No. 905
   2015年3月24日
「民間準拠・人勧尊重」にとどまる不満な回答

= 公務労組連絡会が「15年春闘統一要求」の実現求めて最終交渉 =

 公務労組連絡会は3月24日、15年春闘統一要求に対する内閣人事局と人事院との最終交渉をおこないました。
 今春闘では、「月額平均20,000円以上」の賃上げをはじめ、臨時・非常勤職員の均等待遇、超過勤務縮減、公務職場の大幅増員などの要求の実現を求めてきましたが、最終交渉では「民間準拠・人勧尊重」など従来の域をでないきわめて不満な回答となりました。
 4月から「給与制度の総合的見直し」が実施され、6月の「骨太方針」では「財政再建」を口実に公務員総人件費削減がねらわれています。通常国会での労働 者派遣法と労働時間法制の大改悪法案、戦争準備法案を許さないたたかいや、最低賃金改善闘争とも結んで、今年の勧告期にむけて政府と人事院への追及を強め ていく必要があります。

「給与見直し」は中止し、公務員賃金改善で地域活性化をはかれ

 内閣人事局との交渉には、公務労組連絡会から北村議長、猿橋副議長、川村事務局長、米田・杉本の各事務局次長、国公労連の豊田中執、特殊法人労連の徳永 幹事が参加しました。内閣人事局側は、辻総括参事官補佐、西山参事官補佐をはじめ、給与、服務・勤務時間、福利厚生、労働・国際、退職手当、高齢雇用、人 事評価など各担当の参事官補佐らが対応しました。

 北村議長は、「大手企業を中心とする春闘の妥結状況が報じられているが、昨年を上回る賃上げと言われている。今後の中小企業への波及が課題となっている が、内需関連産業や中小企業に『好循環』の波が届いていないことが問題。景気回復にはすべての労働者の賃金改善が不可欠だ。それだけに、公務員労働者の賃 上げが景気回復、そして地域活性化のカギを握っているといっても過言ではない」と発言し、統一要求に対する最終回答を求めました。

 これに対して、辻総括参事官補佐は以下のとおり回答しました。
● 平成27年度の給与については、本年の人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点から検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際には、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
● 非常勤職員の処遇改善については、制度の適正な運用の周知を図りつつ、今後とも皆様のご意見も伺いながら、関係機関とも相談しつつ検討してまいりたい。
● 女性活躍とワークライフバランスの推進については、超過勤務の縮減を含む「働き方改革」を進めることが重要であり、政府一丸となってとりくんでまいりたい。その際、皆様のご意見も伺いつつ、実効ある施策を推進してまいりたい。
● 雇用と年金の接続については、一昨年に閣議決定した方針に沿って、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進してまいりたい。
 あわせて、同決定及び国家公務員法等の一部を改正する法律の附則第42条に基づき、雇用と年金の接続の在り方についての検討を速やかに進めてまいりたい。
● 自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があることから、皆様と意見交換しつつ、慎重に検討してまいりたい。
● 最後になるが、今後とも公務能率の向上と適正な勤務条件の確保に努めるとともに、安定した労使関係を維持する観点から、職員団体とは誠意を持った話合いによる一層の意思疎通に努めてまいりたいと考えている。
● 人事評価制度については、人事評価制度・運用の改善の方策等を検討することを目的に、平成25年度に総務省において「人事評価に関する検討会」を開催 し、人事管理の基礎となるツールとしては、評語区分の趣旨の徹底、人材育成等に資するツールとしては、評価結果の一層の活用等が必要との提言がなされ、こ の提言を踏まえ、平成26年4月に人事評価マニュアル等の改正を行ったところである。
 その後、内閣人事局としても、適切な評価手法や面談での対応の仕方などを含め、評価者訓練の充実等に努めているところである。
 今後とも、引き続き制度の趣旨が浸透するよう取組を進める一方、皆様とも十分意見を交換し、円滑かつ効果的に制度を運用していきたいと考えているので、よろしくお願いしたい。
●  「健康・安全確保、母性保護等」に関して、福利厚生施策について、心の健康づくり対策については、平成22年度から新任管理者等を対象としたe-ラーニン グによるメンタルヘルス講習を実施しており、平成25年度からは、それまでの「ラインケア」※1のほか「相談対応」※2を加えるなど、内容の拡充を図った ところである。
 今後とも、福利厚生施策の効率かつ効果的な推進方策等について、引き続き検討を進めてまいりたい。
 ※1 ラインケア:部下を持つ上司としてのメンタルヘルスケア対策
 ※2 相談対応:部下に対しての傾聴の方法

