NET ニュースNO.958 内閣人事局と夏季要求で最終交渉(7/31)


初任給改善と非常勤職員の処遇改善は政府の責任!

= 夏季重点要求で内閣人事局と最終交渉 =

 公務労組連絡会は7月31日、「2017年夏季重点要求書」にかかわって内閣人事局との最終交渉を実施しました。

 回答は、何らの具体的なものはなく不満なものにとどまりました。公務労組連絡会は、あらためて職場の実態を突きつけて、職場の切実な要求に誠実に向き合うよう求めました。

 公務労組連絡会では、あらためて8月の人事院勧告後に「勧告の取り扱いにかかる要求」を提出することとしており、引き続き、職場の仲間の切実な要求を一歩でも前進させるために政府追及を強化します。


切実な要求課題を誠実に検討せず不満な回答

内閣人事局と交渉 内閣人事局との最終交渉には、公務労組連絡会から猿橋議長と中村副議長、川村事務局長、米田・杉本両事務局次長、篠原幹事、松井書記が参加し、内閣人事局は西水総括補佐と福澤参事官補佐ほかが対応しました。

 猿橋議長は、「交渉を積み重ねてきたが、その内容は公務労組連絡会の要求に正面から向き合ったものとはとても受け止められない。本日は、夏季要求にかかる最終交渉であり、誠意ある回答を求める」とのべました。

 これに対して、内閣人事局の西水総括補佐は、要旨以下のとおり回答しました。

● 「賃金の改善等」に関して、国家公務員の給与改定にあたっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則のもと、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
 本年の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行ったうえで方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。

 また、「給与制度の総合的見直し」については、民間給与の調査にもとづく人事院勧告を受け、地域間・世代間の適正な給与配分等の実現をはかる観点から実施しているものであり、ぜひともご理解いただきたい。

● 「非常勤職員の雇用の安定・処遇改善」に関して、非常勤職員の給与については、給与法で「常勤職員の給与とのバランスを考慮すること」とさ れ、人事院の指針を踏まえて支給されているところ、本年5月には、パートタイム職員も含め、非常勤職員全員に対し、期末手当を支給することをめざすこと等 について、全府省で申し合わせた。また、7月12日には、人事院においても指針の改正が行われたところである。

 また、平成22年の期間業務職員制度の導入以降、休暇等についても、育児休業等の取得、夏季における弾力的な年次休暇の付与、介護休暇の分割取得や介護時間の取得、時間単位の年次休暇の翌年繰越しがそれぞれ可能となるなど、様々な改善がはかられてきている。
 引き続き、関係法令や人事院の通知等を踏まえ、給与や休暇等非常勤職員に関する制度の適切な運用について、人事院とも連携し、各府省に対して促してまいりたい。

● 「高齢期雇用・定年延長」に関して、雇用と年金の接続については、引き続き平成25年3月の閣議決定にそって、定年退職者の再任用を政府全体 で着実に推進しているところであり、再任用職員の能力および経験をよりいっそう本格的に活用するための方策について検討を行い、本格活用のためのとりくみ 例などを盛り込んで、「国家公務員高齢者雇用推進に関する方針」(平成13年6月人事管理運営協議会決定)を本年4月に改正したところである。

 また、本年6月9日に閣議決定されたいわゆる骨太の方針において、「公務員の定年の引上げについて、具体的な検討を進める」こととされたことを 踏まえ、6月28日に関係省庁の局長級により構成される「公務員の定年の引上げに関する検討会」が開催され、また、課長級の幹事会での議論も開始している ところである。今後、これらの会議を通じて、様々な課題について検討していくこととなる。

● 「民主的公務員制度と労働基本権の確立」に関して、国家公務員の労働基本権については、国家公務員制度改革基本法第12条において「政府は、 協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するも のとする」とされている。
 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。

● 「労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立」に関して、国家公務員の女性活躍とワークライフバランスの推進は内閣としての重要課題であ り、そのためには、これまでの価値観・意識の変革や職場における業務の効率化等による、男女すべての職員の「働き方改革」を進めることが重要と考えてい る。
 7月・8月はワークライフバランス推進強化月間であり、今まさにその最中であるが、「ゆう活」による早期退庁の励行や、ペーパーレス化の推進、不要・不急業務の見直しなどを通じて、超過勤務の縮減や業務の効率化等による働き方改革を進めてまいりたい。

● 「健康・安全確保、母性保護等」に関して、職員の勤務能率の発揮及び増進を図るため、昨年3月に改正した「国家公務員健康増進等基本計画」にもとづき、職員の心身の健康の保持増進等に努めてまいりたい。
 この中で、心の健康づくり対策については、ストレスチェック制度を適正に実施するとともに、管理監督者の職場マネジメント業務の一部であること から、e-ラーニング講習の活用により、心の健康づくりやハラスメント防止に関する研修の受講を必修化するなど、管理監督者を対象とした研修を強化してい る。

 また、本府省、地方支分部局等を問わず、必要とする職員が専門家に相談できる体制の整備に努めることとしている。
 基本計画の的確な実施のため、具体的目標を定め、フォローアップを行っていくこととしており、福利厚生施策の効率的かつ効果的な推進に努めてまいりたい。

