公務員制度改革にかかわる資料


ILO結社の自由委員会第329次及び第331次報告にかかわる追加情報

2005年1月14日
全国労働組合総連合

 285会期ILO理事会及び287会期で採択された第2177・2183号案件の結社の自由委員会「中間報告・勧告」にかかわって、日本政府の公務員制度改革の作業状況が変化してきていることについて、全労連は以下の点について追加情報を提供する。
 全労連は、以下のような状況の変化もふまえ、ILOが本案件について、第329次と第331次の「中間報告・勧告」をもとにした公務員制度改革の早急な具体化を日本政府に求める働きかけを強めるよう要望する。

1 日本政府の公務員制度改革検討の状況

(1) 2004年12月24日、日本政府は次のような決定を閣議においておこなった。
 ① 公務員制度改革大綱にもとづく改革の具体化については、改めて改革関連法案の提出を検討する。
 ② 現行制度の枠内でも実施可能なものについては、早期に実行に移す。
 ③ 当面、現行制度の下において、具体化にとり組みのは「退職管理」、「評価の試行」人材の確保・育成」の3課題とする。
 ④ これら3課題の内、「適切な退職管理」に関わる一部事務を除き、公務員制度改革を進めてきた行革推進事務局がとり組みを行うのではなく、現行制度で公務員制度を所掌する総務省が中心となって推進する。
(2) 重大な問題は、このような政府の決定は、現行法制度の枠内において公務員制度改革を行なうことを表明したものであり、公務員制度改革作業 の中断を意味している。そして公務員労働者の労働基本権保障にかかわる改革論議を棚上げにし、ILOが2回にわたる報告で改善を求めた労働基本権制約を今 後も維持することを意図している。
(3) 政府は、この決定をおこなうに当たって、直接の当事者であり関係者である全労連との交渉・協議をおこなっていない。
 政府は、2004年6月9日、政権与党である自由民主党、公明党が設けた行政改革にかかる与党協議の場から求められた「能力等級制の導入」、 「再就職の適正化」などに公務員制度改革の内容を重点化し、法改正作業に再着手した。 このような動きの中で全労連は、7月8日、政府(行革担当大臣)に 対し、「公務員労働者の当面の労働基本権保障の具体的要求」を提出した。その内容は、ILOからの二度にわたる「中間報告・勧告」にそった制度改革を求め るものであった。しかし、政府は、全労連の要求に誠実な対応をおこなわず、要求内容にかかわる正式な交渉・協議には一度も応じないまま、04年末の決定を 行った。

2 現局面に対する全労連の主張点

(1) 日本政府は、2001年12月の閣議決定(公務員制度改革大綱)において公務員制度への改革に着手した。その制度検討が、日本における公務員労働 者の労働基本権や公務員労働組合の結社の自由の保障の不十分さを改めて浮かびあがらせ、改善要求を再燃させたことは、提訴の段階でも強調している。
 その提訴に対し、2003年4月にILOを訪問した坂口厚生労働大臣は、「(ILO「中間報告・勧告」の具体化にむけた)関係労働組合との誠 実な交渉・協議」を表明している。また、2001年以降、連年のILO総会においても、日本政府代表は同様の表明を行っているところである。

(2) 日本政府は、第329次の報告に対し、全面的な反論をおこない、その受け容れに極めて消極的な姿勢を示しているが、それでもなお、関係者との誠実な交渉・協議を国際公約している事実は重い。
 しかし、少なくとも全労連と政府の間では、「中間報告・勧告」をふまえた具体的な交渉・協議は一度たりとも行われていない。全労連が一方的に、「中間報告・勧告」にそった公務員制度改革を要望する事態だけを繰り返してきたのが実際である。
 政府は、その国際公約にもかかわらず、国内ではそのような不誠実な対応を繰り返して来た上に、公務員制度の抜本改革の中断を一方的に宣言したのである。

(3) 政府は、公務員制度改革にかかる04年末の決定において、ILOからの「中間報告・勧告」の取り扱いについては何ら言及せず、現状の労働 基本権制約の見直しには何らの留意もしないまま、「現行制度下での評価制度の試行」などを表明している。全労連は公務員制度の民主化を棚上げする意図です すめられるような試行は認められないという立場である。
 全労連は、そのような政府の決定は、日本の公務員制度のILOが示す結社の自由原則への適合を遠い彼方の課題に追いやることになりかねないことを強く危惧している。
 日本政府は、近年、政府の行政領域の縮小施策を強め、独立行政法人化のみならず、公共サービス業務の委託や請負いなどを急速に進めている。その中では、解雇問題が発生し、あるいは独立行政法人移行時の労働条件切り下げが強制される事態も発生している。
 政府は、このような行政領域の縮小策が、一方で労働者の結社の自由を拡大することを強調している。しかし、それは、労働者が公務員制度の枠外に押し出され、雇用不安や労働条件引き下げの痛みを甘受する中で、結果としておきている事象にしか過ぎない。
 日本政府が、公務員制度改革そのものの課題として、結社の自由原則に適合した改善に着手するよう、国内外の圧力を強めることが、今こそ必要であることを全労連は主張する。

3 あらためてILOの働きかけを要請する

 全労連は、2002年3月の申し立て時点から、日本政府が、労働団体との適切な交渉・協議をおこなわないまま、公務員労働者の基本的人権課題を一方的に取り扱おうとしていることが本案件の中心の課題であることを主張してきた。
 日本政府は、ILOからの再三の助言にもかかわらず、その姿勢を全く改めようとしていない。また、日本の公務員制度を結社の自由原則に適合させ る努力を放棄し、言い訳と独りよがりな主張を繰り返し、日本の公務員制度に対する国際的な関心が薄らぐ日を待ち望んでいるように思える。
 全労連は、ILOとして事実の調査も含め、日本政府に対する毅然とした対応をとられるよう重ねて強く要請する。

以 上