【第4回ILO勧告:2008年6月】
ILO結社の自由委員会中間報告(結論および勧告部分のみ)
委員会の結論
1208.本委員会は、2002年3月に初めて提訴された本件は、日本において現在進められている公共サービス改革に関するものであることを想起する。
1209.本委員会は、提訴団体と政府からの報告によって、行政改革推進法案が、2006年3月10日に閣議決定されて国会に提出され、2006年5月26日、同法が可決したことに留意する。
1210.さらに委員会は、提供された書簡から以下の点について留意する。(1)2006年3月20日に、公務員制度改革に関する第2回政労協議
が開催され、そこでは「労働基本権を付与する公務員の範囲」について検討する場を設けることが合意された。(2)2006年5月29日に、公務員制度改革
に関する第3回政労協議が開催され、そこでは「検討の場」の任務が決定された。(3)行政改革推進本部専門調査会第1回会合が7月27日に開催された。同
調査会は、その活動期間を5年とし、労働組合、学者、企業、報道関係者を代表する17名の委員で構成されることとなった。(4)2007年4月24日に、
専門調査会第9回会合が開催され、「専門調査会における議論の整理」が採択された。同文書は、「公務員の労働基本権を含む(公務部門の)労使関係の問題に
ついて、改革の方向で見直すべき」とした。また、同文書では、公務員に付与される労働基本権に関連して、具体的な仕組みや諸課題についてシミュレーション
検討グループを設置し、検討を行うとした。
1211.さらに政府によれば、2006年9月、10月、11月、12月の専門調査会会合では、以下について検討された。すなわち、簡素で効率的
な政府における公務の範囲、公務を担う従事者の類型化、その公務と従事者のあり方、さらに、これらの検討を踏まえ、公務員の労働基本権を含む公共部門の労
使関係のあり方について検討された。政府の指摘によれば、専門調査会は、12月の会合において、2007年の1月と2月初旬に職員団体、人事当局など約
30団体に集中的なヒアリングを行うことを決定した。同調査会では、「労働基本権を含む(今後の)労使関係のあり方」を始めとする論点の柱立てについても
議論が行われた。
1212.本委員会は、日本労働組合総連合会(連合)を通じて伝えられた専門調査会による報告に留意する。これに関連して本委員会は、報告に示さ
れた中で、以下に関する限り連合が評価している点に留意する。すなわち、自律的な労使関係を確立するために協約締結権を付与する公務員の範囲を拡大すべき
こと、「[現行制度を]労使が自律的に労働条件を決定するシステムへと変革しなければならない」こと、「一定の非現業(ホワイトカラー)職員について、協
約締結権を付与すべきである」こと、さらに、第三者機関の勧告制度は廃止されるべきであることである。
1213.しかしながら本委員会は、同報告が、労働基本権の付与について予想されるコスト面から「慎重な決断」を求めていることに対して、連合
は、改革を先延ばしするための口実を政府に与えるものであり遺憾、としていることに留意する。さらに連合は、消防職員の団結権、公務員の争議権、労使協議
制について賛否両論を併記する以上のものではなく不満としている。報告では、協約締結権付与の問題に関して一定の方向性を示しているものの、結社の自由委
員会の勧告に沿って解決されるべき具体的かつ重大な課題は未解決のままである。
1214.本委員会は、提訴団体と政府の直近の報告から、国家公務員制度改革(基本)法案が閣議決定され、2008年4月4日に、政府が同法案を
国会に提出したことに留意する。政府は、同法案は専門調査会と懇談会の報告を踏まえたものと考えているが、提訴団体は、法案は一歩後退であると考えてい
る。
1215.本委員会は、連合が、法案は少なくとも両報告の結論を満たすべきであると考えており、また、争議権付与の問題についてさらに十分な議論
を行うことが重要であり、それがひいては団結権と団体交渉権の機能促進につながると考えていることに留意する。日本政府によれば、その立場は、(関係者と
