労使協議を尽くさない配偶者手当改悪は認められない

= 内閣人事局と最終交渉、勧告どおりに閣議決定へ =

 公務労組連絡会は10月13日、16年人事院勧告の取り扱いにかかわって内閣人事局との最終交渉を行いました。内閣人事局は、14日に第2回給与関係閣僚会議を開催して「勧告どおり、平成28年度の給与改定を行う」ことを決定する方向であることを明らかにしました。
 交渉では、労使交渉を尽くさないもとでの配偶者手当の半減の実施見送りを再度主張するとともに、初任給の改善や臨時・非常勤職員の処遇改善、定年延長の実施などの課題を重ねて追及しました。

 しかし、政府は、14日午前に第2回の給与関係閣僚会議を開催し、その後の閣議で16年人事院勧告にもとづく給与改定や配偶者手当の半減などを閣議決定しました。公務労組連絡会は、政府の閣議決定を受けて「労使協議を尽くさない配偶者手当改悪に抗議し、賃金改善の早期実施を求める」との声明を発表しました。

 給与法と両立支援にかかる「改正」法案は、開会中の臨時国会で審議されます。地方での確定闘争の強化をはじめ、戦争法推進やTPP協定批准関連法案、労働法制改悪法案などの悪法阻止の国民的なたたかいとも結んで、職場と地域からのとりくみの強化が求められます。

初任給の改善、非常勤職員の処遇改善を重ねて追及

 最終交渉は、公務労組連絡会の猿橋議長と蟹沢副議長、川村事務局長と米田・杉本の各事務局次長、国公労連の中本中執、国吉事務局員が参加、内閣人事局は西水総括参事官補佐と西山参事官補佐ほかが対応しました。

 交渉にあたって猿橋議長は、以下のように発言しました。
○ 8月8日に人事院勧告がだされ、すでに2カ月余が経過した。9月16日の中間交渉において、勧告の改善部分の早期実施や初任給の改善、臨時・非常勤職員の処遇改善などとともに、労働条件の不利益変更である扶養手当の改悪は行わないこと、定年延長の実現と希望者全員のフルタイム再任用の確保などを求めた。

○ 安倍首相は、9月27日の「働き方改革実現会議」において「同一労働同一賃金を実現し、正規と非正規の労働者の格差を埋め、若者が将来に明るい希望が持てるようにしなければならない」と述べ、1番目に、同一労働同一賃金など非正規雇用の処遇改善、2番目に、賃金引き上げと労働生産性の向上、3番目に、時間外労働の上限規制の在り方など長時間労働の是正、をあげている。政府がこの課題に本気でとりくむのであれば、公務内の臨時・非常勤職員の問題解決が不可欠だし、公務員賃金の改善、地域間格差の是正が重要だ。また、公務における長時間過密労働をどう改善するのか、内閣人事局の最重要課題である。

○ 9月30日の経済財政諮問会議で経団連の榊原会長は、個人消費が上向かない要因として賃上げの4割が社会保険料の負担増で減殺されていることや将来不安、教育費負担をあげ、賃金の引き上げの継続を発言している。また、東京新聞は、10月7日の社説で「デフレ脱却切り札は賃上げ加速だ」として、企業の内部留保に課税することや前年度の物価上昇率をもとに賃金交渉する春闘をあらためること、民間準拠の公務員賃金を民間に先行して引き上げることなどを提言している。これらの点も踏まえて、政府としての最終回答を求める。

 西水総括補佐からの最終回答は以下のとおり。
●  本年度の国家公務員の給与の取り扱いについては、去る8月8日に人事院勧告が提出されて以来、人事院勧告制度尊重の基本姿勢の下、国政全般の観点から政府部内で検討を続けてきた。
● その結果、明日、第2回目の給与関係閣僚会議を開催し、勧告どおり、平成28年度の給与改定を行うことが決定される方向となっている。
 給与関係閣僚会議で決定がなされれば、その後の閣議において、公務員の給与改定の取扱方針が決定されることとなる。
 また、あわせて、給与改定および育児・介護と仕事の両立支援制度にかかる法律案について決定されることとなる。
● 職員の皆様には、今後とも、国民の信頼に応え、公務能率の向上および行政の効率的・効果的な運営に努めていただきたい。

初任給改善や非常勤職員の処遇問題に誠実に応えよ

 以上の最終回答を受けて川村事務局長は、以下のとおり追及しました。
○ 勧告どおりの給与改定と両立支援にかかる法改正という回答にとどまった。中間交渉でも強く求めた初任給の改善や臨時・非常勤職員の処遇改善について、具体的な回答はなかった。また、労働条件の不利益変更である配偶者手当の半減について政府としての説明が一切なかった点は、使用者責任を棚上げしたものであり許されない。労使協議を尽くさず、労働組合の合意も納得もない配偶者手当の改悪は認められない。

○ 初任給が最低賃金を下回ることは論外であるが、国家公務員の初任給がその水準で優秀な人材が確保できるのか、政府にとっても大変な問題だと考える。政府としての問題意識を明らかにせよ。また、今年の給与法改正が成立した場合、初任給改善に合わせて非常勤職員の賃金が改善されるのか、その改善を4月にさかのぼって改定するのか、政府としての考え方を示せ。

○ 高齢期雇用にかかわって、政府として定年延長にむけた姿勢が何ら表明されないことは納得できない。定年延長にむけた検討を、ただちに開始するよう求める。希望者全員のフルタイム再任用の確保と格付け改善は、単に労働条件の問題にとどまらず、良質な公務・公共サービスを確保するためにも必要であり、あらためて政府としての早急な対応を求める。

