NET ニュースNO.964 全人連への申し入れ(2/5)


長時間過密労働など自治体や学校現場の実態改善を

=  公務労組連絡会が全国人事委員会連合会に申し入れ =


 公務労組連絡会は2月5日、自治労連・全教と共同して、地方公務員・教職員の賃金・労働条件の改善を求めて、全国人事委員会連合会(全人連)への要請を行いました。
 申し入れでは、安倍首相が「3%賃上げ」を経済界に要請しているもと、景気の回復と地域経済の活性化のためにも公務労働者を含めたすべての労働者の賃金改善は不可欠であることを指摘し、全人連としての積極的な対応を求めました。
 また、各単産からは、地域間格差の解消や初任給の改善、臨時・非常勤職員の処遇改善や長時間過密労働の是正などに全人連として努力するよう要請しました。

地域間格差の是正、臨時・非常勤職員の処遇改善を求める

全人連要請   全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは猿橋議長(自治労連委員長)、中村副議長(全教委員長)、川村事務局長、杉本・米田の各事務局次長、、松井書記、自治労連の中川書記長と全教の小畑書記長が出席しました。

全人連側は、青山会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、鍬田(北海道)、小川(宮城県)、山田(神奈川県)、戸田(愛知県)、栗原(大阪府)、加藤(広島県)、宇都宮(愛媛県)、井手(福岡県)、岡部(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席しました。

 はじめに、猿橋議長が要請書(別掲)を青山会長に手交し、「景気を回復し地域経済を活性化するためにも、すべての労働者の賃金改善が求められる。『給与制度の見直し』で、現給保障の廃止により多くの職員に賃金低下がもたらされ、地域手当による地域間格差の拡大が、公務労働者の士気を低下させるばかりか、人材確保にも支障をきたしている。地域手当は廃止し、基本給に繰り入れるよう求める」とのべました。

 長時間労働の是正の問題では、「地方人事委員会として、職員の健康をしっかり確保するとともに、根本的な解決策として、人員増にむけた対応が求められている。定年延長の検討は、労使の十分な協議と合意のもとに進めることはもとより、雇用と年金の確実な接続は使用者としての責務であり、再任用希望者の雇用保障と生計費にもとづく所得水準の確保を強く求める」とのべ、全人連、各人事委員会として要請書にそって尽力するよう求めました。

 また、自治労連の中川書記長は、地域間格差の解消、初任給の改善、長時間労働と健康破壊解消にむけた増員、臨時・非常勤職員の賃金・労働条件の改善などを求め、全教の小畑書記長は、教員免許を持つ臨時的任用教員が正規教員と同じ仕事をしているもとで、均等待遇の実現を強く求めました。

全国の人事委員会に伝え、要請内容も含めて検討する

 要請に対して、青山会長からは以下のような回答が示されました。

【青山全人連会長の回答】
 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、全国の人事委員会にお伝えします。
 さて、せっかくの機会ですので、現在の状況認識等について、ご存じのこととは思いますが、一言、申し上げます。
まず、最近の経済状況を見ますと、本年1月19日に発表された政府の月例経済報告では、景気について「緩やかに回復している」との判断が示されております。また、先行きについては、「緩やかな回復が続くことが期待される」としつつも、「海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある」としております。

 そのような中、既に始まっている本年の春季労使交渉では、賃上げについて様々な議論がなされているところであり、どの程度の水準の賃上げが実現するのか、賃上げの手段等を含め、今後の行方を注視していく必要があると考えております。
また、賃上げに加えて、長時間労働の是正など働き方改革も昨年に引き続き焦点となっており、各企業における協議の動向にも注目してまいります。
さらに、政府において進められている公務員の定年引上げに関する検討についても、引き続き注視してまいります。

現在、人事院及び各人事委員会では、民間給与の実態を的確に把握できるよう、本年の民間給与実態調査の実施に向け、その準備を進めているところです。
今後、各人事委員会においては、社会経済の動向なども踏まえながら、本日の要請内容も含め、本年の勧告に向けた検討を進めていくことになろうかと思います。

 改めて申すまでもありませんが、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することは、人事委員会の重要な使命であると認識しております。
 全人連といたしましては、本年も各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に努めてまいります。

