【第3回ILO勧告:2006年3月29日】


ILO結社の自由委員会中間報告(結論および勧告部分のみ)


委員会の結論

991.委員会は、2002年3月に最初に提起された当該案件が、日本で現在進められている公務員制度改革に関するものであることを想起する。

992.委員会は、この数ヶ月間、行政・政治の様々なレベルで多くの会合・議論が行われたことに留意する。委員会は、連合との協議・議論を踏まえて、2005年12月25日の閣議で「行政改革の重要方針」が策定されたことに特に留意する。

993.委員会はさらに、2006年1月16日に行われたハイレベル協議に留意する。提訴団体によれば、この協議において、政府が公務員の労働基 本権の制約を維持することを謳った2001年の公務員制度改革大綱を見直し、公務員に基本権を付与する可能性を検討することが確認された。政府および提訴 団体双方から提供された情報によれば、両者は、社会・経済情勢の変化に対応した公務の労使関係を改革する必要があることを認識した。委員会はまた、政府と 連合が、公務員制度改革について引き続き対話を行い利害調整すること、公務員の労働基本権付与の可能性も含め、幅広い観点からの検討が必要であること、当 面の課題である総人件費改革を進めるにあたっては、政府と連合は、雇用の確保が重要であるとの認識に立って、配置転換等の進め方の協議を行っていくこと、 さらなる意見交換を2006年3月に実施することについて両者が合意したことに留意する。提訴団体によれば、労組側が「検討の場」を設置することを求めた 結果、さらなる協議が実施されることとなった。連合によれば、この新たな方針が、2001年に決定された公務員制度改革大綱からの方針転換を意味するもの であるということに留意し、委員会はこれらの進展を歓迎するとともに、関係者が早期に望ましい方向にさらなる一歩を踏み出すことを強く督励する。

994.しかしながら、委員会は、いくつかの重要な政策的事項、特に公務員の労働基本権に関する重要事項が未決定であることに留意する。委員会 は、現在行われている協議が、公務員が基本権を自由に行使できるようにするための明確な一歩となることを信じる。さらに委員会は、消防職員および刑務所職 員に関する政府から提供された情報に留意する一方、これらの労働者が依然として団結権を制限されていることに注視している。委員会は、公務員制度改革に関 する議論が進行中であることに留意しつつ、政府がこの機会に、消防職員と刑務所職員が団結権を享受できるようにするよう勧告する。委員会は、消防職員委員 会制度の改革を関心をもって歓迎する。委員会は、政府および提訴団体に対し、今後も議論の結果について情報提供を続けるよう求める。

995.委員会は、2006年通常国会の会期中に、政府が2005年12月の行政改革の重要方針に基づいて、行政改革推進法案を国会に提出する予 定であることに留意し、政府に対し、この法案を先般の勧告で表明した結社の自由の原則に沿ったものとするよう求める。これらの要点は下記の勧告に再掲す る。委員会は、政府がILOによる技術援助を利用できることを喚起するとともに、行政改革推進法案が作成され次第、その写しを提出するよう求める。

996.委員会は、国の機関の独立行政法人への移管および予定されている日本郵政公社の民営化に関する政府から提供された情報に留意する。また、 委員会は、労組やその構成員への差別や妨害行為が行われる可能性がある場合に限って、組織再編(リストラクチャリング)過程について、それが解雇あるいは 官から民への移管を意味するのかという点について、申し立てを審議することはできるが(『結社の自由委員会の決定および原則ダイジェスト』1996年、第 4版、パラグラフ935参照)、委員会は、組織再編計画が労働者の雇用と労働条件に与える影響や定数削減の過程に関する結果について、政府が労働組合と協 議することが重要であることを想起する。これらの原則が尊重されることを信じ、委員会は、政府および提訴団体に対し、独立行政法人に移管された労働者の団 体交渉権の再構築の結果について、情報提供を続けることを求める。

997.委員会は大宇陀町事件に関して提供された情報に留意し、政府に対し、最終判決が出され次第、情報提供を行うよう求める。

998.委員会は、有明町事件に関して提供された情報に留意し、政府によれば、良好な労使関係が保たれていることに留意する。委員会は、提訴団体がさらなる情報を提供しない限りこの案件については追求しない。


委員会の勧告

999.上記の中間的な結論に照らし、委員会は、次の勧告を承認するよう理事会に要請する。

(a)委員会は、関係者による対話が構築されたことに関心をもって留意するとともに、関係者に対し、公務員制度改革および日本が批准している87 号および98号条約に述べられる結社の自由の原則に則った法改正について、早急に合意に達するために現在進行中の努力を続けるよう強く督励する。協議は特 に次の項目を扱うべきである。

 (i)公務員に労働基本権を付与すること

 (ii)消防職員および刑務所職員に団結権を付与すること

 (iii)国家の運営(administration)に従事していない公務労働者に団体交渉権および協約締結権を保障し、これらの権利が正当に制約され得る者については充分な代償措置が保障されること

 (iv)国家の名において職権を行使しない公務労働者については、結社の自由の原則に則ってストライキ権を保障し、正当にストライキ権を行使する労働組合の構成員および役員が民法上もしくは刑法上の罰則を科されないように保障すること

 (v)公務サービスにおける交渉事項の範囲

(b)委員会は政府に対し、行政改革推進法案が作成され次第、それを提供することを求める。

(c)委員会は政府に対し、大宇陀町事件に関する最終判決が出され次第、それを提供するよう要請する。

(d)委員会は政府および提訴団体に対し、独立行政法人に移管された労働者の団体交渉権の再構築の結果について、情報提供を続けることを求める。

(e)委員会は政府に対し、上記のすべての事項の進展について情報提供を続けることを求める。

(f)委員会は政府に対し、政府が望むならば、ILOによる技術援助を利用できることを想起させる。
以 上