No. 906
   2015年4月8日
自治体職員・教員の賃金改善を要請

= 全国人事委員会連合会に公務労組連絡会が申し入れ =

 公務労組連絡会は4月 8日、全国人事委員会連合会(全人連)に対して春闘期2回目となる要請を行い、地方公務員の給与等の改善を求めました。
 要請では、地方人事委員会の2015年度勧告にむけて、生計費原則を踏まえ、労働者の生活改善につながる賃金の引き上げがおこなわれるよう全国の地方人 事委員会が毅然とした態度をとるよう求めました。

すべての 労働者の賃上げが不可欠だ

 全人連への申し入れには、公務労組連絡会から蟹澤議長(全教委員長)、猿橋副議長(自治 労連委員長代行)、川村事務局長、杉本・米田各事務局次長、自治労連から中川書記長、全教から小畑書記長が出席しました。
 全人連側は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、鍬田(北海道)、小川(宮城)、原間(山梨)、千先(愛知)、栗原(大阪)、森信(広島)、 桑城(香川)、福田(福岡)、岡部(横浜)の各人事委員会代表が参加しました。

全人連へ要請 はじめに、4月に就任したばかりの蟹澤新議長(写真左)が、関谷会長に要請書を手交し、 「春闘回答は、大手企業を中心に昨年を上回る賃上げ回答となっていると報じられているが、真の『経済の好循環』実現や地域経済を活性化させるためにも、中 小企業や非正規労働者などすべての労働者の賃金改善が不可欠と考える。全国各地の自治体では、地方財政がきびしいなかでも、第一線で働く公務員は、臨時・ 非常勤職員をふくめて、住民の期待に応えるために日夜奮闘している。そうした公務員や教職員の奮闘に応えるためにも、賃金の生計費原則を踏まえ、賃金と労 働条件の改善に尽力してもらいたい」と強く求めました。

 自治労連の中川書記長は、「ベネッセの調査では、将来希望する職業として、高校生になると公務員が上位になるが、受験者数は激減している。公務員賃金の 改善なくして、国・地方を通じて優秀な人材は集まらない。臨時・非常勤職員についても労働条件の改善・均等待遇の実現に向けて必要な勧告・報告を行うよう 要請する」と述べ、全教の小畑書記長は、全教青年部の「働くものの権利にかかわる実態調査」の内容を紹介し、「土日勤務が7割を超える実態があり青年を苦 しめている。早急に実効ある超過勤務解消策をすすめるよう求める。また、働く女性が妊娠・出産・復職から1年以内の降格や契約打ち切りなどの不利益な扱い は、男女雇用機会均等法に原則反するとして厚生労働省が労働局に通達している。公務員も適用となっており、とりくみの強化をお願いする」と要請しました。

民間給与 実態にもとづいた適正な給与水準を維持する

これらの要請に対して関谷会長は次のように回答しました。
【関谷全人連会長の回答】
 全人連会長の関谷です。私から全国の人事委員会を代表してお答えします。ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、役員道府県 市を通じて、全国の人事委員会にお伝えします。

 本年の春季労使交渉における大手企業の一斉回答では、昨年に続き賃上げの動きが見られました。また、去る4月2日の政労使会議では、中小企業に賃上げを 促す環境整備を進める合意があり、今後の動向を引き続き注視する必要があると考えております。

 一方、政府は今年の夏までに、新たな財政再建計画を取りまとめることとしています。現時点で、その内容は明らかにされていませんが、今後、地方公務員の 給与水準についても、改めて議論される可能性も想定されます。

 こうした中、民間における賃金の状況を的確に把握するため、毎年、各人事委員会は、人事院と共同で民間給与実態調査を行っております。本年も、例年と同 様の日程で実施する予定であり、5月初旬からの調査開始へ向けて、現在、準備を進めているところです。申し上げるまでもなく、人事委員会の重要な使命は、 中立かつ公正な第三者機関として、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した、適正な水準を確保することであると認識しております。

 本日、要請のありました個々の内容は、各人事委員会において、調査の結果や各自治体の実情等を踏まえながら、本年の勧告に向けて検討していくことになる ものと思います。全人連といたしましては、今後も、各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、各人事委員会や人事院などと十分な意見交換に努めてま いります。

