公
務員制度改革にかかわる資料
公務員制度改革について
平成19年4月24日
閣 議 決 定
1.
改革の基本的考え方
(1)改革の必要性
これまで、公務
員は、戦後レジームの中で、国家運営の担い手として、国民と国家の繁栄のために積極的な役割を果たしてきた。しかしながら、本来優秀な人材が集まっている
のに、その能力が十分に活かされているとは言えない。また、経済・社会の変化に対応して、政策企画能力を高めるため、民間の専門能力を取り入れる必要も指
摘されている。他方、押し付け的あっせんや官製談合に対する強い批判がある。
このような現状に対応するため公務員制度改革を進
めることが急務となっている。
(2)改革の目的
公務員は、まず、国民と国家の繁栄のために、高い気概、使命感及び
倫理観を持った、国民から信頼される人物である必要がある。更に、公務員には、幅広い知識・経験に裏打ちされた一層の企画立案能力、管理能力が求められ
る。また、精緻・複雑化する行政分野に対応した今以上の深い専門的知識・経験を有するスペシャリストとしての能力も必要となる。
今回の公務員制度改革は、このような21世紀にふさわしい行政システムを支える公務員像の実現を目指す。それには質の高い人物が公務の世界に入り、能力を
高め、誇りを持って職務に専念できるような仕組みが必要である。また、官と民の闊達な交流により、専門能力、民間の世界に対する深い理解に基づいた行政の
展開が求められる。同時に、公務員が様々な機会にその能力を積極的に活かせる仕組みとすることも重要である。他方、上記のような批判を踏まえた改革を断行
し、国民の信頼を回復することも必要不可欠である。
このような改革は、いわば、「美しい国」を創る担い手として、国民から信頼され、かつ「世界に誇れる公務員」をわが国に創っていく
ことを目指すものである。
(3)パッケージとしての改革とその進め方
公務員制度改革は、能力・実績主義や再就職規制にとどまるものではなく、行政組織の職員の採用、能力開発、昇進、退職等の相互に関
連した人事管理制度全体に変革をもたらしていくものであり、パッケージとして改革を進めていくことが必要である。このため、以下のとおり、国家公務員法等
改正法案を速やかに国会に提出するとともに、引き続き公務員制度の総合的な改革を推進するため、基本方針を盛り込んだ法案を次期通常国会に向けて、立案し
提出する。
2.国家公務
員法等の改正
(1)能
力・実績主義
@人事管理の原則
職員の任用、給与その他の人事管理について、職員の採用試験の種類
や年次にとらわれてはならないこと、人事評価に基づいて適切に行うことといった基本的な原則を明らかにする。
A能力本位の任用制度の確立
イ 昇任、転任等
職員の昇任及び転任は、職員の人事
評価又はその他の能力実証によるものとする。また、職制上の段階の標準的な官職と、その官職に必要な標準職務遂行能力を明らかにしておき、標準職務遂行能
力及び適性を、昇任又は転任の判断基準とする。
ロ 採用昇任等基本方針
職員の採用、昇任、降任及び転任に関する制度の適切かつ効果的な運用を確保するための基本的な方針(採用昇任等基本方針、閣議決
定)を策定する。
B 新たな人事評価制度の構築
イ
職員の人事評価を「任用、給与、分限その他の人事管理の基礎とするために、職員がその職務を遂行するに当たり発揮した能力及び挙げた業績を把握した上で行
われる勤務成績の評価」と定義し、これを公正に行わなければならないこととする。
ロ 職員の執務について、その所轄庁の長は、定期的に人事評価を実施。ハ
人事評価の基準及び方法に関する事項その他人事評価に関し必要な事項は、人事院の意見を聞いて政令で定める。
C分限制度
分限事由の一つである「勤務実績がよくない場合」を「人事評価又は勤務の
状況に照らして、勤務実績がよくない場合」に改める。
(2)再就職に関する規制
@再就職あっせんの規制
各府省等
職員が職員又は職員であった者について、営利企業及び非営利法人(以下「営利企業等」という。)に対し再就職あっせんを行うことを禁止し、内閣府に設置す
る官民人材交流センター(以下「センター」という。)に一元化する。
センターは、職員の離職に際し行う離職後の就職の援助に関
すること及び官民の人事交流の円滑な実施のための援助に関することを行う。
一元化までの移行期間中は、再就職等監視委員会等の
承認を受けた場合に限り、各府省職員による再就職あっせんを可とする。センターは平成20年中に設置することとし、一元化実施時期は、センター設置後3年
以内とする。
A現職職員の求職活動規制
現職職員が自らの職務と利害関係を有する一定の営利企業等に対し、求職活動を行
うことを規制する。ただし、現役出向の場合、一定の官職以下の職員の再就職の場合、センターを利用する場合、再就職等監視委員会等の管理下において行う場
合には、現職職員による当該営利企業等への求職活動を可とする。
B退職職員の働きかけ規制
離職後に営利企業等の地位に就いた退職職員が、離職後2年
