公務労働者の賃金・労働条件改善へ使用者責任を果たせ

= 人事院、内閣人事局に16年春闘統一要求を提出 =

 公務労組連絡会は2月17日、1月27日の公務労組連絡会臨時総会で決定した「2016年春闘統一要求」を人事院と内閣人事局に提出しました。統一要求の提出は、公務労組連絡会の川村事務局長と米田・杉本両事務局次長で行い、人事院は職員福祉局の松本正明上席連絡調整官が、内閣人事局は西山賢司参事官補佐が対応しました。今後、3月9日の中央行動や各単産・地域でのたたかいを背景にして、3月下旬に誠意ある回答を引き出すため、交渉を積み上げていきます。

 統一要求の提出にあたって川村事務局長は、「全国の職場で働く公務労働者の切実な要求は多岐にわたっているが、特に重視する重点について述べる」として、賃金改善をはじめとする5点について強調しました。人事院と内閣人事局は、それぞれ「本日、要求を受けとったので、しかるべき時期に回答できるよう検討する」とのべ、以下の点を主張しました。

1、賃金・昇格等の改善について
 安倍首相は経済の好循環のためにも賃金の引き上げが必要と言っている。10月から12月のGDPは年率で1.4%のマイナス。労働者の賃金は上がらず、下がっていることが、景気低迷や消費需要が伸びない最大の要因であることは明らか。すべての労働者の賃上げがくらしと景気回復に不可欠である。公務員賃金は600万人を超える労働者に影響するものであり、地域の活性化にとっても重要だ。公務員労働者のアンケート結果では、6割を超える仲間が「生活が苦しい」と回答しており、暮らし向きは改善されていない。公務員労働者が安心して公務に専念するためにも、「月額2万円以上」の生活改善できる賃金の引き上げを求める。
 また、政府の要請によって配偶者の扶養手当の見直しが人事院で検討されているが、長年定着した生活給であり一方的な見直しは行わないよう求める。

2、労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立について
 来年度の国家公務員の定員は、917人の純減となった。治安や外交、関税などは増員されており、国民の暮らしや権利に関わる行政部門の定員が大幅に削減されている。業務量は減るどころか増える一方のもとで、人員を減らせば長時間残業につながることは明白。いくらメンタルヘルス対策を叫んでも減らせるものではない。長時間残業の抜本的に解決すること、そのために定員増が必要であることを、公務員の命と健康にも責任を負っている人事院・内閣人事局として、行政機関の実態調査も行って、残業規制とそのための対策に本腰を入れるよう求める。

 フレックスタイム制が4月から実施されるが、本人の意に反した勤務時間の変更があってはならない。民間法制とは違って、各省庁の長が勤務時間の割振りを行うものであるが、国会でも「職員が申告を行わないのに、各省各庁の長が一方的に割り振りを行うということはできないもの」と答弁している。しかし、「ゆう活」では本人の意に反した朝型勤務が行われた省庁もある。そうならない仕組みが必要だ。政府・人事院としての具体的な対応を求める。「公務の運営に支障がない」との要件は、そもそも人が足りなくて、恒常的な残業がある職場状況では適用できないものではないのか。フレックスタイム制の実施の前に、安心して普通に働ける職場体制をつくるよう求める。

 「公的サービスの産業化」のもと、行政業務の民間委託の拡大が行われ、地方交付税の算定には「トップランナー方式」を導入するとしている。また、財界の要望にもとづいて、さらなる規制緩和も狙われている。スキーバスの事故や廃棄食品の横流し、民間委託先での労働者の低賃金や劣悪な労働条件、そのもとでの行政サービスの劣化など、国民の基本的人権保障、安心・安全が確保できない事態が発生している。その点からも、民間委託や派遣労働の導入ではなく、正規の公務員の増員によって公務・公共サービスを拡充するよう求める。

3、高齢期雇用・定年延長について
 人事院が高齢者雇用の在り方として定年延長の実現を求め、昨年の報告でもフルタイム中心の再任用を求めたにもかかわらず、政府は現行の再任用制度を継続するとした。しかし、この現行制度では、雇用と年金の確実な接続は確保できず、人事院が指摘する再任用職員の能力と経験の活用ができないばかりか、民間企業での制度に劣後するものであり、民間との均衡や法の下の平等にも反する。2年後には63歳支給となるものであり、現状を放置追認することは許されない。再任用職員の生活が保障できる賃金水準を確保するとともに、今年の定年退職者の再任用実態を早急に把握し、公務労組連絡会とも情報を共有して、定年延長実現に努力することを求める。

