公務員賃金や非常勤職員の労働条件の改善を求める

= 公務労組連絡会が全国人事委員会連合会に申し入れ =

 公務労組連絡会は2月3日、自治労連・全教と共同して、地方公務員・教員の賃金・労働条件の改善を求めて、全国人事委員会連合会(全人連)への要請を行いました。
 申し入れでは、実質賃金が5年連続でマイナスとなっており、景気の回復と地域経済の活性化のためにも公務労働者を含めたすべての労働者の賃金改善は不可欠であることを指摘し、全人連としての積極的な対応を求めました。
 また、各単産からは、臨時・非常勤職員の処遇改善や長時間過密労働の是正などに全人連として努力するよう要請しました。

自治体や教職員の長時間過密労働の実態改善を

猿橋議長と青山会長

 全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは猿橋議長(自治労連委員長)、蟹澤副議長(全教委員長)、川村事務局長、杉本・米田の各事務局次長、自治労連の中川書記長と全教の小畑書記長が出席しました。
 全人連側は、青山会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、鍬田(北海道)、小川(宮城県)、長谷川(新潟)、石川(愛知県)、栗原(大阪府)、加藤(広島県)、高畑(徳島)、井手(福岡県)、岡部(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席しました。

 はじめに、猿橋議長が要請書(別掲)を青山会長に手交し、昨年11月の「働き方改革実現会議」で安倍首相が「経済の好循環を継続していくカギは、賃上げ」だと強調したように、景気を回復し地域経済を活性化するためにも、公務労働者も含めたすべての労働者の賃金改善が求められると指摘。あわせて、地域手当による地域間格差の拡大は、住民本位の行政サービスにがんばっている公務労働者の士気を低下させるばかりか、人材確保にも支障をきたしており、あらためて地域手当は廃止し、基本給に繰り入れるよう求めました。

 また、マスコミでも地方自治体職員や教職員の長時間労働の問題が取り上げられ、一部では改善にむけたとりくみも行われているとして、人員増にむけた地方人事委員会としての対応を求めました。総務省の『地方公務員の臨時・非常勤職員及び任期付職員の任用等の在り方に関する研究会』報告にかかわって、減らされた正規公務員の代替として働いている多数の非常勤職員の実情に踏み込んでいないことや、自治体の本格業務への歯止めなき非常勤職員への置き換えが懸念されるなどの問題点を指摘したうえで、私たちの要求も反映して臨時・非常勤職員の適正な任用・勤務条件の確保が目的とされており、政府が方向としては非正規雇用労働者の実態改善を掲げていることもふまえて地方人事委員会としての積極的な対応を求めました。

 自治労連の中川書記長は、昨年の地方勧告にかかわって政府・総務省が極端な国基準を押しつけたもとで、14府県が公民格差を上乗せする水準調整を行ったことを含め、全体で25道府県が国の水準を上回る改定を行ったと「給与制度の総合的見直し」の矛盾を指摘。そして、大阪府人事委員会が17年4月から実施するとしたマイナス勧告を府当局が16年4月に遡及して実施したことや、名古屋市長が一時金の増額勧告を値切ったことに対して、全人連としての意見表明を求めました。

 また、総務省の研究会報告にもとづく法改正を待つのではなく、非常勤職員の処遇改善にむけた勧告や報告を求めるとともに、滋賀県庁や千葉県庁の長時間労働の新聞報道も示して「人手不足により、職場は限界にきている。電通の過労実問題は、決して公務でも他人事ではない」と、さいたま市人事委員会が報告した「マネジメントでは限界である」ことを明らかにして、人員増を含む抜本的な長時間労働の解消策を打ちだすよう求めました。

 全教の小畑書記長は、教職員の「要求・意識アンケート」で月50時間超の時間外勤務が33.6%と2年連続で3割を超えていること、「体がもたないかもしれない」が76.2%と全体の3/4を超え、「心の病になるかもしれない」と感じている人が61.2%にのぼっていると、教職員の深刻な長時間過密労働の実態を指摘しました。そして、文科省も『運動部活動の在り方に関する総合的なガイドライン』を17年度中にも策定するなど、こうした実態を認めざるを得なくなっていると話しました。

 また、16年勧告で36の人事委員会が教職員の勤務実態把握や負担軽減に言及し、独自調査で月100時間超の教員が12.3%いるとした島根県や、教員の未配置に言及した大阪府など大きな前進があると述べました。一方で、「業務改善」や教職員の意識改善などの言及にとどまる人事委員会もあると指摘し、「現在の状況は、給特法や労働安全衛生法違反であり、一刻の猶予もできない問題」であるとして、教職員の長時間過密労働の実態をしっかりつかみ、改善策を打ちだす勧告をを求めました。

要請内容も含めて勧告に向けた検討をすすめる

 要請に対して、青山会長からは以下のような回答が示されました。
【青山全人連会長の回答】
  ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、全国の人事委員会にお伝えします。
 さて、せっかくの機会ですので、現在の状況認識等について、ご存じのこととは思いますが、一言、申し上げます。
 まず、最近の経済状況を見ますと、本年1月23日に発表された政府の月例経済報告では、景気について「一部に改善の遅れもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」との判断が示されております。また、先行きについては、「緩やかに回復していくことが期待される」としつつも、「海外経済の不確実性や金融資本市場の変動の影響に留意する必要がある」としております。

