「公務員制度改革」闘争ニュースNO.73【2009年2月3日】

「公務員制度改革」の「工程表」決定を強行

= 憲法違反の人事院機能の移管は許さない =


 国家公務員制度改革推進本部(本部長−麻生太郎首相)は3日、「公務員制 度改革」の今後の検討方向を示した「工程表」を決定しました。  「工程表」に関わっては、労働基本権を制約しながら、級別定数の管理などを人事院から「内閣人事・行政管理局(仮称)」に移管するとしたことから、全労 連公務員制度改革闘争本部は、推進事務局との連日の交渉・協議にとりくみ、憲法違反ともいえる人事院機能の移管に強く反対し、政府決定しないよう求めてき ました。

 このことについては、人事院からも、憲法上の問題が生じることが指摘されるもと、政府は、1月末にめざしていた推進本部決定を見送らざるを得なくなりました。  しかし、結果的には、当初の「工程表」(案)から、機能移管にあたっては「人事院による意見の申出等」が必要な点を「修正」し、ほぼ原案通りに「工程表」決定を強行しました。

政府は、「工程表」にもとづき、今通常国会に、国家公務員法「改正」法案の提出をねらっています。闘争本部では、政府決定にあ たって、本部長談話を発表し、このまま国家公務員法の「改正」を強行するならば、ILOへの「情報提供」をふくめて強い姿勢でのぞむ決意を内外に明らかに しました。

労働基本権先送りでの使用者(政府)権限の強化に反対する

- 公務員制度改革に係る「工程表」の推進本部決定にあたって(談話) -

2009年2月3日

全労連公務員制度改革闘争本部

本部長   小田川 義和

 本日、政府の国家公務員制度改革推進本部(本部長−麻生太郎内閣総理大臣)は、「公務員制度改革に係る『工程表』」を決定した。当初、1月末の決定がめ ざされていた。しかし、幹部職員等の一元管理の導入とかかわって、「級別定数の設定及び決定」の権限などを「内閣人事・行政管理局(仮称)」に移管すると の内容について、人事院が「憲法上の問題」を提起して再考を求めたことなどから、本日に決定が先送りされたものである。

 全労連公務員制度改革闘争本部は、人事院が主張するように、権限の移管が憲法違反であることを指摘し、政府の労使関係制度検 討委員会で議論が進行中の労働協約締結権を含む「自律的労使関係制度」の検討結果を待って、労働基本権の代償措置に係る権限(公務員労働者の労働条件決定 に係る事項での権限)の移管について結論を出すことを求めた。

 しかし、政府は、総人件費管理も含めた「一元管理」の必要性のみを強調し、「級別定数は管理運営事項」とする一方的な解釈を押し付けるだけで、われわれの主張に耳を傾けようとしなかった。

 等級別定数の労働条件性については、この間の公務員制度改革でも繰り返し論議となった。それは、弾力的、一元的な人事管理の要 として、その設定権限等を早期に手にしたい使用者・政府と、給与決定の基準にほかならない事項は、労働基本権制約の代償措置との「パラレルな関係」で捉え た制度検討を求める労働組合との大きな争点であった。

 2001年11月の参議院総務委員会では、「(等級別定数は)勤務条件」(中島忠能人事院総裁)と明確にのべられ、「(等級 別定数は代償措置に係る問題を)相当程度含んでいる」(片山虎之助総務大臣)と政府も答弁している。「工程表」は、こうした議論経過への配慮に欠け、政府 答弁との整合性も説明していない。労働基本権を侵害する違憲の決定との批判は免れない。

 「工程表」では、能力・実績主義の徹底や定年延長の検討などとかかわって、給与や退職管理、年金、退職金などについての検討 の方向や課題を明記している。そして、それらの労働条件については、決定の方向に沿った人事院の勧告等を「要請する」と明言している。使用者である政府の 決定を代償機関である人事院に押し付けることも、労働基本権を侵害する行為にほかならない。

 政府が、このような決定を行うのは、憲法第28条に規定される労働基本権への理解の不十分さがあるからにほかならない。 ILO(国際労働機関)が、日本の公務員制度の現状を国際労働基準から立ち遅れた水準にあり、早期改善を再三求めていることを理解していないからである。

 闘争本部は、改めてそれらの点を指摘する。政府が、「工程表」をもとに国家公務員法等「改正」を強行するならば、ILO への再度の問題提起などをおこなわざるを得ない。

 なお、「工程表」では、国家戦略スタッフ、政務スタッフ新設、官民人材交流促進を具体化する一方で、「天下り」の根絶については定年制延長等の検討結果 を待っての実現に言及するにとどまっている。この点でも、公務員の公正・中立性とかかわって重大な懸念があることから、慎重な検討を求めるものである。

以 上