NETニュースNO.959 人事院と勧告前に最終交渉(8/4)


人事院と最終交渉実施、賃金改善署名は14万超に

賃金0.1台半ば、一時金0.1月の4年連続の改善勧告を回答

 公務労組連絡会は8月4日、人事院との勧告前の最終交渉を行いました。人事院は、今年の官民較差が0.1%台半となり一時金は0.1月の引き上げと、4年連続となる賃上げ勧告を行う旨を明らかにしました。

 人事院との最終交渉には、公務労組連絡会から猿橋議長を先頭に川村事務局長と米田・杉本両事務局次長、篠原幹事と松井書記が出席し、人事院側は、給与局の森谷課長補佐と職員福祉局の田中課長補佐が対応しました。

 交渉に先立って全国の職場から寄せられた22,735筆の「公務労働者の賃金・労働条件の改善を求める署名」を提出しました。7月21日の中央行動で提出した署名とあわせて累計で140,720筆と14万筆を超えました。

 猿橋議長は、「政府の政策として働くものの賃上げを打ち出しており、公務労働者の賃金改善が不可欠だ。同一労働同一賃金の実現にむけて、政府としてこれらの政策を真剣に推進するためには、公務の職場で働く臨時・非常勤職員の処遇改善を先行的にすすめるべきだ。人事院としての積極的な対応を求める」 とのべて最終回答を求めました。
 

初任給層に1,000円、再任用や高齢層職員含むすべての号俸を改善

 人事院の最終回答は以下のとおり。

 ● 6月16日に公務労組連絡会から提出のあった要求のうち、主な事項について回答する。

 1、民間給与との較差にもとづく給与改定について

 勧告日は、8月8日(火)となる予定である。

(1) 民間給与との比較について
 月例給の民間給与との較差は、0.1%台半ばとなる見込みである。
特別給は、0.10月分の増加となる見込みである。増加分は、今年度については、12月期の勤勉手当にあてる。来年度以降については、0.05月分ずつ、6月期と12月期の勤勉手当に充てる。

(2) 給与改定の内容について
① 俸給表の改定
行政職俸給表(一)について、民間の初任給との間に差があること等をふまえ、総合職試験、一般職試験(大卒程度)および一般職試験(高卒者)採用職員の初 任給を1,000円引き上げることとし、若年層についても同程度の改定を行う。その他は、それぞれ400円の引き上げを基本に改定する。
その他の俸給表については、行政職俸給表(一)との均衡を基本に改定する。なお、指定職俸給表については改定しない。
② 本府省業務調整手当
給与制度の総合的見直しを円滑に進める観点から、本府省業務調整手当の手当額を、係長級は900円、係員級は600円、本年4月に遡及して引き上げる。
③ 初任給調整手当
医療職俸給表(一)の改定状況を勘案し、医師の処遇を確保する観点から、所要の改定を行う。

2、給与制度の総合的見直し等

(1) 給与制度の総合的見直しについて
① 平成30年度は、本府省業務調整手当の手当額について、係長級は基準となる俸給月額の6%相当額に、係員級は同4%相当額にそれぞれ引き上げる。
② 行政職俸給表(一)6級相当以上で55歳を超える職員の俸給等の1.5%減額支給措置および俸給水準の引き下げの際の経過措置については、平成30年3月31日をもって廃止する。
③ 経過措置の廃止等にともなって生ずる原資の残余分を用いて、若年層を中心に、平成27年1月1日に抑制された昇給の回復を行う。具体的には、平成30年4月1日において37歳に満たない職員の号俸を同日に1号俸上位に調整する。

(2) その他
① 住居手当
住居手当については、受給者の増加の動向を注視しつつ、職員の家賃負担の状況、民間における住宅手当の支給状況等をふまえ、必要な検討を行ってまいりたい。
② 再任用職員の給与
再任用職員の給与の在り方について、各府省における円滑な人事管理をはかる観点から、民間企業の再雇用者の給与の動向、各府省における再任用制度の運用状 況等をふまえつつ、定年の引き上げにむけた具体的な検討との整合性にも留意しながら、引き続き、必要な検討を行ってまいりたい。
③ 非常勤職員の給与
本年7月に、勤勉手当に相当する給与の支給に努めることを追加するなど、非常勤職員の給与に関する指針を改正したところである。早期に改正内容にそった処遇の改善が行われるよう、各府省を指導してまいりたい。