の)率直な対話と調整が必要であり、有意義な意見交換を行い、公務員制度改革を実りあるものとするために最善の努力をするつもりである、という基本的な考
え方に基づいていることに、本委員会は留意する。
1216.本委員会は、日本政府が、昨今の公務員に関する国民の関心が高まっていることを認め、公務員制度改革は早期に取り組むべき重要課題であ
ると認識しており、職員団体を含む関係者と改革に関する調整を加速する必要があると理解している点に留意する。委員会は、さらに、政府は、専門調査会にお
ける審議を中心として、関係者との議論を積極的に進めている、とする政府見解に留意する。
1217.本委員会は、本件の前回審査以来、前進が図られたことに留意し、関係者間で定例討議が行われていることを歓迎する。委員会は、国会で最
終的に可決された法案が、今後、適切な手順を踏み、日本が批准した87号条約と98号条約に述べられた結社の自由の原則の実現に向けて必要な措置を、とり
わけ以下の事項に関して、効果的かつ遅滞無く講じられるように、十分な社会対話のメカニズムを育成することを期待する。
(i)公務員に労働基本権を付与すること
(ii)消防職員と刑事施設職員に団結権を付与すること
(iii)国家の運営に従事していない公務員に団体交渉権および協約締結権を保障すること、またかかる権利が法律上制約される可能性のある公務員に適切な代償措置を保障すること
(iv)国家の名において職権を行使しない公務員が結社の自由の原則に則って争議権を享受できるよう保証すること、またその権利を正当に行使する労働組合の構成員および役員が、重い民事罰または刑事罰の対象とならないよう保障すること
(v)公共サービスにおける交渉事項の範囲
委員会は政府に対し、上記のすべての事項の進展について情報提供を続けるとともに、国会に付託されたあらゆる関連法案について報告することを求める。
1218.大宇陀町の事案について、本委員会は、本件が管理職の範囲に関連しており、提訴団体が、管理職の範囲があまりに広範かつ一方的に決めら
れることが多いために、職員団体の組合対象者の減少をもたらしていると述べたことを想起する。さらに、提訴団体は、奈良県大宇陀町の例を挙げ、不当に拡大
された解釈によって、組合はその運営に実質的な支障をきたし、解散寸前の状況に追い込まれたとした。本委員会は、宇陀市公平委員会の上告を棄却し、当該職
員団体の登録取消を無効とした大阪高等裁判所の判決を確定した、添付の最高裁判決に留意する。
1219.本委員会は、独立行政法人に移管された労働者の団体交渉権の再編の結果について、政府が提出した情報に留意する。
1220.最後に、委員会は政府に対し、政府が望むならば、ILOによる技術援助を利用できることを想起させる。
委員会の勧告
1221.前述の中間的な結論を踏まえ、本委員会は理事会に対して次の勧告を承認することを求める。
(a)本委員会は、本件の前回審査以来、前進が図られたことに留意し、関係者間で定例討議が行われていることを歓迎する。委員会は、国会で最終的
に可決された法案が、今後、適切な手順を踏み、日本が批准した87号条約と98号条約に述べられた結社の自由の原則の実現に向けて必要な措置を、とりわけ
以下の事項に関して、効果的かつ遅滞無く講じられるように、十分な社会対話のメカニズムを育成することを期待する。
(i)公務員に労働基本権を付与すること
(ii)消防職員と刑事施設職員に団結権を付与すること
(iii)国家の運営に従事していない公務員に団体交渉権および協約締結権を保障すること、またかかる権利が法律上制約される可能性のある公務員に適切な代償措置を保障すること
(iv)国家の名において職権を行使しない公務員が結社の自由の原則に則って争議権を享受できるよう保証すること、またその権利を正当に行使する労働組合の構成員および役員が、重い民事罰または刑事罰の対象とならないよう保障すること
(v)公共サービスにおける交渉事項の範囲
委員会は政府に対し、上記のすべての事項の進展について情報提供を続けるとともに、国会に付託されたあらゆる関連法案について報告することを求める。
(b)委員会は政府に対し、政府が望むならば、ILOによる技術援助を利用できることを想起させる。
以 上