2001年3月27日
内閣官房行政改革推進事務局
公務員制度等改革推進室
(1)公務員一人一人の意識・行動原理の改革
@信賞必罰の人事制度の確立
・能力、業績等が的確に反映される新たな給与体系の構築
・能力本位で適材適所の任用の実現
・公正で納得性の高い新たな人事評価システムの整備
A多様な人材の確保・育成・活用
・採用試験制度の見直し等による多様な人材の確保
・個々人の育成計画の作成等による多様な人材の育成・活用
・女性の採用・登用の拡大
・超過勤務の縮減などによる勤務環境の改善等
B適正な再就職ルールの確立(「天下り」問題への対応)
(2)行政の組織・活動原理の改革
@国家的見地からの戦略的な政策立案機能の向上
A企画・実施両機能の強化
・民間企業等との人材交流の促進
・業務遂行規範の作成等
B責任ある人事管理体制の確立
・責任ある人事管理体制の確立と自由度の拡大
・府省の枠を超えた人員の再配置
・中央人事行政機関等の役割の転換
〜新たな制度の基本設計に向けて〜
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新たな政府の組織で働くのは新たな公務員でなければならない。
本年1月6日、我が国の中央省庁体制は、1府22省庁から1府12省庁へと大きく変貌を遂げ、新世紀に第一歩を記したところである。
しかしながら、今回の中央省庁改革は、いわば行政改革という長く苦しい道のりの「はじめの終わり」に過ぎない。行政改革の最終目的は、あくまでも、社
会・経済システムを全面的に転換することにより、21世紀にふさわしい「この国のかたち」を再構築することにあるからである。
今後、新しい「器」にどのような「中身」を盛るかが問われている。ハードウェアの改革が一段落した今、改革を真に実効あるものとする
ためには、行政改革の第二段階としてソフトウェアの改革に取り組んでいかなければならない。
ソフトウェアの改革の最大の問題は、何よりも行政を支える公務員自身の意識・行動様式を変えることにある。これが変わらない限り、全ての改革は画餅に帰
すと言っても過言ではない。
昨年12月1日、「行政改革大綱」が閣議決定され、公務員制度の抜本的な改革を行うことが打ち出された。
これまでも、公務員制度改革をめぐり、様々な議論がなされてきた。今、求められているのは、局所的な対策ではなく、新しい時代に合致したあるべき姿を白
紙から構想し、それを実現することである。
このため、公務員制度改革の実現を図るための組織として、内閣官房に行政改革推進事務局が設置され、国の若手職員や早期退職者に対してヒアリングを実施
するとともに、民間企業や地方公共団体の取組みなども調査しながら、新たな公務員制度の構築に向けて、検討を重ねてきた。
現在の公務員制度は、半世紀以上も前に作られた制度を踏襲しているが、改めて言うまでもなく、当時と現在とでは、行政、そして公務員 をめぐる環境は激変している。
「政」と「官」を合わせた政策立案・実施機構のトータルの国際競争力が厳しく問われる時代に、我々は足を踏み入れている。
経済活動のグローバル化が大きく進展する中で、当然のことながら国家間の政策の相互作用は急速に拡大している。もはや、高度な国際戦
略性のある政
策を立案できない国は、負担だけ求められて国際的尊厳を勝ち取ることはできない。このような国際競争力のある政策立案機能を行政の側で担うことのできる公
務員をいかに確保するか。
右肩上がりの経済成長が終焉し、限られた資源の中で、国家として多様な価値を追求しながら、一方で、膨大な財政赤字の累積や社会保障の問題など、世代間
の公平をいかに確保するかという問題も大きく横たわっている。これらの問題に果敢に挑戦する高い志と能力が、まさに今、公務員に問われている。
また、「お役所仕事」という言葉が、不親切、非効率の代名詞になって久しい。今こそ、国民の奉仕者である公務員の原点に立ち返って、
コスト意識や
顧客サービス意識を根付かせなければならない。国民生活に欠かせない業務に、使命感を持って、日夜地道に取り組んでいる公務員も多い。ただ、例えば前例主