以  上

【全人連への要請省】

2015 年4月8日
全国人事委員会連合会
 会 長  関谷 保夫 殿
公  務 労 組 連 絡 会
議 長   蟹澤 昭三

日本自治体労働組合総連合

  中央執行委員長 野村 幸裕

全 日 本 教 職 員 組 合

 中央執行委員長 蟹澤 昭三

地方公務員の給与等 の改善にかかわる要請書

 日頃から地方公務員の勤務条件の向上に努力されていることに対して敬意を表します。
 さて、政府として「景気の好循環」を実現する必要から民間企業に賃金の引き上げを要請したもとで、大手企業を中心に昨年を上回る賃上げ回答が行われまし た。今後の焦点は、中小企業の動向となっていますが、民間・公務、正規・非正規を問わず、引き続き、すべての労働者の賃金を引き上げることが国民的な期待 であり、社会的な要請となっています。
 とりわけ、地域経済の疲弊と地域間の賃金格差拡大がともに進行してきたもとで、公務関連はもとより、地域の主要企業で働く労働者の賃金の目安ともなって いる公務員賃金の改善は急務です。
 しかしながら、現在、政府・総務省が進める「給与制度の総合的見直し」は、昨年の臨時国会での質疑で明らかにされたように、国家公務員・地方公務員を通 じて2500億円もの人件費削減を押し付けるものです。それは、公務員労働者の生活悪化やモチベーションの低下をもたらし、地域経済にも否定的な影響を与 えるもので、労働者・国民の期待にも反するものと言わざるを得ません。
 また、「見直し」の地方への押し付けは、地方公務員法にもとづく自主的決着を求める国会の付帯決議に反するとともに、これまで総務省が、唯一の基準であ るかのように強調してきた「地域の民間企業との均衡」にも矛盾する「国家公務員賃金制度・水準の強制」にほかなりません。
 昨年の地方人委員会勧告で、6府県・17政令市が「見直し」勧告を見送り、9県が国家公務員とは異なる賃金水準での実施を勧告したことの背景には、これ までにも増して進められている政府・総務省による、地方自治体の実情を無視した国家公務員諸制度の押し付けに対する疑問や懸念があったからにほかならず、 地方6団体も「人材確保の観点からの懸念も指摘」しています。
 地方人事委員会の2015年度勧告に関し、すべての公務員労働者が「全体の奉仕者」として誇りを持って業務にとりくむため、生計費原則を踏まえ、労働者 の生活改善につながる賃金の引き上げが行われるよう、下記の諸点について実現いただくよう要請します。



1.住民の暮らしや子どもたちの教育のため、日夜、献身的に奮闘している自治体労働者・教職員が「全体の奉仕者」としての誇りと尊厳を持って職務に専念で きるように、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の賃金・労働条件を改善すること。

2.民間給与実態調査にあたっては、単に民間の賃金水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密 接不可分であることに十分留意して調査をおこなうこと。とりわけ、勤続・経験年数の加味、雇用形態、民間一時金水準の厳正な把握をするとともに、比較対象 企業規模を100人以上にすること。

3.地方における公務・公共サービスや教育を担う若年層が希望を持って働ける環境を整備するよう、初任給を抜本的に改善するとともに、高齢層の賃金抑制を やめること。また、人事評価制度を賃金・処遇へ反映させる、成績主義賃金制度の導入・拡大は行わないこと。さらに、技能労務職員が公務現場で果たしている 役割をふまえ雇用を守るとともに、賃金を改善すること。

4、政府・総務省による「給与制度の総合的見直し」の押しつけに追随することなく、地方自治体の実態をふまえ、地域経済の回復と住民生活の向上をはかるた めにも、労働基本権制約の代償機関としての人事委員会の自主性と主体性を発揮すること。

5、子どもたちのさまざまな困難に対応している教職員のモチベーションを支えるためにも、教職員賃金の引き下げはおこなわず、職責と勤務実態に応じた適正 な賃金水準を確保すること。

6、臨時・非常勤職員について、パート労働法・改正労働契約法の趣旨もふまえつつ、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現 などにむけて必要な対策をおこなうこと。

7、「雇用と年金の接続」にむけては、定年延長を大原則に、希望するすべての職員の雇用が保障できる制度を確立し、生計費をふまえた賃金水準の確保にむけ て、人事委員会としての役割をはたすこと。
以 上