以 上

【全人連に提出した要請書】

2018年2月5日
全国人事委員会連合会
 会 長  青山 佾 殿
公 務 労 組 連 絡 会    
議 長  猿橋 均 
日本自治体労働組合総連合  
 中央執行委員長 猿橋 均 
全 日 本 教 職 員 組 合    
 中央執行委員長 中村 尚史 

地方公務員の賃金等の改善にかかわる要請書

日頃から地方公務員の勤務条件の向上に努力されていることに敬意を表します。
 さて、政府が賃上げを政策課題にすえるなど、日本経済との関係でもすべての労働者の賃上げは喫緊の課題になっています。とりわけ、地域の公務員賃金は地場賃金にも影響し、地域経済と密接な関係にあり、その改善が求められます。
 2018年4月には国家公務員の「給与制度の総合的見直し」が完成し、地域間・年代間の賃金格差が固定されることになります。地方では、この地域間格差が公務員離れを加速させ、職員の採用困難を引き起こしています。

 また、東京新聞が年末に、政府は国家公務員の定年延長を2021年から実施する方向で検討を進めていると報じたことから、職員の不安と職場の困惑が高まっています。定年延長は、職員や労働組合の合意と納得のもとに進めなければなりませんが、雇用と年金を確実につなげることは使用者としての責務であり、現時点では、再任用希望者の雇用保障と生計費にもとづく所得水準の確保が重要な課題です。

 地方公務員の長時間過密労働はますます拡大し、メンタル不調で長期休業した職員は1%を超え高止まりしており、人員増は待ったなしの課題です。あわせて、昨年5月には会計年度任用職員制度導入を柱とする地方公務員法および地方自治法の改正が行われ、2020年4月の施行にむけて各自治体で実態調査や制度移行の検討が行われています。

 第一線で奮闘する公務労働者の労苦に報い、良質な行政サービス・教育を提供するためにも、各地の人事委員会が労働基本権制約の代償機関としての責務と役割をふまえて、下記要求の実現に尽力されることを要請いたします。



1、住民の暮らしや子どもたちの教育のため、日夜、献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励ますとともに、「全体の奉仕者」としての誇りと尊厳を持って職務に専念できるように、生計費原則をふまえ、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の賃金・労働条件を改善すること。

2、民間給与実態調査にあたっては、単に民間の賃金水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密接不可分であることに十分留意して調査を行うこと。とりわけ、勤続・経験年数の加味、雇用形態、民間一時金水準の厳正な把握とともに、比較対象企業規模を100人以上にすること。

3、職務給原則に反した賃金格差の拡大や高齢層の賃金抑制をやめること。全労連が実施した最低生計費調査の結果、全国各地でほとんど差がないことや、20歳代でも時給換算で1,300円以上必要であることが明らかとなっており、地域間格差を拡大する地域手当を廃止し基本給に繰り入れるとともに、初任給を改善すること。

4、地方の公務員賃金引き下げにつながる政府・人事院による給与制度の改悪に対して、人事委員会として意見表明していただくこと。

5、子どもたちのさまざまな困難に対応している教職員のモチベーションを支えるためにも、職責と勤務実態に応じた教職員の適正な賃金水準を確保すること。

6、職員の異常な長時間過密労働を解消するため、必要な人員の確保を勧告すること。また、労働基準監督機関として適切な労働時間管理が行われているか監督するとともに、必要な措置を行うこと。労働基準法33条3項の拡大解釈を認めず、同法36条にもとづく協定の締結を指導すること。

7、男女共同参画推進、女性の活躍推進の立場から、不妊治療、妊娠、出産、育児、家族看護や介護に関する休暇・休業制度等を拡充するとともに、休暇・休業制度が取得しやすい職場環境を整備すること。

8、臨時・非常勤職員について、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現などにむけて必要な対策を行うこと。
  とくに、会計年度任用職員制度の導入にあたっては、正規職員との均等待遇確保を念頭に置いた賃金・労働条件の改善勧告を行うこと。

9、国において定年延長の検討が進められていることをふまえ、現行の再任用制度において希望するすべての職員の雇用を保障するとともに、生計費をふまえた所得水準を確保するよう人事委員会としての役割をはたすこと。

以  上