義や予算消化主義が蔓延していないか、国民の視点に立って再点検することが必要ではないか。
そして、志を疑われるような不祥事の数々に端を発した公務員バッシングが、自ら招いたものとはいえ、誇りある職としての公務員全体の地位を低下させてし
まっている。加えて、政策立案能力に対する信頼の低下、セクショナリズムによる機動的・総合的対応の欠如、国民への過度の介入なども指摘されている。最近
の中央省庁における若手職員の早期退職の増加は、このようなバッシングなどに加え、自らが企画立案し実施している政策が真に国民のためになっているかとい
う疑問から、生涯を賭ける職としての公務員の魅力が低下している証左にほかならない。
国民の信頼の回復を第一義として、公務員制度をいかに改革していくべきかがまさに問われている。
また、「政」と「官」の関係についても、様々な問題の指摘がある。若手職員等に対するヒアリングでは、「政」と「官」の関係の在り方 に戸惑いを感 じている意見が数多く出された。今一度、真の政治主導の意味が問い直されなければならない。真の政治主導とは、内閣を通じたものでなければならず、「政」 と「官」は、内閣という場で共に協力し合い、国民の負託を受けた「政」が大胆な価値選択・政策決定を行い、「官」がこれを政策立案面や実施面でサポートす ることが必要である。こうした「政」と「官」の関係がしっかり根を張り、その上で国民のための政策の企画立案と実施が進められていかなければならない。
21世紀という新たな世紀に足を踏み入れ、今、問われているのは、公務員自身の自己改革能力である。
中央省庁改革の道筋をつけた行政改革会議の最終報告は、故司馬遼太郎氏が問い続けた「この国のかたち」の再構築を目標に掲げた。その一段落を見た今、こ
の「かたち」に生命を吹き込む時を迎えている。
明日の行政を担っていく若手職員やこれから行政を志す有為な若者たちのためにも、新たな公務員制度の構築へと歴史の歩みを進めたい。 本「大枠」はそのための第一歩である。
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現在の行政の問題は、複雑化した課題に対応できない硬直的な企画立案、非効率な業務執行などを生み出す、制度疲労を来たした行政シス
テムの問題自
身に由来しているものが多い。こうしたシステムを改め、時代の要請に応じた総合的・戦略的な政策立案、国民のニーズにこたえた効率的な業務執行を可能とす
る行政システムへの転換を図ることが、現在政府を挙げて取り組んでいる行政改革の目的である。
また、新しい行政システムの実現に当たっては、国民の支持を得て、既存の価値観を大胆に打破し、新しい政策を切り拓く力強い政治のリーダーシップが発揮
されることが重要であり、このような政治主導の下で、行政として十分な役割を果たすことが必要である。
これらの取組みを真に実効あるものとするためには、行政を支える公務員が、国民から厳しい批判を受けている縦割り意識、組織への安住、前例主義、サービ
ス意識の欠如などといった行動様式を根本から改め、専門家集団としての誇りと使命感を持って行動することが必要であり、行政改革のまさに中核をなす公務員
制度の改革が急がれるところである。
このため、今回の公務員制度改革においては、「中立公正で国民から信頼される、質の高い効率的な行政の実現」を目標に掲げ、「人」と
「組織」の両面に着目して、
○ 自ら能力を高め、互いに競い合う中で、使命感と誇りを持って職務を遂行し、諸課題への挑戦を行う、国民に信頼される「公務員」
○ 政治主導の下での国家的見地からの戦略的な政策立案、中立公正で簡素・効率的な業務執行を実現する、機動性に富んだ「組織」
を目指し、「行政改革大綱」の完全実施を含む抜本的な改革を行うべく、次のような基本的方向で、今後更にその具体化に向けた検討を進めていくこととす
る。
<目
指すべき公務員像> 自ら能力を高め、互いに競い合う中で、使命感と誇りを持って職務を遂行し、諸課題への挑戦を行う、国民に信頼される「公務員」 |
@ 信賞必罰の人事制度の確立
