No. 903
   2015年3月9日
生計費原則にもとづき賃金を改善せよ

= 15年春闘要求の実現を求めて政府・人事院と交渉 =

 全国から1千人の公務労働者が結集した「3・4中央行動」を力に、公務労組連絡会は3月9日に15年春闘要求の前進をめざして人事院・内閣人事局と交渉しました。
 交渉では、実質賃金が19か月連続でマイナスとなっているもとで、生計費にもとづく賃金の改善、とりわけ初任給の賃上げと高齢層職員の賃金抑制をやめること、超過勤務の縮減対策、非常勤職員の雇用の安定や処遇改善などを迫りました。
 交渉をふまえて、さらに具体的な検討を政府と人事院に求め、3月下旬に春闘期における最終回答を求めて交渉を配置します。

(人事院交渉)権利制約の「代償機関」としての姿勢を示せ

 人事院との交渉は、北村議長を先頭に、猿橋副議長、川村事務局長、杉本事務局次長、松井書記と、全教の浅田中執、国公労連の中本中執、特殊法人労連の篠 原幹事の8人が参加し、人事院側は給与局給与第1課の奈良間課長補佐と職員福祉局職員福祉課の西課長補佐ほかが対応しました。

 はじめに北村議長が、「4月から実施される『給与制度の総合的見直し』では、多数が賃下げであり、民間への波及も含め政府の景気対策と矛盾する。職務給 原則に反した高齢層の賃下げと地域間格差の拡大は、公務の安定的遂行や能率を阻害するものであり認められない。労働基本権制約の代償措置として勧告制度が 存在する以上、人事院として公務労働者の生活・労働条件の改善にむけてその役割を発揮すべきだ」と求め、要求に対する現時点の人事院の考えをただしまし た。

 人事院側は、要旨、以下のように回答しました。

1.賃金等の改善について
● 今年の春闘では、連合は「定期昇給・賃金カーブ維持相当分の確保を前提とし、過年度の消費者物価上昇分や企業収益の適正な分配の観点、経済の好循環を 実現していく社会的役割と責任を踏まえ、すべての構成組織がとりくみを推進していくことを重視し2%以上の要求を掲げ獲得をめざす」としている。
● 一方、日本経団連は、賃金の引き上げについて、「ベースアップは賃金を引き上げる場合の選択肢の一つとして考えるべき」とし、賃上げをベースアップに 限定せず、「年収ベースの引き上げ」と捉えて、賃金については、「総額人件費の適切な管理のもと、自社の支払能力に基づき決定することが原則である」とし ている。
 こうした状況の中、3月中旬以降、経営側からの回答・妥結が行われるので、その動向を注視しているところである。
● 国家公務員の給与については、本年も情勢適応の原則にもとづき、民間給与の実態を精緻に調査したうえで、民間給与との精確な比較を行い、必要な勧告を行うという基本的スタンスにかわりはない。
● 50歳台後半層の給与については、昨年の給与制度の総合的見直しに係る勧告において、50歳台後半層については、国家公務員給与が民間給与を4ポイン ト程度上回っている状況にあることを踏まえ、50歳台後半層の職員が多く在職する高位号俸の俸給月額について最大で4%程度引き下げることにより、世代間 の給与配分を更に適正化することとしたところである。55歳超職員に対する俸給等の1.5%減額支給措置については、高齢層職員の給与の適正化が講じられ ることから、経過措置が終了する平成30年3月31日をもって廃止することとしている。
● 各種手当についての改善要求事項のなかには、昨年の給与制度の総合的見直し等のなかで見直しを行ったものもあるが、要求のあった各種手当については、民間の手当の状況、官民較差の状況等を踏まえながら検討していく。

2.労働時間短縮、休暇制度等について
● 超過勤務の縮減については、厳正な勤務時間管理の徹底、業務の改善・効率化などのとりくみの推進が肝要であるとの観点から、人事院として、各府省と協 力してとりくんできたところである。管理職員の意識啓発等、引き続き各府省と連携を図りながら、超過勤務、在庁時間の縮減にとりくんでいく。
 また、平成26年には、民間企業の勤務条件制度等調査において総労働時間の短縮にむけたとりくみを調査するとともに、公務においても「超過勤務に関する 職員の意識調査」を実施したところであり、今後、これらの調査結果を踏まえ、関係機関と連携しながら、より実効性のある超過勤務の縮減について検討を進め ていく。
● 職員の勤務時間や休暇、休業制度等については、民間における所定労働時間や休暇制度等の普及状況等を踏まえて、これまで適宜見直しを行ってきたところであり、今後も引き続き民間の状況等を注視しつつ必要な検討を行う。