 ハラスメントについては、今年度において、e−ラーニングによるハラスメント防止講習を試行的に実施しており、この実施結果を踏まえ、更に検討を進めたい。

長時間過密労働解消のために定員削減は中止せよ

 川村事務局長は「従来回答の域をでない不満な回答だ」とし、以下の点を指摘しました。
○ マスコミでは、過去最高水準の賃上げとの報道があるが、消費税増税や円安などによる物価上昇のもとでは、実質賃金を維持するには足りない水準であり、ただちに生活改善や景気回復につながるものではない。
 景気回復や地方の活性化のためには、すべての労働者の賃上げが必要である。地方や中小企業には「好循環」の波は届いておらず、消費需要を喚起するためにも、公務員の賃金改善が求められる。
 一方、この4月からは「給与制度の見直し」による地方の公務員の賃下げが押し付けられるが、地域経済を疲弊させ、地方の活力を消失させるもの。同時に、 職務給原則に反した地域間の賃金格差や高齢層職員の賃下げが、職員の士気を下げ、公務能率を阻害する。あらためて、「給与制度見直し」の中止を求める。
 春闘相場は不満なものではあるが、昨年を上回るベースアップとともに、一時金も増額と報じられており、職場の期待は大きい。少なくともこの相場を反映した賃金と一時金の改善を求める。
○ 画一的な公務員削減のもとで、慢性的な長時間・過密労働が蔓延し、メンタル不全をふくめた病休者の増加、現職死亡や自殺など深刻な問題が起きている。 定員削減が、公務能率を阻害し、行政サービスを後退させ、人材確保にも支障をきたしていることは明らかだ。政府には、国民の安心、安全を支える行政の遂行 に責任がある。総定員法や定員削減計画の枠組みを含め、定員管理施策を抜本的に見直すことと、あらためて労働組合と議論する場を設けるよう求める。
○ 公務員制度改革基本法で規定された「自律的労使関係制度」を放置することは政府の怠慢と言わなければならない。この間、使用者による一方的な労働条件 の変更が押し付けられているだけに問題は重大だ。あらためて、憲法とILO条約にもとづき労働基本権を回復するよう求めるとともに、早急に労働組合との協 議を開始するよう要求する。
 また、人事評価制度は、運用の公平性と職員の納得性が確保されなければならないが、現状はそうなっていない。人事院も「チームで職務を遂行する環境にな じまない面もある」と指摘しているが、評価結果を拙速に賃金や処遇に反映させると、公務の能率性や職員の士気を損なうことになる。評価制度は、職員の育成 にしぼって活用するよう求める。
○  超過勤務の縮減が政府の重要課題となって久しいにもかかわらず、長時間過密労働は依然として改善されていない。この状況が「フレックスタイム制」で改善で きるものではない。勤務時間を個々の希望や実情にあわせられる状況にないことは言うまでもない。長時間残業の解消は、職員の増員によって業務体制を確立 し、勤務条件を改善することが必要不可決だ。公務・公共サービスの質を向上させる観点からも、使用者として長時間過密労働を解消するための実行ある対策を 打ちだすべき。
○ フレックスタイム制については、民間では労使協定が前提であるが、国家公務員には労働基本権が制限され、労使協定の枠組みがない。使用者からの一方的 な押し付けとなれば、今以上の長時間残業となることは明らかだ。定員削減で最小限の人員で業務を遂行しているもとで、勤務時間を弾力化すれば公務能率を阻 害する。同時に、勤務時間管理の徹底に膨大な労力を要するし、職員の健康破壊や労働強化に拍車がかかる。したがって、フレックスタイム制の導入は行わない よう求める。
○ 「夏の生活スタイル変革」での「朝型勤務」も同様で、業務量に見合った定員が配置されていないもとで、どんな美辞麗句を並べても、定時退庁は困難であ り、残業が減るものではない。仮に早く帰れば、業務体制に齟齬をきたすばかりか、国民から批判されかねないなど、メリットはなく「朝型勤務」のデメリット は限りない。安倍首相の肝いりであったとしても、拙速な実施は絶対に認められない。導入に向けた検討は中止するよう求める。
○ 年金の支給開始年齢は来年4月からは62歳となる。支給開始年齢の繰り延べは政府として実施しているものであり、雇用との確実な接続は使用者である政 府の責任だ。希望者全員の雇用と生活できる所得を確保するため、定年年齢の段階的延長の早期実現に向けて、具体的に着手するよう求める。人事院も2011 年9月の意見の申出で、長年にわたって蓄積してきた能力を発揮するためにも、支給開始年齢の引き上げに合わせて段階的に定年延長を行うよう求めている。ま た、年間給与については定年前と同じ職務の場合は70%の保障も報告しており、再任用の場合でも最低でも7割の賃金を確保するよう求める。
○ 非常勤職員について政府や人事院は、「臨時・緊急の必要に応じて任用される」というが、その認識は実態に反している。恒常的な行政業務を遂行するため に多数の非常勤職員が雇用され、国民の側からは非常勤職員であっても経験や知識の蓄積にもとづく能力の発揮が求められている。これが行政現場の今日の実態 であることをまず確認したい。
 そのうえで、非常勤職員が正規職員と同じ仕事をしている実態に目をむけ、労働契約法20条もふまえて賃金や休暇など労働条件の改善と均等待遇を実現する よう求める。地方自治体では、夏季休暇や忌引き休暇などが制度化されているところも多い。この点にも目をむけて政府としての努力を求める。