互いに能力を競い合い、生き生きと職務を遂行できる環境を実現するため、公正で納得性の高い新たな評価システムを整備し、優れた能力を示し大きな業績を
あげた者は高く処遇される一方、組織に安住し職務を全うしなかった者は厳しく処遇される、信賞必罰の人事制度を確立する。
(能力、業績等が的確に反映される新たな給与体系の構築)
現行の給与制度は、職務給原則に基づく「官職に基づく職務の級」と「勤続等に応じて昇給する号俸」からなる俸給制度を基本とするものである。
職務給原則とは、職務の種類・階層ごとにその困難度や責任度などに着目してあらかじめ給与が決定され、従事する職務に応じて給与が支給されるものであ
る。このような考え方に基づく現行の給与制度は、ポストごとの職務内容を固定的なものとせず状況に応じて弾力的に変化させる我が国の行政運営の実態に合わ
ないこと、また、能力に応じた給与を支給するためには必ずそれに応じたポストを用意しなければならないことなどの制度上の問題点を抱えている。このこと
が、評価や昇進管理の問題とあいまって、現在の競争原理に乏しい年功序列的・硬直的な人事システムの実態を招いている。
一方、多くの民間企業では、従業員の能力を基本とした給与制度が構築されており、長期的な人材の育成や環境変化に応じた柔軟な組織編成との整合が図られ
ている。また、近年では、個々の従業員の業績や管理職層の職責を適切に反映する仕組みも整備されてきている。
これらを踏まえ、現行の職務給原則に基づく給与制度を廃止し、例えば、給与を「職務遂行能力に基づく部分」、「職務の責任の大きさに 基づく部 分」、「具体的にあげた業績に基づく部分」等の要素に対応する支給項目に分割することにより、能力、職責、業績をバランスよく反映し、能力向上や業務達成 に対するインセンティブを高める新たな給与制度を構築する。
現行の給与制度の廃止と併せて、各府省の機動的・弾力的な人事運用を阻害する要因ともなっていた人事院による級別定数制度は廃止す
る。
新たな給与制度においては、各府省が自らの判断と責任において、総人件費の枠内で、一定の基準の下、それぞれの組織・業務の特性等に応じた給与設定がで
きるような仕組みを基本とする。
(能力本位で適材適所の任用の実現)
採用段階の区分に基づく、人事グループごと、採用年次ごとの管理を重視したシステムが、例えば、I 種採用者にあっては地位への安住を生み、II
種・III
種採用者にあっては能力の発揮を妨げているなどの問題を生じさせている。このため、新たな給与制度及び公正で納得性の高い新たな人事評価システムの導入を
契機として、I 種・II 種・III
種や事務官、技官の別など採用段階の区分にとらわれない能力本位で適材適所の任用を実現する。また、現在の行政組織において、必要なマネジメント能力を十
分に備えていない管理職員も少なからず存在するとの認識に立ち、管理職への任用に当たっては、マネジメント能力に対する厳正な評価を行うこととする。
さらに、勤務成績が良くない公務員や官職に必要な適格性を欠く公務員等に対する降任、免職等の分限処分については、処分の基準や手続を明確化するととも
に、適切な指導等を行ってもなお改善がみられない場合には厳正な処分を的確に講ずることとするなど、実効性のある制度を確立する。
(公正で納得性の高い新たな人事評価システムの整備)
能力・業績主義に基づく給与・任用制度の適切な運用を確保するためには、公正で納得性の高い新たな人事評価システムを整備することが不可欠である。
新たな人事評価システムについては、例えば、能力評価と業績評価の二本立てのシステムとし、企画、実施等業務の実態に応じて、能力評価においては求めら
れる能力・行動基準を定めてその基準に照らした評価を行うとともに、業績評価においては一定期間ごとに組織の目標を踏まえた個々人の業務目標を設定してそ
の困難度や達成度等の評価を行うことなどを検討する。さらに、本人との面談等を通じて、目標設定や評価結果に対する納得性を高めるとともに、人材の育成に
適切に活用される制度を確立する。
また、評価基準については、例えば、省益にとらわれないこと、手続を簡素化すること、予算を節約することなどが高く評価されるような、新たな行政の在り