3.高齢期雇用等について
● 高齢期雇用については、平成25年3月26日の閣議決定では、現行の再任用の仕組みにより、希望者を原則再任用するものとされたところである。このた め、職員の能力と経験を公務内で活用できるよう、業務運営や定員配置の柔軟化や60歳前からの退職管理を含む人事管理の見直しなどを進めていく必要があ り、また、フルタイム中心の勤務を公務で実現していくためには、関連する制度と合わせて雇用と年金の接続の在り方を検討していく必要があると考える。
 また、昨年4月に公布された国家公務員法等の一部を改正する法律の附則では、政府は平成28年度までに人事院の意見の申出を踏まえつつ、雇用と年金の接 続のための措置を講ずることについて検討するものとされており、人事院としても、引き続き、再任用の運用状況や問題点等の把握に努めるとともに、民間企業 における継続雇用等の実情、定年前も含めた人事管理全体の状況等を詳細に把握し、意見の申出を踏まえ、雇用と年金の接続のため、適切な制度が整備されるよ う、積極的にとりくむ所存である。
● 再任用職員の給与の在り方については、今後も民間給与の動向等を注視するとともに、各府省における今後の再任用制度の運用状況を踏まえ、職員団体の意見も聴きながら必要な検討を行っていくこととしたいと考えている。

4.非常勤職員の雇用、処遇改善について
● 非常勤職員については、適切な処遇等を確保するため、その任用、給与、休暇等について、職員団体や各府省等関係方面の意見等も聴きながら、民間の状況 等を踏まえ、法律、人事院規則等を必要に応じて改正し対応してきたところである。今後とも同様の考え方を基本に必要な見直しを行うとともに、各府省におい て非常勤職員の任用、給与等の適切な運用が図られるよう努めていきたい。
● 非常勤職員の採用について、公募を原則としているのは、国家公務員法に定める平等取扱の原則及び任免の根本基準(成績主義の原則)を踏まえたものであり、公募要件を撤廃することは適当でない。
 期間業務職員の採用については、能力実証を面接及び期間業務職員としての従前の勤務実績にもとづき行うことができる場合には、公募によらない採用を行う ことができるとしている。ただし、このような取扱いは、国家公務員法に定める平等取扱の原則及び任免の根本基準(成績主義の原則)を踏まえ、原則として2 回までとするように努めることとしている。この場合において、公募及び能力実証を行った結果、既に公募によらず2回採用されたことのある期間業務職員が引 き続き採用されることは任用制度上あり得るところである。したがって、勤務年数等を理由とした「雇い止め」を行うような仕組みとはなっていない。

5. 民主的公務員制度等について
● 人事評価については、職員の能力・実績等を的確に把握し、人事管理の基礎とするものであり、各府省において人事評価が厳格に実施されるように、実情把握に努めることが重要と考えている。
 評価結果の開示については、原則として、全体評語を含むものでなければならないとした上で、個別評語等については、各府省の判断で開示を行うことを妨げるものではないとされているところである。
 評価結果の活用については、国公法において人事評価が「任用、給与、分限その他の人事管理の基礎」となるものとして位置づけられており、人事院規則等において、能力・実績にもとづく人事管理を推進する観点から、評価結果を任免や給与の決定に活用する基準を定めている。
 また、人事評価に対する苦情処理においては、実施権者が事実関係の確認に必要があると判断する場合には、苦情の申出人からの申出に応じて、聴き取りの際に申出人の希望する者の同席が認められているところである。

