No. 899
   2015年2月17日
公務員賃金の改善、臨時・非常勤労働者の均等待遇を

= 公務労組連絡会が全国人事委員会連合会に申し入れ =

 公務労組連絡会は17 日、自治労連・全教と共同して、地方公務員・教員の賃金・労働条件の改善を求めて、全国人事委員会連合会(全人連)への要請にとりくみました。
 申し入れでは、安倍首相の賃上げ発言と矛盾した「給与制度見直し」の問題点を指摘するとともに、18か月連続で実質賃金が減り続けていもとで、地域経済 を活性化させるためにも、公務労働者はもとよりすべての労働者の賃金改善へ全人連としても積極的な対応を求めました。
 また、各単産からは、「給与制度見直し」の矛盾と問題点を指摘するとともに、生計費原則にもとづく賃金改善、臨時・非常勤職員の処遇改善などを求めまし た。

格差を拡 大し、地域経済を疲弊させる給与制度の改悪反対

全人連要請  全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは北村議長(全教委員長)、猿橋副議長(自治労連委員長代行)、川村事務局長、杉本・米田の各事務局次長、 自治労連から中川書記長、全教から今谷書記長が出席しました。
 全人連側は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海道)、小川(宮城県)、原間(山梨県)、齋藤(愛知県)、栗原(大阪府)、加藤 (広島県)、桑城(香川県)、蓑田(福岡県)、岡部(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席しました。
 はじめに、北村議長が要請書(別掲)を関谷会長に手交し、昨年12月の「地方公務員の給与制度の総合的見直しに関する検討会」の最終報告について、安倍 首相が賃上げを強調しているもとで、地方公務員の「給与制度は国、給与水準は地域」とする賃下げ「見直し」の地方への押し付けは容認できないとし、「この 見直しは、全国知事会も指摘するように、地方に働く公務員の賃下げに止まらず、地方・地域の民間賃金の抑制と地域間格差の拡大につながるものだ。景気回復 や地域経済活性化という政府の基本政策にも冷や水を浴びせることになる」と強調しました。そのうえで、「正規・非正規にかかわらず第一線で働く公務労働者 の奮闘に応えて、賃金・労働条件の改善にむけて全人連として尽力するよう強く求める」と要請しました。
 自治労連の中川書記長は、自治体では「給与制度見直し」勧告の先送りなどの実態を示し、中立機関としての人事委員会の役割発揮を求めました。また、公務 員採用試験の応募者が減少しているなか、賃下げでは優秀な人材は確保できないと強調。総務省の公務員部長通知も踏まえて、非常勤職員の処遇を改善するよう 強く求めました。
 全教の今谷書記長は、「給与制度見直し」勧告によって多くの自治体で賃下げとなっており、労働基本権制約の「代償措置」としての人事委員会勧告制度の根 幹が問われていると指摘しました。そのうえで、長時間労働が強いられている教職員の職場実態を踏まえた賃金・労働条件の改善を求めました。また、臨時教職 員の実態も示し、人事委員会としても臨時的任用の教員の配置などに目をむけ、処遇と雇用を早急に改善するよう求めました。

「第三者機関の使命を果たす」としつつも「今後の行方を注視」にとどまる

 要請に対して、関谷会長からは以下のような回答が示されました。
【関谷全人連会長の回答】
 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、役員道府県市を通じて、全国の人事委員会にお伝えします。折角の機会ですので、現在 の状況認識等について、一言、申し上げます。
 既に始まっている本年の春季労使交渉では、ベースアップをはじめ、賃上げに関する様々な議論がなされているところです。昨年12月の政労使会議では、経 済の好循環の継続に向け、引き続き賃金上昇に向けた取組を進めていくことを確認するとともに、仕事や役割等に応じた賃金体系の在り方等についても言及して おります。
 いずれにしても、業種や企業規模の違いを超えてどこまで賃金改善の動きが広がるのか、賃上げの手段等を含め、今後の行方を注視していく必要があると考え ております。
 現在、人事院及び各人事委員会では、民間給与の実態を的確に把握できるよう、本年の民間給与実態調査の実施へ向け、その準備を進めているところです。
 今後、各人事委員会においては、社会経済の動向なども踏まえながら、本日の要請内容も含め、本年の勧告に向けた検討を進めていくことになろうかと思いま す。全人連といたしましては、本年も各人事委員会の主体的な取組を支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に努めてまいります。
 あらためて申すまでもありませんが、人事委員会の重要な使命は、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することである と認識しております。
 今後の景気動向や財政健全化に向けた国の取組が与える影響など、地方公務員の給与を取り巻く環境は、不透明な状況におかれておりますが、私ども人事委員 会は、本年も中立かつ公正な第三者機関として、その使命を十分に果たしてまいります。


