NETニュースNO.979 人事院との最終交渉(8/3)


月例給0.1%台半ば引き上げ、一時金0.05月の5年連続の改善へ

= 非常勤職員の慶弔休暇を改善、人事院が最終交渉で回答 =

 
人事院交渉 公務労組連絡会は8月3日、18年人事院勧告をめぐる最終交渉を行いました。人事院は、賃金にかかわって、0.1%台半ばの月例給引き上げ、一時金0.05月の引き上げを回答しました。
 そのほか、交渉の重点である定年年齢の延長について、勧告と同時に「意見の申出」をおこなうことを明らかにしました。また、繰り返し要求してきた非常勤職員の休暇制度をめぐって、慶弔かかわる休暇の改善を回答しました。

 人事院との最終交渉には、公務労組連絡会から猿橋議長を先頭に、竹内副議長、秋山事務局長、米田・杉本各事務局次長、松井書記、国公労連からは中本中執が出席、人事院側は、給与局の本田課長補佐と職員福祉局の植田課長補佐が対応しました。

 交渉に先立って全国の職場から寄せられた15,964筆の「公務労働者の賃金・労働条件の改善を求める署名」を提出し、7月25日の中央行動で提出した署名とあわせて累計で115,542筆の仲間の声を届けました。

 猿橋議長は「この間の交渉で、労働基本権制約の『代償機関』としての人事院の果たすべき役割が大きいことを指摘し、人事院として積極的な対応を求めてきた」とのべ、要求に対する最終回答を求めました。
 人事院側は以下の通り回答しました。

初任給を1,500円引き上げ、来年から夏・冬の一時金を均等に

1、民間給与との較差に基づく給与改定について 

  勧告日は、8月8日となる予定である。

(1)民間給与との比較について
 月例給の民間給与との較差は、0.1%台半ばとなる見込みである。
 特別給は、0.05月分の増加となる見込みである。増加分は、今年度については、12月期の勤勉手当に充てる。来年度以降については、期末手当・勤勉手当ともに、6月期と12月期の支給月数が均等になるように配分する。

(2)給与改定の内容について
  (1) 俸給表の改定
 行政職俸給表(一)について、民間の初任給との間に差があること等を踏まえ、総合職試験(大卒程度)、一般職試験(大卒程度)及び一般職試験(高卒者)に係る初任給を1,500円引き上げることとし、若年層についても1,000円程度の改定を行う。その他は400円の引上げを基本に改定する。
 その他の俸給表については、行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定する。なお、指定職俸給表については改定しない。
 (2) 初任給調整手当
 初任給調整手当については、医療職俸給表(一)の改定状況を勘案し、医師の処遇を確保する観点から、所要の改定を行う。
 (3) その他
  1) 宿日直手当について、宿日直勤務対象職員の給与の状況を踏まえ、所要の改定を行う。
  2) 住居手当について、受給者の増加の状況を注視しつつ、職員の家賃負担の状況、民間の支給状況等を踏まえ、公務員宿舎使用料の引上げも考慮して、必要な検討を行う。

2、公務員人事管理に関する報告について
 
 以上のほか、公務員人事管理に関して報告することとしている。
 報告では、まず、国民の信頼回復と職場の活性化に向けて人事管理の観点から取り組み、多様な有為の職員が高い倫理観・使命感を持って国民のために職務に精励する公務職場の実現に努力していくこととし、これらを踏まえた具体的な課題や取組の方向性について次のとおり言及することとしている。

● 国民の信頼回復に向けた取組については、
 ・ 研修等を通じた倫理感・使命感のかん養
 ・ セクシュアル・ハラスメント防止対策
 ・ 公文書の不適正な取扱いに対する懲戒処分の明確化
  について言及することとしている。

● 長時間労働の是正については、国家公務員の超過勤務等に関する措置として、
 ・ 超過勤務命令の上限を人事院規則において原則1月45時間・1年360時間(他律的業務の比重の高い部署においては1月100時間・1年720時間等)と設定する。ただし、大規模な災害への対応等真にやむを得ない場合には上限を超えることができることとするが、その場合には、各省各庁の長に事後的な検証を義務付けること
 ・ 1月100時間以上の超過勤務を行った職員等に対する医師による面接指導の実施等、職員の健康確保措置を強化すること
 ・ 各省各庁の長は、休暇の計画表の活用等により、年次休暇の日数が10日以上の職員が年5日以上の年次休暇を使用できるよう配慮すること
  等について言及することとしている。

● 非常勤職員の休暇について、民間の状況等を踏まえて、慶弔に係る休暇について措置すること等について言及することとしている。

 そのほか、
 ・ 人材の確保及び育成
 ・ 成績主義の原則に基づく人事管理
 ・ 仕事と家庭の両立支援       
 ・ 心の健康づくりの推進
 ・ ハラスメント防止対策
  について言及することとしている。

3、定年の段階的な引上げのための意見の申出について

 質の高い行政サービスを維持するためには、高齢層職員の能力及び経験を本格的に活用することが不可欠であることから、定年を段階的に引き上げるため、意見の申出を人事院勧告と同日に行う予定である。

  意見の申出の主な内容として、
● 定年制度の見直しについては、
 ・ 一定の準備期間を確保しつつ、定年年齢を段階的に65歳に引き上げることとした上で、速やかに実施される必要があること
 ・ 定年の段階的な引上げ期間中は、現行の再任用制度を存置すること
 ・ 60歳以降の働き方等について、あらかじめ人事当局が職員の意向を聴取する仕組みを措置することなど

