「公務員制度改革」闘争ニュースNO.16【2002年6月21日】

全労連が「公務員制度改革」にかかわって声明を発表

= 第90回ILO総会が閉幕 =


 スイス・ジュネーブで開催されていたILO第90回定期総会は、すべての日程を終了し、6月20日に閉幕しました。  すでに「闘争本部ニュース」で報告してきたように、この総会では、昨年に引き続いて、「条約勧告適用委員会」の場で、日本の個別案件として、「公務員制度改革」問題がとりあげられました。

 委員会では、公務労働者の労働基本権をふみにじり、一方的な「公務員制度改革」をすすめる日本政府に対して、各国から批判の声が集中しました。委員会で の審議をふまえて発表された「議長集約」では、「公務員がみずからの給与の決定に参加することがいちじるしく制限されていることに懸念を持つ」としたうえ で、公務員の雇用条件が団体交渉によって決定されるために、関係組織との「十分な協議のうえ、現在進行中の公務員制度改革を行うよう強い希望」を表明して います。

 また、日本政府に対しては、「条約の全面的な適用を確保するためにとられた措置、もしくは予定される措置について詳細な情報の提供」を強く求めており、今後、11月に予定されている結社の自由委員会などの場で、日本政府へのさらなる追及が期待されます。  こうしたILO総会の到達点をふまえて、全労連は20日、「声明」を発表し、今後とも、公務労働者の労働基本権回復など民主的な公務員制度の実現にむけて奮闘していく決意を内外に明らかにしました。

<声 明>

 「公務員制度改革」で日本政府はILO総会での指摘をただちに実行を

 ― 第90回ILO総会・条約勧告適用委員会での日本の個別審査について ―

2002年6月20日 全国労働組合総連合

1、6月3日から開催された第90回ILO総会で、98号条約(団結権及び団体交渉権の適用)に関する個別審査で日 本の公務員労働者の労働基本権問題が「条約勧告適用委員会」で審議された。この問題は、昨年の第89回総会でもとりあげられ、日本政府は、現在すすめてい る公務員制度改革のなかで関係する職員団体との誠実な交渉・協議をおこなうことを国際公約した。しかし、政府は実効ある労使交渉をおこなわないまま、昨年 12月25日に「現行の労働基本権制約を維持」するとした公務員制度改革の「大綱」を閣議決定した。全労連は、こうした政府の一方的決定は国際公約に違反 するとして3月15日に結社の自由委員会に提訴し、連合も同趣旨で先立って提訴した。これがとりあげられ、2年連続して国際労働基準に反する日本政府の姿 勢が国際的な場で指弾されたものである。先ず、日本政府はこの事実を重く受けとめるべきである。

2、日本政府代表は、「昨年の総会以降、その都度職員団体と交渉・協議を91回おこなった。人事院の代償措置を維持するので、 労働基本権の制約の代償措置は確保される」と答弁した。これに対し日本の労働団体代表やアメリカ、韓国、ドイツ、フランス、インド、パキスタン、オースト ラリアの労働組合代表から強い批判が集中した。その主張点は、「ILO98号条約は労働基本権を基本的人権の一部としている。警察・軍隊などの特別な権力 行使にかかわらない公務員の労働基本権を制約してはならないとしている」「98号条約が保障している労働基本権の適用の可否をその国の事情に委ねられるな ら、国際基準たりえなくなる、経済大国日本の役割を果たすべき」といったものである。こうした中で日本政府は、2回目の発言・答弁で「ILO原則をふまえ てひきつづき関係する職員団体と誠実に交渉・協議する」と表明せざるを得なかった。

3、それぞれの意見表明を受けての委員会議長「集約」は、@(日本の公務員労働者が)自らの賃金決定への参加がいちじるしく制 限されていることへの懸念の表明。A労働基本権は国家の運営に関与しない公務員には適用されること。B現在進行中の公務員制度改革の中で、関係する労働組 合などとの十分な協議によって、98号条約が適用される公務員の雇用条件を団体交渉で決定すること。C日本政府は、以上のような問題点と指摘を公務員制度 と実施の両面から98号条約の全面的な適用にむけてとられた措置、もしくは予定されている措置についてILOに報告すること。となっており、全労連は、こ の議長「集約」が政府のすすめる公務員制度改革が公務員労働者をふくむすべての労働者の団体交渉権などの労働基本権を認めたILO98号条約に適合しない とする一歩踏み込んだものとして評価する。

4、日本政府は、こうした国際機関による要求と各国労働者の世論に応え、先進国の一員として、更にはアジアにおける国際的役割 の発揮にむけて、今回のILO総会の確認を真摯に受けとめるべきである。政府は現在すすめている公務員制度改革の「大綱」を撤回し、改めて国民本位で国際 労働基準を満たした公務員制度を確立すべきである。全労連は今後も広範な労働組合との共同をいっそう強化しながら、政府の責任を追及していく。

5、今回の条約勧告適用委員会では、国立医療機関の労働者・労働組合にたいする不当労働行為にたいしても審査され、議長「集 約」で、政府が病院部門の労働者のために団体交渉権を全面的に確保するための措置をひきつづきとるよう要求した。政府はこれを重く受けとめ、一日も早い国 立医療職場での健全な労使交渉の確立をはかるべきである。全労連は、国内においても日本医労連・国公労連・全医労を中心にとりくみを強めていく。

以 上