NET ニュースNO.962 全人連・総務省に要請(8/10)


生計費原則を踏まえて積極的な賃金改善を

= 全国人事委員会連合会・総務省に要請(8/10) 

 公務労組連絡会は8月10日、自治労連と全教とともに全国人事委員会連合会への要請を行いました。要請には、公務労組連絡会の猿橋議長を先頭に、川村事 務局長と米田・杉本両事務局次長、自治労連の中川書記長、全教の小畑書記長、松井書記が参加し、全人連は副会長の栗原大阪府人事委員会委員長ほか9人の都 道県と政令市の人事委員会代表が対応しました。

 また、同日、総務省に対して、自治労連と全教の三者連名の「2017年人事院勧告の取り扱いに関する要請」を提出し、国の勧告の押しつけではなく、地方の自主性を尊重するよう求めました。
 

自治労連、非常勤職員の賃金・労働条件改善の勧告・報告を

全人連要請  全人連の要請では、猿橋議長が「地方人事委員会の勧告に関する要請書」(別記)を栗原氏に手交し、以下のように発言しました。

〇 公務労働者の労働条件の向上にむけて努力されていることに敬意を表する。
 8月8日に人事院勧告がだされ、4年連続のベア勧告となったがその水準は0.15%、631円と昨年を下回り、また、一時金も0.1月改善にと どまっており、およそ公務労働者の生活を改善するには程遠いものである。政府としてデフレ脱却のために労働者の賃金引き上げを打ち出しているが、公務員の 賃金は770万人の労働者に影響するものであり、真に景気を回復するためには、最低賃金の大幅な引き上げとともに公務員賃金の改善が不可欠である。人事委 員会として、生計費原則をふまえ、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の賃金・労働条件を改善するよう求める。また、公務員賃金を抑制し、地域間格差 を拡大している「給与制度の総合的見直し」は中止するようあらためて要請する。

〇 勧告では初任給を1,000円引き上げたが、官民較差を埋めるには遠く及ばないし、都市部では高卒初任給が最低賃金を下回りその格差も広がっている。若年層の適正な処遇を確保するともに、優秀な人材を確保するためにも、初任給層の賃金引き上げが重要だ。

〇 地方公務員法・地方自治法等の改正によって「会計年度任用職員」制度が導入されることとなったが、国会での政府答弁に示されたように、正規職 員の業務を代替するものであってはならないし、現にある労働条件を不利益変更することも認められない。政府自身が経験加算や一時金支給を「申合せ」たこと もふまえ、すべての人事委員会が臨時・非常勤職員の処遇改善に言及するよう強く求める。

〇 今年度の定年退職者の年金支給開始年齢が63歳となるもと、雇用と年金の確実な接続は喫緊の課題だ。政府として定年延長の検討が始まったが、 何より人事委員会として雇用と年金の確実な接続をはかるため、定年延長を遅らせている政府に対して使用者責任を明確にすることを強く要請すべきだ。当面、 希望者全員のフルタイム再任用を確保することを求める。

〇 最後に、長時間労働の是正について、いくつかの自治体では長時間労働を是正するために職員の増員を行っており、労働時間規制の強化とともに、根本解決のための増員について見解を表明するよう求める。

〇 全国各地の自治体では、地方財政がきびしいなかでも、第一線で働く公務労働者は、臨時・非常勤職員をふくめて、住民の期待に応えるために日夜奮闘している。こうした奮闘に応えるため、本日提出した「要請書」に沿って尽力するよう強く求める。
 

「給与制度の総合的見直し」の中止、教職員定数改善を

 続いて、自治労連の中川悟書記長は以下のように発言しました。

〇 今回の勧告は、公務職場の生活改善どころか、地域経済の再生には到底結びつかない低水準のものと言わざるを得ない。初任給1,000円の引き上げも、本俸だけでみれば最低賃金を下回る水準。最賃以下の初任給で、はたして優秀な人材が集まるだろうか。

