声明・談話など
国民に開かれた民主的行政と公務員制度の確立へ
政府の「公務員制度改革の基本設計」決定にあたって(談話)
2001年6月29日
全労連「公務員制度改革」対策本部
事務局長 尾張部 伸勝
1、本日、政府・行政改革推進本部は、「公務員制度改革の基本設計」を決定・発表した。
その性格は、3月27日の「公務員制度改革の大枠」の理念である、@社会・経済システムの全面転換で、21世紀にふさわしい「この国のかたち」の再構
築、Aグローバル化のもとで、国際競争力のある政策立案機能を発揮できる公務員確保、B政治主導の発揮、内閣を通じて「官」がサポート、の具体化であり、
つまるところ、これまでの国際的な経済競争での一部大企業の「生き残り」を政府挙げて支援する一方で、小泉政権が打ち出した「骨太の方針」でいう「民間で
できるところは、できるだけ民間にまかせる」とした国民に対する行政サービスは徹底して「減量化」する行政体制づくりのシナリオである。
2、主要な内容として、「大枠」で明らかにした「信償必罰の人事・給与制度」の具体化として、「能力」「業績」からなる人事・給与制
度、目標管理による「評価制度」の導入を明らかにしている。これは、行き着くところ、公務員の意識が国民への行政サービスという使命から離れて、組織内部
での保身に向けられることになる。さらには、内閣総理大臣を助ける者としての「国家戦略スタッフ」の創設は、先鋭化した一部の特権官僚によるこれまで以上
の中央集権的な政策決定システムであり、まさに政権のみに奉仕する公務員となる。
国民の批判が強く、「政財官」癒着の温床といわれる特権官僚の「天下り」についても、「人事院の事前承認」を廃して、「大臣の直接承
認」とすることは、現在よりも「天下り規制の緩和」となり、これは、国民の意識とは逆行するもので、一部キャリア官僚をこれまで以上に特権化し、「政財
官」癒着を一層拡大するものである。これらは総じて、「国民・住民に奉仕するべき」公務員から時の政権党に従属する公務員に仕立てていくものである。
3、公務員労働者の賃金・労働条件の根本的変更をしめし、さらには各府省・大臣の判断で組織管理ができる仕組みにするとしているが、そ
れは、公務員労働者の労働条件決定にかかわる重大な変更である。これまで政府自らが公務員労働者の労働基本権の「代償」と強弁してきた人事院制度を否定す
る方向を示した以上、公務員労働者にストライキ権をふくむ労働基本権の完全回復を明らかにすることは当然である。
にもかかわらず、「基本設計」では「引き続き検討」としていることからは、依然としてスト権回復の意思は伺われない。政府が「グロー
バル化社会」に対応する公務員制度というからには、国際労働基準に沿ってストライキ権をふくむ労働基本権の完全回復をおこなうこと改めて要求する。
4、いうまでもなく「公務員制度」は、「公正性、効率性、専門性、継続・安定性」といった普遍的な行政基盤を支える公務労働のルールで
あり、それは当然のこととして国民生活の「セーフティネット」としての行政サービスを保障する基本でなくてはならない。「公務員制度」の改革は、政府の政
策と不可分のものである。
リストラ支援策から労働者の「働くルール」の確立へ、「公共事業50兆円、社会保障20兆円」とした逆立ち財政の是正をはかっていく
上で、これまでの一部キャリア官僚による国民不在の政策・予算の立案・決定といった中央集権・特権的な公務員制度システムから国民の意思が政策決定過程に
反映されるシステムへの転換をはからなければならない。
5、今後の政府作業は、12月に「公務員制度改革大綱(仮称)」策定するとしている。本日「基本設計」が発表された以上、先のILO第89回総会で「関係者・職員団体との協議・交渉をする」とした日本政府の公約の忠実な実行をもとめる。
全労連「公務員制度改革」対策本部は、政府の「改革」構想が明らかにった段階から、これが単に公務員労働者だけの問題でなく、広く国民
の生活と権利にかかわる問題として重視し、広く労働者・国民に「その本質」を明らかにし、さらには「6・8中央集会」を官民労働者の団結で成功させてき
た。いよいよ夏から秋にかけ、国民に開かれた行政と公務員制度の確立にむけ、広範な国民との共同の発展をめざして奮闘するものである。
以 上