声明・談話など
公務員制度改革に係る「工程表」への緊急見解
2009年1月28日
全労連公務員制度改革闘争本部
国家公務員制度改革推進本部で、標記「工程表」が検討されている。1月27日の同事務局・顧問会議に提出されている原案に対し、闘争本部としての緊急見解を下記のとおり表明する。
記
T 基本的な見解
「工程表」は、国家公務員制度改革の全般について、@措置や検討の方向性、A検討の結論を得る時期や関係法律案の提出時期、B実施時期等を示し
ている。措置や検討の方向性については、労働条件に直接的、間接的に影響するものが相当数含まれており、労働基本権が著しく制約されている現行制度の下で
も、労働組合との交渉が求められる内容である。
いうまでもなく、労使の交渉は労働組合の団結権とかかわっており、労働組合の構成員の意見反映を保障するものでなければならない。その点で、「工程表」についての説明が十分になされ、交渉・協議が尽くされたとは言えないのが現段階である。
したがって、巷間言われているような「1月中の取りまとめ」に固執せず、関係者のオープンな議論と関係労働組合との交渉を尽くすことを強く求める。
U 個別の検討課題にかかわっての見解
1 「内閣人事・行政管理局」の機能・権限について
「内閣人事・行改管理局」の機能・権限等の検討が、幹部職員等の一元管理の導入を目的としていると理解する。
したがって、級別定数の設定および改定、研修に関する企画立案、人事院が行う勧告、意見の申出、人事院規則の制定改廃に関する要請、人事院が人
事院規則を制定改廃しようとする場合における事前の意見申出などに「人事院からの機能移管」などについては、指定職に限定し、一般職については、労働基本
の検討結果を待って整理するべきである。
今通常国会に提出を予定している国家公務員法等の一部改正について、同様の整理・検討が行われるよう強く求める。
2 「能力・実績に応じた人事の徹底」について
(1)能力・実績主義の徹底について
幹部職員、管理職員の範囲については、なお不明確は部分があるが、少なくとも管理職手当受給の有無だけで整理できるものではない。その点で、給
与の弾力化にかかわって、管理職手当の傾斜配分など、労働条件そのものについて、措置の内容を特定する取りまとめを現段階で行うべきではない。
(2)定年延長の検討等について
定年延長の検討とかかわって、役職定年制、給与の引き下げなどが検討課題として列記されているが、交渉が尽くされたといえない段階では具体的に言及すべきではない。
また、定年延長の検討等とかかわって、「政府部内に関係府省からなる検討体制整備」に言及しているが、あらゆる検討段階で、労働組合を含む関係者との協議を尽くす立場を明確にするため、「関係者からなる検討体制」を設けるべきである。
(3)法制上の措置を講ずる「手順」について
「工程表」では、法制上の措置とかかわって、「人事院の勧告等が必要な事項」については、「人事院に対して勧告等の要請を行う」とする事項が散見される(給与、定年まで勤務できる環境の整備など)。
「必要な事項」の判断を誰が行うのか、要請の法的性格などが極めてあいまいであるが、労働基本権成約の代償措置がなし崩しに形骸化することが強
く懸念される。したがって、労働条件および労働条件に影響を与える法制上の措置については、人事院の勧告を待って措置することを明記すべきである。また、
共済年金制度にかかわる人事院の意見申出が「たなざらし」状態にあることもふまえ、勧告等の具体化の責務を政府が負うことを明記すべきである。
(4)公募・官民人材交流の推進について
官民人材交流について、手続きの簡素化、対象の拡大、個人に着目した官民人材交流促進については、公務員の公正・中立性にかかわっており、慎重な検討が必要である。少なくとも、事前の規制や公正さを担保する手続き(第三者機関の関与等)の整備には言及すべきである。
また、人材交流とかかわる給与等の検討では、「公務部内の均衡」を検討要素として明確にすべきである。
3 労働基本権について
級別定数管理に関する事務の移管を契機にした自律的労使関係制度への改革を強調していることは認めがたい。人事院の代償機能の後退が労働基本権検討の前提となるような「バーターの関係」を描くことでは、まともな結論は期待できない。
ILOからの再三の勧告にも留意し、憲法第28条を具体化して、安定的で良質な公共サービス実現をめざす姿勢を明確にすべきである。
なお、労働基本権の検討、具体化を早期に行うことには賛成であるが、労働組合との協議は尽くすよう強く求める。
以 上