NETニュース935 勧告の取り扱いで政府交渉(8/10)


使用者・政府としての積極的な賃金改善を

= 16勧告の取り扱いで非常勤職員の処遇改善などを追及 =

 公務労組連絡会は8月10日、内閣人事局に対して「公務員賃金等に関する要求書」(別掲)を提出し、16年人事院勧告の取り扱いをめぐって交渉しました。交渉では、初任給の改善や臨時・非常勤職員の処遇改善、配偶者手当の半減は行わないことなど、使用者である政府として公務労組連絡会の要求に真摯に対応するよう追及しました。

「代償措置」としての機能なく、政府は労働組合と協議を尽くせ

 内閣人事局との交渉には、公務労組連絡会から猿橋議長と蟹澤副議長、川村事務局長、米田事務局次長、篠原幹事、松井書記、自治労連から熊谷中執の7人が参加し、内閣人事局側は西水総括補佐と西山参事官補佐ほかが対応しました。

 要求提出にあたって猿橋議長は以下のような発言を行いました。
○ 8月8日に人事院勧告がだされ、今日は、勧告取り扱いにかかわっての要求書の提出ではあるが、勧告には看過できない課題がある。

 1つは、勧告の水準について。3年連続のベア勧告となったがその水準は0.17%、708円と昨年を下回り、また、一時金も0.1月改善にとどまっており、公務労働者の生活を改善するという基本要求を反映したものとなっていない。きわめて不満なものだ。政府として28兆円超の経済対策を講じようとしているが、真に景気回復を実現するためには、最低賃金の大幅な引き上げとともに公務員賃金の改善が不可欠だ。したがって、政府として勧告尊重にとどまらず、使用者して積極的な賃金改善を行うよう求める。

 2つは、扶養手当の見直しについて。勧告では、配偶者の扶養手当を半減させる見直しが行われたが、7万7千人余が賃下げとなる労働条件の不利益変更である。にもかかわらず、人事院は労働組合との協議を尽くすどこか、8月2日に見直し案を示して強行したものであり、労働基本権制約の代償機関としての機能が果たされたものではなく、勧告権の濫用である。勧告尊重ということで配偶者手当を半減するのではなく、あらためて政府として労働組合との協議を尽くすことが求められる。

 続いて、川村事務局長が以下のように発言しました。
○ 政府は、デフレからの脱却と景気回復、そして1億総活躍もかかげて最低賃金の引き上げ、同一労働同一賃金など非正規労働者の処遇改善に力を入れている。この間、再三指摘しているが、政府自身が最低賃金を1000円に引き上げる方針をだしており、公務で働く臨時・非常勤職員の時間額を直ちに1000円以上に引き上げるよう強く求める。
 同時に、今年の最低賃金の目安が政府方針に沿って3%の引き上げとなり、都市部では公務員のⅢ種初任給が最賃を下回るような事態になっている。人材確保の点からも初任給格差の解消は重大な問題であり、政府としての対応を求める。また、770万人労働者に直接影響する公務員賃金の社会的影響力も踏まえて、景気回復や地域活性化のためにも公務員賃金の改善にむけた検討を求める。
 雇用と年金の接続について、人事院は昨年に続いてフルタイム再任用の実現を求める報告を行っている。同時に、今年3月の定年退職者の再任用が前年比17パーセント増となっているが27%は意に反した短時間再任用と指摘している。良質な公務公共サービスを確保するためにも、高齢層職員の知識と能力の発揮が必要であり、政府として定年延長の真摯な検討と、少なくとも希望者全員のフルタイム再任用を確保するための政府の責任にもとづく具体的な対応を求める。

 参加者も以下のように発言しました。
○ 勧告の内容と取り扱いは地方に大きく影響する。それを念頭に置いた政策決定を求める。政府は、再任用の義務化と言いつつ短時間再任用が主となっている。財政のきびしい地方では先行することは難しく、国がどう対応するのかが大事だ。
○ 勧告では、再任用職員と非常勤職員がしっかり働くことが重要としているが、そのためにも処遇の改善が必要だ。
○ 三重県の副知事要請において、東京からUターンして三重に戻ったら賃金が16%下がったという話が出たが、賃金の地域間格差は問題だ。昨年の勧告では地域手当で格差を広げ、今年の勧告では本省とそれ以外の格差を広げているが、これで公務員のモチベーションが上がるのか。
○ 教育や福祉にお金がかかる状況のもとで、子の手当を引き上げても少子化には歯止めがかからない。大学授業料は50数万円かかることも問題。勧告尊重はありつつも、公務の運営や能率の点から扶養手当の見直しは検討する必要がある。
○ 雇用と年金の接続にかかわって、地方では大きな矛盾が生じている。北海道では再任用希望しても叶わずハローワークで職探しをしている。民間に比べて不利益となっている。62歳支給といっても満額ではなく、基礎年金は65歳からだ。政府としての政策判断を求める。
○ 公務員は人事院勧告で処遇が改善されることを期待している。民間の労働者も期待している。民間との較差の枠内での勧告にとどまっているが、政府として公務の最賃を千円とする主導性を発揮するよう求める。
○ 非特定法人などは労働基本権があり、労使自治が原則だが、人勧準拠で春の段階では回答はでない。通則法では自律的労使関係がうたわれている。配偶者手当の改悪も労使合意抜きには認められない。政府として、独法などの労使関係に介入しないよう求める。