○ 再任用者の一時金の改善分を勤勉手当の成績率引き上げにあてることは、断じて認められない。長年蓄積した経験と能力を最大限発揮するためにも、やるべきことは賃金水準を大幅に引き上げることだ。評価制度そのものが職場の納得を得ていないもとで、ごくわずかな一時金の改善分で差をつけず、従来通りに支給するよう求める。

○ 総務省は、国家公務員の賃金と制度をタテにして、地方人事委員会や自治体に執拗に介入している。地方自治や地方分権、労使自治の点からも断じて認められない。同時に、労働基本権を制約したもとで、公務労働者の労働条件を一方的に改悪する事態は認められない。ILО勧告や憲法の規定にもとづく労働基本権の回復について早急に協議を開始するよう求める。

 参加者からも、以下のような発言を行いました。
○ 総務省が地方公務員の賃金引き上げに対して圧力をかけているが、地域間格差が問題だ。地元の信用組合や農協なども公務員賃金に準拠しており、地域経済への影響が大きい。公務員賃金の抑制は地域経済の活性化と相容れないものだ。
○ 非常勤職員にかかる内閣人事局の調査結果では、給与法が改正されても5割の非常勤職員は「改定なし」となっている。調査を行ったにもかかわらず、今年の改正でも改善されないとなると非常勤職員は希望を失うことになる。休暇制度についても改善を求める。
○ さいたま市の人事委員会は、今年の勧告で「仕事量に見合った人員配置を検討する必要がある」と指摘したが、国も必要な人員を確保、増員しないと長時間残業は解消できない。
○ 地方で働く公務労働者から「中央官僚さえ良ければいいのか」と、「給与制度の総合的見直し」による賃下げのもとでの中央官僚優遇に対する反発の声が上がっている。配偶者手当を半減する勧告後に配偶者控除廃止の動きがでてきたが、反対の声も強まっている。女性の活躍というが、経済同友会は配偶者控除の廃止で1兆円の増収となると税収に目をむけている。定員を増やして超過勤務を縮減しないと女性は活躍できない。
○ 成果主義は、真にがんばった者が報われる制度というが、いくらがんばっても上位評価は1割のみに選別される。こんな制度で、国民の信頼に応え、やる気を起こさせることにつながるのか、真剣に考えてほしい。
○ 配偶者手当の半減については、定員が減らされるもとでも国民サービスに努力しているのに、何の説明もなく切り下げる一方的な不利益変更であり、怒りと不満が強い。
 職場では、非常勤職員がいないと仕事が回らない。勧告では処遇の改善策は何もないが、政府として報いることがなくていいのか。「一億総活躍」や「同一労働同一賃金」というなら政府として改善策を示し、地方にも波及させるべきだ。
○ 61年4月以降の生まれは、年金支給開始が65歳になるが、その人たちは現在55歳であり待ったなしの課題だ。再任用ではフルタイム任用が少ない。定年まで培った知識と経験を十分に発揮するためにも定年延長を求める。

政府として非常勤職員賃金の4月遡及の改善を実施せよ

 以上の発言に対して西水総括補佐は、以下のように回答しました。
● 初任給改善については、勧告どおりの給与改定を行うこととしておりご理解いただきたい。
● 扶養手当については、女性が働きやすい制度検討のなかで、政府が人事院に検討を要請し、勧告をいただいたものだ。民間企業では配偶者手当の支給が減少傾向にあり、国家公務員の支給割合も減少傾向にあることなどの変化をふまえて見直しが必要だ。引き下げた分は子の扶養手当にまわし、減額にあたっても配慮があるのでご理解いただきたい。
● 非常勤職員の賃金については、人事院の給与指針にもとづいて常勤職員との権衡を考慮して運用されている。給与法改正をふまえて各府省で適切に対応されるものと考える。
● 高齢期雇用については、平成25年の閣議決定において支給開始年齢の引き上げごとにあらためて検討することとしており、その際には皆さんのご意見も聞かせていただく。

 猿橋議長は最後に、以下のとおり発言して交渉を閉じました。
○ 明日、第2回の給与関係閣僚会議が開かれて勧告どおりの実施が決定されるということだが、重大な問題を抱えており、全体としてきわめて不満であることを表明する。

○ 一部の野党議員から、公務員賃金に対して意図的に中傷する議論が行われている。給与法案の審議を通して、公務労働者が先進国の中で最も少ない人員体制のもと、国民、住民のくらしや基本的人権を確保するために日々奮闘している公務員の果たしている役割や、公務員賃金の動向が地域経済にも影響することを国民に対してしっかりと説明せよ。

○ 退職手当の見直しにむけて、人事院による調査が行われている。5年前の見直しで退職手当の大幅な減額が強行されたが、労働条件課題ではないとしてまともな協議は行われていない。退職金はきわめて重大な労働条件だ。調査結果にもとづく見直し検討にあたっては、公務労組連絡会との真摯な協議と交渉、話し合いを行うよう求める。

○ 定員削減は限界だ。さいたま市の人事委員会は、仕事に見合った人員配置を求めており、政府としても増員にむけた検討と公務労組連絡会との協議を求める。政府は、ILОに対して公務労組連絡会と交渉・協議を行っていると報告しているが、誠実で意味のある交渉にはなっていない。内閣人事局としての対応が求められる。配偶者手当での対応は、ILОの勧告に反している。根本は労働基本権問題であり、具体的な検討を行うとともに、公務労組連絡会との協議を求める。

以 上