〇 「給与制度の総合的見直し」による「現給保障」中の者の賃金は全く改善されず、その原資は、昨年に続き、霞が関の本府省業務調整手当の引き上 げに充てられる。来年度には「現給保障」さえ廃止され、実質的に賃下げとなる。これでは、公務員に準拠する地域の労働者にも影響し、地域経済に冷や水を浴 びせるもの。
 最低賃金の目安額も過重平均25円の引き上げに止まり、最高額と最低額の格差は222円へと広がった。今、求められているのは格差解消につながる「すべての労働者の賃上げ」で、地方が元気を取り戻す賃金・労働政策への転換である。

〇 今年度末の定年退職者の年金支給開始年齢は63歳とな。定年延長を前提とした制度の拡充が求められているが、特に再任用職員は現役時代と仕事も責任も変わらないのに、給料は半分で生活関連手当もつかない。これでどうしてモチベーションがあがるのか。

〇 地公法・自治法「改正」によって、特別職非常勤職員を新たな一般職非常勤職員に移行させると、労働基本権は一般の公務員と同様、制約されるこ とになる。労働基本権を制約するなら、代償措置が必要だ。改めて、すべての地方人事委員会が非常勤職員の賃金・労働条件の改善について、「勧告」なり「報 告」していただくよう要請したい。

〇 滋賀県の人事委員会は、職員の時間外勤務についてアンケート調査を行い、3月30日に知事に提言を行い、「定数の見直しも検討する必要があ る」と述べている。人事院勧告でも、「マネジメント強化や業務の合理化等を進めてもなお恒常的に長時間の超過勤務を行わざるを得ない場合には、業務量に応 じた要員が確保される必要がある」と指摘した。人事院総裁も談話で「国家公務員の人材確保は厳しい状況にあり、働き方改革により魅力ある公務職場を実現す る必要がある。特に、長時間労働の是正の必要性」を指摘している。

〇 長時間労働の要因は一にも二にも人員不足。すべての地方人事委員会が、長時間労働解消の手立てを、そしてその根本的な手立てとしての人員増を 「勧告」なり「報告」していただきたい。地方の公務職場に優秀な人材を確保するためにも、初任給の大幅引き上げや長時間労働の解消のための人員増は待った なしであることを強く訴える。

 全教の小畑雅子書記長は以下のように発言しました。

〇 今回の勧告が、生活改善には程遠い低額にとどまったこと、しかも、本府省手当の改善のみが突出し中央と地方の格差をさらに広げる内容であるこ と、一時金の引き上げ部分が勤勉手当のみに充当されるなど、成果主義賃金をっそう拡大・強化する内容であることなど、大きな問題点を持っていることを、ま ず指摘したい。その上で、「給与制度の総合的見直し」の中止を強く求める。勧告実施後でも現給保障をうける国家公務員は25.5%、来年4月1日に現給保 障を超えないのは、13.3%と言われるが、教職員の場合は、これをはるかに上回る率で賃下げとなる教職員が生じることが予想される。最大で1万円を超え る賃下げとなるもので、断じて容認できない。これは、長時間過密労働のもとで、子どもと教育のために日々奮闘している教職員の生活に大きな打撃となるだけ でなく、地域経済を大きく冷えこませるもの。重ねて「給与制度の総合的見直し」の中止を求める。

〇 教職員の長時間過密労働解消のために、教職員定数の改善など、実効ある改善を求める。4月に文科省が公表した教員の勤務実態調査によっても、 中学校で6割近い教員が、過労死ラインを超えて勤務している。現在、中教審において教職員の働き方改革にむけた議論が始まっているが、1人では担いきれな いほどの仕事を抱えており、この状況を打開するためには、教職員定数の改善は欠かせない。ぜひ、各地の人事委員会からも、教職員の定数を増やすための施策 が必要であるとの声をあげていただきたい。

〇 臨時・非常勤職員の拡大、多用化によって、育休の代替でさえ見つからない、「教育に穴があく」事態が広がっている。この問題をNHKが報道し たが、取材した67都道府県・政令指定都市の教育委員会のうち、2017年4月の始業式時点で半数近い32の教育委員会で、少なくとも717人もの教員が 不足していたことが明らかになっている。子どもたちのために必要な教職員については、正規で適正に配置した上で、すべての地方人事委員会で、臨時非常勤職 員、教職員の労働条件の改善・均等待遇の実現にむけて必要な勧告・報告を行うよう重ねて要請する。