4、非常勤職員の雇用の安定・処遇改善について
 非常勤職員の処遇改善について、安倍首相は「非正規雇用の皆さんの均衡待遇の確保にとりくむ」「同一労働同一賃金の実現に踏み込む」と言っている。また、「最低賃金も千円をめざす」とも言っている。国に雇用されている非常勤職員は7万人を優に超えており、行政や公共サービスはその人たちを抜きには成り立たない。「1億総活躍」というなら現に国民のための公務・公共サービスを担って奮闘している非常勤職員の雇用の安定化と賃金や労働条件の改善を行う必要がある。会計制度や平等取扱の原則、任免の根本基準(成績主義の原則)を口実に公募要件に固執しているが、公務の実情に合わない。能力と経験を生かすためにも雇用の無期化を求める。あわせて、最低賃金千円を下回っている非常勤職員は直ちになくすよう人事院(内閣人事局)としての役割発揮を求める。

5、その他
 昨年の人勧の取り扱いは、安倍首相が野党の憲法第53条にもとづく臨時国会の招集を拒否し、結果として公務員賃金の改定と差額支給が越年したことは、公務員労働者の権利を侵害する重大な問題である。労働基本権を回復するよう改めて強く求める。
 同時に、労働基本権が制約されているもとで、代償措置としての勧告制度がないがしろにされてはならない。人事院として、公務労働者の生活・労働条件の改善にむけてその役割を果たすべきだ。提出した要求はどれも切実なものであることをしっかりと受けとめ、その実現と改善にむけて誠意をもって対応するよう求める。
 安倍首相が、賃金の引き上げや非正規労働者の処遇改善を公言しているもとで、使用者として公務員労働者や非常勤職員の生活・労働条件の改善に努力することは当然のことだ。提出した要求を誠実に検討し、労使での率直な話し合いを行うよう求める。

以 上



【人事院へ提出した要求書】

2016年2月17日

人事院総裁  一宮 なほみ 殿

公 務 労 組 連 絡 会
 議長  蟹澤 昭三

公務労組連絡会2016年春闘統一要求

 公務労働者の賃金はこの間、低下の一途をたどってきました。昨年4月からは「給与制度の総合的見直し」が強行されています。今年度は不十分ながらも俸給表の改善がはかられましたが、「給与制度の総合的見直し」によって、多くの職員が実質的に改善されない状況となっています。そうしたもと、「アベノミクス」による物価の上昇で生活は悪化するばかりです。

 安倍首相は、デフレからの脱却にむけ、賃上げの必要性も強調しています。経済財諮問会議もGDP600兆円経済にむけて3%の賃上げや最低賃金の引き上げが必要としています。もはやすべての労働者の賃上げや底上げが日本経済の活性化に不可欠な課題となっています。また、非正規労働者が4割を超えるなかで、経済を立て直すためにも労働法制の改悪ではなく、良質で安定した雇用を生み出していくこともあわせて必要です。

 こうしたもとで、公務員賃金の社会的影響力をふまえて、積極的な賃金改善と非常勤職員の雇用の安定、均等待遇をはかり、すべての労働者の賃上げで内需を拡大し、景気を回復していく機運を高めていくことこそ求められています。
 こうしたもと、安倍首相が野党の憲法第53条にもとづく臨時国会の招集を拒否し、結果として公務員賃金の改定と差額支給が越年したことは、公務員労働者の権利を侵害する重大な問題であることを指摘するものです。

 職場では、連年にわたって定員削減がつづくきびしい環境のもとでも、憲法第15条にさだめている全体の奉仕者として国民の基本的人権を保障するために日夜奮闘しています。しかし、職員個々の奮闘は限界にきており、健康を害する職員も増加しています。
 職員が健康で安心して働ける職場を構築するとともに、国民のくらしや権利、安全・安心を守るためにも、増員をはじめとする公務・公共サービスの拡充は不可欠です。職場の奮闘に応えるためにも、人事院は、公務員の労働基本権制約の「代償機関」としての責務をふまえ、賃金・労働条件の改善にむけて積極的な役割を果たすべきです。

