6月9日、国会は「強制労働の廃止に関する条約(105号)の締結のための関係法律の整備に関する法律案」を賛成多数によって可決・成立させた。
本法案は、ILOが定めた基本8条約のうち、日本政府が批准していない強制労働の廃止条約(105号)を批准するために、ILO議連の有志議員により提出された法案である。関係法案の一つである国家公務員法では、争議行為のあおりそそのかしなどと政治的行為に違反した場合、3年以下の懲役刑とされていた規定を削除し、禁錮刑とした。同様に、争議行為や政治的行為を懲役刑としていた条文が禁錮刑とされた。地方公務員法も同様に規定している。
改正法は、争議行為や政治的活動などに対する罰則規定を廃止したわけではない。公務員の地位を利用した政治的行為は制約を受けざるを得ないと考えるが、勤務時間外の私的自由である政治的行為まで罰則があることは、基本的人権の制約であり、罰則そのものを廃止すべきだ。
法案が提出された背景は、条約が基本条約であって187カ国中176カ国が批准していることだけでなく、国際的な経済活動に影響を及ぼしていることがある。特に、経済連携協定で批准の努力が指摘されていること、ILOの基本条約などが国際的規範としてESG投資で選別に利用されていることなど経済活動の問題が大きい。したがって、公務員の労働基本権問題を正面から検討・議論したものでなく、懲役刑を禁錮刑に減じるという小手先の改正にとどまっている。国際的な経済活動の障害となる問題を除去するための法改正と考えざるを得ない。
一方で、懲役刑と禁錮刑が廃止され、新たに「新自由刑」が設けられる刑法が改正される予定となっている。「新自由刑」は、審議会答申で「必要な作業を行わせ、または必要な指導を行うことができる」と定義している。105号条約は、争議行為や政治的行為に対する強制労働を禁止しており、「必要な作業を行わせる」新自由刑が強制労働にあたるとの疑念がある。
しかし、強制労働の廃止条約が批准される方向で進んでいることは歓迎すべきことだ。具体的には秋の臨時国会以降になると考えるが、国会の総意として可能な限り早い段階での批准が行われることを願う。また、中核8条約で唯一の未批准条約となる雇用及び職業についての差別待遇に関する条約(第111号)の批准に向け、政府として早期に対応することを求める。
全労連公務部会・公務労組連絡会は、公務労働者の労働基本権回復と生活改善、公務・公共サービス・教育の拡充をめざし、憲法改悪反対、防災・感染症対策の強化など国民的な課題と結びつけ、諸要求の前進めざして全国の仲間とともに全力で奮闘する。(以上)