公務員制度改革にかかわる資料


結社の自由委員会・第2183号案件での追加情報

2009年3月19日
全国労働組合総連合

 第2183号案件に関し、以下のとおり追加情報を提供する。

1 国家公務員制度改革基本法の成立

 2008年6月13日に成立した国家公務員制度改革基本法は、内閣による公務員統制を強化する「内閣人事局」設置と同時に、能力・実績主義の徹底や官民の人材流動化を促進するなど新自由主義的な改革をめざす内容である。
 公務員の労働基本権確立は避けがたい改革であるにもかかわらず同基本法では、「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益および 費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係を措置するものとする」(法第12条)とされているに過ぎない。同条文 は、国会の審議で「検討する」とした政府原案が修正されて、「措置する」と一歩踏み込んだ内容となった。しかし、労働協約締結権付与にともなうコスト増な どを「措置」の制約要因としていることや、消防職員等の団結権問題や争議権付与には一切触れていないなどの点で、不十分さがある。全労連は基本法成立時 に、そのような問題点を指摘する見解を表明した。

2 労使関係制度検討委員会などについて

 政府は、国家公務員制度改革基本法の成立を受けて国家公務員制度改革推進本部を設け、そのもとに、顧問会議と労使関係制度検討委員会を置いた。
 顧問会議は、国家公務員制度改革の推進にかかる重要事項について審議し、国家公務員制度改革推進本部長(内閣総理大臣)に意見を述べるものとさ れている。労使関係制度検討委員会は、法第12条に基づく「自律的労使関係の措置」について調査審議し、本部長に意見を述べるものとされている。
 全労連が問題と考えるのは、それら会議等のメンバー構成である。顧問会議には、主要な経済団体や学者、官僚0Bなどが参加しているものの、公 務員労働組合を代表するものは1名も含まれていない。労働団体からの参加は中央団体からの1名(連合)であり、全労連は排除されている。
 労使関係制度検討委員会は、14名で構成するとされているが、現状は学者・有識者とされる者6名、労働側とされる者3名、使用者側とされる者 3名という変則的な構成である。全労連は、同委員会発足に当たって2名を推薦したが、受け入れられなかった。労働基本権問題を直接とりあつかう委員会の構 成としては、二重の意味で偏っているといわざるを得ない。

3 現在の検討状況

 政府は、2月初旬までに、国家公務員制度改革推進本部を3回、顧問会議を7回、労使関係制度検討委員会を3回開催した。
 2月3日に開催された国家公務員制度改革推進本部では、公務員制度改革に係る「工程表」が決定された。なお、この決定には、人事院が強い異議を申し立てている。
 「工程表」は、公務員制度改革の①措置や検討の方向性、②検討の結論を得る時期や関係法律案の提出時期、③(改革の)実施時期、を明らかにした ものとされる。しかし、その内容には①公務員人事の一元管理を行うための「内閣人事・行政管理局(仮称)」の設置とそれに伴う人事院の機能縮小、②能力・ 実績主義人事管理を徹底するための採用試験や給与制度見直し、③公務員の定年延長と、それに伴う給与制度などの見直し、なども含まれている。労働条件の変 更を伴う内容が検討されているにもかかわらず、全労連および傘下労働組合に、正式な内容提示があったのは1月26日であった。先に言及した顧問会議等の 偏った構成ともかかわって、全労連および参加の労働組合は、公務員制度改革に対する意見表明の機会を著しく制限された。
 また、「工程表」では、労働基本権について、2009年中に労使関係制度検討委員会の結論を得て、2010年に関連法案を提出し、2012年 までに試行するというスケジュールは明らかにされているが、その検討方向すら示されていない。人事院の機能を縮小させ、例えば給与決定の重要な要素となっ ている級別定数管理事務を、「内閣人事・行政管理局」に移管することは「工程表」で明らかにしながら、「自律的労使関係制度への改革は重要かつ必要不可欠 な課題」と言及するにとどまっている。公務員の労働基本権回復に対する日本政府の消極的な姿勢は変化していない。このような改革の進め方では、ILO結社 の自由委員会が再三求めている水準での労働協約締結権回を論議することにすら困難が生じている。
 なお、「工程表」で示されている「内閣人事・行政管理局(仮称)」の機能等を参考までに添付する。

 日本における公務員制度改革検討は重要な段階に来ており、全労連としては、ILOへの情報提供を引き続き行うこととしたい。

以 上