6.男女平等、共同参画について
● 人事院は、平成23年1月に「女性国家公務員の採用・登用の拡大に関する指針」を改定し、各府省において実効性のあるとりくみが進むよう、第3次男女 共同参画基本計画(平成22年12月17日閣議決定)を踏まえ、府省全体の目標設定とともに、部局等の適切な区分において具体化をはかるよう指針で示して おり、各府省はこの指針にもとづき、採用・登用の拡大にむけて、目標、目標達成にむけての具体的取組等を定めた計画を策定して、とりくみを進めてきたとこ ろである。
 さらに、女性職員の採用・登用の拡大については、内閣人事局長を議長に全府省の事務次官級で構成される「女性職員活躍・ワークライフバランス推進協議 会」が設置され、同協議会において、具体的な施策を盛り込んだ「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」(平成26年10月決 定)が策定され、これにもとづき、全府省等において、「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組計画」が策定されるなど、政府全体で とりくみが進められているところである。
 今後とも、人事院としても、女性職員の登用に向けた研修や両立支援策等により、各府省の取組を支援していく。

7.健康・安全確保等について
● 心の健康づくりをはじめとした健康管理対策やセクシャルハラスメント、パワーハラスメント対策の推進については、公務全体の共通の課題として、各職場 においてきめ細かい対応が重要であるとの認識にもとづき、これまでも各府省と協力して、人事院として積極的にとりくんできたところである。各府省において もこうしたとりくみの必要性の認識は高まっており、人事院としても引き続き、各府省と連携しつつ、適切に対応していく。
 人事院におけるとりくみの一環として、心の不調者の発生を未然に防ぐ1次予防の観点から、職員がセルフケアに関する知識を身につけるための自習用の教材として、e−ラーニング教材を1月末に全府省に配布したところであり、各職場で活用してもらいたいと考えている。
 また、いわゆるパワー・ハラスメントについても、今後、公務における実態とともに、平成24年3月の厚生労働省の職場のいじめ・嫌がらせ問題に関する円 卓会議における提言やパワー・ハラスメントに関する裁判例など社会的な動向等にも留意しつつ、パワー・ハラスメント防止のための施策等について検討すると ともに、パワー・ハラスメントをわかりやすく解説するハンドブックを作成するなど、職員の意識啓発に努めていきたい。

8.東日本大震災、福島第1原発事故に伴う労働条件改善について
● 人事院は、東日本大震災、東京電力福島第1原発事故の発生にともない、給与、休暇及び除染等関連業務に従事する職員の健康管理などに関し、各府省や職 員団体からも要望を聞きながら、必要な措置を講じてきたものであり、現在も引き続きこうした姿勢でとりくんでいるところである。
 なお、福島市等では、地元住民や地方公務員等が日常生活を送っており、国家公務員のみの特例となるような取り扱いには自ずと制約があることを念頭に置く必要があるが、個別の事情等があればお伝えいただきたいとの姿勢に変わりはないので、何かあれば相談されたい。
 以上、主な要求事項に対する検討状況について回答させていただいた。本日以降の進捗状況等については、後日、しかるべく回答したい。

臨時・非常勤職員の処遇の改善を追及

 回答を受けて川村事務局は以下の点を主張しました。
○ 物価上昇のもとで賃金はマイナスとなっており、生計費にもとづいて月額平均で2万円以上の賃金改善を強く求める。民間賃金との較差を口実に高齢層の賃 下げを強行する一方で、較差が歴然としている初任給は改善していない。初任給の大幅な引き上げを求める。連年にわたって高齢層の賃下げが押し付けられてい るが、職務・職責は変わらずに賃金を下げて公務能率が向上するのか。職務給原則、生計費原則にもとづき、高齢層職員の賃金抑制を中止し、改善するよう求め る。「給与制度の総合的見直し」により国で600億円、地方で2,100億円もの賃金が奪われることをどう考えるのか。政府から要請されている扶養手当の 「見直し」は十分な協議と合意納得が大前提。公務員労働者の生活と権利を守る役割を発揮せよ。
○ 公務・公共サービスの質を向上させる観点からも、長時間過密労働の解消と不払い残業の根絶にむけ、実効ある対策を打ちだすべき。政府から要請されてい るフレックスタイム制の拡大については、いまの長時間労働を是正するものとしなければならない。公務労組連絡会との合意を前提とし、提案・協議をつくすべ き。
○ 2016年4月以降、年金の支給開始年齢が62歳に繰り延べされるもとでは定年の延長が不可欠。人事院として、職員の利益擁護機関の立場から、あらた めて段階的定年延長の早期実現を政府に働きかけるよう求める。再任用職員の賃金水準等について、再任用職員の賃金引き上げや生活関連手当を早急に実現する よう求める。
○ 非常勤職員については、年度末での雇い止めなどのトラブルが絶えない。一律年限での雇い止めをただちに中止するよう各府省への指導を求める。非常勤職 員の職務内容は常勤職員と同様のものも多く、不合理な労働条件格差は認められない。労働契約法20条も踏まえて休暇制度をはじめ労働条件の均等待遇を実現 するよう求める。

