正規・非正規の公務労働者の賃金改善を求める

= 公務労組連絡会が全国人事委員会連合会に申し入れ =

 公務労組連絡会は2月5日、自治労連・全教と共同して、地方公務員・教員の賃金・労働条件の改善を求めて、全国人事委員会連合会(全人連)への要請にとりくみました。
 申し入れでは、この3年間で実質賃金が5%も下がっており、景気の回復と地域経済の活性化のためにも労働者の賃金改善は不可欠であることを指摘し、全人連としての積極的な対応を求めました。
 また、各単産からは、「給与制度見直し」の矛盾と問題点を指摘するとともに、生計費原則にもとづく賃金改善、臨時・非常勤職員の処遇改善など、全人連としても努力するよう要請しました。

格差を拡大し、地域経済を疲弊させる給与制度の改悪に反対

蟹沢議長

 全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは蟹澤議長(全教委員長)、猿橋副議長(自治労連委員長)、川村事務局長、杉本・米田の各事務局次長、自治労連から中川書記長、全教から小畑書記長が出席しました。
 全人連側は、青山会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、鍬田(北海道)、小川(宮城県)、今井(群馬県)、石川(愛知県)、栗原(大阪府)、加藤(広島県)、髙橋(高知)、伊藤(福岡県)、岡部(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席しました。

 はじめに、蟹澤議長が要請書(別掲)を青山会長に手交し、安倍首相の1月22日の施政方針演説で、企業利益の拡大を賃金上昇つなげ、非正規の均衡待遇の確保にとりくみ、同一労働同一賃金の実現に踏み込むとの考え方を示しているが、すべての労働者の賃上げと、自治体で働く非常勤職員の処遇改善が必要」とし、公務員賃金をめぐっては、臨時国会が開かれず、実施が越年する異例の事態になっており、労働基本権が制約されたもと二重の権利侵害であることを指摘し、「給与の地域間格差の拡大は、住民本位の行政サービスを担う公務労働者の士気を低下させ、人材確保にも支障をきたしている。第一戦で働く公務労働者の賃金と労働条件の改善にむけて尽力するよう強く求める」と要請しました。

 自治労連の中川書記長は、「『給与制度の総合的見直し』は自治体首長も人材確保を懸念している。地域手当のない市では、試験合格者が手当のある市に試験合格者が流れており、政府が掲げる経済の好循環とも矛盾する。職務給原則からしても地域間で格差をつけるべきではない。人事委員会として政府・人事院に意見表明していただきたい。総務省は国準拠をタテに地方の給与改定に圧力をかけたが、15年度の賃金改定が年をこすという異常事態。労働基本権制約のもとでの人事院勧告が政府によってないがしろにされ、地方自治を踏みにじって地方にも押し付けるものであり、全人連として、この二重の不当性について政府にものを申す必要がある。都道府県の臨時非常勤職員の賃金は951円、政令市が848円という低額。政府が最賃1000円と言っており、まず公務が範を示すべきだ。感染症にかかわる休暇は、国の非常勤職員には認められているが、自治体では年休消化を求められている。平等取扱の原則にも反している。すべての人事委員会で臨時非常勤職員の労働条件の改善・均等待遇について必要な勧告・報告を行え」と求めました。

 全教の小畑書記長は、「教職員の長時間過密労働の解消について、学校現場における業務改善のためのガイドラインを、文部科学省が示さなければならないほどの状況になっている。全教の勤務実態調査においても顕著に表れている。違法状態を放置することなく改善策を打ち出すべき。教育現場においても臨時・非常勤教職員は18万4千人になっており、5人に1人が非正規、臨時・非常勤職員なしに1日たりとも教育活動がなりたたない」とのべ、代替要員がみつからずに「教育に穴があく」状況に認識をもち、実態把握と適切な対応を求めました。

