No. 913
2016年8月4日 |
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2年連続のベア勧告、フレックスタイム制導入も |
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= 「見直し」による2%賃下げで支給額は変わらず 勧告日は8月6日 = |
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総計で13万5千人余分の「賃金改善署名」を人事院に提出
人事院との最終交渉には、公務労組連絡会は蟹澤議長を先頭に、猿橋副議長、川村事務局長、杉本・米田の各事務局次長、国公労連の豊田中執、特殊法人労連 の篠原幹事が参加し、人事院側は、給与局給与第1課の奈良間(ならま)課長補佐、職員福祉局職員福祉課の西課長補佐が対応しました。 はじめに、蟹澤議長が、現在までとりくまれてきた「賃金改善署名」の最終集約分7,288筆(総計で13万5,784筆)を提出したうえで、「本年4月 まで実質賃金が24か月連続で前年比マイナスとなるなど、景気回復と生活改善のためにもすべての労働者の賃上げと公務員賃金の大幅改善を求めてきた。7月 24日には1,800人の公務と民間の労働者が人事院を包囲した」「本日は、勧告にむけた最終交渉となるが、賃上げなど全国の公務職場で働く仲間の期待と 要求に応えよ」と述べて回答を求めました。 【人事院の最終回答】 1 民間給与との較差に基づく給与改定等について 勧告日は、8月6日(木)となる予定である。 (1)民間給与との比較について 月例給の民間給与との較差は、0.3%台半ばとなる見込みである。 特別給は、0.10月分の増加となる見込みである。 増加分は、今年度については、12月期の勤勉手当に充てる。 来年度以降については、0.05月分ずつ、6月期と12月期の勤勉手当に充てる。 (2)給与改定の内容について @ 俸給表の改定 行政職俸給表(一)について、民間の初任給との間に差があることを踏まえ、1級の初任給を2,500円引き上げることとし、若年層についても同程度の改 定を行う。その他は、給与制度の総合的見直し等により高齢層における官民の給与差が縮小することとなることを踏まえ、それぞれ1,100円の引上げを基本 に改定する。 その他の俸給表については、行政職(一)との均衡を基本に改定する。 A 初任給調整手当 医療職俸給表(一)の改定状況を勘案し、医師の処遇を確保する観点から、所要の改定を行う。 B 地域手当 給与制度の総合的見直しを円滑に進める観点から、支給割合について給与制度の総合的見直しによる見直し後の支給割合と見直し前の支給割合との差に応じ、0.5%から2%の範囲内で本年4月に遡及して引き上げる。 (3)その他の課題について @ 配偶者に係る扶養手当 本年の調査の結果を見ると、民間では、配偶者に対して扶養手当を支給し、その際、配偶者の収入による制限を設ける事業所が一般的であると認められることから、現時点では、扶養手当の支給要件を見直す状況にはないものと考える。 人事院としては、今後とも引き続き、民間企業における家族手当の見直しの動向や、税制及び社会保障制度に係る見直しの動向等を注視しつつ、扶養手当の支給要件等について、必要な検討を行って参りたい。 A 再任用職員の給与 再任用職員の給与については、民間企業の再雇用者の給与の動向や各府省における再任用制度の運用状況等を踏まえ、引き続き、その在り方について必要な検討を行って参りたい。 2 給与制度の総合的見直しについて 平成28年度においては、職員の在職状況等を踏まえ、以下の施策について所要の措置を講ずることとする。 (1)地域手当の支給割合の改定 地域手当の支給割合については、平成28年4月1日から、給与法に定める支給割合とする。 (2)単身赴任手当の支給額の改定 単身赴任手当の基礎額については、平成28年4月1日から、4,000円引き上げ、30,000円とする。 また、単身赴任手当の加算額の限度についても、基礎額の引き上げを考慮して、平成28年4月1日から、12,000円引き上げ、70,000円とする。 3 フレックスタイム制の拡充について 近年のワーク・ライフ・バランスに対する意識の高まり、働き方に対するニーズの多様化の状況等を踏まえ、人事院は,より柔軟な働き方を可能とするフレックスタイム制の拡充について、各府省や職員団体等の関係者の意見を聴きつつ検討を重ねてきたところである。 