 私たちは、公務・民間、正規・非正規を問わず、すべての労働者の賃金・労働条件を求めます。春闘期の統一要求について、貴職が十分な検討を行い、誠意をもって回答するよう求めます。

1、賃金・昇格等の改善について
(1)公務労働者の賃金を、月額平均20,000円以上(国公比較賃金ベースで4.9%)引き上げること。
(2)民間初任給との格差を是正するため、行政職(一)一般職高卒初任給(1級5号俸)を170,000円、一般職大卒初任給(1級25号俸)を202,100円に引き上げること。
(3)55歳を超える職員の給与減額措置の即時廃止をはじめ、高齢層の給与抑制措置を取りやめること。
(4)官民給与の比較は、比較企業規模を1,000人以上に引き上げるなど、同種・同等比較を徹底した官民賃金比較方法に改善すること。
(5)俸給水準は、生計費や公務員としての専門性の高まりを反映した水準とすること。
(6)一時金の支給月数を引き上げ、改善部分をすべて期末手当にあてること。また、役職傾斜支給、管理職加算は廃止し、全職員の一時金改善にあてること。
(7)退職手当は、公務の特殊性に見合った制度・水準に改善すること。
(8)諸手当については、以下の要求を実現すること。
① 地域間格差の縮小、支給地域の拡大など地域手当を改善すること。
② 扶養手当の支給範囲及び支給額を改善すること。
③ 住居手当の全額支給限度額・最高支給限度額を引き上げること。
④ 職員に自己負担を生じさせないよう通勤手当の支給要件・支給額を改善すること。
⑤ 単身赴任手当の支給要件・支給額を改善すること。
⑥ 超過勤務手当の支給割合を150%に、深夜勤務及び休日給の支給割合を200%に引き上げること。また、正規の勤務時間を超えて移動に要した出張中の時間に対しても支給すること。
⑦ 寒冷地手当の級地区分や指定基準を改め、支給額等を改善すること。
⑧ 特殊勤務手当の支給範囲や対象職員の拡大をはかるとともに、支給額を改善すること。
⑨ 特地勤務手当の支給対象の拡大をはかるとともに、勤務や生活の実態に見合うよう、支給率等を改善すること。
(9)昇格改善について、以下の要求を実現すること。
① 級別標準職務表を抜本的に改正し、各職務の評価を引き上げること。
② 行(二)職員の部下数制限を撤廃し、職務の特性にふさわしい昇格基準を確立すること。
③ 本省・地方の機関間格差や府省別、組織別、世代間、男女間の昇格格差を是正すること。

2、労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立について
(1)所定勤務時間を「1日7時間、週35時間」に短縮すること。
(2)交替制勤務者の連続勤務時間を短縮し、勤務間隔を11時間以上確保すること。
(3)勤務時間管理を徹底し、超過勤務の大幅な縮減と不払い残業を根絶すること。
(4)「フレックスタイム制」や早出勤務の実施等の一方的な勤務時間の変更は行わないこと。
(5)育児のための短時間勤務制度の拡充・改善をはかること。また、介護のための短時間勤務制度を創設すること。
(6)休暇制度は、以下の要求をはじめ改善をはかること。
① 介護休暇の取得期間を延長し、取得方法、要介護期間の制限撤廃などの改善をはかること。
② 短期介護休暇における要介護家族の定義及び範囲を見直し、拡充すること。
③ 子の看護休暇を子ども一人につき5日以上とし、対象年齢を引き上げること。また、対象範囲を拡大するなど看護休暇の拡充をはかること。
④ 不妊治療を目的とした休暇を制度化すること。
⑤ 経済的措置を含めて長期勤続休暇(リフレッシュ休暇)を早期に制度化すること。
⑥ 年次有給休暇、夏季休暇、結婚休暇を拡充すること。
(7)休暇・休業制度が取得しやすい環境を整備するよう各府省を指導すること。
(8)男性も育児参加しやすいよう職場環境を整備すること。
(9)育児休業や介護休暇中の所得保障を充実すること。
(10)配偶者同行休業は、配偶者の国内転勤の場合も対象とするとともに、期間も最大3年に限定しないこと。また、制度の実効性を確保するため、柔軟な運用をはかること。
(11)国家公務員宿舎の廃止計画、宿舎使用料の値上げを中止・撤回するとともに、必要な公務員宿舎を確保するよう措置すること。
(12)労働時間短縮をはじめとした労働条件を確保するため、必要な要員を確保するよう、政府へ強力に働きかけること。

