NET ニュースNO.960 勧告の取り扱いで政府交渉(8/9)


勧告尊重にとどまらず積極的な賃金改善を

= 人事院勧告をふまえて内閣人事局に要求書を提出 =

 公務労組連絡会は8月9日、人事院勧告の取り扱い等にかかる「公務員賃金等に関する要求書」(別記)を内閣人事局に提出し、公務労働者の生活改善と景気回復のためにも勧告尊重にとどまらず積極的な賃金改善や非常勤職員の処遇改善などを求めました。

 内閣人事局との交渉は、川村事務局長と米田・杉本両事務局次長で行い、内閣人事局は西水総括補佐と植田給与担当補佐、福澤参事官補佐ほかが対応しました。

 内閣人事局との交渉では、公務労組連絡会として以下のような主張を行いました。

〇 勧告の水準について。4年連続のベア勧告となったがその水準は0.15%、631円と昨年を下回り、また、一時金も0.1月改善にとどまって おり、およそ公務労働者の生活を改善するには程遠いものである。公務員の賃金は770万人の労働者に影響するものであり、政府としてデフレ脱却のために労 働者の賃金引き上げを打ち出しているもとで、政府として勧告尊重にとどまらず、使用者として積極的な賃金改善を行うよう求める。

 初任給について、勧告では1,000円引き上げたが、官民較差の解消につながらないばかりか、最低賃金との格差も拡大している。較差内の配分で は初任給格差は埋められない。適正な処遇を確保するともに、優秀な人材を確保するため、政府として初任給の抜本改善を真摯に検討するよう求める。

〇 非常勤職員の処遇改善。勧告では、7月の給与指針の改正内容の早期の実施とされている。これは、5月の人事管理運営協議会幹事会の「申合せ」に沿ったものであり、政府としても人事院同様に、早期改善にむけて予算の確保状況など各省への指導を求める。

 一方、報告では、慶弔休暇等の検討がうたわれているが、年次有給休暇の採用時付与や夏季休暇の制度化、最低時間額1,000円以上への引き上げ や公募要件の撤廃など、公務労組連絡会の要求に触れられていない。非正規の処遇改善、同一労働同一賃金を政策課題としている政府として、これらの課題に応 えるよう求める。

〇 高齢期雇用について。課題は3点だ。一つは、定年延長の実現について、検討会での議論を促進するとともに、公務労組連絡会への情報提供と協議 を求める。二つは、希望者全員のフルタイム再任用の確保について。年金支給開始年齢が繰り延べになるもとで希望者は増加している。本年度の再任用者の約7 割が短時間で、その2割強が定員事情等で意に反した任用となっている。今年度の定年退職者の年金支給は63歳であり、こうした事態を生じないよう定員管理 の弾力化など政府としての対応を求める。

〇 長時間労働の是正について。報告では、超過勤務の事前確認などマネジメントの強化と業務の削減、合理化が強調されている。また、「ゆう活」や フレックスタイム制なども長時間労働の解消策とされている。こうした施策によって、個々の労働者の超過勤務時間が減っているのかどうかが問題だ。厚労省の ガイドラインにもとづいて適正に労働時間を把握することによって、問題点が明らかになるものであり、この点を強く求める。

〇 退職手当問題について。現時点においても見直しにかかる提案はないが、退職手当にかかる高級官僚優遇の格差の是正、定年退職後の雇用について少なくともフルタイム再任用の確保と一体での検討と見直し提案を行うよう求める。

〇 賃上げ原資の配分は格差の範囲内として本省業務調整手当にあてているが、地方にはない手当だ。霞が関と地方の格差を広げる配分は認められな い。本省業務調整手当は、本省の人材確保のために設けられているが、本省を希望しない要因は、家庭生活も成り立たないような長時間労働にある。本省の勤務 時間の適正な把握とすべての超勤手当の支払いが必要だ。同時に、長時間労働を解消するため増員が必要だ。

〇 地方の非常勤職員は一般職員化され、国準拠となる。賃金や権利問題などは国のあり様が地方の非常勤職員に直結する。人事院は、休暇制度は民間 との均衡と言っているが、民間では正規と非正規の均衡が問題であり、国においても非常勤職員の均等待遇をはかる立場で休暇制度を拡充するよう求める。