 以上の発言を受けて西水総括補佐は以下のような回答を行いました。
● 先月28日の最終交渉に続いて、貴重な意見をいただいた。8月8日に人事院から給与改定に関する勧告が提出されたところであり、速やかに給与関係閣僚会議の開催をお願いし、その取扱いの検討に着手したいと考えている。
● 国家公務員の給与については、国家公務員の労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立ち、国政全般の観点から、その取扱いの検討を進めてまいる所存である。その過程においては、皆様方の意見も十分にお聞きしたいと考えている。
● また、併せて両立支援制度に係る勧告及び意見の申出も行われたところであり、この勧告等を踏まえ、皆様方の意見も十分にお聞きしつつ、必要な対応を検討してまいりたいと考えている。

 この回答を受けて猿橋議長が「本日の発言も踏まえて給与関係閣僚会議に反映することを強く求める。勧告尊重と言いつつ、勧告制度を掘り崩しているのではないか。基本権回復にむけた政府としての検討を求める」と述べて交渉を終わりました。

2016年 8月10日

内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
内閣官房長官 菅  義偉 殿

公 務 労 組 連 絡 会
 議長  猿橋  均

公務員賃金等に関する要求書

 人事院は8月8日、国家公務員給与にかかわって、月例給および一時金の引き上げ改定とあわせて、「扶養手当の見直し」などを内容とした勧告・報告を内閣と国会に対しておこないました。

 物価上昇等で労働者の実質賃金は5年連続で減少し、また、「給与制度の総合的見直し」によって公務員労働者には平均で2%もの賃下げが強行されているもとで、賃金と一時金の改善勧告が早期に実施されることは当然のことです。しかし、勧告の内容は、消費税増税などによる物価上昇には到底およばず、私たちの生活と労働実態からすれば非常に不満なものです。政府が重要課題に掲げる「景気回復」を確実なものとするためにも、770万人の労働者に直接影響する公務員賃金の社会的影響力をふまえ、政府が率先して大幅賃上げをおこない、すべての労働者の賃金改善につなげていくことが重要です。

 一方で、政府の要請にそって配偶者にかかる扶養手当を半減させる「扶養手当の見直し」が勧告されました。人事院は、5月下旬に「見直し検討」を表明したものの、8月2日になってやっとその具体的な内容を明らかにしたものです。労働組合とのまともな協議もないもとで、労働条件の不利益変更である扶養手当の改悪は断じて認められません。政府として、扶養手当の改悪はおこなわず、あらためて公務労組連絡会との十分な協議をおこなうよう求めます。

 また、年金支給開始年齢の繰り延べのもとで、雇用と年金の確実な接続が重要な課題であり、そのためにも定年延長の段階的実施が不可欠です。少なくとも政府の責任で希望者全員のフルタイム再任用を確保するとともに、賃金と諸手当の改善が必要です。
 給与関係閣僚会議での人事院勧告の取り扱いにあたって、貴職が、下記要求にそって公務労働者の賃金・労働条件の改善に力を尽くすよう求めます。

                    記

1、職員の働きがいや仕事に対する誇りを維持するため、また、公務員賃金の持つ社会的影響力をふまえ、初任給をはじめ公務労働者の賃金・労働条件の積極的な改善をはかること。

2、労働条件の不利益変更である扶養手当の改悪はおこなわず、勧告の取り扱いも含めて労働組合との協議を尽くすこと。

3、地域の公務員賃金を引き下げ、高齢層の賃金抑制、地域間格差を拡大する「給与制度の総合的見直し」は中止すること。

4、臨時・非常勤職員の賃金・労働条件改善をはかり、均等待遇を実現すること。

5、雇用と年金の確実な接続をはかるため、定年延長を早期に実現すること。当面、フルタイム再任用の定員は別枠とするとともに、希望者全員の再任用を保障すること。また、再任用職員の賃金・諸手当は、年金支給開始までの生活を維持するにふさわしく改善すること。

6、地方自治体、独立行政法人等の賃金決定に不当な介入・干渉をおこなわないこと。

7、労働基本権の全面回復など憲法とILO勧告に沿った民主的公務員制度を確立すること。

以上

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