人事院、各人事委員会との意見交換に努める

 要請に対して、青山会長からは以下のような回答が示されました。
【青山全人連会長の回答】
 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、全国の人事委員会にお伝えします。
 最近の経済状況を見ますと、本年1月20日に発表された政府の月例経済報告では、景気について「一部に弱さもみられるが、緩やかな回復基調が続いている」との判断が示されております。また、先行きについては、「雇用・所得環境の改善が続くなかで、緩やかな回復に向かうことが期待される」としつつも、「アジア新興国等の景気が下振れし、我が国の景気が下押しされるリスクがある」としております。
 一方、賃金については、1月29日に日本銀行が発表した経済・物価情勢の展望において、「企業収益が過去最高水準にあり、失業率が3%台前半まで低下していることとの対比でみると、これまでのところ賃金の改善の程度はやや鈍い」とされていることから、今後の動向が注目されるところです。
 また、既に始まっている本年の春季労使交渉では、賃上げについて様々な議論がなされているところであり、業種や企業規模の違いを超えてどこまで賃金改善の動きが広がるのか、賃上げの手段等を含め、今後の行方を注視していく必要があると考えております。
 現在、人事院及び各人事委員会では、民間給与の実態を的確に把握できるよう、本年の民間給与実態調査の実施へ向け、その準備を進めているところです。
 今後、各人事委員会においては、社会経済の動向なども踏まえながら、本日の要請内容も含め、本年の勧告に向けた検討を進めていくことになろうかと思います。
 改めて申すまでもありませんが、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することは、人事委員会の重要な使命であると認識しております。
 全人連といたしましては、本年も各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に努めてまいります。


【全人連に提出した要請書】

2016年2月5日

全国人事委員会連合会
 会 長  青山 佾 殿

公 務 労 組 連 絡 会
議 長   蟹澤 昭三
日本自治体労働組合総連合 
中央執行委員長 猿橋 均 
全 日 本 教 職 員 組 合 
中央執行委員長 蟹澤 昭三

地方公務員の給与等の改善にかかわる要請書

 日頃から地方公務員の勤務条件の向上に努力されていることに敬意を表します。
 さて、2015年人事院勧告にもとづく給与法改正は、政府の臨時国会召集見送りのもとで大幅に遅れ、成立は1月20日となりました。同時に、地方人事委員会勧告の取り扱いをめぐっても、地方自治を踏みにじる政府の「技術的助言」により、大多数の自治体で賃金改定が越年しています。
 こうした賃金改定の遅れとあわせて、多くの自治体で昨年4月から実施されている「給与制度の総合的見直し」による地域間での賃金格差の拡大が、職員の採用困難など自治体現場の混乱を全国各地で招いています。
 安倍内閣が賃上げを政策課題にすえ、日銀の黒田総裁が労働組合に対して賃金交渉に強気で対応するよう促すなど、賃上げは喫緊の課題になっています。とりわけ、地域の公務員賃金は地場賃金にも影響し、地域経済と密接な関係にあります。
 第一線で奮闘する公務労働者の労苦に報い、地域経済を活性化するためにも、各地の人事委員会が労働基本権制約の代償機関としての責務と役割をふまえて、下記要求の実現に尽力されることを要請いたします。

1、住民の暮らしや子どもたちの教育のため、日夜、献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励ますとともに、「全体の奉仕者」としての誇りと尊厳を持って職務に専念できるように、生計費原則をふまえ、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の賃金・労働条件を改善すること。

2、民間給与実態調査にあたっては、単に民間の賃金水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密接不可分であることに十分留意して調査をおこなうこと。とりわけ、勤続・経験年数の加味、雇用形態、民間一時金水準の厳正な把握とともに、比較対象企業規模を100人以上にすること。

3、職務給原則に反した賃金格差の拡大や高齢層の賃金抑制をやめるとともに、初任給の改善をはかること。技能・労務職員の賃金を、公務の特殊性をふまえて改善すること。

4、地方の公務員賃金引き下げにつながる政府・人事院による給与制度の改悪に対して、人事委員会として意見表明していただくこと。

5、子どもたちのさまざまな困難に対応している教職員のモチベーションを支えるためにも、教職員賃金の職責と勤務実態に応じた適正な賃金水準を確保すること。

6、臨時・非常勤職員について、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現などにむけて必要な対策をおこなうこと。

7、「雇用と年金の接続」にむけては、定年延長を大原則に、希望するすべての職員の雇用が保障できる制度を確立し、生計費をふまえた賃金水準の確保にむけて、人事委員会としての役割をはたすこと。

以 上