3、高齢期雇用・定年延長について
(1)「天下り」や早期退職慣行を廃止し、定年年齢までの雇用を保障すること。
(2)雇用と年金の確実な接続をはかるため、定年年齢を段階的に65歳に引き上げること。
(3)65歳までの定年延長が完成するまでの間は再任用制度を併置することとし、以下の要求を実現すること。
① 再任用職員の定数は別枠とするなど、政府の責任で必要な定数を確保させ、希望者全員のフルタイムでの再任用を保障すること。
② 給与水準は退職前の給与水準を基本とし、少なくとも定年退職時給与の7割の水準を確保するとともに、生活関連手当を支給すること。
③ 再任用後のポストや処遇に著しい格差を生じさせないようにすること。また、ポストや処遇の設定などについて、任命権者による恣意的な運用が行われないようガイドラインを示すなど責任ある対応をとること。

4、非常勤職員の雇用の安定・処遇改善について
(1)非常勤職員制度を抜本的に見直し、雇用の安定、均等待遇などをはかる法制度を整備すること。
(2)非常勤職員の時給を150円以上引き上げること。
(3)非常勤職員をはじめ、公務職場で働く労働者の最低賃金を「時給1,000円」「日額8,000円」「月額170,000円」以上に引き上げること。
(4)非常勤職員の賃金は行政職(一)1級5号俸を基礎として、学歴、経験年数及び職務内容等の要素を考慮して決定すること。また、諸手当については、期末手当及び通勤手当の支給額を改善するなど充実すること。
(5)非常勤職員の更新にあたっては、勤務年数や更新回数を理由とした雇い止めを行わないこと。また、公募要件を撤廃すること。
(6)非常勤職員の休暇を常勤職員と同等の制度とするとともに、以下の事項について早急に改善すること。
① 無給とされている休暇を有給とすること。
② 非常勤職員の忌引休暇、病気休暇、子の看護休暇について、6か月以上任用の制限を撤廃すること。また、年次有給休暇を採用時から取得できるようにすること。
③ 非常勤職員に対しても、結婚休暇、夏季休暇を制度化すること。

5、民主的公務員制度と労働基本権の確立について
(1)憲法28条の原則に立った基本的人権として、ILO勧告など国際基準にそった労働基本権の全面的な回復を実現すること。
(2)職員団体のための職員の行為の制限(国公法第108条の6)を廃止すること。
(3)「特定秘密保護法」や「マイナンバー制度」による公務労働者の基本的人権侵害を防止すること。
(4)公務員の政治的行為の制限を撤廃し、市民的権利を十全に保障すること。
(5)公務における団結権の保護及び雇用条件決定手続に関するILO第151号条約を批准すること。
(6)労働組合の団結と自治を破壊する組織介入、不当労働行為は一切行わないこと。
(7)中立・公正な行政を確立するために、公務員の身分保障を形骸化させないこと。
(8)採用試験区分にもとづく人事運用での差別を撤廃すること。
(9)評価制度について、導入の目的に照らして問題点を検証するとともに、以下のとおり改善すること。
① 評価結果は全面開示とすること。
② 短期の評価結果を給与等の決定に直接反映しないこと。
③ 苦情処理システムに労働組合の関与を保障すること。

6、男女平等・共同参画について
(1)雇用の全ステージにおける男女差別を禁止すること。
(2)女性活躍推進法にもとづく「事業主行動計画」は、労働組合との協議・合意にもとづいて策定するとともに、以下のとおり改善すること。
 ① 女性の採用を拡大するとともに、数値目標を設定して大幅な登用をはかること。
 ② 役職段階別に占める女性の割合を男女の職員構成比に応じたものとすること。

