「公務員制度改革」闘争ニュースNO.11【2001年11月22日】
【自由法曹団との懇談】
国民のための行政は公務の「働くルール」確立と一体
〜国民と連帯し、国際的視野で〜
対策本部は11月21日、自由法曹団の弁護士のみなさんと「公務員制度改革」に関する懇談を全労連応接室でおこないました。懇談には、対策本
部から堀口(国公労連委員長)、駒場(自治労連委員長)両副本部長、浜島事務局次長、小田川本部委員(国公労連書記長)、小林事務局員、自由法曹団から竹
澤哲夫、松井繁明、菊池紘、牛久保秀樹、山田泰各弁護士が参加し、約2時間にわたって運動、政策に関して懇談しました。
「労働基本権」は制約したまま最悪の人事管理制度の導入ねらう
懇談に先立って堀口副本部長は、ご多忙のなか参加した方々に謝意を表したうえで、政府がすすめている「公務員制度改革」が、「単
に公務員労働者の在り方にとどまらず行政の在り方と国民サービスに関わる問題であり、広く国民的議論をおこない、国民・住民の視点にたった要求と運動が必
要になっている。そうした思いから各団体との懇談をおこなってきている。今日は、人権の守り手としての専門家として、公務労働者とその運動に対して忌憚の
ない意見をお聴かせいただきたい」と懇談の趣旨を述べた。また、駒場副本部長は、「行革推進事務局が提示した『行政職に関する新人事制度の原案』は、国家
公務員一般行政職約20万人を対象とする人事制度であるとしているが、これは一部の国家公務員にとどまるものではなく地方公務員を含む440万人の全公務
労働者の『働くルール』に関することであると認識している」とし、我が国全体の公務員制度の改変としてとらえて対応している見地が示された。
つづいて「公務員制度改革」の現局面と問題意識について小田川本部委員(国公労連書記長)は、昨年12月の「行革大綱」閣議
決定から推進事務局が発足し、3月「大枠」、6月「基本設計」、9月「新人事制度の基本構造」、11月に「行政職に関する新人事制度の原案」とすすみ、
12月にも「公務員制度改革大綱」が決定されようとしている経過を述べ、急ピッチで進められている問題点と争点を明らかにした。
提示された「公務員制度改革」の中心となる「新人事制度」の特徴として@職務職階制から「能力等級制」の人事管理制度とする
ことA人事院の機能を縮少し、各府省に人事権能を付与して、与えられた人員枠のなかで自由な裁量人事(級別定数管理廃止)がおこなえるものとすることB能
力・業績主義による免職制度(身分解体)の導入C職務給から能力給とするD新キャリヤ制度=本府省幹部候補職員集中育成制度の導入をあげた。この人事制度
の問題点として@「天下り」規制が明示されておらず、特権的官僚システムを強化し、「国家戦略スタッフ群」を形成し、大企業の要請に応える体制づくりであ
ることA労働基本権制約の「代償機能」と「第三者機関」(チェック機能)の変更と労働基本権の回復をどうするか不明であることB進め方も人事院や中央人事
機関を「無視」して内閣官房・政治主導ですすめていることC当該労働組合や労働団体との誠実な交渉・協議にもとづく「合意を前提」にしていないやり方など
を指摘した。浜島事務局次長からは、公務労組連絡会がとりくんできた宣伝活動などの運動と寄せられた意見を集約した資料等について説明した。
「公務員問題」の所在を明らかにし、国民的運動を
これに対して参加した弁護士の方々から理論・政策、運動面わたり積極的な意見が相次いだ。まず竹田弁護士からは、4月からの独立
行政法人化に関わり、その組織化と労働条件決定制度の変更にもとづく労働協約や就業規則の策定について、組合のとりくみの強化をはかることが指摘された。
これに対し国公労連が大学の独立法化問題をふくめて対応しておること、近く中執代表をILOに送り、国際的にも問題化するとりくみが紹介された。
松井弁護士からは、政府が「改革」を進める時、攻撃の手口として職員の「怠業」を持ち出し、「改革」推進の世論形成をはかっ
てくることが国鉄分割民営化攻撃での教訓だ。「改革」の真の狙いが隠されている。今回も特権的官僚の腐敗や外務省不祥事、「役場の仕事」と言ったことを
