定年延長と非常勤職員の処遇改善を実現せよ

= 内閣人事局と夏季重点要求にかかる最終交渉を実施 =

 公務労組連絡会は7月28日、「2016年夏季重点要求書」にかかわって内閣人事局との最終交渉を実施しました。内閣人事局の最終交渉は、従来回答の域をまったくでない、木で鼻をくくったものに終始しました。公務労組連絡会は、あらためて職場の実態を突きつけて、職場の切実な要求に誠実に向き合うよう求めました。

 人事院勧告は、8月上旬に行われる予定ですが、あらためて勧告後に「勧告の取り扱いにかかる要求」を提出することとなります。公務労組連絡会は、引き続き、職場の仲間の切実な要求を一歩でも前進させるために政府追及を強化します。地方での人事委員会勧告、そして、確定闘争にむけた奮闘を呼びかけます。

使用者責任を放棄することは許さない!

 内閣人事局との最終交渉には、公務労組連絡会から猿橋議長と蟹澤副議長、川村事務局長、米田・杉本両事務局次長、徳永・伊吹両幹事、松井書記が参加し、内閣人事局は西水総括補佐と西山参事官補佐ほかが対応しました。
 冒頭、猿橋議長が以下のように発言し、内閣人事局の検討結果を説明するよう求めました。
○ 昨日、賃上げ、大幅増員、公務・公共サービスの拡充、定年延長などを1200人の仲間が内閣人事局前で大きくアピールした。7月14日の中間交渉において中間回答をいただいたが、その際に、公務で働く非常勤職員の均等待遇、最低賃金の1000円への引き上げ、同一労働同一賃金の実現を公務の足元から実施することを求めた。また、政府の公約である政策の実現、景気回復のためには賃金の改善が不可欠であり、「人勧制度の尊重」にとどまるのではなく、公務労組連絡会が要求している非常勤職員の賃上げ、「給与制度の総合的見直し」の中止、とくに地域手当による賃金格差や高齢層賃金抑制の是正は使用者である政府として行うべきだと申し上げた。
 中間交渉では、公務労組連絡会の要求に正面から向き合い、検討したものとはとても受け止められないことを指摘したが、本日は、最終交渉であり、この間の検討結果について説明するよう求める。

●内閣人事局の最終回答は要旨以下のとおり。
 6月17日に提出された要求書について、7月14日に中間回答を行ったところだが、その後、本日までの検討結果を踏まえ、最終回答を行う。
(1) 「賃金の改善等」に関して、国家公務員の給与改定にあたっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則の下、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えている。
 本年の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
 また、「給与制度の総合的見直し」については、民間給与の調査にもとづく人事院勧告を受け、地域間・世代間の適正な給与配分等の実現をはかる観点から実施しているものであり、是非ともご理解いただきたい。
(2) 「非常勤職員の雇用の安定・処遇改善」に関して、非常勤職員については、期間業務職員制度の導入、育児休業等の取得、夏季における弾力的な年次休暇付与などの措置が講じられてきているところである。
 また、給与については、各府省において、人事院から出された指針を踏まえた給与の支給に努めることとされている。
 内閣人事局としては、人事管理官会議等の場を通じて、期間業務職員制度の適正な運用や非常勤職員に対する適正な給与の支給など、非常勤職員に対する適正な処遇に努めるよう各府省に対し、繰り返し周知等をはかってまいりたい。
 また、期間業務職員制度導入後一定期間が経過しているので、適切に運用されているか、人事院や各府省と連携しつつ、実態調査を行っているところである。
(3) 「高齢期雇用・定年延長」に関して、雇用と年金の接続については、引き続き平成25年3月の閣議決定に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進していく方針である。
 なお、組織の活力を維持しつつ、再任用職員の能力や経験をよりいっそう本格的に活用するための方策について、各府省の協力を得ながら引き続き検討してまいりたい。
 また、平成27年の人事院勧告時の報告において、再任用職員の給与について、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、引き続き、その在り方について必要な検討を行っていくこととされており、政府としても人事院における所要の検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
 今後の雇用と年金の接続の在り方については、同閣議決定において、年金支給開始年齢の段階的な引上げの時期ごとに、再任用制度の活用状況や民間の高年齢者雇用確保措置の実施状況等を勘案し改めて検討を行うこととされており、検討に際しては、皆様も含めた関係者の意見も聞きつつ、進めてまいりたい。
(4) 「労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立」に関して、一昨年10月に「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」を取りまとめたが、この1月には、女性活躍推進法の成立と第4次男女共同参画基本計画の策定を踏まえた改正を行ったところである。
 各府省では、この指針を踏まえた取組計画にもとづくとりくみを進めているが、内閣人事局としても、各府省のとりくみを毎年度フォローアップするとともに、必要に応じてサポートを行ってまいりたい。
 超過勤務の縮減や休暇等の取得促進については、昨年に引き続き、7月・8月に「ワークライフバランス推進強化月間」と「ゆう活」を実施しているところである。
 また、フレックスタイム制については、本年4月から原則として全ての職員を対象に拡充されたところであり、職員がより柔軟な働き方ができるよう、制度の円滑な運用にむけて適切に対応していきたい。
 なお、霞が関の働き方の見直しの議論を通じて、広く日本社会の働き方が変わるきっかけとなることを期待し、河野大臣の下で開催していた懇談会から、6月16日に提言が手交された。この提言を受けた政府としての取組方針を明日取りまとめるとしているところである。
 職員の皆さんが、その能力を十分に発揮し、高い士気をもって効率的に勤務し、公務能率のいっそうの向上につながるよう、皆様のご意見も伺いながら、超過勤務の縮減等に政府一丸となってとりくんでまいりたい。
(5) 「健康・安全確保、母性保護等」に関して、職員の勤務能率の発揮及び増進をはかるための、国家公務員健康増進等基本計画※1を本年3月2日に決定したところであり、これにもとづき、職員の心身の健康の保持増進等に努めてまいりたい。
 この中で、心の健康づくり対策については、管理監督者の職場マネジメント業務の一部であることから、管理職員、課長補佐及び係長等に昇任した際に、e-ラーニング講習※2の活用により、心の健康づくりやハラスメント防止に関する研修の受講を必修化するなど、管理監督者を対象とした研修を強化することとしたところである。
 また、ストレスチェック制度を適正に実施するとともに、本府省等、地方支分部局および施設等機関等を問わず、必要とする職員が専門家に相談できる体制の整備に努めることとしている。
 計画の的確な実施のため、具体的目標を定め、フォローアップを行っていくこととしており、福利厚生施策の効率的かつ効果的な推進に努めてまいりたい。
(6) 「民主的公務員制度と労働基本権の確立」に関して、自律的労使関係制度については、国家公務員制度改革基本法第12条において「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大に伴う便益及び費用を含む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。
 この自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、引き続き意見交換をさせていただきたい。
 人事評価制度については、評語区分のレベル感の整理・徹底及び所見欄の充実など、標語区分の趣旨の徹底を図っているところである。
 また、人材育成等へのいっそうの活用として、職員の能力開発やスキルアップ、さらには組織のパフォーマンスの向上につながるように指導・助言を行うなど面談での対応の仕方等、被評価者への指導に役立つ評価者訓練の充実等を図っているところである。 
 今後とも、皆様とも十分意見交換し、御理解をいただきつつ、円滑かつ効果的に制度を運用していきたいと考えている。