 申し入れに対して、栗原副会長は次のように回答しました。

《全人連の栗原副会長の回答》

 ただ今の皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、全国の人事委員会にお伝えいたします。

 さて、ご存じのとおり、8月8日に人事委員会勧告が行われました。本年の官民格差は、民間における賃金の引き上げをはかる動きを反映して、民間 給与が公務員給与を平均631円、率にして0.15%上回っており、この較差を埋めるため、初任給の引き上げと若年層を中心とした俸給表水準の引き上げを 行うことととしています。

 特別給につきましても、民間事業所における好調な支給状況を反映して、民間が公務を上回ったことから、支給月数を0.1月分引き上げることとし、引き上げ分は勤勉手当に配分することとしております。
 このほか、公務員人事管理に関する報告では、人材の確保及び育成、働き方改革と勤務環境の整備、高齢層職員の能力および経験の活用について意見が述べられております。

 詳細につきましては、これから人事院の説明を受けますが、国家公務員と地方公務員の立場の違いはありつつも、人事院の勧告は、各人事委員会が勧告作業を行う上で、参考となるものであることから、その内容については、十分に吟味する必要があると考えております。

 今後、各人事委員会は、皆様からの要請の趣旨も考慮しながら、それぞれの実情等を勘案し、主体性を持って対処していくことになるものと考えております。
 あらためて申すまでもありませんが、各人事委員会といたしましては、本年も、中立かつ公正な人事行政の専門機関として、その使命を果たしてまいります。
 全人連といたしましても、各人事委員会の主体的なとりくみを支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に十分努めていきたいと考えております。
 私からは、以上でございます。
以 上
(別紙)
2017年8月10日
全国人事委員会連合会 会 長  青山   殿
公 務 労 組 連 絡 会     
 議 長  猿橋  均 
全国自治体労働組合総連合 
中央執行委員長 猿橋  均 
全日本教職員組合 
中央執行委員長 中村 尚史

地方人事委員会の勧告に関する要請書

 日頃から地方公務員の労働条件の改善に努力されていることに敬意を表します。
 人事院は8月8日、国家公務員一般職の給与にかかわって、本年4月にさかのぼって月例給と一時金の引き上げ、「給与制度の総合的見直し」による本府省業務調整手当を完成させることなどの勧告と報告を内閣と国会に対しておこないました。

 しかし、この勧告は、生活を改善するには程遠く、「給与制度の総合的見直し」による霞が関に働く国家公務員と地方公務員との格差や地域間格差の 拡大、高齢層職員の賃金抑制など職務給原則に反した矛盾の解消を求める声に背をむけたものです。また、政府による非正規労働者の待遇改善方針にも反して、 非常勤職員の抜本的な処遇改善にも及び腰となっており、労働基本権の代償機能を果たしたものとは到底言えないものです。

 非正規雇用、低賃金労働が増大し、実質賃金が減少・停滞するなか、生活を改善し、景気の回復や地方活性化のためにも地方公務員・教職員の賃金改 善が強く求められます。また、報酬比例部分年金の支給開始年齢が来年4月から63歳に引き上げられることから、雇用と年金の確実な接続と賃金改善が切実な 課題となっています。

 今後、各地の人事委員会においても、本年の勧告にむけた作業がおこなわれますが、住民の暮らしを支える公務労働者の労苦に応えるためにも、下記要求の実現に尽力されることを強く要請いたします。



1、公務員賃金の持つ社会的影響力を考慮し、賃金を改善する勧告をおこなうこと。特に、人事院勧告に追随することなく、地方における公民較差を的確に把握し、較差を解消する勧告をおこなうこと。
 また、民間よりも低い高卒初任給を大幅に引き上げること。また、「給与制度の総合的見直し」は中止すること。

2、確実な「雇用と年金の接続」のため、定年延長を含め希望するすべての職員の雇用を保障すること。現行の再任用職員の賃金については、生活を維持するにふさわしく大幅に引き上げること。

3、地方公務員・関連労働者、臨時・非常勤職員の生活実態をふまえ、「全体の奉仕者」として誇りと尊厳を持って職務に専念できるよう、賃金・労働条件の改善・充実をはかる勧告をおこなうこと。

