No. 896
   2014年10月7日

「地方創生」に逆行する賃下げと退職手当削減やめよ

= 内閣人事局と最終交渉、7日の閣議決定を回答 =

 公務労組連絡会は10 月6日、14年人事院勧告の取り扱いにかかわって、内閣人事局との最終交渉に臨みました。
 交渉では、内閣人事局の「勧告どおり給与改定と給与制度の総合的見直しを行う、退職手当は調整額拡大で必要な法改正を行う」との回答が示され、一方的な 通告とも言える回答に対して、「私たちの要求に一切応えない回答では納得できない」と主張し、あらためて「給与制度の見直し」の中止・再考と退職手当の現 給保障を強く求めました。
 その後、政府は、翌7日に第2回の給与関係閣僚会議を開き、14年人事院勧告の完全実施と退職手当法の「見直し」を確認し、その後の閣議で「公務員の給 与改定に関する取扱いについて」を決定しました。法成立を急ぐ安倍内閣は、ただちに関連法案を国会に上程する異例の対応もとられました。
 こうしたもと、公務労組連絡会は、政府の閣議決定強行を受けて別添の「『地方創生』に逆行する『給与制度の見直し』、退職手当減額の閣議決定は撤回せ よ」の幹事会声明を発表し、今回の法案提出にいたる問題を内外に明らかにしました。
 開会中の臨時国会では、「地方創生」による地域活性化と、地域経済を疲弊させる公務員賃金引き下げという、矛盾した法案審議が行われることとなります。 引き続き、地元選出国会議員への要請や国会傍聴をはじめとした国会闘争と、地方での確定闘争や独立行政法人での交渉を強化し、公務員賃下げを許さないたた かいに全力をあげることが求められます。

要求にまったく応えない不満な回答

 6日の内閣人事局との最終交渉には、公務労組連絡会から北村議長、猿橋副議長、川村事務局長、米田・杉本の各事務局次長、国公労連の豊田中執が参加。内 閣人事局側は、辻総括参事官補佐、西山参事官補佐ほかが対応しました。

 はじめに北村議長が、「人事院勧告の取り扱いにかかわって公務労組連絡会は、勧告日当日に要求書を提出し、公務員の生活と労働の実態にもとづいて使用者 として積極的な賃金改善を行うよう求めてきた。くわえて、寒冷地手当については、燃料費の高騰のもとで生活を悪化させる手当の改悪は許されない。『給与制 度の総合的見直し』の扱いについては、職員のモチベーションを下げ、地域経済も壊すものであることも主張し、労働組合との納得と合意のもとに決定するよう に求めてきた。また、9月24日には、退職手当の現給保障を強く求めたところだ。私たちの要求に対する使用者としての政府の検討結果を説明願いたい」と政 府の回答を求めました。

 内閣人事局の辻総括補佐は、以下のとおり最終回答を行いました。
 ● 本年度の国家公務員の給与の取扱いについては、去る8月7日に人事院勧告が提出されて以来、人事院勧告制度尊重の基本姿勢の下、国政全般の観点から 政府部内で検討を続けてきた。
 ● その結果、明日、第2回目の給与関係閣僚会議を開催し、勧告どおり 平成26年度の給与改定を行うとともに、給与制度の総合的見直しを行うことが決定される方向である。
また、国家公務員の退職手当制度については、職員の公務への貢献度をより的確に反映させるよう、必要な改正を行うことが決定される方向である。
給与関係閣僚会議で決定がなされれば、その後の閣議において、公務員の給与等の取扱方針及び必要な法律案について決定されることとなる。
 ● 本日の回答は以上である。何とぞご理解いただき、今後とも、国民の信頼に応え、公務能率及び行政サービスの一層の向上に努めていただきたい。