政府・使用者として悪化する職場の困難に向き合え

 以上の最終回答を受けて、公務労組連絡会の川村事務局長は以下の発言を行いました。
○ いま、最終回答が示されたが、従来の回答とどこが異なるのか。職場は変化し、困難の度は増しており、公務労組連絡会の要求について誠実に検討したものとは到底受け止めることはできない。この間の交渉でも申し上げたが、重点要求として絞り込んでいることとあわせて、国民のために全国でかんばっている仲間の切実な要求であり、勧告後においても引き続く労使の課題であることを強く申し上げておく。そのうえで、6点申し上げる。

○ 1つは、公務員賃金の改善について。
 議長も申し上げたが、景気回復のためにも「人事院勧告制度の尊重」にとどまらない政府としての対応こそが求められていることを申し上げておく。政府として早急に検討しなければならないのは、非常勤職員の処遇改善だ。政府自身が最低賃金を1000円に引き上げる方針をだしているが、今年の最賃目安では東京は時間額932円となる。人事院の給与指針をタテに要求に応えないことは許されない。あらためて、公務で働く臨時・非常勤職員の時間額を直ちに1000円以上に引き上げるよう強く求める。

○ 二つは、配偶者にかかる扶養手当について。
 中間交渉でも申し上げたが、政府は、配偶者手当の見直しを女性の働きやすい環境整備の方策に位置づけているが、公務員の13,000円の手当が女性の就業を抑制しているものではない。手当受給者にとっては毎月の生計費の一部であり、長年定着してきた労働条件であり、一方的な扶養手当の改悪は認められない。直ちに検討要請を撤回するよう求める。

○ 三つは、非常勤職員の雇用改善について。
 画一的な「公募要件」や3年一律の雇い止めの問題は再三指摘してきた。良質な行政サービスを確保する点からも、政府・使用者として、労働契約法の準用も含め、制度の抜本見直しに着手すべきであることを要求してきた。政府として「非常勤職員の官職は業務の状況に応じて臨時に設けるものであり、国の行政組織に置いて所掌事務を遂行するために恒常的に置かれ厳格に管理される常勤職員の官職とは異なる」との認識を示しているが、非常勤職員の実態とあまりにかけ離れた認識ではないか。この点も含めて、均等待遇や常勤化を含む雇用の安定化、無期雇用化にむけた具体的な検討・協議を行うよう求める。