間、一定の国の機関の現職職員に対し、当該営利企業等又はその子法人が関係する契約又は処分であって離職前5年間に担当していた職務に属するもの等に関し
て働きかけを行うことを規制する。
離職後に営利企業等の地位に就いた退職職員が在職中に自らが決定した契約又は処分に関して働きかけを行うことを期限の定めなく規制
する。
C働きかけを受けた現職職員の規制
退職職員から上記Bに規定する働きかけを受けた現職職員に対し、再就職
等監察官への届け出を義務付ける。
D上記@〜Cにおいて、違反行為に対しては懲戒、過料を科し、不正な行為等に対しては、刑罰を科す。
E再就職情報の内閣での一元管理
管理職職員は、営利企業等の地位に就く場合等には、離職後2年間内閣総理
大臣に政令で定める事項を届け出なければならないものとする。
F事前承認制度の暫定的存続と廃止
離職後2年間の内閣による事前承認制度を暫定的に
設け、一元化の時点で同制度は廃止する。
G監視体制の整備
再就職等監視委員会を設置し、再就職に関する規制の適用除外の承認、任命権者への勧告等
を実施する。
同委員会に再就職等監察官を設置し、各府省等における再就職に関する規制違反の調査等を実施する。
3.官民人材
交流センターに関する方針
官民人材
交流センターの制度設計については、官房長官の下に置く有識者懇談会の意見を踏まえ、内閣において以下の原則に従い検討することとする。
(1)制度改革の進行とともに、各府省等の人事の一環としての再就職あっせんから、センターによる再就職支援に
重点を移していく。センターの主たるユーザーは職員となることを想定しているが、退職勧奨を行う人事当局からの依頼も受け付ける。多くの企業等から多様な
求人情報が得られる能動的な求職活動をしっかりと行えるよう、再就職ニーズに十分対応した積極的な求人開拓営業・キャリアコンサルティングの実施等によ
り、センターの再就職支援機能の重点的強化を図る。
(2)各省縦割りを排し、内閣一元化を図る。各府省等の人事当局と企業等の直接交渉は禁止し、センター職員は出
身府省職員の再就職あっせんを行わないこととする。センターは内閣府に置き、中央組織と地域ブロック別の拠点からなる組織・人員体制を整備し、各府省等か
らの中立性を徹底し、実効性のある効率的な組織・運営とする。あっせんの対象職員に関する必要なキャリア及び人的情報の把握のため、センター職員は人事当
局等と必要に応じて協力するものとする。
(3)あっせんによる就職実績等の公表も含め、業務の透明性を確保する。外部監視機関が厳格に事後チェックを行
う。
(4)センターを内閣府に、20年中に設置し、3年計画であっせん取扱いを拡大する。このため、センターの設置
後、随時、効率性・実効性の観点から見直しを行い、必要な追加的措置を講ずることにより、再就職ニーズに十分対応できる体制、業務の仕組み等を整備する。
その際、センターの規模については、再就職のニーズ・実情を十分把握した上での必要最小限度の体制の構築に配慮することとする。
4.パッケー
ジとしての改革
公務員が
国民から信頼され、官・民双方の場において能力に見合った活躍の場を得られるよう、改革の全体像を念頭に置きながら、実現できる改革から迅速に実現し、公
務員制度改革を前進させる。このため、前記、2.を内容とする国家公務員法等改正法案を速やかに提出する。これに加え、総理の下に有識者からなる公務員制
度に関する検討の場を設け、下記の課題を含む採用から退職までの公務員の人事制度全般の課題について総合的・整合的な検討を進めることとし、公務員制度の
総合的な改革を推進するための基本方針を盛り込んだ法案(国家公務員制度改革基本法(仮称))を立案し、提出する。
(1)専門スタッフ職の実現
職員の専門能力を活かして公務部内で長期間在職可能な専門スタッフ職の早期導
入を目指す。
(2)公募制の導入
意欲と能力のある多様な人材を確保するため、幹部職員について他府省及び民間を含めた
公募による任用を職務の特性を踏まえつつ推進する。
(3)官民交流の抜本的拡大
官から民、民から官の双方での官民交流の抜本的拡大に向け、早急に所要の制度
整備を行う。
(4)定年延長
公務員の定年と年金受給開始年齢の乖離、民間における定年の延長や再雇用の活用状況等も踏
まえ、公務員の定年延長を進める。
5.
その他
(1)自衛
隊員については、特別職の特殊性を十分考慮した上で、一般職の国家公務員に適用される能力・実績主義及び再就職に関する規制に準じた内容の法案を速やかに
提出する。
(2)地方公務員については、2.の内容や地方の実態等を踏まえた上で、改革の内容について検討を行い、必要な
法案を速やかに提出する。
(3)都道府県警察出身の地方警務官については、警察法において、国家公務員法の再就職規制に係る規定を適用除
外とし、地方公務員法と同様の規制を行う。
(4)労働基本権については、行政改革推進本部専門調査会の審議を踏まえ、引き続き検討する。