NETニュースNO.970 全人連に要請(4/11)



公務員賃金や非常勤職員の労働条件の改善を求める

= 公務労組連絡会が全国人事委員会連合会に申し入れ =


 公務労組連絡会は4月11日、自治労連・全教と共同して、地方公務員・教員の賃金・労働条件の改善を求めて、全国人事委員会連合会(全人連)への要請を行いました。

 申し入れでは、5年連続でのベアとなったが、生活改善には程遠く、景気の回復と地域経済の活性化のためにも公務労働者を含めたすべての労働者の賃金改善は不可欠であることを指摘し、全人連としての積極的な対応を求めました。
 また、各単産からは、臨時・非常勤職員の処遇改善や長時間過密労働の是正などに全人連として努力するよう要請しました。

長時間労働是正や非正規職員の改善に人事委員会の役割発揮を

全人連要請 全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは猿橋議長(自治労連委員長)、中村副議長(全教委員長)、川村事務局長、米田・杉本の各事務局次長、自治労連の中川書記長と全教の小畑書記長が出席しました。

 全人連側は、青山会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、鍬田(北海道)、小川(宮城県)、川合(神奈川)、齋藤(愛知県)、栗原(大阪府)、森信(広島県)、宇都宮(愛媛)、井手(福岡県)、岡部(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席しました。

 猿橋議長が要請書(別掲)を青山会長に手交し、「自治体労働者・教職員の賃金については、誇りを持って職務に専念できるように、生計費原則をふまえて、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の賃金・労働条件を改善するよう求める。この間、地域間格差を拡大している地域手当の問題を指摘してきたが、あわせて、政府・総務省によるラスパイレス指数による賃金抑制の圧力が強まっている。こうした圧力や不当な介入・干渉に屈することなく、毅然と対応するよう求める」とのべました。

 自治労連の中川書記長は、「優秀な人材を確保するためにも、地域間格差の解消、初任給の改善を強く求める。すべての人事委員会が労働基準監督機関としての役割を発揮し、長時間労働の解消と定数増を勧告すべきだ」とのべ、あわせて臨時非常勤職員の賃金・労働条件の改善を要請しました。

 全教の小畑書記長は、教職員の長時間過密労働について、「教育現場にふさわしい時間外勤務手当をつくるなど、給特法の改正も含めて、強く文科省に改善を要求している。各人事委員会においても、教職員の長時間過密労働の実態をしっかりつかみ、改善策を打ち出すよう勧告することを求める」とのべました。

 要請に対して、青山会長からは以下のような回答が示されました。

【青山全人連会長の回答】
 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、全国の人事委員会にお伝えします。
 さて、最近の経済状況ですが、3月の月例経済報告においては、「景気は、緩やかに回復している」とされる一方、先行きについては、「雇用・所得環境の改善が続くなかで、各種政策の効果もあって、緩やかな回復が続くことが期待される」としつつも、「海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある」としております。

 また、民間における春季労使交渉の状況ですが、3月中旬の主要企業の一斉回答では、ベースアップを5年連続で実施し、賃金の引上げ幅は前年を上回る回答が相次いだものの、大幅な引上げ回答に慎重な企業も目立ったと報道されています。
 一方、中小企業につきましては、引上げ額が前年を上回る水準で推移しているとの報道もありますが、まだ多くの企業で労使交渉が続いていることから、引き続き今後の動向を注視する必要があると考えております。

 こうした民間における賃金の状況を的確に把握するため、毎年、各人事委員会は、人事院と共同で民間給与実態調査を行っております。本年も、例年と同様の日程で実施する予定であり、5月初旬からの調査開始へ向けて、現在、準備を進めているところです。
 本日、要請のありました個々の内容は、各人事委員会において、調査の結果や各自治体の実情等を踏まえながら、本年の勧告に向けて検討していくことになるものと思います。

 申し上げるまでもなく、私ども人事委員会の重要な使命は、中立かつ公正な第三者機関として、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した、適正な水準を確保することであると認識しております。
 全人連といたしましては、今後も、各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、各人事委員会や人事院などと十分な意見交換に努めてまいります。(以 上)