方を踏まえた基準を明確に設定し、職員に明示することとする。
A
多様な人材の確保・育成・活用
志の高い有能な人材が集い、一人一人が採用から退職までの生涯設計を描きつつ、自ら切り拓いた能力を最大限に発揮できる環境を実現するため、多様な人材
の確保・育成・活用方策を展開する。
(採用試験制度の見直し等による多様な人材の確保)
多数の候補者から人物本位で採用ができるよう採用試験の筆記試験段階での合格者数の増加を図ることとするなど、各府省の業務の実態に即して多様で質の高
い人材を確保する観点から、採用試験制度の本質論に立ち返って、その在り方を抜本的に見直す。その際、社会奉仕活動の経験を評価することなど総合的な人物
評価の在り方について検討する。
新規学卒者のみならず民間企業等から高い専門知識・技術を有する人材を各府省の判断と責任において幅広く確保できるようにするため、人事院の事前承認・
協議制度の廃止を検討するなど、中途採用、任期付職員制度等の見直しを行う。
(個々人の育成計画の作成等による多様な人材の育成・活用)
個々人の育成計画に関し本人と話合いの機会を持ち、職員が具体的目標を持って主体的に能力向上に取り組める仕組みを導入する。また、例えば、職員の適
性・志向に配慮した複線型の人事コースを設定することや一定のポストへの公募制を導入して本人の選択の幅を増やすことなどにより、多様なキャリア・パスを
個々人が選択できるような仕組みを導入する。さらに、公務員の能力向上の観点から、官民交流や海外留学等の機会を大幅に拡大させることとし、これに併せ
て、海外留学後早期に退職する者には費用を返還させることとする。
(女性の採用・登用の拡大)
女性職員等に対するヒアリングでは、女性の登用を進めるためには、まず女性の採用を増やすことが必要である、出産、育児、介護等に対応しやすい勤務環境
の整備が必要であるなどの意見が出されている。
これらの意見等を踏まえ、女性の採用・登用を拡大するため、採用試験制度の見直しや公募制など多様なキャリア・パスを個々人が選択できるような仕組みの
導入を図るとともに、超過勤務の縮減や出産、育児、介護等のための休業、休暇等の取得を容易とする環境の整備などを行う。
(超過勤務の縮減などによる勤務環境の改善等)
若手職員等に対するヒアリングにおいては、職員の心身の健康を害することもまれではないほどの恒常的な長時間の超過勤務に対する懸念が強く示された。
こうした現状を改善するとともに、個々人が専門能力の向上を目指し、自己研鑚を行うことを促進するためにも、超過勤務を縮減することとし、国会関係、法
令審査、予算折衝、各省協議などの業務の徹底した見直し、外部に委託して支障のない事務についてのアウトソーシングの推進などを図る。また、公務の効率的
な遂行を図るなどの観点から、勤務環境の現状の問題点を洗い出した上で、その改善を図るほか、自己啓発のための休業制度等を導入する。
B
適正な再就職ルールの確立(「天下り」問題への対応)
権限・予算等を背景とした、いわゆる「押し付け型の天下り」との疑いを持たれる営利企業への再就職については、厳格にこれを規制する必要がある。
このため、関連性の強い営利企業への再就職については、明確かつ厳格な承認基準を設け、大臣の直接の承認を必要とするとともに、再就職先との関係等の情
報を詳細に公表することにより国民の監視下に置く。加えて、再就職後の行為規制を導入するなど実効性のある制度を確立し、「天下り」によって行政が歪めら
れているのではないかという国民の疑念を払拭する。これに伴い、人事院の事前承認制度は廃止する。
特殊法人等への再就職については、「行政改革大綱」に従い、その適正化について累次の閣議決定の徹底を図ることとされているところであり、さらに、特殊
法人等の事業、組織全般について抜本的な見直しを進めているところであるが、これに関連して、国民の厳しい批判にこたえ、特殊法人等を渡り歩くことによ
り、数次にわたり高額の退職金を受け取るようなことがないよう、公務員の再就職に係る退職金について厳格な見直しを行い、必要な措置を講ずる。