 この回答に対して交渉参加者が以下のとおり発言しました。
 ○ 公務労組連絡会は、国民の信頼に応え、行政サービスを向上させるために、「給与制度の総合的見直し」の中止や退職手当の現給保障を求めてきた。これ にまったく答えない回答には納得できない。労働者の賃金引き上げが景気回復のカギを握っている。賃金と一時金の改善勧告の早期実施は当然だが、一方で、寒 冷地手当の支給地域見直し「改悪」は、燃料費高騰や寒冷地の生活実態を無視し、賃金を引き下げるものであり認められない。
 ○ 「給与制度の総合的見直し」は、「給与体系の抜本改革」として政府が検討を要請したものに、人事院が公務労組連絡会との交渉で、理解も納得もないもとで勧告 を強行したもの。政府の「地方創生」や賃上げによる内需拡大策とも矛盾し、地方首長の地域間格差の解消の声にも反したものであり、断固反対である。
 ○ 退職手当については、2012年の見直しで400万円もの大幅な引き下げが強行されたばかりである。今回の「給与制度の総合的見直し」による退職手当 の減額は、政府自身も退職手当の官民水準の「かい離」となることを認めており、すべての職員の現給が保障されなければならない。「職員の公務への貢献度を より的確に反映させる」ことを口実にした「調整額」の拡大は官僚優遇策であり、断じて認められない。
 ○ 地方自治体は、国の「給与制度の見直し」に困惑している。政令市の勧告で「給与制度の見直し」実施をうたったものはない。労使交渉に提案することに正当性がない。 内閣人事局はトータルに判断する必要がある。政府の政策との整合性が求められる。
 ○ 非常勤職員について、年休の弾力的運用は地方ではすでに実施している。格差が広がり貧困が深刻になるもとで、労働条件改善での踏み込んだ対応を求め る。
 ○ 地域手当はつかない、退職手当も下がるもとで、第一線の職員にどうがんばれというのか。
 ○ 地方の人材確保をどうするのか。地方でも待遇の確保が必要だ。「見直し」は地方が影響を受ける。再考を求める。
 ○ 同じ仕事をしていても、働く場所で賃金に差がつくことは職務給原則に反する。やる気を失う。地方を下げて中央の賃金を上げることは認められない。
 ○ 今回の勧告は地方への影響が大きい。仮に国が決定したとしても、地方に押しつけることがないように求める。

 これらの主張に対して辻総括補佐は、「8月7日に要求書をいただき、ご意見を賜ったうえで人勧尊重、国民の信頼確保から検討し、今回、勧告どおりとし た。ご理解を願いたい。非常勤職員の処遇改善の勧告はでていないが、引き続き職場の状況を聞かせていただいて制度改善に生かしていきたい」と述べました。

 最後に北村議長が、「回答内容は納得できるものではない。あらためて給与制度見直しの中止と退職手当の現給保障を求める」と発言し、交渉を終わりました。

以 上



「地方創生」に逆行する「給与制度見直し」、
退職手当減額の閣議決定は撤回せよ(声明)

2014年10月7日 公務労組連絡会幹事会

1.本日、政府は、0.27%の賃金改善と一時金を0.15月改善する一方で、平均で2%、高齢層では最大4%もの賃下げと、地域手当の見直しによって地 域間格差を拡大する「給与制度の総合的見直し」を含む14年人事院勧告の実施を閣議決定した。あわせて、賃下げによって生じる退職手当の官民格差を「調整 額」の拡大で埋める退職手当法の改正案も決定した。

2.7年ぶりとなる賃金と一時金の改善は、生活改善には程遠いものではあるが、人事院勧告にもとづかない賃下げが2年間続いた後であるだけに早期実施は当 然のことである。一方、恒久的に公務員の賃金を引き下げる「給与制度の総合的見直し」と退職手当の削減は労働条件の不利益変更であり、十分な交渉もないま まの強行は断じて認められない。
したがって、閣議決定に断固抗議するとともに、その撤回を強く求めるものである。

3.円安と消費税増税による物価上昇、国民負担増が暮らしと営業を直撃し、消費支出がかつてなく落ち込んでいる。深刻な景気悪化の要因は、労働者の賃金の 減少であり、「給与制度の総合的見直し」が強行されれば、地域経済をいっそう悪化させることは明白である。とくに、全国知事会など地方3団体も、今回の 「見直し」が「官民を通じて地域間格差が拡大することとなりかねない」と主張しているなど地方から強い懸念の声があがっている。
公務員賃金の引き下げは、安倍政権がめざしてきた労働者の賃上げや、「地方創生」による地域の活性化とも矛盾するものであり、この点からも「給与制度の総 合的見直し」は認められない。

4.この間、公務労組連絡会は、公務員の賃下げがもたらす地域経済への影響や地域間格差拡大などの問題点を内外に明らかにし、「給与制度の見直し」の中止 を政府に求めてきた。政府は、「人事院勧告の尊重」を繰り返すだけで、私たちの要求に一切応えていない。使用者責任を投げ捨てる不誠実きわまりない対応は 許されるものではない。
また、閣議決定で地方自治体への賃下げを「要請」しているが、地方自治への介入であり、認められない。
 これからたたかわれる地方での確定闘争や独立行政法人での交渉、国会でのたたかいにおいて、賃金の引き下げを許さず、すべての労働者の賃金改善を求めて 奮闘するものである。同時に、国民・地域住民の安心と安全、暮らしと権利を擁護する公務・公共サービスの責務を負う労働者として、安倍政権による地方切り 捨ての「地方創生」、労働法制や社会保障の大改悪に反対して、国民的共同の一翼を担って職場と地域からたたかうものである。
以 上