 参加者からは、「『給与制度見直し』による賃下げや将来展望が見えないなか、自治体への採用希望者が減っている。非常勤職員の処遇について、地方では夏 季休暇や忌引き休暇は制度化されており、国の現状は問題だ。超過勤務縮減には、労働時間把握と分析が必要だ」(自治労連)、「『給与制度見直し』による賃 下げでの地域経済の疲弊を危惧する。地方の職場では、深夜、土日の残業を余儀なくされても超勤手当は月10時間の足切りがある。非常勤職員からの雇止めや パワハラの相談が増えている」(国公労連)、「通則法改正により、社会一般の情勢のなかに国家公務員の賃金が加えられ、勧告の影響が大きい。公務の役割を 理解して青年が将来展望が持てるように、初任給の改善を求める」(特殊法人労連)、「アンケート調査では、『生活が苦しい』が56%。被服費や教養娯楽 費、食費などの切り詰めのもと、88%が1万円以上の賃上げを求めている。土日の部活指導や授業準備などの長時間労働が当たり前となっているが、78%が 体がもたないと悲鳴を上げている。人が足りない」(全教)、「民間では雇用ルールなどの法違反が当たり前の状況。それに公務を合わせるのは問題。人事院の 役割は公務員労働者の権利を守ることだ」(自治労連)と、第三者機関としての人事院の役割発揮を求めました。

 奈良間課長補佐は、「給与制度見直し」について「地方で勤務する公務員の賃金が高いとの声がある」など従来の説明を繰り返すとともに、初任給については 改善に努力していること、再任用や非常勤職員についても当初の回答を繰り返しました。また、西課長補佐も、超過勤務問題は職員の健康やワークライフバラン スなどから是正が必要としつつも、民間や公務の調査結果を踏まえて検討するとの回答にとどまりました。
 川村事務局長は、超勤の調査結果の検討に公務労組連絡会も加えるよう求めるとともに、非常勤職員の「公募要件の撤廃は適当でない」と言うが、公務職場の実態や国民への行政サービスの観点から再考すべきと重ねて追及しました。

 最後に、北村議長が「中間的な回答としても極めて不十分だ。労働基本権が踏みにじられるもとで、公務員の権利を守るという立場からの人事院の姿勢が示さ れるべきだ。民間準拠にとどまらず、生計費原則にもとづく公務員の生活改善、景気回復など幅広い視点に立った検討こそ必要だ。引き続き最終回答にむけての 検討を求める」と述べて交渉を終わりました。

(内閣人事局交渉)公務員賃上げの声に政府として応えよ

 内閣人事局交渉では、辻恭介総括参事官補佐をはじめ各分野の担当補佐など12人が出席しました。
 北村議長は、「実質賃金がマイナスとなっているもとで賃上げに対する期待と要求はかつてなく大きい。景気を回復するためには、公務員も含めたすべての労 働者の賃金改善が不可欠だ。民間労組からも公務員の賃金改善を求める声が上がっている。15年春闘の統一要求をふまえて、正規・非正規すべての公務労働者 の賃上げ、労働時間短縮、高齢期雇用対策の拡充などを求める」と述べ、内閣人事局の考えをただしました。