なお、官民の人材の流動性の向上、公務員の能力の活用、組織活力の維持等の観点から、国民の理解を得つつ、公務員が自らの能力・経験を活かして再就職す
ることが認められていくことは必要であるが、一方で、国民の「天下り」に対する批判の背景として、これまで公務員がその地位に安住し、自らの能力や識見を
磨くことを怠ってきたことがなかったか、率直に反省してみるべきである。その意味でも、今回の公務員制度改革の中では、公務員が自らの能力向上に取り組め
るような仕組みを導入することとしているが、まず公務員一人一人が、主体的に生涯設計を描きながら能力等を磨き上げていく意識を持つことが求められてい
る。さらに、国民の厳しい批判を十分に踏まえながら、政府全体として能力・経験を活かした適切な再就職をどのように進めていくか検討することが必要であ
る。
また、退職手当制度について、給与制度の改革を踏まえつつ、長期勤続者に過度に有利となるような現在の退職手当の算定方式等を改めるとともに、官民の人
材の流動性向上の観点から、官民の年金制度の相違を解消することについても検討を行う。
(2) 行政の組織・活動原理の改革
<目
指すべき行政組織像> 政治主導の下での国家的見地からの戦略的な政策立案、中立公正で簡素・効率的な業務執行を実現する、機動性に富んだ「組織」 |
@ 国家的見地からの戦略的な政策立案機能の向上
時代が大きく変化する中にあって、国政全体を見渡した総合的、戦略的な政策判断と機動的な意思決定が求められているが、これまでの行政は、各省間の縦割
り意識の中で既存の制度にとらわれ思い切った対応ができないでいるとの批判がある。
このため、中央省庁改革の趣旨を踏まえ、政治主導の下で、各府省の枠にとらわれず総合的・戦略的な政策立案を行う機能を高めるため、内閣・内閣総理大臣
を支えるスタッフとして、各府省や民間企業等から選抜されたメンバーから成る「国家戦略スタッフ群(仮称)」を創設するとともに、各大臣を政策立案面で直
接補佐するスタッフの充実を図る。この制度化に向けて、公募制の導入などのスタッフの選定方法やその後の処遇の在り方、さらには「国家戦略スタッフ群」に
ついて、例えば各府省から課長級等一定の段階で選抜して内閣官房で人事運用を行うことなどを検討する。
A 企画・実施両機能の強化
業務の実態に即した行政組織の機能強化を図り、企画立案機能の向上と簡素・効率的な業務執行の確保を実現するため、民間企業等との人材交流を促進するこ
とにより、民間の業務手法・発想の導入や技術革新等に対応した専門性の確保を図るとともに、各府省において組織・業務の目標や職員の行動基準を明確化する
業務遂行規範の作成等を行う。
(民間企業等との人材交流の促進)
情報化、技術革新等を通じた社会・経済システムの急速な変化の中で、高度な専門知識と創造性に裏打ちされた企画立案機能の向上、技術革新等に対応した的
確な業務執行を図るためには、各府省において、内部人材の能力開発はもちろんのこと、有能な外部人材の任用を促進する環境を整えるとともに、民間等の情報
を収集するための能力を向上させることが極めて重要である。しかしながら、これまで中立公正を追求するとの原則の下に、民間企業等との人材交流を過度に規
制してきたきらいがあるのではないかと考えられる。また、特に、公務員として厳しく反省すべき不祥事の続発による国民の批判の高まりを受けて、国家公務員
倫理法が制定され、民間等との個々の接触について詳細な規制が導入された結果、民間等外部との交流すべてが制限されているような受け止めがなされ、公務員
の過度な萎縮を招いているとの指摘もなされている。
これらのことにかんがみ、中立公正の観点に配慮しつつ、公務員の民間企業等への出向の機会を増大させる一方、民間企業等からの任用を円滑に行い、任期付
職員制度等の見直しにより、各府省の判断で、求められる人材にふさわしい処遇での任用を可能にする仕組みを整備する。また、一定のポストへの公募制を導入
するほか、民間企業から登用された人材が民間に再就職する際の規制の見直しなどを行う。さらに、国民の理解を得つつ、民間等外部との交流の中で政策立案等
