「公務員制度改革」闘争ニュースNO.26【2003年5月16日】
ILO勧告にしたがって消防職員に団結権を
= 決算行政監視委員会で共産党・春名議員が政府追及 =
20日夜に開かれた衆議院・決算行政委員会では、総務省所管の問題で共産党の春名直章議員が質問に立ち、消防職員の団結権保障にかかわって片山総務大臣を追及しました。
ILOにおける審議の経過、現行の「消防職員委員会」制度の問題点などを具体的に示し、労働基本権確立の必要性を春名議員が強く主張したことに対して、
片山大臣は、「消防は警察と同じ。警察・軍隊にはILO87号条約は適用されない」などと、従来どおりの政府答弁に終始しました。 消防職員委員会は最終的な解決策ではないと片山大臣が答弁
春名議員は、はじめに、「昨年11月に出されたILO勧告の内容をふまえれば、消防職員の団結権保障は、かならず決着をつけなければならない最優先の課題だ。政府として、ILO勧告をどう受けとめているのか?」と質しました。
片山大臣は、「ILO勧告は重く受けとめる」としながらも、「消防は警察と同じであることから、団結権は与えられていない。国民の命と財産を守るという
任務から見ても、警察と類似している。また、過去にもILOがそのように判断している。今回のILO勧告に対しては、政府として追加情報を提出し、今後と
もILOに理解を求めていく」と、これまでどおりの政府の主張を繰り返しました。
これに対して、春名議員は、消防と警察が同じと言える根拠法令はあるのか、消防は警察の指揮下で任務にあたれるのか、などの点について政府の回答を求めました。
石井消防庁長官は、「消防法や警察法にそれぞれの任務が定められており、行政的には、消防は警察に分類される」と答弁したこと
から、春名議員は、「根拠法令が存在しないことは明らかだ。また、消防は、警察と連携して任務にあたることがあっても、指揮下には入らないし、武器も持て
ない。それで消防と同じだと主張しても、グローバルスタンダードから見ても通用しない」と指摘しました。
片山大臣は、「全体として『警察的』だ。警察の一部として理解している。主張は理解できないことはないが、いろいろな事情を
考えると、ただちに団結権付与には踏み切れない。重く受けとめて検討したい」とのべつつも、「権利制約の代償措置として、消防職員委員会制度があり、
ILOも、それを『満足をもって歓迎』と95年に表明している」とのべたことに、春名議員は、「ILOは、消防職員委員会は、問題の最終解決ではなく、
87号条約の履行にはほど遠いと断じている」と反論し、「50年来の改革であり、消防職員の団結権保障を決断すべき」と強く迫りました。
この指摘に対しては、「次の段階へのステップであり、最終的な解決ではないことは理解している」と片山大臣も答弁せざるをえませんでした。
次に、労働基本権制約の「代償措置」とされている「消防職員委員会」制度にかかわって、消防職員委員会の開催状況、委員会での審議件数、職員からの要求が実現した事項などの提示を政府に求めました。
政府答弁では、全国の消防署の約7割でしか委員会が開催されていないこと、審議件数も年々減っていることなどが明らかにされま
した。春名議員は、「3割の消防署では、委員会すら開かれていない。また、増員や安全衛生委員会の設置など職員の大事な要求が事務局段階で門前払いにされ
たり、委員会に傍聴できないなどの非民主的な運営もある。それらの実態もふくめてILOに報告せよ」と迫ったことに対して、政府は、「そうした指摘も念頭
に置いて、ILOに対応したい。せっかくの制度であり、各署には、できるだけ審議を開き、広く意見を聞き、職員の意向をくみとるよう通知も出して徹底した
い」と答弁しました。
最後に春名議員は、「消防職員委員会は消防組織の一部であり、職員団体(労働組合)ではない。そこに基本的な問題がある。こ
れまで7年間の推移を見ても、決して『代償措置』と言えるものではない。ILO勧告の重みを受けとめ、今回の公務員制度改革のなかで、消防職員の団結権確
立へ踏み出せ」とかさねて求め、質問を締めくくりました。
闘争本部が社会民主党へ要請、懇談
全労連「公務員制度改革」闘争本部は20日、社会民主党に対して、「公務員制度改革」にかかわって要請し、懇談しました。
要請には、闘争本部から駒場副本部長(自治労連委員長)、木下委員(全労連幹事)、黒田委員(公務労組連事務局次長)らが参加、社民党は、党公務員問題対策特別委員会の重野安正事務局長(衆議院議員)ほかが対応しました。
はじめに駒場副本部長から、@ILO勧告にそった民主的公務員制度確立にむけた政府追及の強化、A労使間の交渉・協議のないまま関連法案を閣議決定させないなどの点について、国会内外での協力を申し入れました。
重野議員は、「党としても公務員制度改革のプロジェクトチームをつくって対応を強めている。みなさんとは考え方は一致するし、
状況認識も違いはない」とのべ、公務員制度にとどまらず、有事法制や労働運動の現状、小泉「構造改革」への地方の不満の高まりなどについて意見交換しまし
た。
とくに、大分出身の重野議員に対して、おりしも大分のキャラバン行動から帰ってきたばかりの木下幹事が、地元自治体の反応などを紹介すると、重野議員が興味深そうに耳を傾ける一幕もありました。
闘争本部では、今後、すべての政党に対して、要請行動にとりくむ予定です。
以 上