【全人連に提出した要請書】
2018年4月11日
全国人事委員会連合会
 会 長  青山  殿
公 務 労 組 連 絡 会 
  議 長  猿橋  均
 
日本自治体労働組合総連合
中央執行委員長 猿橋  均

全日本教職員組合
中央執行委員長 中村 尚史

地方公務員の給与等の改善にかかわる要請書

 日頃から地方公務員の勤務条件の向上に努力されていることに敬意を表します。

 2018年春闘における民間企業の回答は、昨年をやや上回る傾向にありますが、実質賃金のマイナスが続いているもとで生活改善には程遠い水準にとどまっています。地域経済を活性化させるためにも、賃金を大幅に引き上げて、消費の拡大、景気の好循環を実現していくことが喫緊の課題になっています。また、「給与制度の総合的見直し」によって地域間格差が拡大し、人材確保に支障を来している自治体もあります。地域の公務員賃金は地場賃金にも影響することから、地域間格差を是正することとあわせて公務員賃金の改善が求められます。

 一方で、2020年4月施行の改正地方公務員法・地方自治法の制度移行にむけた準備が進められているもとで、公務・公共サービスの提供や教育に不可欠となっている臨時・非常勤職員の任用や勤務条件の確保・向上にむけた人事委員会の役割が重要になっています。
 また、メンタル不調により長期休業する職員が1%を超えて高止まりするなど、地方公務員の長時間過密労働はますます深刻になっており、人員増は待ったなしの課題です。

 第一線で奮闘する公務労働者の労苦に報い、良質な行政サービス・教育を提供するためにも、各地の人事委員会が労働基本権制約の代償機関としての責務と役割をふまえて、下記要求の実現に尽力されることを要請いたします。



1、住民の暮らしや子どもたちの教育のため、日夜、献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励ますとともに、「全体の奉仕者」としての誇りと尊厳を持って職務に専念できるように、生計費原則をふまえ、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の賃金・労働条件を改善すること。
  
2、民間給与実態調査にあたっては、単に民間の賃金水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密接不可分であることに十分留意して調査を行うこと。とりわけ、勤続・経験年数の加味、雇用形態、民間一時金水準の厳正な把握とともに、比較対象企業規模を100人以上にすること。

3、職務給原則に反した賃金格差の拡大や高齢層の賃金抑制をやめること。また、地域間格差を是正するため基本給の抜本的な底上げを行うとともに、地域手当の格差を緩和し初任給改善を行うこと。

4、地方の公務員賃金について、政府による干渉や介入は行わないよう人事委員会として意見表明すること。

5、子どもたちのさまざまな困難に対応している教職員のモチベーションを支えるためにも、職責と勤務実態に応じた教職員賃金の適正な水準を確保すること。

6、地方公務員の異常な長時間過密労働を解消するため、必要な人員の確保を勧告すること。また、労働基準監督機関として適切な労働時間管理が行われているかを監督するとともに、必要な措置を行うこと。労働基準法33条3項の拡大解釈を認めず、同法36条にもとづく協定の締結を指導すること。

7、教職員の時間外労働について、人事委員会として、臨時・緊急の限定4項目以外の時間外労働は違法であり、許されないとの給特法の趣旨をすべての学校に徹底するよう当該の教育委員会に意見表明を行うこと。また、労働基準法37条との整合性をもつ、教育現場にふさわしい時間外勤務手当制度をつくること。

8、男女共同参画推進、女性の活躍推進の立場から、妊娠、出産、育児、家族看護や介護に関する休暇・休業制度等を拡充すること。また、安心して妊娠、出産、育児ができる職場環境や人員体制を確保するよう意見表明すること。

9、臨時・非常勤職員について、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現などにむけて必要な報告・勧告をすべての人事委員会で行うこと。

10、定年延長の検討にあたっては「雇用と年金の接続」を大原則に、希望するすべての職員の雇用が保障できる制度を確立し、生計費をふまえた賃金水準の確保にむけて、人事委員会としての役割を果たすこと。

以 上