3、公務員人事管理に関する報告について

 以上のほか、公務員人事管理に関して報告することとしている。

報告では、まず、働き方改革などにより、有為の人材を確保し、すべての職員の十全な能力発揮を可能とする魅力ある職場を実現することは、公務が行政ニーズ に応えていくための基盤であるとし、また、職員意識調査の結果もふまえ、国民の理解を得つつ、活力ある公務組織を維持できるよう、引き続き、中・長期的視 点もふまえた総合的なとりくみを進めるとしている。これらをふまえた個別課題のとりくみの方向性について次のとおり言及することとしている。

● 長時間労働の是正のとりくみについては、以下について言及することとしている。
・超過勤務予定の事前確認等の徹底など職場におけるマネジメントの強化、府省のトップが先頭にたって組織全体として業務量の削減および合理化にとりくむことなどが必要であること
・人事院としても、官民の参考事例の収集や提供等により、各府省のとりくみを支援していくこと

● 長時間労働の是正のための制度等の検討については、各府省のとりくみや上限規制にかかる民間法制の議論等をふまえ、各府省や職員団体等の意見を聴きながら実効性ある措置を検討すること、等について言及することとしている。

● 高齢層職員の能力および経験の活用については、以下について言及することとしている。
・質の高い行政サービスを維持するには、高齢層職員を戦力としてその能力および経験を本格的に活用することが不可欠であること
・このためには採用から退職までの人事管理の一体性および連続性が確保され、職員の意欲と能力に応じた配置や処遇も可能となることから、定年の引き上げが適当であること
・その際、組織活力の維持のための方策について政府全体で検討を進めることが必要であること
・人事院は、定年の引き上げにかかる人事管理諸制度の見直しについて、平成23年の意見の申出以降の諸状況の変化もふまえ、論点整理を行うなど鋭意検討を進めること

● 人材の確保及び育成のため、多様な有為の人材の確保、能力・実績にもとづく人事管理の推進、人材育成、について言及することとしている。

● 働き方改革と勤務環境の整備のため、仕事と家庭の両立支援の促進、フレックスタイム制の活用促進、ハラスメント防止対策、心の健康づくりの推進、慶弔にかかる休暇等の検討など非常勤職員の勤務環境の整備、について言及することとしている。
 

生活改善にほど遠く、賃上げの社会的要請にも応えず

 この最終回答を受けて、川村事務局長は以下のような主張を行いました。

〇 いま、最終回答をいただいたが、4年連続となる賃金と一時金の引き上げについては、春闘をはじめ私たちのたたかいの反映であると受け止める。 しかし、公務労組連絡会が求めてきた生活改善できる水準からは程遠く不満なものである。とくに、「給与制度の総合的見直し」による賃下げ回避措置に言及が ないことは認められない。景気回復や地域経済の活性化のために労働者の賃金改善という政府や社会的な要請にも応えたものではないことを指摘しておく。その うえで、以下4点について申し上げる。

〇 1つは、官民較差の配分の問題について。初任給と若年層への重点配分は当然のことと受け止めるが、民間初任給との格差はなお歴然としている。 今年の最低賃金の目安改定は政府方針にもとづいて3%引き上げとなっており、Ⅲ種初任給は最賃を下回っている。較差内での配分では初任給層の官民格差を解 消することはできない。別原資で初任給引き上げを行うことをあらためて求める。
 昨年に続いて、すべての俸給号俸の引き上げは当然のことと受け止めるが、現給保障との関係で残された較差を本省業務調整手当の引き上げに充て ることについては認められない。定員削減をはじめ業務遂行に困難を抱えているのは地方出先機関も本省と同様であり、人材確保の重要性は地方も同じだ。較差 は公平にすべての職員に配分すべきだ。「給与制度の総合的見直し」の中止を求めていることもふまえた対応を強く求める。
 また、一時金の改善分は勤勉手当に充てるのではなく、再任用職員も含めて期末手当に回すよう求める。公務の仕事はチームワークで成り立ってい るが、この間の成績主義強化策によって公務能率は向上しているのか。いまの評価制度に職員の納得も得られていないもとで賃金や一時金での成績主義を強化す ることは公務能率を阻害することになる。