7、健康・安全確保、母性保護等について
(1)職員の健康・安全を確保するため、以下の対策を講じること。
① 労使協議で超勤規制、夜勤制限、勤務時間帯等の実効ある基準を策定すること。
② 心の健康づくり対策を強化すること。
③ パワーハラスメントに対する指針を策定し、具体的な対策を講じること。
④ 看護師の夜勤は、3人以上・月6日以内に制限すること。
⑤ 行政対象暴力に対する安全対策を確保すること。
(2)ストレスチェック制度は、職員の自主性の確保、プライバシーの保護、及び不利益防止の措置を徹底するとともに、実施体制等を含め、労働組合との協議に基づき実施すること。また、実施にかかる十分な予算を確保すること。
(3)産前休暇を8週間、産後休暇を10週間とし、産前6週間の就業禁止期間を設けるとともに、代替要員を確保すること。
(4)妊産婦の負担を軽減するため、軽易な業務への転換、勤務時間短縮などを行うこと。また、妊娠障害における休暇を制度化すること。
(5)生理休暇を特別休暇に戻すこと。
(6)更年期障害に関わる措置等を制度化すること。
(7)一般健康診断・特別健康診断を充実させること。
(8)国家公務員災害補償の認定を速やかに行うこと。
(9)公務・通勤災害の各種給付水準を引き上げること。

8、東日本大震災、東京電力福島第一原発事故に伴う労働条件改善について
(1)震災にともなって遠距離通勤を強いられている職員に対し、通勤緩和措置を講ずること。
(2)福島県の各官署に勤務する職員の放射線量管理を徹底させるとともに、定期的に特別健康診断を行うこと。また、被災後、福島県の官署に勤務した職員についても、同様に対応すること。
(3)自主避難等している職員に対しては、自己都合とせず通勤手当を満額支給するなど特例措置を講ずること。また、家族のみが自主避難している場合は、単身赴任手当を支給すること。

以 上


【内閣人事局へ提出した要求書】

2016年2月17日

内閣総理大臣 安倍 普三 殿
内閣官房長官 菅  義偉 殿

公 務 労 組 連 絡 会
 議長  蟹澤 昭三

公務労組連絡会2016年春闘統一要求

 安倍首相は、デフレからの脱却にむけ、賃上げの必要性も強調しています。経済財諮問会議もGDP600兆円経済にむけて3%の賃上げや最低賃金の引き上げが必要としています。もはやすべての労働者の賃上げや底上げが日本経済の活性化に不可欠な課題となっています。また、非正規労働者が4割を超えるなかで、経済を立て直すためにも労働法制の改悪ではなく、良質で安定した雇用を生み出していくこともあわせて必要です。

 昨年4月から「給与制度の総合的見直し」が強行されていますが、公務労働者の賃金はこの間、低下の一途をたどってきました。今年度は不十分ながらも俸給表の改善がはかられましたが、「給与制度の総合的見直し」によって、多くの職員が実質的に改善されない状況となっています。
 こうしたもと、安倍首相が野党の憲法第53条にもとづく臨時国会の招集を拒否し、結果として公務員賃金の改定と差額支給が越年したことは、公務員労働者の権利を侵害したものでもあり重大な問題です。

 政府は、公務員賃金の社会的影響力をふまえて、積極的な賃金改善と非常勤職員の雇用の安定、均等待遇をはかり、すべての労働者の賃上げで内需を拡大し、景気を回復していく機運を高めていくことこそ求められています。
 職場では、連年にわたって定員削減がつづくきびしい環境のもとでも、憲法に基づき、全体の奉仕者として国民の基本的人権を保障するために日夜奮闘しています。しかし、職員個々の奮闘は限界をむかえており、健康を害する職員も増加しています。

 職員が健康で安心して働ける職場を構築するとともに、国民のくらしや権利、安全・安心を守るためにも、増員をはじめとする公務・公共サービスの拡充は不可欠です。職場の奮闘に応えるためにも、政府は、賃金・労働条件の積極的な改善にむけて使用者としての責任を果たすべきです。
 他方、政府は戦争法の3月施行にむけて準備をすすめていますが、多くの憲法学者や元内閣法制局長官、最高裁判所長官・判事などが憲法違反と指摘しているもとで、憲法第99条で「憲法尊重・擁護の義務」を負っている公務労働者として見過ごすわけにはいきません。

 私たちは、憲法違反の戦争法廃止、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回とともに、公務・民間、正規・非正規を問わず、すべての労働者の賃金・労働条件を求めます。春闘期の統一要求について、貴職が十分な検討を行い、誠意をもって回答するよう求めます。