公務員労働者が誇りと働きがいを持てる賃金と労働条件が必要だ

 交渉参加者からも以下のような追及を行いました。
(自治労連)地方自治体は定員削減で困難を極めている。長期病休者は100人に2人だが、半分がメンタル不全で要因は長時間過密労働。検診でも4人に3人 が有所見となっており、定員増と超勤規制が必要。年金一元化が行われるが、職場への周知がなされていないことは問題。非常勤職員の処遇について、休暇など の国の制度の拡充を求める。フレックスタイム制は、窓口業務では体制確保に問題が生じるなど困難であり反対だ。
(全教)消費税増税後の初めてのアンケートだが、生活苦しいが56.7%。税金や社会保険料、住宅費、教育費などが家計を圧迫し、可処分所得が減ってい る。50台半ばの職員は大学生の教育費負担を抱えており、賃金を下げればいいというものではない。教職員は、文科省調査でも30分から1時間早く出勤して いる。夏の早朝勤務は地方にも波及するが、労働時間が長くなるだけ。教員には超勤手当はない。雇用と年金の接続に関わっては、無収入期間が生じないよう求 める。
(国公)首相も賃上げを公言しており、人勧尊重での民間の後追いや総人件費削減ではなく、すべての職員の賃金改善を求める。フレックスタイム制は、法定時間を弾力化して残業代を不要とする制度。業務体制を脆弱化させ、光熱費も増加する。夏時間も含めてやめてほしい。
(特殊法人労連)組合員のアンケートでは、賃金改善と長時間労働の解消が強い要求。「給与見直し」など国からの要請のもとで、労使交渉の幅が狭くなっている。労使自治の原則を保障するよう求める。
(自治労連)内閣府の世論調査では、悪い方向として「地域格差」が高い水準となっている。地場賃金に与える影響は、最低賃金と公契約、非正規を含む公務員 賃金が大きい。欧米では公務先行でやられており、政府としてのイニシアチブの発揮を求める。高齢期雇用では、退職手当や年金などの削減が先行し、生活をど う維持するか見通せない。再任用でも本格的な業務を担っており、いまの状況を放置することは許されない。

