声明・談話など


「公務員制度改革」で日本政府はILO総会での指摘をただちに実行を!

第90回ILO総会・条約勧告適用委員会での日本の個別審査について(声明)


2002年6月20日
全国労働組合総連合


1、6月3日から開催された第90回ILO総会で、98号条約(団結権及び団体交渉権の適用)に関する個別審査で日本の公務員労働者の労働基本権 問題が「条約勧告適用委員会」で審議された。この問題は、昨年の第89回総会でもとりあげられ、日本政府は、現在すすめている公務員制度改革のなかで関係 する職員団体との誠実な交渉・協議をおこなうことを国際公約した。しかし、政府は実効ある労使交渉をおこなわないまま、昨年12月25日に「現行の労働基 本権制約を維持」するとした公務員制度改革の「大綱」を閣議決定した。

 全労連は、こうした政府の一方的決定は国際公約に違反するとして3月15日に結社の自由委員会に提訴し、連合も同趣旨で先立って提訴した。これ がとりあげられ、2年連続して国際労働基準に反する日本政府の姿勢が国際的な場で指弾されたものである。先ず、日本政府はこの事実を重く受けとめるべきで ある。

2、日本政府代表は、「昨年の総会以降、その都度職員団体と交渉・協議を91回おこなった。人事院の代償措置を維持するので、労働基本権の制約の代償措置は確保される」と答弁した。

 これに対し日本の労働団体代表やアメリカ、韓国、ドイツ、フランス、インド、パキスタン、オーストラリアの労働組合代表から強い批判が集中し た。その主張点は、「ILO98号条約は労働基本権を基本的人権の一部としている。警察・軍隊などの特別な権力行使にかかわらない公務員の労働基本権を制 約してはならないとしている」「98号条約が保障している労働基本権の適用の可否をその国の事情に委ねられるなら、国際基準たりえなくなる、経済大国日本 の役割を果たすべき」といったものである。

 こうした中で日本政府は、2回目の発言・答弁で「ILO原則をふまえてひきつづき関係する職員団体と誠実に交渉・協議する」と表明せざるを得なかった。

3、それぞれの意見表明を受けての委員会議長「集約」は、

@(日本の公務員労働者が)自らの賃金決定への参加がいちじるしく制限されていることへの懸念の表明。
A労働基本権は国家の運営に関与しない公務員には適用されること。
B現在進行中の公務員制度改革の中で、関係する労働組合などとの十分な協議によって、98号条約が適用される公務員の雇用条件を団体交渉で決定すること。
C日本政府は、以上のような問題点と指摘を公務員制度と実施の両面から98号条約の全面的な適用にむけてとられた措置、もしくは予定されている措置についてILOに報告すること。

となっており、全労連は、この議長「集約」が政府のすすめる公務員制度改革が公務員労働者をふくむすべての労働者の団体交渉権などの労働基本権を認めたILO98号条約に適合しないとする一歩踏み込んだものとして評価する。

4、日本政府は、こうした国際機関による要求と各国労働者の世論に応え、先進国の一員として、更にはアジアにおける国際的役割の発揮にむけて、今 回のILO総会の確認を真摯に受けとめるべきである。政府は現在すすめている公務員制度改革の「大綱」を撤回し、改めて国民本位で国際労働基準を満たした 公務員制度を確立すべきである。

 全労連は今後も広範な労働組合との共同をいっそう強化しながら、政府の責任を追及していく。

5、今回の条約勧告適用委員会では、国立医療機関の労働者・労働組合にたいする不当労働行為にたいしても審査され、議長「集約」で、政府が病院部門の労働者のために団体交渉権を全面的に確保するための措置をひきつづきとるよう要求した。

 政府はこれを重く受けとめ、一日も早い国立医療職場での健全な労使交渉の確立をはかるべきである。全労連は、国内においても日本医労連・国公労連・全医労を中心にとりくみを強めていく。

以 上