1、賃金・昇格等の改善について
(1)公務労働者の賃金を、月額平均20,000円以上(国公比較賃金ベースで4.9%)引き上げること。
(2)民間初任給との格差を是正するため、行政職(一)一般職高卒初任給(1級5号俸)を170,000円、一般職大卒初任給(1級25号俸)を202,100円に引き上げること。
(3)職務給の原則を無視し、地域間格差を拡大する「給与制度の総合的見直し」は中止すること。
(4)55歳を超える職員の給与減額措置の即時廃止をはじめ、高齢層の給与抑制措置を取りやめること。
(5)官民給与の比較は、比較企業規模を1,000人以上に引き上げるなど、同種・同等比較を徹底した官民賃金比較方法に改善すること。
(6)俸給水準は、生計費や公務員としての専門性の高まりを反映した水準とすること。
(7)一時金の支給月数を引き上げ、改善部分をすべて期末手当にあてること。また、役職傾斜支給、管理職加算は廃止し、全職員の一時金改善にあてること。
(8)退職手当は、公務の特殊性に見合った制度・水準に改善すること。
(9)配偶者にかかる扶養手当の引き下げにむけた、人事院への検討要請は直ちに撤回すること。
(10)諸手当については、以下の要求を実現すること。
① 地域間格差の縮小、支給地域の拡大など地域手当を改善すること。
② 扶養手当の支給範囲及び支給額を改善すること。
③ 住居手当の全額支給限度額・最高支給限度額を引き上げること。
④ 職員に自己負担を生じさせないよう通勤手当の支給要件・支給額を改善すること。
⑤ 単身赴任手当の支給要件・支給額を改善すること。
⑥ 超過勤務手当の支給割合を150%に、深夜勤務及び休日給の支給割合を200%に引き上げること。また、正規の勤務時間を超えて移動に要した出張中の時間に対しても支給すること。
⑦ 寒冷地手当の級地区分や指定基準を改め、支給額等を改善すること。
⑧ 特殊勤務手当の支給範囲や対象職員の拡大をはかるとともに、支給額を改善すること。
⑨ 特地勤務手当の支給対象の拡大をはかるとともに、支給率等を改善すること。
(11)昇格改善について、以下の要求を実現すること。
① 級別標準職務表を抜本的に改正し、各職務の評価を引き上げること。
② 行(二)職員の部下数制限を撤廃し、職務の特性にふさわしい昇格基準を確立すること。
③ 本省・地方の機関間格差や府省別、組織別、世代間、男女間の昇格格差を是正すること。

2、国民本位の行財政・司法の確立と要員確保等について
(1)国民の安全・安心の確保に資する国民本位の行財政・司法を確立すること。
(2)地方交付税の「行革努力の反映」や「トップランナー方式」をあらため、住民本位の自治体運営に必要な地方交付税を確保・配分すること。
(3)公務員の総人件費削減は行わないこと。また、業務の民間委託や派遣労働を導入・拡大せず、行政需要に見合う大幅な増員を行うこと。
(4)総定員法を廃止するとともに、「国の行政機関の機構・定員管理に関する方針」を撤回すること。当面、定員管理の柔軟な運用により、職場実態に見合った要員等を確保すること。
(5)行(二)職の不補充政策を撤廃すること。
(6)社会保険庁職員の分限免職を撤回し、安定した雇用を確保すること。
(7)「道州制」「地方分権改革」による事務・権限の移譲や国の地方出先機関の廃止は行わないこと。
(8)職員の雇用・労働条件を無視した国の機関や独立行政法人等の地方移転は行わないこと。
(9)公共サービスの劣化につながる「市場化テスト法」を廃止すること。
(10)公共サービス基本法に基づき、国が委託する事業で働く労働者の適正な労働条件を確保するため「公契約法」を制定すること。