今般、適切な公務運営の確保に配慮しつつ、原則として全ての職員を対象にフレックスタイム制を拡充することが適当であるとの結論に至ったため、給与に関する勧告と合わせて、国会及び内閣に対し、フレックスタイム制の拡充に関する勤務時間法の改正を勧告する予定である。 フレックスタイム制の拡充の概要等は次のとおりである。 (1)概要について 〇 原則として全ての職員を対象とし、適用を希望する職員から申告が行われた場合、各省各庁の長は、公務の運営に支障がないと認められる範囲内において、 始業及び終業の時刻について職員の申告を考慮して4週間ごとの期間につき1週間当たり38時間45分となるように当該職員の勤務時間を割り振ることができ ること。 コアタイムは、月曜日から金曜日までの毎日5時間設定すること。 〇 育児又は介護を行う職員については、割振り単位期間を1週間から4週間までの範囲内において選択して設定できるとともに、日曜日及び土曜日に加えて週休日を1日設けることができることとし、また、コアタイムは、毎日2時間以上4時間30分以下の範囲内で設定すること。 〇 現行のフレックスタイム制の適用対象とされている職員についても、その申告により新たなフレックスタイム制を適用することができること。 また、交替制等勤務職員その他業務の性質上特定の勤務時間で勤務することを要する職員として人事院規則で定める職員は、新たなフレックスタイム制の対象から除外すること。 (2)適用に当たっての考え方について 希望する職員には可能な限り適用するよう努めることが基本となる。なお、業務の性質上適用が困難な場合、必要な体制を確保できない場合等、公務の運営に支障が生じる場合には適用ができないとすることとなる。 適用する場合には、公務の運営に支障が生じない範囲内で、当該職員の申告を考慮しつつ、勤務時間帯や勤務時間数を割り振ることとなる。また、育児又は介護を行う職員については、できる限り、当該職員の申告どおりに割り振るよう努めることが適当である。 (3)フレックスタイム制を活用していくための留意点について 一人一人が責任感と自律心を持って業務を遂行することにより、これまで以上に効率的な仕事の進め方やより柔軟な働き方が推進され、一層効率的な行政サービスが提供されることが期待される。 また、フレックスタイム制の実施に伴い超過勤務が増加しないようにする必要があるのみでなく、超過勤務を縮減する方向での働き方を推進していくことが重要となる。 (4)フレックスタイム制の拡充の実施時期 平成28年4月1日から実施する。 4 公務員人事管理に関する報告について 以上のほか、公務員人事管理に関して報告することとしている。 報告では、まず、退職管理の見直しや採用抑制等により、40歳・50歳台の在職者の割合が20歳・30歳台の在職者の割合を相当に上回っており、国家公 務員の人事管理に大きく影響することが懸念されることについて言及し、人事院は、人事行政の第三者・専門機関の責務として、将来にわたって能率的で活力あ る公務組織を確保する観点から、採用から退職に至るまでの公務員人事管理全般にわたって、中・長期的視点も踏まえた総合的な取組を進めていくことについて 言及することとしている。 また、これらを踏まえた人事行政上の個別課題についての人事院の取組の方向性について、 ○ 人材の確保及び育成のため ・ 多様な有為の人材の確保 ・ 女性の採用・登用の拡大 ・ 研修の充実 ・ 能力・実績に基づく人事管理の推進 について ○ 柔軟で多様な働き方の実現と勤務環境の整備のため、先程申し上げたフレックスタイム制の拡充のほか、 ・ テレワークの推進 ・ 長時間労働慣行の見直し ・ 仕事と家庭の両立支援の促進 ・ 心の健康づくりの推進 ・ ハラスメント防止対策 について それぞれ言及することとしている。 さらに、高齢層職員の能力及び経験の活用について、 ・ 国家公務員の雇用と年金の接続については、平成23年に行った意見の申出を踏まえ、適切な措置が講じられる必要があること、 ・ 公務の再任用は、引き続き短時間勤務が中心であり、民間同様のフルタイム中心の勤務の実現を通じて再任用職員の能力及び経験を本格的に活用する必要があること、 ・ このため、各府省は定員事情や人員構成の特性等を踏まえ計画的な人事管理に努める等、一層の工夫が必要であること、 ・ 人事院としては、関連する制度を含め適切な措置がとられるよう引き続き必要な対応を行っていくこと、 について言及することとしている。 職場に混乱を持ち込む「フレックスタイム制」の勧告は見送れ