「改革」の口実にしている。もっと普通の公務員の仕事と労働条件、職場実態を国民に見えるようにしないといけない。能力・業績主義が職場に導入されるとど
んな公務労働になり、国民へのサービスがどうなるのか知らせ、公務サービスの一貫性、等質性の確保をはかる要求で一致することが必要だ。
民間では能力給が30年も前から入れられ、資本は「80年代の成長をつくり出した源泉」と言っているがウソだ。富士通など能
力・成果主義人事管理が経営の危機を招いているのが民間企業の実態だ。経済学者の遠藤氏人は「日本の査定制度は最悪だ」と指摘している。官民問わず選別・
差別の賃金システムは人間関係と仕事を破壊することで一致してたたかえるのではないかと問題提起された。
懇談では、労働条件決定システムの変更と労働基本権回復に対する職場からの討論と要求結集を急ぐことが話題となった。弁護士
側から「人事院の代償措置機能」を望む人もあるのではないかとの問もだされた。これに対し小田川氏は、「勧告機能の維持と労働基本権回復を対立的にとらえ
ていない」したうえで、いまの政府のやり方は、労働基本権制約をつづける一方で、人事院の勧告機能を縮小し、個別人事管理制度を導入して際限のない競争と
賃金抑制をおこない、組合の賃金決定への関与を排除することをねらっており、「労働基本権回復」は絶対に必要であると述べた。
菊池弁護士からは、今の日本は「自分は損をしている」と思わされている社会だ。ひとり一人が「豊かさとは何か」を考え、社会
的(行政)に期待するものを出し合い公務の必要性を確認するとりくみが求められているのではないか。東京などで教員が児童・生徒の指導との関係で昼休みを
勤務時間終了時刻の繰り上げとして行っていた措置が、条例で定められた退勤時までの勤務を求める声があがり、実質勤務時間の延長となったことなどをふまえ
ると、広範な人々に職員の勤務実態を知らせ、サービス残業問題として民間と共同するとりくみとすることを示唆された。
職場・地域と国際基準で追いつめよう
牛久保弁護士からは、公務サービスの必要性として郵便局の役割にふれ、過疎地域でのお年寄りの年金受け取り、少額預金の出し入
れ、災害時の保険証・通帳なしでの給付・支払いなど弱者、被災者にとって親切で便利な金融機関としての郵便局が必要であること。郵便局が地域住民の生活に
果たして役割を忘れてはならないと強調した。
また、公務員労働者の労使関係を国際的水準に高めることが求められているとし、ILOにもとづく労働基準を要求していくことが提起された。すくなくとも独立行政法人や郵政の公社化についてはスト権を含めた労働基本権の完全付与を求めることは当然のことであること。
いま、進行している公務員制度改革の「大綱」に向けての交渉・協議も政府が一方的に制度改悪を強行する危険性が高い。この問題
はILOの場で必ず問題となる。政府「回答」に対する対応を急ぐこと。当面、交渉ルールに関するガイドラインを組合が提起し、政府に守らせることが必要で
はないか。
消防職員問題など日本政府の前近代的権利意識にILOは不満をもち、「日本問題」として特別の関心を払っている。おおいにILOを活用し、国際的に追いつめることと職場・地域から挟み撃ちにすることが必要だ。
国民生活と労働条件を維持するうえで国・自治体の公共事業発注の在り方は重要だ。ILO94号条約で「公契約」が規定されている。その中で公共事業の発注条件として、地域の賃金水準などの基準を下回る積算・入札などは許されないことが謳われていることも紹介された。
一層の協力・共同を
さらに、民主的公務員制度要求に係わり、公務の近代化やコスト論をふまえ、住民に説得力のある政策を打ち出すことや宣伝物は文
字を少なくし、分かり易いものとすることなどのアドバイスと、今後想定される法案闘争もふまえ弁護士とチームをつくり対応することも提起された。これらの
意見や提起を受けて堀口副本部長が「出された意見、提起を十分検討し、これからの活動に活かす」ことを約し懇談を終えた。
以 上