 これらの指摘に対して辻参事官補佐は、「フレックスタイム制は、勤務時間の割り振りでも変えてはいけないものがある。民間のようなものは公務には不適切。夏の勤務スタイルも、強制的にやってもうまくいかない。相談もしつつ検討したい」と述べました。
 最後に北村議長が、「安倍首相をはじめ政府としても賃金改善の必要性を強調しているもとで、使用者として具体的な回答がなかったことは不満だ。『公務能 率の向上』が指摘されたが、そのためには、公務員労働者が誇りと働きがいを持てる賃金と労働条件が必要だ」と述べるとともに、今後も公務労組連絡会と誠意 をもって対応するよう求めて交渉を終わりました。

労働基本権制約の「代償機関」の役割を発揮し、公務員賃金を引き上げよ

 人事院との最終交渉は、人事院側は給与局給与第1課の奈良間課長補佐と職員福祉局職員福祉課の西課長補佐ほかが対応しました。
 北村議長は、内閣人事局交渉でも主張した点を重ねて指摘し、生活と労働の実態に根ざした「2万円以上」の賃上げをはじめとする切実な要求にしっかりと応えるよう求めました。

 これに対して人事院側は以下のとおり回答しました。
● 本年の民間の春闘については、今月18日の集中回答日以降、順次回答が行われており、ここまでの状況をみると、月例賃金については、自動車、電機等の 大手企業を中心に昨年を上回るベースアップが行われているものの、その水準をみると、業種・企業によるバラツキも見られるところ。また、一時金について は、増額するとした企業がある一方、業績連動としている企業もあるところ。人事院としても引き続き民間の動向を注視してまいりたいと考えている。
 本日は、皆さんからの要求等に対する現段階における人事院の考え方等について、回答させていただく。
● 人事院としては、労働基本権制約の代償措置としての勧告制度の意義及び役割を踏まえ、情勢適応の原則に基づき、必要な勧告を行うことを基本に臨むこととしている。
 俸給及び一時金については、国家公務員の給与と民間企業の給与の実態を精緻に調査した上で、その精確な比較を行い、適切に対処してまいりたい。
 諸手当については、民間の状況、官民較差の状況等を踏まえながら対応して参りたい。
● 超過勤務の縮減については、管理職員による勤務時間管理を徹底するとともに、業務の改善・効率化などの取組を推進することが重要であると考えている。
 平成26年には、民間企業における総労働時間短縮に向けた取組の調査を実施したほか、公務においても「超過勤務に関する職員の意識調査」を実施したとこ ろであり、今後は、これらの調査結果を踏まえ、関係機関と連携しながら、より実効性のある超過勤務の縮減策について検討を進めてまいりたい。
 職員の休暇、休業等については、これまで民間の普及状況等をみながら、改善を行ってきたところであり、皆さんの意見も聞きながら引き続き必要な検討を行ってまいりたい。
● 非常勤職員の給与については、平成20年8月発出の指針に沿った運用が、各府省において適正かつ円滑に図られるよう、引き続き取り組んでまいりたい。
 また、非常勤職員の休暇等については、従来より民間の状況等を考慮し、措置してきたところであり、今後ともこうした考え方を基本に必要な検討を行ってまいりたい。
● 高齢期雇用等については、平成25年3月26日の閣議決定では、現行の再任用の仕組みにより、希望者を原則再任用するものとされたところである。
 このため、職員の能力と経験を公務内で活用できるよう、業務運営や定員配置の柔軟化や60歳前からの退職管理を含む人事管理の見直しなどを進めていく必 要があり、また、フルタイム中心の勤務を公務で実現していくためには、関連する制度と合わせて雇用と年金の接続の在り方を検討していく必要があると考え る。
 また、昨年4月に公布された国家公務員法等の一部を改正する法律の附則では、政府は平成28年度までに平成23年9月の人事院の意見の申出を踏まえつ つ、雇用と年金の接続のための措置を講ずることについて検討するものとされており、人事院としても、引き続き、再任用の運用状況や問題点等の把握に努める とともに、民間企業における継続雇用等の実情、定年前も含めた人事管理全体の状況等を詳細に把握し、雇用と年金の接続のため、適切な制度が整備されるよ う、必要な対応を行ってまいりたい。
● 公務における男女共同参画の推進については、政府全体として積極的に取り組むべき重要な課題とされ、様々な取組が推進されているところである。
 人事院においても、昨年6月に国会及び内閣に提出した平成25年度年次報告書において、「女性国家公務員の採用・登用の拡大に向けて」と題し、女性国家 公務員の採用・登用の促進に資する方策等を示したほか、女子学生を対象とした人材確保活動の充実や、女性職員の登用に向けた研修の充実を図るなど、必要な 取組を講じてきたところである。
 また、昨年10月には、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」が策定され、これに基づき、各府省において取組計画が策定 されたものと承知している。人事院としては、今後も引き続き、女性職員の登用に向けた研修や両立支援等により、各府省の取組を支援するとともに、男女とも に働きやすい勤務環境の整備について、所要の検討を進めてまいりたい。
● 心の健康づくりをはじめとする健康安全対策については、各職場において推進すべき重要な事項であるとの立場から、これまでも積極的に取り組んできたと ころである。特に、心の健康づくり対策については、平成25年度から、過度のストレスがなく、いきいきとした職場を実現し、職員のメンタルヘルスの向上を 図る「心の健康づくりのための職場環境改善」の取組を行っているところであり、引き続きその取組を推進したいと考えている。また、本年1月には、職員がセ ルフケアに関する知識を身につけるための自習用の研修教材としてe−ラーニング教材を作成し、全府省に配布したところであり、各職場で活用してもらいたい と考えている。
 また、セクハラ、パワハラ等についても、引き続き、その防止のための施策等について検討を行ってまいりたい。人事院としては、引き続き、各府省と連携しつつ、これらの健康安全対策の推進に努めてまいりたい。

