No. 880
   2014年2月6日

「給与制度の総合的見直し」への意見表明を求める

= 公務労組連絡会が全国人事委員会連合会に申し入れ =

 公務労組連絡会は6日、自治労連・全教と共同して、地方公務員・教員の賃金・労働条件の改善を求めて、 全国人事委員会連合会(全人連)への要請にとりくみました。
 申し入れでは、人事院が「給与制度の総合的見直し」にむけて検討をすすめ、政府も賃金水準引き下げの給与制度改悪をねらい、地方自治体にも同様の措置を 求めるなかで、全人連としても何らかの意見表明を求めました。
 また、各単産からは、長時間労働など劣悪な労働条件の改善、臨時・非常勤職員の均等待遇の実現、「雇用と年金の接続」にむけた処遇の改善などへ全人連と しても努力するよう要請しました。


格差を拡大し、地域 経済を疲弊させる給与制度の改悪に反対

 全人連への申し入れには、公務労組連絡会からは、野村議長(自治労連委員長)、黒田事務局長、関口・米田の各事務局次長、自治労連から猿橋書記長、全教 から今谷書記長が出席しました。
 全人連側は、関谷会長(東京都人事委員会委員長)をはじめ、中澤(北海道)、高橋(宮城県)、堀口(埼玉県)、齋藤(愛知県)、栗原(大阪府)、林(広 島県)、宇都宮(愛媛県)、蓑田(福岡県)、岡部(横浜市)の各人事委員会代表ほかが出席しました。
 はじめに、野村議長は、要請書(別掲)を関谷会長に手交し、政府・人事院が一体となって給与制度の改悪をねらい、そのことが賃金の地域間格差をひろげ、 地域経済にも悪影響を与えることをふまえて、全人連としても何らかの意見表明をするように求めました。そのうえで、消費税増税をひかえて、臨時・非常勤職 員をふくめた賃金改善の必要性を強調し、「第一線で働く公務労働者の奮闘に応えて、賃金・労働条件の改善にむけて全人連として尽力するよう強く求める」と 要請しました。
 自治労連の猿橋書記長は、「人事院による給与制度見直しは、賃下げを固定化するものだ。賃上げこそ経済を建て直す最大の課題であり、全人連としても全力 をあげてもらいたい。また、臨時・非常勤職員の処遇改善は切実な課題だ。勧告や報告で触れるよう求める」とのべ、あわせて、年金の支給開始年齢が今年4月 から引き上げられるもとで、雇用と年金の接続にむけた早急な処遇の改善を申し入れました。
 全教の今谷書記長は、全教がとりくんだ勤務実態調査の結果を示しながら、「過労死ラインをはるかに超える超過勤務のなかで、『給与制度の総合的見直し』 などとして賃下げをねらうことは認められない」とのべました。また、雇用中断による不利益が生じているなかで、臨時的任用の教員の雇用改善を求めました。

中立かつ公正な第三者機関としての使命を十分に果たす

 要請に対して、関谷会長からは以下のような回答が示されました。
【関谷全人連会長の回答】
 ただいまの皆様からの要請につきましては、確かに承りました。早速、役員道府県市を通じて、全国の人事委員会にお伝えします。
 現在の状況認識等について、一言、申し上げます。
 まず、最近の経済状況を見ますと、去る1月17日に発表された政府の月例経済報告では、景気について「緩やかに回復している」との基調判断を示しており ます。先行きについては、「各種政策の効果が下支えする中で、家計所得や投資が増加し、景気の回復基調が続くことが期待される」とする一方で、「海外景気 の下振れによるリスクや、消費税率引上げに伴う駆け込み需要及びその反動が見込まれる」としております。
 一方、既に始まっている本年の春季労使交渉では、賃上げについて様々な議論がなされているところであり、今後の状況も含め動向が注目されるところです。
 現在、人事院及び各人事委員会では、春闘の結果も反映された民間給与の実態を的確に把握できるよう、本年の民間給与実態調査の実施へ向け、その準備を進 めているところです。今後、各人事委員会においては、社会経済の動向なども踏まえながら、本日の要請内容も含め、本年の勧告に向けた検討を進めていくこと になろうかと思います。全人連といたしましては、本年も各人事委員会の主体的なとりくみを支援するとともに、人事院、各人事委員会との意見交換に努めてま いります。
 あらためて申すまでもなく、人事委員会の重要な使命は、公務員の給与等の勤務条件について、社会情勢に適応した適正な水準を確保することであると認識し ております。
 地方公務員の給与を取り巻く環境は、不透明な状況ではありますが、私ども人事委員会は、本年も中立かつ公正な第三者機関として、その使命を十分に果たし てまいります。