【全人連に提出した要請書】
2015 年2月17日
全国人事委員会連合会
 会 長  関谷 保夫 殿
公  務 労 組 連 絡 会
議 長   北村 佳久

日本自治体労働組合総連合

  中央執行委員長 野村 幸裕

全 日 本 教 職 員 組 合

 中央執行委員長 北村 佳久

地方公務 員の給与等の改善にかかわる要請書

 日頃から地方公務員の勤務条件の向上に努力されていることに対して敬意を表します。
 地方自治体では、政府による違憲、違法な国に準じた「賃下げ」の要請によって7割を超える自治体で何らかの賃下げ措置がとられました。また、政府から 「給与体系の抜本的改革」の要請を受けた人事院は「給与制度の総合的見直し」を勧告し、給与法等が改正され、この1月には国家公務員の1号俸の昇給抑制が 実施されています。
 私たち公務労組連絡会は、この総合的見直しは地域間格差を拡大するとともに職務給原則を逸脱し、公務と民間を通じた地方の賃金抑制が地域経済の振興に水 を差すとして、地方公務員には導入しないよう全国で運動を進めてきました。
 私たちの運動もあり、8府県17政令都市の人事委員会は、総合的見直しの実施については勧告しませんでした。
 一方で、自民党行政改革推進本部は、行財政改革の一環として地方公務員の賃金削減を進めるとしています。
 安倍内閣が賃上げを政策課題にすえるもとで、賃下げにつながる給与制度の改悪は、政府がめざす方向とも逆行します。とりわけ、地域の公務員賃金の引き下 げは、地場賃金に影響し、地域経済を冷え込ませるなど、地方切り捨てにもつながるものであり断じて認められません。
 第一線で奮闘する公務労働者の労苦に報いるため、各地の人事委員会が労働基本権制約の代償機関として積極的な立場に立ち、下記要求の実現に尽力されるこ とを要請いたします。



1、住民の暮らしや子どもたちの教育のため、日夜、献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励ますとともに、「全体の奉仕者」としての誇りと尊厳を 持って職務に専念できるように、生計費原則をふまえ、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の賃金・労働条件を改善すること。

2、民間給与実態調査にあたっては、単に民間の賃金水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密 接不可分であることに十分留意して調査をおこなうこと。とりわけ、勤続・経験年数の加味、雇用形態、民間一時金水準の厳正な把握とともに、比較対象企業規 模を100人以上にすること。

3、職務による賃金格差の拡大、高齢層の賃金の抑制をやめるとともに、初任給の改善をはかること。技能・労務職員の賃金を、公務の特殊性をふまえて改善す ること。

4、地方の公務員賃金引き下げにつながる政府・人事院による給与制度の改悪に対して、人事委員会として意見表明していただくこと。

5、子どもたちのさまざまな困難に対応している教職員のモチベーションを支えるためにも、教職員賃金の引き下げはおこなわず、職責と勤務実態に応じた適正 な賃金水準を確保すること。

6、臨時・非常勤職員について、パート労働法・改正労働契約法の趣旨もふまえつつ、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現 などにむけて必要な対策をおこなうこと。

7、「雇用と年金の接続」にむけては、定年延長を大原則に、希望するすべての職員の雇用が保障できる制度を確立し、生計費をふまえた賃金水準の確保にむけ て、人事委員会としての役割をはたすこと。

以 上