「公務員制度改革」闘争ニュースNO.5【2001年5月25日】
「公務員制度改革」で石原行革担当大臣と会見
全労連対策本部が「申し入れ書」を提出(5/25)
全労連「公務員制度改革」対策本部は、5月25日午前、日本共産党松本衆議院議員の立合いのもと、石原行政改革担当大臣と会見し「申し入れ書」(別紙参照)を提出した。
これには全労連側から坂内本部長(全労連事務局長)をはじめ、熊谷副本部長(全労連副議長)、福島副本部長(自治労連委員長)、堀口副本部長(国公労連
委員長)、松村副本部長(全教委員長)、尾張部事務局長(全労連常任幹事)、山瀬事務局次長(公務労組連絡会事務局長)、浜島本部委員(公務労組連絡会副
議長)が出席し、政府側からは、石原大臣以下、西村内閣官房行政改革進事務局長、春田公務員制度等改革推進室長が応対した。
◆内容、手続きともに問題(全労連)
冒頭、坂内三夫本部長は、今回の政府の「制度改革」について、全労連構成組織の過半数が公務員組合であるとともに、公務員制度のあり方は国民生活に関わる問題であり、ことの重要性から、全労連として「対策本部」を設置したと述べた。
そして、99年3月の公務員制度調査会「基本答申」で述べている、公平・中立性など公務員制度の基本的性格とどのようにつながるのか、「グ
ローバル化」を言うのであれば、「グローバルスタンダード」が重要であり、労働基本権の問題は避けて通れないとして、今後さまざまな方法で考え方を提示す
るよう求めた。
堀口国公労連委員長は、国家公務員(非現業)の多数を組織している労働組合として、今回の「改革」が公務員労働者の労働条件決定システムを
ドラスティクに変えようとするもので大変問題視しており、当該組合の意見を聴くことは国公法108条にも規定されていることを強調した。
また、福島自治労連委員長は、公務員制度問題に対し地方6団体も政府に要望書を提出している。「大枠」では「地方自治の本旨に照らしつつ」とあるよう
に、各自治体の長、議会、労使関係をふまえて自主的に決定すべきだと述べた。
◆公務が成り立つよう、常識をもって(石原大臣)
これに対し石原大臣は、「申し入れ書」についてはよく検討させていただくとした上で、「公務員制度」を考えるとき、働く人(公務員)がいなくなっては公務が成り立たないので、常識をもってとりくんで行きたいと述べた。
[別紙]
2001年5月25日
行政改革担当大臣
石 原 伸 晃 殿
全国労働組合総連合(全労連)
「公務員制度改革」対策本部
本 部 長 坂 内 三 夫
「公務員制度改革」に関わる申し入れ書
政府・与党は、昨年12月1日の「行政改革大綱」の閣議決定にもとづき、「行政の組織・制度の抜本改革」の重要な柱
に「国家公務員、地方公務員制度の抜本的改革」をすえ、さる3月27日に行政改革推進本部として「公務員制度改革の大枠」を了解した。そして、4月26日
に発足した小泉内閣は、「聖域なき構造改革の断行」と称して「公務員制度改革」を押し進めており、今後、内閣官房行政改革推進事務局が、この「大枠」にも
とづいて6月中に「基本設計」をとりまとめ、その後の法案作業を経て、来年の通常国会に関係法案を提出するとしている。
ところで、この「大枠」は、「行政改革の最終目的は、社会・経済システムの全面的な転換」にあり、その第二段階として「人」
と「組織」に着目した「公務員制度改革」を行うとしている。その内容は、「信賞必罰の人事制度の確立」にむけた「能力・業績主義」強化の賃金体系の導入、
政治主導のもとで国家的見地からの政策立案機能の向上にむけた「国家戦略スタッフ群(仮称)の創設」などを基本的な柱としている。
その上で、これまでの人事院制度・機能から各府省に人事管理権を委譲し、総定員・総人件費の枠内で閣僚が自由に組織・人事制
度を設計・運用できるようにするとしている。これは行き着くところ特定の価値観への従属を公務員に迫り、国民全体の奉仕者から政権党の言いなりになる公務
員に仕立て上げていくものである。また、公務員の身分・労働条件と不可分な労働基本権回復問題などについては意図的に方向性を示していない。こうしたこと
から、全労連「公務員制度改革」対策本部として、今回の「大枠」は断じて容認することはできない。
いうまでもなく公務員制度は、公正・中立の公務運営を担保する「ルール」として国民サービスに直接影響することから、その改
革方向は国民全体にとって極めて重要な問題である。それゆえに国民的な議論を十分に尽くす必要があり、性急な結論の押し付けはやめるべきである。同時に、
公務職場で働く労働者にとって労働条件や「働くルール」に直接関わるものであり、その見直しにあたっては公務員労働者の労働基本権回復をはじめ市民的・政
治的自由の保障などが不可欠である。
