本権回復という基本的人権にかかわる問題と、日本の財政問題を同一の次元に置き、総人件費削減をねらう姿勢を隠しませんでした。

 公明党の高木議員の質問でも、「人件費削減が、本当に労働基本権付与によってできるのかどうか、その疑念を払拭することができない。労働組合は、人件費削減に協力することを納得しているのか」とただしたことに対して、仙谷大臣が、「その都度の経済の動向や、財政や税収の見込みも十二分に勘案しながら、賃金・勤務条件を交渉で決定していくことになる」と同じような答弁を繰り返しました。

 また、高木議員は、「公務員に志望する人が少なくなる。民間よりも下の成績の人が公務員として国を動かしていけるのか、国を背負っていく仕事を果たしてできるのか危惧している」と指摘し、協約締結権が付与された場合の給与交渉にあたっても、「人事院がある程度の基準を提示していくことも十分にある。一つの基準をもつべき」と求めました。

与野党間の修正協議を求める自民党・中川議員

 こうした議論と合わせて、自民党の中川議員は、政府法案の問題点を批判し、「まだ連休もある。2週間ぐらいある。修正の協議をするのは当然であって、この連休を使って、与野党理事、各党代表、政府の間でそうした協議をしっかりやってほしい」と求めるなど、自民党として、政府案の修正協議をすすめるべきとせまりました。

 こうしたもと、内閣委員会では、今後、法案採決をめぐって与野党間の攻防をむかえることとなります。労働基本権回復の問題に議論がおよぶなかで、引き続き法案審議を監視していく必要があります。

以 上