に必要な情報収集を円滑に行うための方策について検討を行う。
(業務遂行規範の作成等)
戦略的な企画立案や中立公正で簡素・効率的な業務執行の実現を図るため、各府省が組織・業務の目標や職員の行動基準を明確にする業務遂行規範を作成し、
個々人に徹底する。業務遂行規範の作成に当たっては、例えば、企画立案面での縦割り意識の打破、実施面でのコスト意識や国民に対するサービス意識の徹底
等、業務の性格に応じて重視されるべき事項を明確化する。また、業務の合理化、質の向上等に係る組織目標をあらかじめ設定し、その達成度合いを管理職員の
評価・処遇に反映する仕組みなどの導入を図る。
B 責任ある人事管理体制の確立
実態に即した人事管理を徹底し、責任の明確化を図るとともに、その時々の政策課題に機動的・弾力的な対応が行えるよう、各府省が組織・人事管理について
主体的に責任を果たす体制を確立することとし、その制度化を図る。
(責任ある人事管理体制の確立と自由度の拡大)
主任大臣を頂点とする責任ある人事管理体制を確立することとし、大臣を「人事管理権者」として制度上明確に位置付ける。その上で、各府省の組織・人事管
理の自由度を拡大し、各府省ごとの総定員・総人件費などの枠内であれば、あらかじめ定められた明確な基準の下、例えば、課・室の機動的・弾力的改編や組
織・業務の特性に応じた給与設定を行えるようにするなど、各府省が自らの判断と責任において、組織・人事制度を設計・運用できる仕組みを整備する。これに
伴い、各府省において責任を持って適切な人事管理を行う体制の整備を図る。
また、内閣としても公務員制度の在り方に主体的に責任を持つことが必要であり、国家公務員制度の企画立案機能や統一保持上必要な総合調整機能を適切に果
たすこととする。
(府省の枠を超えた人員の再配置)
国の公務員総数が全体として削減され、行政組織の減量化が求められていく中で、特定分野への機能強化が必要な場合には、府省の枠を超えて、ダイナミック
に人員の再配置を行うことができる仕組み(インナーソーシング制度)を整備する。
(中央人事行政機関等の役割の転換)
組織・人事管理については各府省が主体的に責任を果たす体制を確立することなどに応じ、中央人事行政機関等の役割を、事前かつ個別・詳細にチェックする
ことから、あらかじめ定めた明確な基準の下でその遵守をチェックすることに改める。これに伴い、人事院については、人事管理に係る事前承認、協議制度を廃
止することを基本とするとともに、組織としての在り方も含め、今後求められる役割について検討を行う。
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今回の大枠を受けて、2で述べた「公務員制度改革の基本的方向」に沿って今後具体化に向けた検討を行っていくこととするが、現行の職 務給原則を廃 止し、能力、業績等が反映される新たな給与制度を確立すること、大臣を「人事管理権者」として位置付けること、人事院の役割を見直すことなどが不可欠であ ることから、国家公務員法等の改正を行うこととする。また、公務員制度全般にわたる抜本的な改革のための検討を進める中で、労働基本権の制約の在り方との 関係も十分検討する。
今回の大枠においては、国家公務員のうち主に一般の行政職員を念頭に置いて、改革の基本的方向を示したが、様々な業務に携わる公務員
がそれぞれの
立場で時代の要請に積極的にこたえていくことができるよう抜本的な改革を行っていく観点からは、一般の行政職員以外の職員についても大枠に示された考え方
を基本としつつ、それぞれの職種の特性に応じた検討を行っていくことが必要である。
また、地方公務員制度については、地方自治の本旨に照らしつつ、国家公務員制度の抜本的な見直しに準じた見直しが必要となると考えられる。
本年6月には新たな公務員制度の基本設計を取りまとめ、その後、法改正作業等に早急に取り掛かることとするが、基本設計の取りまとめ に当たって は、関係者からの意見も幅広く聞きながら、中央省庁改革の趣旨を踏まえ、「政策調整システム」に基づき、公務員制度全般にわたる抜本的な改革の具体化に向 けた検討を迅速に行うこととする。