 内閣人事局からの中間的な回答要旨は以下のとおりです。
● 国家公務員の給与改定にあたっては、国家公務員の給与を社会一般の情勢に適応させるとの原則のもと、人事院勧告制度を尊重することが基本姿勢と考えて いる。本年の給与改定については、人事院勧告も踏まえ、国政全般の観点に立って総合的に検討を行った上で方針を決定してまいりたいと考えている。その際に は、皆様とも十分に意見交換を行ってまいりたい。
●  自律的労使関係制度については、国家公務員制度改革基本法第12条において「政府は、協約締結権を付与する職員の範囲の拡大にともなう便益及び費用を含 む全体像を国民に提示し、その理解のもとに、国民に開かれた自律的労使関係制度を措置するものとする」とされている。
 この自律的労使関係制度については、多岐にわたる課題があり、引き続き慎重に検討する必要があると考えている。皆様とは、今回のような意見交換の機会を活用し、引き続き意見交換をさせていただきたい。
● 「労働時間短縮、休暇制度など働くルールの確立」に関して、女性活躍・ワークライフバランスとも密接に関わるものであり、男女すべての職員の「働き方 改革」を進めることが重要であるとの観点から昨年10月に「国家公務員の女性活躍とワークライフバランス推進のための取組指針」を取りまとめたところであ るが、この中で、超過勤務縮減にむけたとりくみとして、1)超過勤務の必要性の事前確認の徹底、2)事務次官等による部局ごとの超過勤務等の状況把握、 3)各府省等にまたがる調整業務による超過勤務の縮減等についても盛り込んでいるところである。各府省においては、同指針を踏まえて策定された計画のも と、具体的なとりくみが行われているものと承知している。
 引き続き、皆様のご意見も伺いながら、政府一丸となって、超過勤務の縮減にむけてとりくんでまいりたい。
●  雇用と年金の接続については、平成25年3月の閣議決定にそって、定年退職者の再任用を政府全体で着実に推進してまいりたい。なお、平成26年8月の人 事院勧告を受け、所要の法改正等を行い、再任用職員に対し、単身赴任手当を支給することとしたところであるが、人事院の報告では、再任用職員の給与水準に ついて、民間の動向等を注視するとともに、各府省における今後の再任用制度の運用状況を踏まえ、諸手当の取り扱いも含め、必要な検討を行っていくこととさ れており、政府としても人事院における所要の検討を踏まえ、適切に対応してまいりたい。
 また、平成26年4月に成立した国家公務員法等の一部を改正する法律の附則第42条の規定において、平成28年度までに、定年の段階的引上げ、再任用制 度の活用の拡大その他の措置を講ずることについて検討するものとされているところ。政府としては、同規定及び平成25年3月の閣議決定を踏まえ、再任用制 度の活用状況や民間の高年齢者雇用確保措置の実施状況等を勘案し、雇用と年金の接続の在り方についてあらためて検討しているところであり、検討に際して は、職員団体も含めた関係者の意見を聞いて進めてまいりたい。
●  非常勤職員の処遇改善については、平成22年10月から期間業務職員制度を導入したところ。また、育児休業等の取得も平成23年4月から可能になったところである。
 非常勤職員の給与については、各府省において、人事院からだされた指針を踏まえた給与の支給に努めることとされており、また、休暇については、人事院において、一定の非常勤職員に対する夏季における弾力的な年次休暇が措置されたものと承知している。
 内閣人事局としては、人事管理官会議等の場を通じて、期間業務職員制度の適正な運用や非常勤職員に対する適正な給与の支給など、非常勤職員に対する適正な処遇に努めるよう各府省に対し引き続き周知をはかっていきたい。
●  「男女平等・共同参画」に関して、女性の活躍推進について「隗より始めよ」の観点から国が率先してとりくむとともに、職員のワークライフバランスについても一体的に推進しているところ。
 各府省においては、昨年10月に取りまとめた取組指針を踏まえ、それぞれの実情を踏まえて創意工夫し、実効的なとりくみ等を盛り込んだ取組計画を策定したところ。各府省は、この計画にもとづき、総合的かつ計画的なとりくみを進めることとしている。
 内閣人事局としても、各府省の取組を毎年度フォローアップするとともに、必要に応じて各府省のとりくみの促進に資するようなサポートを行うことで、男女すべての職員のワークライフバランスの実現と女性職員の採用・登用の拡大にむけ、とりくみを推進していきたい。