生計費考慮の国公法規定ふまえ、初任給、高齢層賃金を改善せよ

 回答を受けて川村事務局長は「従来と同様の回答であり不満だ」と述べ、以下の点を指摘しました。
○ 中間交渉でも申し上げたが、昨年4月からの消費税増税とアベノミクスの円安などによる物価上昇のもと、実質賃金は19か月連続で前年比マイナスが続い ている。4月からの「給与制度の総合的見直し」による賃下げが強行されるが、すべての職員が生活改善を実感できる賃上げが必要だ。とくに、初任給について は、人手不足のもとで民間の水準が上がることが想定されるが、初任給の官民較差が今以上に開かないよう大幅改善を求める。民間での春闘相場は、昨年を上回 り、一時金も増額と報じられており、職場の期待は大きい。「民間準拠」にとどまらず、人事院として公務員労働者の要求をしっかり受け止め、賃金改善を行う よう求める。
○ 官民比較方法について、06年の調査から比較企業規模と事業所規模双方を50人以上としたが、それ以降、500人未満の割合が6割となっていることは 看過できない。我々は、比較企業規模を中央労働委員会の調査対象と同様の1000人以上とするよう求めていることを踏まえるべきだ。
○ 定員削減のもとで「公務能率」の向上が求められているが、職務・職責は変わらずに賃下げされては公務能率が向上しないことは明らか。職務給原則、生計費原則にもとづき、高齢層職員の賃金抑制を中止し、改善するよう求める。
○ 超過勤務の縮減が政府・人事院の重要課題となって久しいにもかかわらず、長時間過密労働は依然として改善されていない。この状況が「フレックスタイム 制」の導入で改善できるものではない。勤務時間を個々の希望や実情にあわせられる状況にないことは、人事院としても認識しているはずだ。長時間残業の解消 は、職員の増員によって業務体制を確立し、勤務条件を改善することが必要不可決だ。公務・公共サービスの質を向上させる観点からも、人事院として長時間過 密労働を解消するための実行ある対策を打ち出すべき。
○ フレックスタイム制については、民間では労使協定が前提であるが、国家公務員には労働基本権が制限され、労使協定の枠組みがない。使用者からの一方的 な押し付けとなれば、今以上の長時間残業となることは明らかだ。定員削減で最小限の人員で業務を遂行しているもとで、勤務時間を弾力化すれば公務能率を阻 害する。同時に、勤務時間管理の徹底に膨大な労力を要するし、職員の健康破壊や労働強化に拍車がかかる。したがって、フレックスタイム制の導入にむけた検 討は行わないよう求める。
○ 16年4月から年金の支給開始年齢が62歳となるが、定年の延長が不可欠。人事院として、11年9月の意見申し出を踏まえて、職員の利益擁護機関の立 場から、あらためて段階的定年延長の早期実現を政府に働きかけるよう求める。また、再任用の場合でも定年前と同じ職務の場合には7割の賃金水準を確保する とともに、生活関連手当を早急に実現するよう求める。
○ 非常勤職員は「臨時・緊急の必要に応じて任用される」というが、その認識は実態に反している。恒常的な行政業務を遂行するために多数の非常勤職員が雇 用され、国民の側からは非常勤職員であっても経験や知識の蓄積にもとづく能力の発揮が求められている。これが行政現場の今日の実態であることをまず確認し たい。
○ 非常勤職員が正規職員と同じ仕事をしている実態に目をむけ、労働契約法20条もふまえて賃金や休暇など労働条件の改善と均等待遇を実現するよう求め る。地方自治体では、夏季休暇や忌引き休暇などが制度化されているところも多い。この点にも目を向けて人事院としての努力を求める。
○ 年度末の契約更新の際には雇い止めなどのトラブルが絶えない。一律年限での雇い止めをただちに中止するよう指導するよう求める。

