NETニュースNO.947 17春闘統一要求で人事院と最終交渉(3/24)


「民間準拠」「民間動向を踏まえて検討」と不満な回答

= 「17年春闘統一要求」の実現求めて人事院と最終交渉 =

 公務労組連絡会は3月24日、17年春闘統一要求に対する人事院との最終交渉をおこないました。

 今春闘では、 「月額平均20,000円以上」の賃上げをはじめ、退職手当の改善、臨時・非常勤職員の均等待遇、最低時給の1000円以上への引き上げ、超過勤務の是正 と公務職場の大幅増員などの要求の実現を求めてきましたが、最終交渉では「民間準拠」など従来の域をでないきわめて不満な回答となりました。

 「アベノミクス」の破たんのもと、「賃上げで景気回復」はますます日本経済の重要課題となります。17年春闘で掲げた要求は、引き続き人事院勧告期にむけてその実現を追及していくこととなります。

職場の声を聞け!退職手当見直しにかかる職場決議は3千を超える

 人事院との最終交渉には、猿橋議長を先頭に蟹澤副議長、川村事務局 長、米田・杉本の各事務局次長、国吉事務局員、国公労連から豊田中執、特殊法人労連から篠原幹事が参加し、人事院は、給与局の森谷第一課長補佐と職員福祉 局の西職員福祉課長補佐が対応しました。なお、最終交渉において315の「退職手当の見直しにかかわる職場決議」を提出し、累計では3,064となりまし た。

 はじめに猿橋議長は、「中間交渉では、不十分であり、不満は回答だった。公務労働者の実態改善にむけ、『労働基本権制約の代償機関』を自認する人事院としての責任発揮を求めてきたところだ。以上の点も踏まえて回答を求める」として、人事院としての最終回答を求めました。

 人事院の最終回答は、要旨以下のとおりです。

● 本年の民間の春闘については、今月15日の集中回答日以降、順次回答が行われており、ここまでの状況をみると、月例賃金については、自動車、電機等の大手 企業を中心にベースアップが行われているものの、その水準をみると、昨年の実績を下回る企業が多くなっている。また、一時金については、増額するとした企 業と減額するとした企業があり、企業ごとにばらつきがあるところである。
 人事院としても引き続き民間の動向を注視してまいりたいと考えている。本日は、皆さんからの要求等に対する現段階における人事院の考え方等について、回答させていただく。 

●  賃金等の改善について、人事院としては、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義および役割を踏まえ、情勢適応の原則にもとづき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしている。
 俸給および一時金については、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処してまいりたい。
 諸手当については、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえながら対応してまいりたい。

●  労働時間の短縮等について、近年は、長時間労働の是正が我が国全体の課題とされており、公務においても、この問題に組織をあげてとりくむ必要があると認識している。
 昨年の勧告時報告で述べたとおり、まず各府省のトップが長時間労働の是正にむけた強いとりくみ姿勢を持ち、組織全体の業務量削減・合理化にとり くむことが重要であり、その上で、現場の管理職員による超過勤務予定の事前確認や具体的指示等のとりくみを徹底することが有効と考えている。
 また、現在、政府において、時間外労働の時間数の在り方の問題が議論されている。公務においては、適切な公務運営を確保するための十分な配慮が必要であることを念頭に置きつつ、人事院としても、民間労働法制における議論を注視してまいりたい。

● 両立支援制度を含む職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等をみながら改善を行ってきたところであり、皆さんの意見も聞きながら引き続き必要な検討を行ってまいりたい。

● 非常勤職員の勤務条件については、従来より、民間の状況との均衡や常勤職員の状況等を考慮し、措置してきたところであり、現在政府において進められている同一労働同一賃金の実現にむけた議論の動向等を注視しつつ、引き続き必要な検討を行ってまいりたい。

● 国家公務員の雇用と年金の接続については、閣議決定において、当面の措置として、再任用希望者を原則フルタイム官職に再任用するものとされて いるとともに、年金支給開始年齢の段階的な引き上げの時期ごとに雇用と年金の接続の在り方についてあらためて検討を行うとされているところである。
 人事院としては、60歳を超える職員が60歳以前と同様の能力を発揮し、意欲を持って勤務できるような人事制度を確立していく必要があると考 えている。そのためには、平成23年の意見の申出を踏まえ、定年延長に向けた仕組みを具体化していくことが必要と考えるが、当面、定員問題等を考慮しつ つ、公務においても民間企業と同様にフルタイム中心の勤務を実現することを通じて、各府省において再任用職員の能力及び経験の一層の活用がはかられるよう にすることが必要であると考えており、引き続き、必要な対応を行ってまいりたい。

● 国家公務員の退職給付については、閣議決定において、官民比較にもとづき、おおむね5年ごとに退職手当支給水準の見直しを行うことを通じて、 官民均衡を確保することとされており、昨年8月、内閣総理大臣及び財務大臣から人事院に対し、民間の退職金および企業年金の実態調査の実施と見解の表明に ついての要請があった。
 これを受け、昨年、民間の退職金及び企業年金の実態調査を実施し、現在、調査の集計を行っているところである。見解の表明にむけては、職員団体等の意見も伺いながら適切に対処してまいりたい。