● 役職定年制については、
 ・ 新陳代謝を確保し組織活力を維持するため、当分の間、役職定年制を導入すること
 ・ 60歳に達した管理監督職員は、他の官職に降任又は転任(任用換)されること     
 ・ 例外的に、引き続き同じ役職定年対象官職に任用すること等ができる制度(特例任用)を設けることなど

● 定年前の再任用短時間勤務制については、
 ・ 60歳以降の職員の多様な働き方を可能とするため、職員の希望に基づき短時間勤務を可能とする制度を導入すること

● 60歳を超える職員の給与については、
 ・ 民間企業の60歳を超える従業員の給与の状況等を踏まえ、60歳を超える職員の年間給与について、60歳前の7割の水準に設定すること
 ・ 具体的には、60歳を超える職員の俸給月額は60歳前の70%の額とし、俸給月額の水準と関係する諸手当等は60歳前の7割を基本に手当額を設定し、扶養手当等の手当額は60歳前と同額とすること
 ・ 60歳を超える職員の給与の引下げは、当分の間の措置とし、民間給与の動向等も踏まえ、60歳前の給与カーブも含めてその在り方を引き続き検討することなど

  なお、定年の引上げが段階的に行われる間においても、新たな定年制度の運用の実情や民間企業における高齢層職員の給与の状況等を踏まえて、必要な検討を行うこととする。

● また、定年の引上げに関連する取組として、
 ・ 能力・実績に基づく人事管理を徹底すること
 ・ 勤務実績が良くない職員等には、分限処分が適時厳正に行われるよう、人事評価の適正な運用の徹底が必要なこと
 さらに、定年引上げを円滑に行うため公務全体で取り組むべき施策として、
 ・ 60歳を超える職員が能力及び経験をいかせる職務の更なる整備を検討すること
 ・ 定年の引上げ期間中も真に必要な規模の新規採用を計画的に継続できるよう措置すること
 ・ 職員の早期退職を支援するために、必要な方策を検討すること等について言及することとしている。

職場の要求に応えるべく、人事院はさらなる努力を

 最終回答に対し、秋山事務局長は「5年連続となる賃金と一時金の引き上げについては、春闘をはじめ私たちのたたかいの反映であると受け止める。しかし、公務労組連絡会が求めてきた生活改善できる水準からは程遠く不満なものである」とのべ、次の点を追及しました。

○ 官民較差の配分にかかわって、民間初任給との乖離(かいり)が大きいことから、初任給と若年層への重点配分は当然のこととして、なお歴然とした格差がある。較差内での配分では初任給層の民間との賃金格差を解消することはできない。総合職の初任給は別枠で定めているが、同様の対応を含め初任給引き上げを行うことをあらためて求める。

○ また昨年に続いて、すべての俸給号俸の引き上げが行われることは評価するが、地方で働く高齢層職員が「給与の総合的見直し」で賃下げされた分に全く届かない。高齢層職員の知識と経験を活かし、安心して職務に専念できるような賃金を求める。

○ 一時金では、改善分は再任用職員も含めて期末手当に回すよう求める。評価制度の導入・成績主義の強化により、公務における能率が上がったのかはなはだ疑問だ。むしろ、国会でも問題となったように隠蔽や改ざん、ごまかしなどが蔓延する事態となった。制度官庁として対応をはかるべき。

○ 非常勤職員の処遇改善では、最高裁で労働契約法20条裁判にかかわって判断が示されるもと、少なくとも夏季休暇と病気休暇の有給化、年次有給休暇の採用時付与など正規職員との格差の早急な是正が必要であり、この要求に応えることを強く求める。

○ 定年年齢の引き上げにかかわって、検討結果は大変不満である。賃金水準の問題は、職務給原則を第一に考えるべきであって、民間との均衡とは次元が違い、同じ仕事をしていたら同じ賃金を支払うのが当然だ。役職定年制については、恣意的な運用が広がる恐れがある。上位級ほど役職定年後の賃金水準が大幅に落ち込む点でも、役職定年制を適用する範囲を狭めるべきだ。

○ 再任用短時間勤務制の導入は歓迎するが、介護や育児など多様な働き方を望む声は幅広い層にある。この制度は60歳以降に限定することなく、適用できるようにするとともに、常勤職員に復帰できる制度とすべきことを求める。
 また、現行の再任用制度を存置することとなるが、年金の職域加算部分の支給は現時点でも63歳からであり、近い将来すべて65歳となる。再任用職員の格付けも低く、貯蓄を取り崩して生活している職員は多い。定員の都合で短時間再任用とならざるを得ない職員も多くいる。安心して生活できるよう人事院としての努力を求める。

○ 時間外労働の上限規制は、根本的には時間外労働がない社会をめざすことが必要であり、そうであるなら時間外の規制は厳しくすべきだ。しかし、今回のような規制にせざるを得ないのは、結局のところ仕事量に見合った人員が確保されていないことにすべて行き着く。人員の確保について関係機関に対し強く働きかけるよう求める。

 その後、交渉参加者からもさまざまな角度から追及があり、最後に猿橋議長は、「政府が掲げる労働者の賃上げや、長時間労働の規制、『非正規と言われる労働者をなくす』などの基本政策を、公務の分野でどのように具体化するのかが、最大の課題となっている。人事院が労働基本権制約の『代償機関』として、正規・非正規の公務労働者の待遇改善と、定年引き上げ、超過勤務の実効ある縮減とそのための増員などにむけた勧告ギリギリまでの努力を求める」と述べ、交渉を締めくくりました。

以 上