公務員の賃金改善は民間労働者の声だ

 参加者からは以下の点を主張しました。
(自治労連)「給与制度の見直し」での交渉を継続しているが、同じ通勤圏内でも16%もの地域手当の格差があり、人材確保ができない状況。「見直し」実施 の中止を求める。長時間過密労働のもと、女性は管理職登用試験を拒否している。フレックスタイムでは仕事と家庭の両立はできない。
(全教) 国公法には生計費考慮が明記されており、不誠実な対応は許されない。長時間残業は、人を増やすことなしには改善できない。大阪府の教育長がパワハラで辞任したが、実情を把握して対策に反映させるべきだ。
(国公)実質賃金はマイナスで生活はきびしい。賃上げは政労使会議でも合意しており、625万人に影響する公務員賃金を国が率先してあげるべきだ。フレックスタイム制の民間での普及は5パーセント程度であり、公務に導入するメリットはない。
(特殊法人労連)「給与制度の見直し」の影響が大きい。若い職員から「将来性あるのか」の声が上がっている。人事院の役割は、やる気を持って働ける条件を 整備することであり、「見直し」を見直してほしい。子の看護休暇を小学生まで可能とする法人もあり、再任用者に扶養手当がないのも問題であり、人事院とし ても改善に努力せよ。
(自治労連) 「給与制度の見直し」は納得できない。地方当局も説明ができない。人事院は公務員を失望させ、信頼を裏切った。これを回復させる勧告を求める。高齢層は、 賃下げに退職手当削減、年金一元化の不安などで生活が見通せない。定年延長を進めないのは政府の怠慢であり、人事院として政府に迫るよう求める。

 以上の指摘に対して、人事院側は、これまでの回答を繰り返し、フレックスタイム制については、「今日もだされた疑念や懸念を含め、ご意見も聞きながら検討する」と回答するにとどまりました。
 最後に北村議長が、「安倍首相をはじめ政府としても賃金改善の必要性を強調しているもとで、職員の利益擁護機関である人事院として、公務員労働者の生活 と労働の実態をふまえた具体的な回答がなかったことは不満だ」、「『給与見直しは中止せよ』との声は公務だけでなく民間からも上がっている。国民の安心、 安全を支える行政を能率的に遂行するためには、公務員労働者が誇りと働きがいを持てる賃金と労働条件が必要だ」、「今年の勧告にむけて公務労組連絡会とし てあらためて重点要求をとりまとめ、賃金と労働条件の改善を強く求めていく」とのべ、引き続き誠意を持って交渉・協議を行うよう求めて交渉を終わりまし た。
以 上