「公務員制度改革」闘争ニュースNO.92【2010年4月26日
】
公務員制度改革をめぐって連合審査会を開催
= 民主・自民が公務員総人件費削減を競い合う =
衆議院において公務員制度改革関連法案の審議がつづくなか、4月21日午後には内閣委員会と総務委員会の「連合審査会」が開催され、両委員会に所属する議員出席のもとで法案にかかわる議論が深められました。
連合審査では、幹部職員の人事管理一元管理にむけた中立性・公正性の確保、天下り根絶などとあわせて、民主党・自民党の議員からは、「大胆な給与カットをおこなえ」などと総人件費削減を求める意見があいつぎました。
労働基本権回復と引き替えで公務員給与削減を主張
内閣委員会・総務委員会の連合審査では、谷公一・西村康稔(自民党)、西博義・高木美智代(公明党)、塩川鉄也(共産党)、柿澤未途(みんなの党)、岸本周平(民主党)、重野安正(社民党)の8人が質問に立ちました。
自民党の谷議員は、民主党がマニフェストでかかげる公務員総人件費2割削減にかかわって、この間の審議で仙谷公務員制度改革担当大臣が、労働組合との団体交渉を通して総人件費を削減すると主張していることに対して、「組合の理解がなければ総人件費は減らせないのか。マニフェストにはそう書かれていない。ある意味でごまかしだ」と批判しました。
仙谷大臣は、「勤務条件の一方的な引き下げは、人事院の力を持ってしてもできない」とのべつつも、「政府が交渉の当事者能力を持ち、公務員に労働基本権を付与したうえで労働組合と交渉して、総人件費についても適切な削減をしていく」として、労働基本権回復と引き替えにして、公務員給与削減をめざしていく考え方をあらためて明らかにしました。
この質疑とも関連して、民主党の岸本議員は、自公政権のもとで作成された国家公務員の純減計画が今年度で終了することから、新たな総人件費削減計画を策定するよう求めるとともに、「労働基本権が付与された後は、その際の労使交渉において大胆な給与カットを断行せざるを得ない」などと主張しました。
このように、自民党・民主党が公務員削減を競い合い、それに政府側も応じるというやりとりが、公務員制度改革関連法案の国会審議を通した一つの特徴となっています。とりわけ、来年の通常国会に法案提出を予定している労働基本権(協約締結権)の回復を、給与や手当の大幅削減をすすめる契機にしようとねらっていることは重大です。
質疑では、定年延長や定員削減とかかわって新規採用の抑制も指摘され、岸本議員が「厳しい財政事情のもとで、新規採用は極力おさえるべき。5割ぐらいは新規採用を削減するくらいの覚悟でのぞめ」と求めると、原口総務大臣は、「採用抑制の割合を、50%、40%、25%などとシミュレートして、メリット・デメリットの議論を関係大臣との間でやっている。もうじき発表できるように詰めている」と答弁し、早期退職勧奨の見直しや新規採用の抑制をふくめた基本方針を、4月中にも取りまとめることを明らかにしました。
幹部職員の恣意的な任免がまかり通る危険性が強まる
新しく設置される民間人材登用・再就職適正化センターについて、公明党の高木議員は、「再就職支援は各省でやればいいものであり、官民の人事交流は、法律のうえでは総務省の人事・恩給局がその役割を担っている。ならば、センターは不要ではないか」と政府を質しました。原口大臣は、「人事・恩給局では、企画や支援はできるが、センターをつくることによって、一義的に担保していくという趣旨だ」とあいまいな答弁にとどまり、センターの具体的な役割は明らかにされませんでした。
共産党の塩川議員は、幹部職員の適格性審査について集中して追及しました。塩川議員は、現行の国家公務員法では、任免にあたっての基準など必要な事項は人事院が定めることになっているが、法案では、幹部職員の適格性審査や幹部候補者名簿の作成には、第三者機関である人事院が関与しないことをあげ、「中立性・公正性を確保する役割を人事院が果たしてきたが、それがなくなれば、どのように任免の中立・公正を確保するのか」と質問しました。これに対して大島内閣府副大臣は、「有識者の意見も聞きながら制度設計していく。できるだけ中立的に適格性審査がおこなわれる仕組みをつくりたい」と抽象的な答弁に終始しました。
また、塩川議員は、イギリスでは幹部職任用にあたって、選考課程で政治家が関与できない仕組みになっていることを例にあげ、日本でも、政治の力による恣意的な任用を許さないため、政治家の関与を排除すべきだと主張しました。その上で、適格性審査の内容をさだめる政令案の骨子の提出を求めました。
仙谷大臣は、恣意性を排除する必要は認めつつも、「適格性審査には官房長官が関与したり、内閣人事局長も政治家が就く可能性もある。したがって、政治家を排除するつもりはまったくない」と答弁するなど、「政治主導」の名のもとに恣意的な任用・免職が強行される危険性が強まっています。
塩川議員は、「それでいいのか。そのことをふくめて議論するため、具体的な案を示せ」とかさねて政令案の提出を政府に要求しました。
以 上