「公務員制度改革」闘争ニュースNO.15 【2002年6月13日】
ILO 総会で「公務員制度改革」を集中審査
=日本政府の発言に各国代表から批判が集中=
6月4日からジュネーブで開催されている第90回ILO定期総会には、全 労連から坂内事務局長(「公務員制度改革」対策本部長)をはじめ5名が 日本労働者代表の一員として参加しています。
全労連が3月にILO結社の自由委員会に提訴した「公務員制度改革」にかかわっては、6月11日に開かれた「条約勧告適用委員会」 で 審査され、 労働基本権の制約維持を決めておきながら、「公務員の権利は十分に保障される」とする日本政府の主張に対して、参加各国から批判の発言があいつぎ ました。
昨年のILO総会につづき、労働組合とのまともな「交渉・協議」もなくすすめられる「公務員制度改革」の不当性は、国際的にもますます明らかに されつつあります。
総会の会期は20日までですが、全労連代表団が現地から送ってきた「中間報告」にもとづいて「条約勧告適用委員会」の模様を報告します。
「労働組合と91回の交渉・協議」と日本政府は強弁
全労連・連合ともに、日本政府の「公務員制度改革」の内容とすすめ方についてILOへ提訴するなかで、「条約勧告適用委員会」では、日本政府の 第98号条約(労働者の団結権・団交権)違反が審理の中心となりました。
日本政府代表の厚生労働省の長谷川総括審議官は、昨年12月の「大綱」決定にいたるまでの「公務員制度改革」の経過について説明したうえで、労 働基本権の制約を引き続き維持しながらも、人事院勧告制度など「代償機能」はILOの原則をふまえて適切に運用されており、「日本の公務員の権利 は十分に保護されている」と釈明しました。
また、労働基本権の回復については、「公務員の地位の特殊性などを考慮に入れると、その取り扱いについては、慎重にならざるをえない」などとの べ、さらに、昨年の総会の「国際公約」である労働組合との「交渉・協議」にかかわって、「2001年1月6日に行革推進事務局が設置されてから、 現在まで91回の交渉・協議を行ってきたところである」などと強弁し、あたかも労働組合との交渉の積み重ねのうえで「大綱」の検討や決定が行われ てきたかのように描き出しました。
しかし、この日本政府の主張は、全労連の「訴状」でも明らかにしてきたように、事実に反するものです。その点を、日本の労働側代表が発言し、過 去から現在までILO結社の自由委員会などでも繰り返し指摘されてきたように、「大綱」が労働基本権の制約維持とした点は、明確な第98号条約違 反であるときびしく指摘。それにくわえて、「交渉・協議」と言いながらも、労働基本権の扱いを政府が労働組合に提示したのは、「大綱」決定のわず か1週間前だったという事実をあげて反論しました。
そのうえで、「ただちに『大綱』を白紙撤回し、日本の公務員制度をILO条約に適合したものに改革するために、われわれとの誠実な交渉を促進す べき」と、参加各国代表に訴えました。
この日本の労働側代表の発言に対しては、アメリカ、韓国、ドイツ、フランスなど各国労働側代表から、日本政府を批判する発言が集中しました。
日本政府代表は、2回目の発言・答弁で、あらためて労働基本権制約の正当性をのべましたが、最後には、「ILOの見解を十分認識しており、今後 とも職員団体と誠実に交渉・協議を行っていく」として、昨年のILO総会に引き続いて、「交渉・協議」を世界各国の前で表明せざるをえませんでし た。
署名をひろげ国内外の世論で「改革」にストップを
昨年のILO定期総会につづいて、日本政府の「公務員制度改革」が、国際会議の場で議論され、国際的な批判にさらされたことは、大きな意義を 持っています。
こうした状況をつくりだしたのは、全労連代表団など日本の労働者側代表による奮闘によるものですが、同時に、民主的な公務員制度の確立を求める 私たちの運動の成果でもあります。
とりわけ、全労連・連合の両ナショナルセンターが一致してILOに提訴し、日本政府がすすめる「公務員制度改革」の不当性を国際的に告発したこ と、さらに5月には全労連「公務員制度改革」対策本部の公務三単産書記長がILO本部を訪ね、結社の自由委員会に直に要請してきたことなどが、こ の問題を「条約勧告適用委員会」の議題にのせ、国際的な共感をひろげる土台となっています。
こうした点を確信 に、すでにとりくみがはじまっている「国民のための民主的な公務員制度改革を求める請願署名」を通して、国民・住民のあいだに 賛同を大きくひろげ、政府の「公務員制度改革」を国内・国外の世論で包囲していくことが重要となっています。
以 上