○ 四つは、雇用と年金の確実な接続について。
 本日3687筆の署名を提出したが、昨日の行動とあわせて署名の数は10万2千筆を超えた。中間交渉では、義務的再任用とする雇用責任の主体をはっきりさせるよう求めたが、最終回答でも何らの言及はない。人事院は、あらためてフルタイム再任用による能力の活用を求めている。繰り返しになるが、来年度末の定年退職者の支給開始年齢は63歳であり、少なくとも今年度内に対応方針を決めなければ予算要求に対応できない。雇用と年金の確実な接続を行うためには、定年延長以外にはなく、直ちに具体化に向けた協議を開始するよう求める。

○ 五つは、労働時間短縮について。
 「霞が関の働き方改革を加速するための懇談会」の提言を受けて、政府としての重点取組方針案を作成しているが、どこまで効果があるのか、疑問だ。超過勤務増大の最大要因は、業務量に対して人員が不足していること、画一的な定員削減がもたらした業務実施体制の脆弱化にある。「ゆう活」や「フレックスタイム制」は、勤務時間管理にかかる業務が増大するとともに、チームを基本とした業務実施体制を阻害しかねず、超過勤務の縮減にはむしろ逆効果であり、「ゆう活」は中止するよう求める。
 国民が求める公務・公共サービスの維持・拡充のためにも、定員削減計画は中止・撤回し、地方自治体も含めて行政需要や業務量にふさわしい定員の確保・配置を行うよう求める。

○ 最後に、労働基本権問題について、中間交渉では、政府の情報提供の内容について協議の場を求めたが、その点に対する回答はない。引き続き、意見交換というなら、早急に協議の場を設けるようあらためて要求する。

 続いて、参加者からも以下のように発言しました。
○ 東京の最低賃金額は月額では156000円であり、初任給とは1万円の格差がある。最賃が毎年3%上がるとさらに格差は広がる。較差外で初任給を上げるよう求める。非常勤職員の制度について総務省は非常勤職員の任用等の在り方研究会を7月に設置したが、国でも同様の検討を行うよう求める。
○ 回答では、公務能率を上げて超過勤務を縮減するとしているが、人を増やさないと長時間残業は解決しない。非常勤職員は、常勤職員と同じ仕事をしている。臨時教員は、クラブ活動の監督もし、担任も持っている。しかし、格差が広がっている。非常勤職員の働き方を承知しているのか。人材確保のために民間では定年延長を実施している。ベテランの能力を活用するためにも段階的定年延長を求める。
○ ハローワークでは、非常勤職員である相談員による相談や紹介あっせんなどの目標と実績も統括官の人事評価の対象となっている。処遇の格差が大きい。親の介護休暇も無休であるが、休めば更新されないのではと取得もせずに、残業もしている。「適正な運用」というが、格差をなくさないと適正とはならない。こうした実態を見て、制度を改善するよう求める。
○ 独立行政法人職員は労働基本権があるが、賃金は人勧準拠とされ、宿舎も国準拠となっている。独法の業務は様々だが、国準拠の押しつけでは人材確保に支障がでている。労働条件は自主交渉で決定できるよう求める。

 これに対して西水総括補佐は、「中間交渉に続いて、職場の実態をお聞かせいただいた。中間回答と変化がないとの指摘だが、人事院勧告後にも意見交換の場があるので、ご意見をいただきたい」「非常勤職員の雇い止め問題、賃金など繰り返し指摘をいただいている。定員管理は多様であり、国も総務省も実態調査を行っているところである。結果をふまえてどうするか考えていかなければならない」「賃金については、人勧尊重の立場で、国政全般を考慮して対応するもの」「人勧制度はよくできた制度だと思う。民間準拠で決定するもので、際限なく賃下げすることはできない。勧告尊重であり、意見を言う権限はない」「労働時間について、定員問題は発言しにくい。働かせ方の見直しはおっしゃるとおり。人を増やせば、残業が減るというものではない。マネジメントの強化をはかる」など再回答を行いましたが、不十分なものにとどまりました。
 川村事務局長は再度、「内閣人事局内にとどまらず、政府で検討したのか。公務で1,000円とすると社会にアピールする効果は大きい」と非常勤職員の最低時間額1,000円の実現を追及しました。

 最後に、猿橋議長が、「本日は、最終交渉ということであったが、回答内容は従来の域から一歩もでないまったく不十分にものであった。使用者である政府としての実務を担う内閣人事局が、公務労組連絡会の要求や発言を聞き置くだけとすることは、使用者責任を放棄したものであり、絶対許されるものではない。あわせて、政府が掲げた最低賃金の引き上げが審議会の目安として提示されようとしている。こうした政策を公務の場で具体化する責任が内閣人事局にあると考える。8月上旬には人事院勧告がだされるが、その際、あらためて公務労組連絡会としての勧告取り扱い、具体化にかかる要求を提出することとする」とのべ、公務労組連絡会との真摯な対応を強く求めて交渉を終わりました。(以上)