〇 2つは、非常勤職員の処遇改善について。「早期に指針改正内容にそった処遇の改善が行われるよう各府省を指導する」との回答は受け止めるが、 我々は、最低時間額を1000円以上に引き上げること、休暇制度の抜本改善を求めている。とくに夏季休暇と年次有給休暇の採用時付与など正規職員との格差 の是正が必要であり、この要求に応えることを強く求める。

〇 3つは、定年延長について。我々は、希望者全員のフルタイム再任用、そして、生活できる賃金水準の確保を求めてきた。長年培ってきた経験と能 力を最大限に発揮するために定年延長が必要との認識は同じであると受け止める。政府が「骨太方針」で「定年延長の具体化を検討する」と決定したもとで、人 事院の「意見の申出」を早急に具体化するよう努力を求める。同時に、定年延長を検討しているのであり、実現するまでの間、少なくとも希望する職員全員のフ ルタイム再任用の確保は当然のことであり、人事院として政府への対応を強めること、そして、生活関連手当を含めた生活できる賃金水準の確保要求に応えるよ う強く求める。

〇 4つは、労働時間の短縮について。改めて指摘するが、超過勤務増大の最大要因は、画一的な定員削減によって業務実施体制が脆弱化していること にある。中間交渉でも申し上げたが、厚生労働省のガイドラインにもとづく勤務時間の適正な把握について人事院としての指導性を発揮するよう求める。同時 に、国民が求める公務・公共サービスの維持・拡充のためにも、定員削減計画を中止・撤回し、行政需要や業務量にふさわしい定員の確保・配置にむけた人事院 としての意見表明を行うよう求める。

 参加者からも以下のような発言を行いしまた。

〇 公務労働者の働く意欲、モチベーションの維持のためには全体の賃金・処遇の底上げのために細心の努力をはかることが労働基本権制約の代償機関 を自認する人事院に最も求められることだ。具体的には、初任給の引き上げ、高齢層の賃金抑制をやめることが求められる。一時金の引き上げも勤勉手当にこの 間一貫して振り向けられているが、全体の底上げとはなっていない。再考を求めたい気持ちだ。また、長時間労働の解消について、国民のための業務の削減は困 難であり、定員を増やす実効ある施策の実施を求める。

〇 初任給の改善を強く求める。厚生労働省の『平成28年賃金構造基本統計調査結果』と今回の初任給を比較すると、高卒初任給は1000円引き上げても1万4千円の差。大卒は2万円程度の差がある。民間準拠というなら、この較差こそなくしていくべきではないか。

〇 非常勤職員の処遇改善について、ある独立行政法人で、昨年は時間給70円の引上げと夏季休暇3日を勝ち取り、今年は4日と前進させた。職場で 歓声が上がったと聞いたが、非正規だけでなく正規職員も喜んでいる。非常勤職員の給与は「級の初号俸の俸給月額」を基礎として決定される。非常勤職員の給 与改善のために、この部分の大幅な改善を求める。夏季休暇についても人事院が正規職員に準じた「目安」を示し、改善のイニシアチブを取ってもよいのではな いか。

〇 本府省業務調整手当は、本府省の業務の特殊性・困難性や人材確保のために設けたとしているが、職員が本府省勤務を希望しない理由は、まともな 家庭生活や社会生活を送れないような長時間過重労働にある。政府の責任で職員の勤務時間を正確に把握し、必要な予算を確保し、時間外勤務手当や休日勤務手 当をきちっと支払うこと。そして、職員定数増により、終業時間に帰れる職場をつくることこそが重要であり、そのことを国会と内閣に勧告すべきではないか。
 手当が設けられて8年が経過し、本当に本府省に必要な人材が確保されているのか、手当の支給が人材確保のために有効な手段なのかを再検証すべき時期にきているのではないか。不払い残業を本府省業務調整手当でごまかしているような印象を受ける。

 これらの主張に対して森谷補佐は、「ご意見は受け止める」としつつ、「給与制度の総合的見直し」や勤勉手当への配分などでは従来と変わらない回 答を繰り返しました。本省業務調整手当額の改善については住居手当なども勘案した結果であると述べ、「他の課題など出された意見については担当に伝える」 と答えました。

 最後に猿橋議長が、「本日は、最終交渉ということであったが、人事院として、勧告に反映させなければならない課題が改めて明らかになったと考える。我々の期待に応えるよう最後までの努力を求める」と述べて最終交渉を締めくくりました。

以 上