公務員労働者がやる気と誇りを持てる賃金改善を

 以上の回答を受けて、川村事務局長は、「平均2万円以上」の賃上げなどとともに、以下の点を主張しました。
○ 公務員の総人件費抑制方針のもと、定員削減のもとで慢性的な長時間・過密労働が蔓延し、メンタル不全をふくめた病休者の増加、現職死亡や自殺など深刻 な問題が起きている。画一的な削減は公務能率を阻害し、人材確保にも支障をきたしている。地方公務員も20年連続で人員が削減されている。地方公務員のこ れ以上の定員削減も認められない。定員削減は公務・公共サービスを後退させ、国や自治体の責任を放棄するもので重大な問題。総定員法や定員削減計画の枠組 みを含め、定員管理施策を抜本的に見直す必要があり、労働組合と議論する場も設けるよう求める。
○ 公務員制度改革基本法には「自律的労使関係制度の措置」がうたわれ、自律的労使関係制度について「職員団体と所要の意見交換を行いつつ合意形成に努め る」とした付帯決議も採択されている。しかし、現状は棚上げの状態。あらためて、憲法とILO条約・勧告にもとづき労働基本権を回復するよう早急に労働組 合との協議を開始することを求める。
○  超過勤務の縮減が政府の重要課題に位置付けられているにもかかわらず、長時間過密労働は依然として改善されていない。厚労省では、22時以降の残業を禁止 したと聞く。国会待機を除くなどの問題はあるが、公務・公共サービスの質の向上させる観点からも、使用者として長時間過密労働を解消するための実効ある対 策を打ち出すべき。
○ 内閣人事局は、使用者として、臨時・非常勤職員に対する雇用責任を負っていることは言うまでもない。賃金や休暇など労働条件改善を求める。非常勤職員は、正規職員と同じ仕事をしていることからも、労働契約法20条も踏まえて均等待遇の実現を求める。
○ 女性の登用を促進するために、女性の母性保護や家族的責任を守ることを重視し、男女ともに働き続けられる職場環境の改善が必要だ。具体的には育児休業 の代替要員の確保や休業中の所得保障などが重要だ。安倍内閣としても、男女共同参画は重点課題であり、公務が先行して制度改善をはかるよう求める。

 参加者からは、「地方の賃金水準は、公務員賃金と最低賃金が規範となっている。2%賃下げでは、民間も含めて負のスパイラルとなり、雇用も生まれない。 民間に人材が流れて自治体での採用に支障が生じている。非常勤職員の夏季休暇や忌引き休暇などは自治体では制度化されている」(自治労連)、「賃下げで地 域は疲弊している。格差の是正が必要。深夜や土日の残業があっても手当は月10時間の足切り。フレックスタイムで時間管理できるのか。震災抑制で年齢構成 がいびつになり、行政体制として問題。非常勤職員からの労働相談が増えているが、雇止めやパワハラなど職場実態の改善を求める」(国公)、「非公務員型の 独法でも国家公務員の賃金や制度が押し付けられ、労使の話し合い幅が狭くなっている。労使自治の保障を求める。非常勤職員がいないと成り立たない。均等待 遇を」(特殊法人労連)、「土日の部活など長時間労働で若者も体が持たない。心の病になるかもとの声もあがっている。人が足りないことで教育の質も低下せ ざるを得ない」(全教)、「社会的な賃金の規範となっている公務員賃金を、民間準拠のみで決めるのがいいのか。適正な社会的水準を確保するようイニシアチ ブの発揮を求める。指定管理者の受注のたびに人件費が削減されているのは問題だ。岩手の復興事業では、通常の10倍の業務なのに人員は増えず復興が遅れて いる。人材確保のためにも処遇改善を」(自治労連)と、それぞれの職場実態などを政府にぶつけました。

 辻総括補佐は、「賃金改善では、やる気がもてるものとの指摘はそのとおり。公務員賃金に対する様々な意見あるが、国民の理解のもと人勧制度にもとづいて 対応していく。新採抑制のひずみの指摘があったが、減らせばいいものではない。きちんと仕事ができる定員管理が必要だ。超勤規制で厚労省の事例の指摘が あったが、長時間残業当たり前の風土を変えるきっかけになるよう、各省からの相談に応じていく。非常勤職員の処遇改善について動きが遅いとの指摘を受け止 めて、制度官庁と対応していく」と回答しました。

 最後に北村議長が、「先週の中央行動では、給与制度の見直しの中止、労働条件の改善を求める切実な声が上がった。『見直し』の強行と地方への押し付け が、公務労働への誇りと働きがいさえも失わせている。月額2万円以上の要求は控えめなもの。使用者として働きがいのある職場づくりに全力をあげよ。そのた めにも賃上げと労働条件の改善は不可欠であり、最終交渉にむけてさらに検討するよう求める」と述べて交渉を終わりました。
以 上