3、民主的公務員制度と労働基本権の確立について
(1)憲法28条の原則に立った基本的人権として、ILO勧告など国際基準にそった労働基本権の全面的な回復を実現すること。
(2)職員団体のための職員の行為の制限(国公法第108条の6)を廃止すること。
(3)公務労働者の基本的人権を侵害する「特定秘密保護法」を直ちに廃止すること。
(4)マイナンバー制度は直ちに中止すること。また、個人番号カードのICカード身分証との一体化は中止すること。
(5)公務員の政治的行為の制限を撤廃し、市民的権利を十全に保障すること。
(6)公務における団結権の保護及び雇用条件決定手続に関するILO第151号条約を批准すること。
(7)労働組合の団結と自治を破壊する組織介入、不当労働行為は一切行わないこと。
(8)中立・公正な行政を確立するために、公務員の身分保障を形骸化させないこと。
(9)採用試験区分にもとづく人事運用での差別を撤廃すること。
(10)評価制度について、導入の目的に照らして問題点を検証するとともに、以下のとおり改善すること。
① 評価結果は全面開示とすること。
② 短期の評価結果を給与等の決定に直接反映しないこと。
③ 苦情処理システムに労働組合の関与を保障すること。

4、労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立について
(1)所定勤務時間を「1日7時間、週35時間」に短縮すること。
(2)交替制勤務者の連続勤務時間を短縮し、勤務間隔を11時間以上確保すること。
(3)勤務時間管理を徹底し、超過勤務の大幅な縮減と不払い残業を根絶すること。
(4)「フレックスタイム制」や早出勤務の実施等の一方的な勤務時間の変更は行わないこと。
(5)育児のための短時間勤務制度の拡充・改善をはかること。また、介護のための短時間勤務制度を創設すること。
(6)休暇制度は、以下の要求をはじめ改善をはかること。
① 介護休暇の取得期間を延長し、取得方法、要介護期間の制限撤廃などの改善をはかること。
② 短期介護休暇における要介護家族の定義及び範囲を見直し、拡充すること。
③ 子の看護休暇を子ども一人につき5日以上とし、対象年齢を引き上げること。また、対象範囲を拡大するなど看護休暇の拡充をはかること。
④ 不妊治療を目的とした休暇を制度化すること。
⑤ 経済的措置を含めて長期勤続休暇(リフレッシュ休暇)を早期に制度化すること。
⑥ 年次有給休暇、夏季休暇、結婚休暇を拡充すること。
(7)休暇・休業制度が取得しやすい環境を整備するよう各府省を指導すること。
(8)男性も育児参加しやすいよう職場環境を整備すること。
(9)育児休業や介護休暇中の所得保障を充実すること。
(10)配偶者同行休業は、配偶者の国内転勤の場合も対象とするとともに、期間も最大3年に限定しないこと。また、制度の実効性を確保するため、柔軟な運用をはかること。
(11)国家公務員宿舎の廃止計画、宿舎使用料の値上げを中止・撤回するとともに、必要な公務員宿舎を確保すること。また、改善のための関連予算を大幅に増額すること。
(12)共済保険料の負担割合を掛金(労働者分)3、負担金(使用者分)7とすること。また、退職等年金給付にかかる保険料は全額使用者負担とすること。

5、高齢期雇用・定年延長について
(1)「天下り」や早期退職慣行を廃止し、定年年齢までの雇用を保障すること。
(2)雇用と年金の確実な接続をはかるため、定年年齢を段階的に65歳に引き上げること。
(3)65歳までの定年延長が完成するまでの間は再任用制度を併置することとし、以下の要求を実現すること。
① 再任用職員の定数は別枠とするなど、政府の責任で必要な定数を確保し、希望者全員のフルタイムでの再任用を保障すること。
② 給与水準は退職前の給与水準を基本とし、少なくとも定年退職時給与の7割の水準を確保するとともに、生活関連手当を支給すること。
③ 再任用後のポストや処遇に著しい格差を生じさせないようにすること。また、ポストや処遇の設定などについて、任命権者による恣意的な運用が行われないようガイドラインを示すなど政府として責任ある対応をとること。