〇 人事院の報告では、高齢層職員を戦力とする旨の記述があるが、戦力として活用するのであればそれにふさわしい処遇が必要だ。教職員は、定年前 と同じ6年生の担任をしていても、再任用では賃金も一時金も下がる。報告では、「定年退職が一区切りとなって勤務意欲が低下する」との記述があるが、処遇 が下がることで意欲をなくしているのが実態だ。人件費が上がると国民の理解が得られないとの意見があるが、国民・住民は必要な仕事であれば理解は得られ る。「同一労働同一賃金」の具体的実施や定員の増員など、政府としての対応を求める。

〇 人事院の説明では、民間の配偶者手当の支給状況は下がっていない。官民均衡と言いつつ、政策的な対応は誠実ではない。配偶者手当の見直しは再考するよう求める。

 以上の発言に対して、西水総括補佐は以下のように回答しました。

● 昨日、人事院から給与改定に関する勧告が提出されたところであり、速やかに給与関係閣僚会議の開催をお願いし、その取扱いの検討に着手したいと考えている。

● 国家公務員の給与については、国家公務員の労働基本権制約の代償措置である人事院勧告制度を尊重するとの基本姿勢に立ち、国政全般の観点から、その取扱いの検討を進めてまいる所存。その過程においては、皆様方の意見も十分にお聞きしたいと考えている。

 最後に川村事務局長が「本日の発言も含めて給与関係閣僚会議に反映するよう求める」と述べて交渉を終わりました。
以 上

【別添】
2017年8月9日
内閣総理大臣 安倍 晋三 殿
内閣官房長官 菅  義偉 殿
公 務 労 組 連 絡 会
 議長 猿  橋  均

公務員賃金等に関する要求書

 人事院は8月8日、国家公務員給与にかかわって、月例給および一時金の改定などを内容とした勧告・報告を内閣と国会に対しておこないました。

 勧告の内容は、4年連続の改善となったものの私たちの生活と労働実態からすれば非常に不満なものです。政府が真剣に景気回復や地域経済の活性化 をすすめるのであれば、770万人の労働者に直接影響する公務員賃金の社会的影響力をふまえ、政府が率先して大幅賃上げをおこない、すべての労働者の賃金 改善につなげていくことが重要です。

 また、年金支給開始年齢の繰り延べのもとで、定年後における雇用と年金の確実な接続が重要な課題であり、その間の生活を維持するため賃金と諸手 当の改善が必要です。くわえて、公務員労働者が保有する知識や経験をいかした働きがい・やりがいのある定年後の仕事を確保することは、国民・住民に対する 公務・公共サービスの充実につながります。そのためにも、定員の柔軟な管理や定年延長の段階的実施が必要です。

 長時間労働の是正も重要な課題です。公務員人事管理に関する報告において、超過勤務の事前確認などが指摘されていますが、根本的な解決のために定員管理のあり方を再考すべきです。
 非常勤職員の処遇改善は、政府あげての課題であり、速やかに改善することが求められています。同時に、非常勤職員の最大の要求は雇用の安定であることから、「公募要件の撤廃」や公開公募のあり方を見直すことが必要です。

 以上をふまえ、給与関係閣僚会議での人事院勧告の取り扱いにあたって、貴職が下記要求にそって公務労働者の賃金・労働条件の改善に力を尽くすよう求めます。
記 1、職員の生活と働きがいなどを維持・向上させるため、また、公務員賃金の持つ社会的影響力をふまえ、初任給をはじめ公務労働者の賃金・労働条件の積極的な改善をはかること。

2、臨時・非常勤職員の賃金・労働条件改善をはかり、均等待遇を実現すること。5月24日の「申合せ」による処遇改善について、各府省庁が履行するよう政府としての責任を果たすこと。

3、雇用と年金の確実な接続をはかるため、定年延長を早期に実現すること。当面、フルタイム再任用の定員は別枠とするとともに、希望者全員の再任用を保障すること。また、再任用職員の賃金・諸手当は、年金支給開始までの生活が維持できるよう改善すること。

4、公務職場における長時間・過密労働を是正し、誰もが安心して働き続けられるようにすること。厚生労働省のガイドラインをふまえ、各府省庁での労働時間管理を徹底すること。

5、地方自治体、独立行政法人等の賃金決定に不当な介入・干渉をおこなわないこと。

6、労働基本権の全面回復など憲法とILO勧告に沿った民主的公務員制度を確立すること。
以 上