4、給料表については生計費原則に立った構造とし、職務による格差の拡大、中高年層の給与の抑制をやめるとともに、初任給改善、号給足伸ばしなど必要な措置を講じること。また、比較対象企業規模を「100人以上」にすること。

5、職員の誰もが意欲をもって働き、住民に信頼される中立・公正な地方行政を確保する観点から、人事評価制度は能力開発に限定し、評価結果を給与や手当に反映させないこと。

6、教員の給与勧告にあたっては、地方公務員法および人材確保法にもとづき、勤務実態に応じた適切な給与水準を確保すること。

7、誰もが定年まで働き続けられる職場づくりのため、定数増を含む実効ある超過勤務縮減措置を講じること。また、2017年1月20日に策定され た「労働時間の適正な把握のための使用者向けの新たなガイドライン」にもとづき、労働時間を適正に把握し、時間外勤務手当等を適切に支払うよう任命権者を 指導すること。

8、臨時・非常勤職員について、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現などにむけて必要な対策をおこなうこと。すべての人事委員会が実態把握をおこない、改善措置を勧告すること。

9、すべての人事委員会で適切な時期に労働組合の意見を聴き、誠意をもって勧告に反映させること。

以 上


(総務省要請)地方自治体の自主性・主体性を尊重せよ

 総務省への要請は、自治労連の松繁副委員長と杉本中執、全教の米田副委員長、公務労組連絡会の川村事務局長の4人で行い、総務省は自治行政局公務員部の公務員課木本光彌課長補佐と給与能率推進室の黒田夏子課長補佐、公務員課の佐藤宏樹係長が対応しました。

 松繁副委員長は別記の「要請書」を提出し、「国の勧告を押しつけられるという思いを持っている。地方は人材確保に努力しており、水を差すことの ないよう地方の自主性尊重を求める」と述べ、米田副委員長は「地方にどう人材を確保するかの点で、賃金や退職金なども地方の自主性が尊重されてきた。今 は、国から一歩も出ることは許されない状況だが、地方での人材確保に配慮が必要」と求めました。

 これらに対して木本課長補佐は「ご意見は賜った。対応できるものは努力したい」と答えました。
 
(別記)
2017年8月10日
総務大臣  野田 聖子 様
公 務 労 組 連 絡 会  
  議     長 猿橋  均
日本自治体労働組合総連合
  中央執行委員長 猿橋  均
全日本教職員組合
  中央執行委員長 中村 尚史

2017年人事院勧告の取り扱いに関する要請

 貴職の地方公務員の賃金・労働条件の改善に向けたご努力に敬意を表します。
 人事院は8月8日、政府と国会に対し2017年度の給与勧告等を行いました。勧告は、2017年春闘における民間賃金の引き上げ状況を反映し、月例給・一時金ともにプラス改定となりましたが、生活改善には到底結びつかない低額改定に止まりました。

 さらには、昨年に続き、地域間や雇用形態による格差の解消に反する本府省業務調整手当増額や「成果主義」賃金を推し進める勤勉手当を引き上げる 一方で、再任用職員への生活関連手当支給見送りなど、重大な問題点を持つものです。これらは、地方の公務職場の影響を大きく受ける地域民間労働者の賃金改 善にも結びつかず、政府・与党が推進する「地方創生」に自ら水を差すものと言わざるをえません。

 また、人事管理に関する報告では、長時間労働の是正へ向け「職場におけるマネジメントの強化」「トップが先頭に立って業務量の削減および合理化 にとりくむ」等が強調されていますが、地方を含む公務職場においても、いのちさえ危ぶまれるような状況が蔓延する中、長年の「人員削減ありき」の人事管理 から「必要な人員の拡充」への転換こそ求められています。

 つきましては、こうした人事院勧告が出されたもと、今後の地方自治体における人事委員会勧告の内容や取り扱い、地方自治の原則にもとづいた自主的な賃金・労働条件決定の尊重等について、下記の通り要請します。



1.地方公務員の賃金・労働条件の決定にあたり、地方自治体の自主性・主体性を尊重すること。国家公務員賃金制度の画一的な地方自治体への押し付けは行わないこと。

2.「行革インセンティブ」として、財政措置を利用した地方公務員の賃金・労働条件切り下げの強制は行わないこと。
以 上