● 男女平等・共同参画、ワーク・ライフ・バランスの推進について、人事行政における重要施策の一つと位置付け、国家公務員法に定める平等取扱の 原則、成績主義の原則の枠組みを前提とした女性の参画のための採用・登用の拡大、両立支援策の拡充や超過勤務の縮減の推進など様々な施策を行ってきている ところである。
 引き続き、女性を対象とした人材確保活動や女性職員の登用にむけた研修、両立支援策等により、各府省のとりくみを支援するとともに、男女ともに働きやすい勤務環境の整備について、所要の検討を進めてまいりたい。

● 心の健康づくりをはじめとした健康管理対策やハラスメント対策の推進については、公務全体の共通の課題として、各職場においてきめ細かい対応が重要であるとの認識にもとづき、これまでも各府省と協力して積極的にとりくんできたところである。
 いわゆるパワハラの防止については、「パワー・ハラスメント防止ハンドブック」の作成やシンポジウムの開催等のとりくみを行ってきており、ま た、妊娠、出産、育児または介護に関するハラスメントの防止についても、人事院規則10-15(妊娠、出産、育児または介護に関するハラスメントの防止 等)を新たに制定し、その防止措置を定めたところである。人事院としては、引き続き、健康安全対策のとりくみを進めてまいりたい。

切実な要求課題を放置することは許されない!

 以上の最終回答を受けて川村事務局長は、主に以下の点を追及しました。

〇 従来回答の域をでないものであり、たいへん不満だ。要求に応えるべき課題を放置することは許されない。夏の人事院勧告にむけ、引き続きの課題となることを前提に、以下、5点について指摘する。

(1) 政府は民間に賃上げを求める一方で、公務労働者の賃金を引き下げ、あるいは抑制することはみずからの政策にも反している。公務労組連絡会 の月額2万円以上の要求に積極的に応え、初任給の抜本改善と地域手当の格差是正、本省と地方格差の是正を行うよう求める。同時に、「給与制度の総合的見直 し」による賃下げは行わないよう求める。

(2) 退職手当は賃金の後払いであり、労使の協議と合意を抜きにした不利益変更は許されない。高齢層職員は賃金が上がらず、再任用では大幅な賃下げとなるもとで、5年前の402万円もの引き下げで不安が増大している。この点をしっかり受け止めて対応するよう求める。

(3) 非常勤職員にかわって、最低時間額を1000円以上に引き上げるようあらためて求める。期間業務職員の公募要件の撤廃もあらためて指摘す る。中間交渉では、平等取り扱い原則よりも公務の能率性確保が優先することと非常勤職員の人権問題を指摘した。職場の実態や業務運営に照らした弾力的運用 を求める。

(4) 雇用と年金の確実な接続のためには、定年延長が必要だ。定年延長にかかわって、人事院の姿勢として、政府が定年延長の検討を開始するよう勧告するなど意見表明を求める。

(5) 労働時間短縮にかかわって、人事院の「超過勤務の縮減に関する指針」をより厳格にして公務職場にふさわしい上限規制を求める。
 人事院は昨年の「公務員人事管理に関する報告」において、長時間労働是正に向けたトップのリーダーシップと現場の管理職員による超勤の事由や予 定時間の事前確認を指摘し、昨年9月の人事管理運営協議会でその旨が改正されたと承知している。本年勧告にむけて効果の検証を行い、公務労組連絡会との必 要な協議と対応を求める。
 長時間労働を是正するために、正規公務員の増員が不可欠だ。そのためにも総定員法の廃止、定員削減は中止し、必要な増員を可能とするよう人事院としての対応を求める。

 交渉参加者は、「教育現場では超勤は命じられないことになっているが、実際は長時間労働が蔓延している。8時間で仕事を終え、人間らしく生活で きる賃金・労働条件を整備するために人事院は労働者の立場に立つべき」「国会に臨時・非常勤職員の地公法・地方自治法改正案がでている。国の一般職非常勤 を水準とする内容だ。休暇など権利問題の正規職員との均等待遇化は予算にかかわりがなく、すぐにやるべき」「退職手当の見直しについて、中間交渉で人事院 の見解表明前に意見を聞くよう求めたが、いつ、どういうかたちで行うのか」「初任給について、独法では大卒で20万円以上ないと人材を確保できない。国公 の場合、民間との2万円の格差をどう縮めるのか」などと追及しました。

 これらに対して人事院は、「発言いただいた職場実態や要望は各担当に伝える。長時間労働の是正は、超勤の事前確認など効果的と思われる施策を実 施するよう要請している。働き方改革実現会議での議論、インターバル規制も含めた議論を注視していく。非常勤職員の処遇については、『給与の指針』にもと づいて各省で適正に給されていると承知している。政府の『同一労働同一賃金』の議論に注視し、職員団体の意見も伺いながら検討していく。退職手当に関する 意見の聞き取りについては、現段階では回答できない」とのべました。

 最後に猿橋議長は、「具体的に前進する気配さえなく、残念ながら課題は何ら解決していない。民間中小では、生活改善に向けた賃上げ、労働条件改 善をめざす交渉が、粘り強くとりくまれている。600万人を超える労働者に影響を及ぼす公務員の賃金・労働条件の改善に向け、人事院がその役割を果たすよ うあらためて求める。夏の勧告にむけて公務労組連絡会との十分な交渉・協議を求める」とのべ、交渉を終えました。
以 上