6、非常勤職員の雇用の安定・処遇改善について
(1)非常勤職員制度を抜本的に見直し、雇用の安定、均等待遇などをはかる法制度を整備すること。
(2)非常勤職員の時給を150円以上引き上げること。
(3)非常勤職員をはじめ、公務職場で働く労働者の最低賃金を「時給1,000円」「日額8,000円」「月額170,000円」以上に引き上げること。
(4)非常勤職員の賃金は行政職(一)1級5号俸を基礎として、学歴、経験年数及び職務内容等の要素を考慮して決定すること。また、諸手当については、期末手当及び通勤手当の支給額を改善するなど充実すること。
(5)非常勤職員の更新にあたっては、勤務年数や更新回数を理由とした雇い止めを行わないこと。また、公募要件を撤廃すること。
(6)非常勤職員の休暇を常勤職員と同等の制度とするとともに、以下の事項について早急に改善すること。
① 無給とされている休暇を有給とすること。
② 非常勤職員の忌引休暇、病気休暇、子の看護休暇について、6か月以上任用の制限を撤廃すること。また、年次有給休暇を採用時から取得できるようにすること。
③ 非常勤職員に対しても、結婚休暇、夏季休暇を制度化すること。

7、男女平等・共同参画について
(1)雇用の全ステージにおける男女差別を禁止すること。
(2)女性活躍推進法にもとづく「事業主行動計画」は、労働組合との協議・合意にもとづいて策定するとともに、以下のとおり改善すること。
 ① 女性の採用を拡大するとともに、数値目標を設定して大幅な登用をはかること。
 ② 役職段階別に占める女性の割合を男女の職員構成比に応じたものとすること。

8、健康・安全確保、母性保護等について
(1)職員の健康・安全を確保するため、以下の対策を講じること。
① 労使協議で超勤規制、夜勤制限、勤務時間帯等の実効ある基準を策定すること。
② 心の健康づくり対策を充実・強化すること。
③ パワーハラスメントに対する指針を策定し、具体的な対策を講じること。
④ 看護師の夜勤は、3人以上・月6日以内に制限すること。
⑤ 行政対象暴力に対する安全対策を確保すること。
(2)ストレスチェック制度は、職員の自主性の確保、プライバシーの保護、及び不利益防止の措置を徹底するとともに、実施体制等を含め、労働組合との協議に基づき実施すること。また、実施にかかる十分な予算を確保すること。
(3)産前休暇を8週間、産後休暇を10週間とし、産前6週間の就業禁止期間を設けるとともに、代替要員を確保すること。
(4)妊産婦の負担を軽減するため、軽易な業務への転換、勤務時間短縮などを行うこと。また、妊娠障害における休暇を制度化すること。
(5)生理休暇を特別休暇に戻すこと。
(6)更年期障害に関わる措置等を制度化すること。
(7)一般健康診断・特別健康診断を充実させること。
(8)国家公務員災害補償の認定を速やかに行うこと。
(9)公務・通勤災害の各種給付水準を引き上げること。

9、独立行政法人の制度等について
(1)独立行政法人の抜本的見直しにあたっては、以下の要求を実現すること。
① 国民生活と社会経済の安定向上に資する独立行政法人の事務・事業については、国の責任で財源措置をはじめとして存続・拡充させることを前提とすること。また、国として直接運営した方がより効率的・効果的で、高い公共的見地から貢献できる事務・事業については、国の行政機関に戻すこと。
② 職員の身分・雇用、労働条件に関わっては、当該労働組合との誠意ある交渉・協議を行い、雇用確保に責任を持つこと。
(2)独立行政法人制度について、以下の要求を実現すること。
① 自主性・自律性が発揮できる独立行政法人制度の運用を保障すること。
② 中期目標・計画等の策定権限を独立行政法人に付与し、各独立行政法人が策定する際に、労働組合との協議を行い、職員の意見を反映させること。
(3)事業の安定性と継続性を保障する財政的措置を講じること。
(4)必要な人員確保を保障し、総人件費抑制は行わないこと。
(5)労使自治による賃金・労働条件決定を保障し、政府は直接・間接的に不当な介入を行わないこと。

10、東日本大震災、東京電力福島第一原発事故に伴う労働条件改善について
(1)震災にともなって遠距離通勤を強いられている職員に対し、通勤緩和措置を講ずること。
(2)福島県の各官署に勤務する職員の放射線量管理を徹底させるとともに、定期的に特別健康診断を行うこと。また、被災後、福島県の官署に勤務した職員についても、同様に対応すること。
(3)自主避難等している職員に対しては、自己都合とせず通勤手当を満額支給するなど特例措置を講ずること。また、家族のみが自主避難している場合は、単身赴任手当を支給すること。

以 上