以 上

【全人連への要請書】
2014年2月6日
全国人事委員会連合会
 会 長  関谷 保夫 殿
公 務 労 組 連 絡 会
議 長   野村 幸裕

日本自治体労働組合総連合
  中央執行委員長 野村 幸裕

全 日 本 教 職 員 組 合
 中央執行委員長 北村 佳久

地方公務員の給与等の改善にかかわる要請書

 日頃から地方公務員の勤務条件の向上に努力されていることに対して敬意を表します。
 国家公務員賃金を平均7.8%引き下げた「給与臨時特例法(賃下げ法)」の実施から2年が経過し、また、昨年からは、政府が地方自治体にも国に準じた賃 下げを「要請」し、その結果、7割をこえる自治体で何らかの賃下げ措置がとられるまでになっています。
 言われなき賃下げは、生活を一気に悪化させたうえに、公務労働への誇りと尊厳、働きがいさえも奪うなかで、生活と労働の実態をふまえた賃金改善が切実に 求められています。
 こうした賃下げ措置は、公務労働者の労働基本権制約の代償措置である人事院・人事委員会勧告制度を無視し、憲法で定められた労働基本権をふみにじるもの であり、地方人事委員会からも批判的な意見が出されてきたところです。
 こうしたなか、政府は、国家公務員の賃下げ措置を今年3月末までで終了することや、地方自治体に賃下げの「要請」をしないことなどを決定しました。しか しながら、人事院は、地域の公務員賃金の引き下げ、高齢層の賃金抑制、技能・労務職員の賃金水準の見直しなどを内容とした「給与制度の総合的見直し」を表 明し、また、政府は人事院にすみやかな検討を要請するとともに、地方自治体にも同様の措置を求めています。
 安倍内閣が賃上げを政策課題にすえるもとで、賃下げにつながる給与制度の改悪は、政府がめざす方向とも逆行します。とりわけ、地域の公務員賃金の引き下 げは、地場賃金に影響し、地域経済を冷え込ませることとなるなど、地方切り捨ては断じて認められません。
 第一線で奮闘する公務労働者の労苦に報いるため、各地の人事委員会が労働基本権制約の代償機関として積極的な立場に立ち、下記要求実現に尽力されること を要請いたします。



1、住民の暮らしや子どもたちの教育のため、日夜、献身的に奮闘している自治体労働者・教職員を励ますとともに、「全体の奉仕者」としての誇りと尊厳を 持って職務に専念できるように、正規・非正規を問わずすべての公務労働者の賃金・労働条件を改善すること。

2、民間給与実態調査にあたっては、単に民間の賃金水準と機械的に比較するのではなく、地方自治や地方公共団体のあり方、公務・公共サービスのあり方と密 接不可分であることに十分留意して調査をおこなうこと。とりわけ、勤続・経験年数の加味、雇用形態、民間一時金水準の厳正な把握をするとともに、比較対象 企業規模を100人以上にすること。

3、職務による賃金格差の拡大、高齢層の賃金の抑制をやめるとともに、初任給の改善をはかること。技能・労務職員の賃金を、公務の特殊性をふまえて改善す ること。

4、地方の公務員賃金引き下げにつながる政府・人事院による給与制度の改悪に対して、人事委員会として意見表明していただくこと。

5、子どもたちのさまざまな困難に対応している教職員のモチベーションを支えるためにも、教職員賃金の引き下げはおこなわず、職責と勤務実態に応じた適正 な賃金水準を確保すること。

6、臨時・非常勤職員について、パート労働法・改正労働契約法の趣旨もふまえつつ、賃金をはじめ休暇制度など労働条件の改善、雇用の安定・均等待遇の実現 などにむけて必要な対策をおこなうこと。

7、「雇用と年金の接続」にむけては、定年延長を大原則に、希望するすべての職員の雇用が保障できる制度を確立し、生計費をふまえた賃金水準の確保にむけ て、人事委員会としての役割をはたすこと。
以 上