 そのような中、すでに始まっている本年の春季労使交渉では、賃上げについて様々な議論がなされているところであり、どの程度の水準の賃上げが実現するのか、賃上げの手段等を含め、今後の行方を注視していく必要があると考えております。
 また、本年は賃上げに加えて、長時間労働の是正など働き方改革も焦点となっており、各企業における協議の動向にも注目してまいります。
 現在、人事院及び各人事委員会では、民間給与の実態を的確に把握できるよう、本年の民間給与実態調査の実施に向け、その準備を進めているところです。

 今後、各人事委員会においては、社会経済の動向なども踏まえながら、本日の要請内容も含め、本年の勧告に向けた検討を進めていくことになろうかと思います。
改めて申すまでもありませんが、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することは、人事委員会の重要な使命であると認識しております。
 全人連といたしましては、本年も各人事委員会の主体的なとりくみを支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に努めてまいります。


【全人連に提出した要請書】

2017年2月3日

全国人事委員会連合会
 会 長  青山 佾 殿

公 務 労 組 連 絡 会
議 長   猿橋 均 
日本自治体労働組合総連合 
中央執行委員長 猿橋 均 
全 日 本 教 職 員 組 合 
中央執行委員長 蟹澤 昭三

地方公務員の賃金等の改善にかかわる要請書

 日頃から地方公務員の勤務条件の向上に努力されていることに敬意を表します。
 さて、政府が賃上げを政策課題に据えるなど、日本経済との関係でも賃上げは喫緊の課題になっています。とりわけ、地域の公務員賃金は地場賃金にも影響し、地域経済と密接な関係にあり、その改善が求められます。

 一方で、「給与制度の総合的見直し」による地域間での賃金格差の拡大が職員の採用困難を引き起こすとともに、被用者年金一元化による所得制限額の引き下げにより再任用職員の任用更新辞退が相次ぐなど、自治体現場の混乱が全国的に広がっています。
 地方公務員の長時間過密労働はますます拡大し、メンタル不調で長期休業した職員は1%を超え高止まりしています。年間一千時間を超える超過勤務の実態が新聞報道され、労働基準法違反で是正勧告を受ける事態も発生しており、人員増は待ったなしの課題です。
 あわせて、総務省が設けた研究会は、特別職非常勤職員や臨時的任用職員の一般職非常勤化を進め、手当の支給を可能とするよう報告し、総務省による法改正にむけた準備が行われています。

 第一線で奮闘する公務労働者の労苦に報い、良質な行政サービス・教育を提供するためにも、各地の人事委員会が労働基本権制約の代償機関としての責務と役割をふまえて、下記要求の実現に尽力されることを要請いたします。

                        記

1、住民の暮らしや子どもたちの教育のため、日夜、献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励ますとともに、「全体の奉仕者」としての誇りと尊厳を持って職務に専念できるように、生計費原則をふまえ、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の賃金・労働条件を改善すること。

2、民間給与実態調査にあたっては、単に民間の賃金水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密接不可分であることに十分留意して調査を行うこと。とりわけ、勤続・経験年数の加味、雇用形態、民間一時金水準の厳正な把握とともに、比較対象企業規模を100人以上にすること。

3、職務給原則に反した賃金格差の拡大や高齢層の賃金抑制をやめること。全労連が実施した最低生計費調査の結果、全国各地でほとんど差がないことや、20歳代でも時給換算で1,300円以上必要であることが明らかとなっており、地域間格差を拡大する地域手当を廃止し基本給に繰り入れるとともに、初任給を改善すること。

4、地方の公務員賃金引き下げにつながる政府・人事院による給与制度の改悪に対して、人事委員会として意見表明していただくこと。

5、子どもたちのさまざまな困難に対応している教職員のモチベーションを支えるためにも、職責と勤務実態に応じた教職員の適正な賃金水準を確保すること。

6、職員の異常な長時間過密労働を解消するため、必要な人員の確保を勧告すること。また、労働基準監督機関として適切な労働時間管理が行われているか監督するとともに、必要な措置を行うこと。労働基準法33条3項の拡大解釈を認めず、同法36条にもとづく協定の締結を指導すること。

7、男女共同参画推進、女性の活躍推進の立場から、不妊治療、妊娠、出産、育児、家族看護や介護に関する休暇・休業制度等を拡充するとともに、休暇・休業制度が取得しやすい職場環境を整備すること。

8、臨時・非常勤職員について、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現などにむけて必要な対策を行うこと。
  とくに、地方公務員法および地方自治法の改正作業が進められており、臨時・非常勤職員の正規職員との均等待遇の確保にむけた必要な意見表明を行うとともに、賃金・労働条件の改善にむけた勧告を行うこと。

9、「雇用と年金の接続」については、定年延長を大原則に、希望するすべての職員の雇用が保障できる制度を確立し、生計費をふまえた年金を含む所得水準の確保にむけて、人事委員会としての役割をはたすこと。

以 上