使用者としての内閣人事局の責任と役割を発揮せよ

  以上の最終回答を受けて、公務労組連絡会の川村事務局長は以下の発言を行いました。

○ いま、最終回答が示されたが、何ら具体的なものはなく、公務労組連絡会の要求について誠実に検討したものとは到底受け止めることはできない不満な回答であることを表明する。
 この間の交渉でも申し上げたが、重点要求として絞り込んでいることとあわせて、国民のために全国でかんばっている仲間の切実な要求であり、勧告後においても引き続く労使の課題であることを強く申し上げておく。そのうえで、5点申し上げる。

○ 1つは、公務員賃金の改善について。議長も申し上げたが、景気回復のためにも「人事院勧告制度の尊重」にとどまらない政府としての対応こそが 求められていることを申し上げておく。政府として早急に検討しなければならないのは、初任給の改善と非常勤職員の処遇改善だ。政府自身が最低賃金を 1000円に引き上げる方針をだしているもとで、今年の最賃目安で東京は時間額958円となった。あらためて、初任給の改善とともに、国の行政で働く臨 時・非常勤職員などの時間額を直ちに1000円以上に引き上げるよう強く求める。

○ 2つは、非常勤職員について、画一的な「公募要件」や3年一律の雇い止めの問題は再三指摘してきた。良質な行政サービスを確保する点からも、 無期雇用転換など労働契約法の準用も含め、政府・使用者として制度の抜本見直しに着手するよう求めてきた。我々は、恒常的、専門的業務は正規の公務員で行 うことが必要だと考えるが、定員削減等によって現に非常勤職員によって行政が支えられている実態を踏まえ、政府・使用者として、均等待遇の実現や常勤化を 含む雇用の安定化、無期雇用化にむけた具体的な検討・協議を行うよう求める。

○ 3つは、高齢期雇用・定年延長について。中間交渉でも強調したが、今年度末の定年退職者の支給開始年齢が63歳となるものであり、定年延長は 待ったなしの課題だ。検討会において、2011年の人事院の「意見申出」を踏まえた具体化をはかるとともに、公務労組連絡会の意見表明の場を設けることを 強く求める。一方で、「定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進している」との回答があったが、約3割の職員が意に反して短時間再任用となっているもと で「着実に推進している」と言えるのか。認識をあらためるよう再回答を求める。定年延長が実現するまでの間、政府として希望者全員のフルタイム再任用を確 保することは使用者である政府の当然の責務であり、定員管理の柔軟化など必要な対応を求める。

○ 4つは、労働時間短縮について。職員の「働き方改革」を進めるとの回答があったが、「ゆう活」の名による早出出勤、長年言い続けている価値観 や意識の変革、業務の効率化、不要・普及業務の見直しなどで、どれだけの長時間労働が解消されているのか。やらなければならない業務量に比して人員が足り ないことが長時間過密労働の最大の要因ではないのか。
 中間交渉で指摘したように、厚労省のガイドラインにもとづいて、政府として労働時間の適正な把握を行うよう求める。同時に、国民が求める公 務・公共サービスの維持・拡充のためにも、定員削減計画は中止・撤回し、地方自治体も含めて行政需要や業務量にふさわしい定員の確保・配置を行うよう求め る。

○ 最後に、労働基本権問題について、従来と同じ回答が示されたが、毎回「引き続き、意見交換を」と言って逃げることは許されない。早急に協議の場を設けるようあらためて要求する。

 西水総括補佐は、以下のように再回答しました。

● 初任給改善の指摘だが、給与改定は「人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行ったうえで方針を決定する」ことになるが、こうした機会に貴重な意見をいただいていると考える。

● 非常勤職員の処遇改善は、重要な問題であるが、5月の各府省の「申合せ」など着実に改善されている。予算の査定結果を見る必要はあるが、引き 続き処遇改善にとりくんでいく。雇用については、一会計年度の任用が基本で、2回までは公募要件の除外が認められている。人事院の通知を踏まえたものであ り、ご理解を願いたい。

● 高齢期雇用については、平成25年3月の閣議決定にそって対応しているが、骨太方針で定年延長の検討が新たに始まり、目に見える動きになって いる。希望する職員の再任用が基本だが、フルタイム再任用は確実にその人数は増えている。どういった問題があるか、検討している。

● 長時間労働の是正については、定員問題に答える立場にはないが、ワークライフバランスの定員措置などできる限りの工夫もしている。定員増の要 望については担当に伝える。是正が見えにくいとのことだが、事前に超勤の内容について確認し、必要のない業務をチェックするなどなるべく超過勤務のない職 場づくりを進めている。

 最後に猿橋議長が、「回答内容は、非常勤職員の処遇改善や長時間労働の認識の問題など、私たちの要求と方向性が一致する内容も見られたが、その 改善の問題でも、手立ての問題でもまったく不十分なものと考える。使用者である政府としての実務を担う内閣人事局が、公務労組連絡会の要求や発言を聞き置 くだけとすることは、使用者責任を放棄するものであり絶対に許されるものではない。具体的な改善に努力するよう求める」とのべ、人事院勧告後には、あらた めて公務労組連絡会としての勧告取り扱いにかかる要求を提出することとし、その際には、公務労組連絡会との真摯な対応を求めました。
以 上