以上のことをふまえ、「政官財ゆ着」の根絶や国民に開かれた民主的かつ能率的な行政と公務員制度を確立するため、下記事項について申し入れるので、その実現にむけて貴職の誠意ある対応を強く求めるものである。
記
1.「公務員制度改革の大枠」に関わって
(1) 公務員制度の検討に当たっては、行政の第一線で日夜奮闘している大多数の公務員に目を向ける必要があり、「新たな給与体系の構築」の内容は、公務
の民主的かつ能率的な執行の阻害要因にもなりかねないため、これを行わないこと。また、「企画部門」と「実施部門」の分離は、行政の一体性をそこない、国
民の意見反映を阻害し、行政に対する国の責任を曖昧にすることから、これを行わないこと。
(2) 公務員労働者の労働基本権回復は憲法の理念に照らして当然のことであり、ましてや人事院による級別定数制度を廃止し、各府省の大臣を「人事管理権
者」にして「責任ある人事管理体制の確立と自由度の拡大」を図ろうとするのであれば、すべての公務員労働者に労働基本権を全面的に回復すること。
(3) 「多様な人材の確保」「適正な再就職ルールの確立」などにかかわって「人事院の事前承認、協議制度」を廃止しようとしているが、公務員の採用をは
じめ任用全体にかかわって情実人事を排除することは公務員制度の基本であり、第三者機関による事前チェックを確実に行うこと。
(4) 「採用段階の区分にとらわれない適材適所の任用」は現行の公務員制度の基本でもあり、・種試験採用者の「年次別」昇進人事をやめ、すべての公務員
が専門的知識と技能を習得するための研修と責任ある地位に昇進する機会の保障など、民主的な任用、昇進制度を確立すること。
(5) 民間企業等との人材交流の促進にかかわって、「民間等の情報収集」を円滑に行うためとして公務員倫理法の形骸化を検討しているが、「官民のゆ着」
を断ち切るためにも、民間企業から採用する際の各府省判断による「ふさわしい処遇での任用」、民間企業から登用された人材が民間に再就職する際の「規制の
見直し」などを行わないこと。
(6) 「国家戦略スタッフ群(仮称)」の創設は政治と行政の関係にかかわる基本的な問題であり、その検討に当たっては、はじめに「結論ありき」ではな
く、特別職国家公務員との関係をはじめその役割や基本的性格、責任などをまず具体的に提示したうえで、慎重に国民的討論をを行うこと。
(7) 地方公務員制度についても、「地方自治の本旨に照らしつつ、国家公務員制度の抜本的な見直しに準じた見直しが必要」としているが、その制度と運用
は国に「準拠」すべきものではなく、大枠は法律で定めるとしても、各自治体の長、議会、労使関係をふまえて自主的に決定すべきものであること。
(8) 「6月には基本設計を取りまとめ、その後、法改正作業等に早急に取り掛かる」として、「『政策調整システム』に基づき、抜本的な改革の具体化に向
けた検討を迅速に行う」旨を表明しているが、公務員労働者にとっては労働条件や「働くルール」に直接関わることから、一方的な「改革」の検討を行わないこ
と。
2.国民のための民主的な行政の実現にむけて
(1) 主権在民を貫き、大企業の利益優先ではなく、雇用の安定や社会保障の充実など労働者・国民のいのちと安全を守り生活を改善させる政策を重視し、平和と民主主義を守り発展させること。
(2) 「政官財のゆ着」を断ち切るため、利害関係にある営利企業や法人等に対する公務員の「天下り」を禁止するとともに、政党・政治家への企業・団体献金や政治家の行政に対する「口利き」を禁止すること。
(3) 消費税増税・受益者負担増など国民に新たな負担を強いることなく、軍事費削減や不要不急の経費・大型公共事業の見直しなどで大幅な歳出削減を行い、財政の民主的再建を図ること。
(4) 労働者・国民の生活や中小企業・業者、農民のくらしと営業基盤を脅かす「規制緩和」や「輸入自由化」をやめ、公正競争を維持するための企業活動の規制、環境保護などを強化すること。
(5) 「公開の原則」を基本に、情報公開制度の実効ある拡充や国会の任命する「行政監視委員(オンブズマン)制度」の創設など国民参加による行政監察制度を確立するとともに、行政内部からも不正を告発できる制度を新設すること。
(6) 国民諸階層の意見が公正に反映できる委員構成と任命、「はじめに結論あり」ではない民主的運営と審議・議事録の公開など、審議会制度を抜本的に改革すること。
(7) 軍事・治安部門や不要・不急部門を縮小・廃止するとともに、教育、医療・福祉、労働者保護、防災や環境保全など、国民生活に密着しいのちと安全を守る行政分野の機構と定員を充実すること。
(8) 住民や自治体職員のくらしや仕事に大きく影響する「市町村合併」の押し付けや、合併推進の一方的な指導をやめ、正確で公正な情報公開と住民参加の民主的討論を保障するとともに、その合意を尊重すること。
以 上