これに対して、川村事務局長は、「回答内容は、全国で奮闘している公務労働者の期待と要求に応えたものとは受けとめられない」として以下の点を主張しました。 ○ 昨年に続くベア勧告の方向が示され、初任給層の改善をはじめ、高齢層を含むすべての俸給号俸を改善する点については、我々の要求を踏まえたものとして 受け止めたい。しかし、「給与制度の総合的見直し」による平均2%の賃金引き下げのもとで、大半の公務員労働者の実際の支給額は上がらない。このことは、 政府がめざす景気回復や地域経済の活性化にも反するものだ。同時に、本年の官民較差を4月に遡及して地域手当の支給割合を引き上げ、来年4月からは給与法 の地域手当の支給割合を完成させるとしているが、職務給原則に反した地域間格差の拡大は公務労働者の士気に悪影響を及ぼし、公務能率をも阻害するものであ る。あらためて、「給与制度の総合的見直し」は中止するよう求める。 ○ フレックスタイム制について、勤務時間法の改正を勧告するとの姿勢が示されたが、あらためて導入には反対であり、勧告は行わず、労働組合との協議を継続するよう求める。 公務の勤務時間は、国民の社会生活を支える公務・公共サービスの利用時間を示すものであり、官庁執務時間は社会に定着している。公務労働者も、この勤務時 間を前提に生活をたてている。ワークライフバランスというなら、異常な長時間過密労働、残業時間の是正こそが求められる。「希望する本人の申告」による 「柔軟な働き方」はあり得もしない幻想だ。制度が導入されれば、これが独り歩きし、実績づくりのために強制された「本人申告」となることは必至だ。公務職 場に、これ以上の混乱を持ち込むことは断じて認められない。 ○ 非常勤職員の処遇改善について、何らの言及がなかったことは労働基本権の代償機関としての責務を果たしていないといわざるを得ない。民間でわずか5% 程度の普及しかないフレックスタイム制は、全国の職場の反対を無視して強行する一方で、民間を含めて非正規労働者の処遇改善、均等待遇が課題とされている 状況下で、我々の要求に応えない姿勢は断じて認められない。同じ職場で同じ仕事をしている常勤職員との均等待遇を実現するよう求める。 ○ 再任用者の賃金にかかわって、民間企業の再雇用者の動向や各府省の運用状況をふまえて必要な検討を行うと、昨年同様の回答が示されたが、年金の支給開 始年齢は来年からは62歳となる。賃金と諸手当の改善が求められる。人事院の調査でも民間の多数はフルタイム雇用であり、公務では2011年の意見の申出 による定年延長が不可欠だ。「報告」において、「フルタイム中心の勤務の実現を通じて再任用職員の能力及び経験を本格的に活用する必要がある」と指摘する ようだが、高齢層職員のみならず若年層もふくめた将来不安が高まっているもとで、希望者全員のフルタイム再任用の保障が必要だ。そのための課題を明確にし て、人事院としての必要な対応を行うよう求める。 較差の原資を地域手当にまわすな!公平な配分をおこなえ
交渉参加者からも、「地域手当のない地域は較差の原資は配分されない。どうなるのか」「最低賃金の改善により、高卒初任給が最賃を下回る地域がでる。調 整が必要だ」「第三者機関の役割を果たす姿勢が見られない。一時金を勤勉手当に配分するのでは、全員の処遇改善にならない」「再任用でも、定年延長でも処 遇の格差が生まれるのはおかしい」「フレックスタイム制は長時間過密労働の解消につながらない」「改善勧告なのに見直しの2%賃下げで支給額が上がらな い。喜べない」「フレックスタイム制は慎重な検討を求める」などと追及しました。 奈良間補佐と西補佐は、「再任用職員も1100円引き上げる」「民間の考課査定の割合から勤勉手当に充てる」「定年延長が望ましいとの姿勢は変わらな い。政府で検討されるものと承知している」「フレックスタイム制は、設定した時間で働くもの。超過勤務の縮減の必要性はフレックスタイムの対象者のみでは ない。制度導入とあわせて引き続きとりくむ」などと回答したほか、当初の回答を繰り返すにとどまりました。 最後に蟹澤議長は、「せっかくの月例給・一時金の引き上げにもかかわらず、実際の支給額は改善されない。これは、この間の全国の公務労働者の労苦に応え ないものであり大きな問題だ。同時に、地域間格差を拡大する地域手当も公務労働者の誇りを傷つけるものであり、『給与制度の総合的見直し』は中止すること を重ねて指摘しておく」「『給与制度の総合的見直し』にしても、フレックスタイム制の拡充にしても、政府方針に追随・迎合したものだ。労働基本権制約の代 償機関としての役割を果たすことが必要だ」と述べ、勧告の内容について人事院として改めて再検討するよう求めて交渉を終わりました。 | |
以 上 |